受験者平均点 48.6点
合格者平均点 58.3点
想定合格点 55点
昭和の終わりから40年以上、東大合格者数1位を続ける開成高校。
筑波大学附属駒場高校や聖光学院高校も非常に高い東大合格率で知られていますが、そもそもの卒業生数が開成400名に対して、筑駒160名で聖光学院が225名。
東大合格者数トップの座は、天変地異でも起きない限り、この先も揺らぐことはないでしょう。
もちろん開成の価値は進学実績だけではないことは、改めて語るまでもありません。
数多くの開成OBが様々な分野で、世界を股にかけて活躍しています。
中学受験においても首都圏男子御三家の筆頭として、受験生の羨望を集めています。
2月1日の試験日は1000名を超える首都圏男子のトップ生が300席を争う激戦となっています。
算数の出題においては難度や形式が一定しないことが特徴として挙げられます。
2023年は合格者平均点が76.4点/85点の9割という異例の高得点勝負になったとことも話題になりました。
さてここからは2024年の開成中の算数の出題を通して、どうすれば最難関校合格の可能性を高められるかを考えていきましょう。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えたら充分
として1問ずつ見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
「小町算」と呼ばれる計算パズルが冒頭の問題として課されたことに、開成中の遊び心が感じられますね。
ただ、この問題はやみくもに当てはめていくような数遊びではなく、数の特徴から条件を絞り込む整数問題です。
「大きな数をかけて2024に近い数を作って、そこから足したり引いたりする」という発想でも良いでしょう。
解答例では2024=2×2×2×11×23の素因数分解を利用して、11×23=253は「よく見かける252に近いな…」ということから答えを絞り込みました。
実は奇をてらっていない、数への親しみや感覚を問う面白い問題でした。
2004年(平成16年)にも同じ趣旨の出題がされたので、類題を経験したことがある受験生も多かったことでしょう。
(2) ア 〇 イ △
アは「34.5cmの時に重さが等しくなる」ということから、差集め算・つるかめ算・平均算の典型題として処理できるでしょう。
イは「切り取る部分の重さが等しくなるのは、切り取る部分の長さが34.5cmのときだけ」の「だけ」がどのような状況を示しているのか、少し捉えにくいかもしれません。
以下のようにグラフで視覚化して考えてみても良いでしょう。
(3) ア 〇 イ 〇 ウ 〇
三角形の転がり移動の典型題です。
大きな正三角形の1辺が小さな正三角形の1辺のちょうど3倍になっているので、作図も容易です。
アイウでそれぞれ注目すべき箇所は異なりますが、開成中合格を目指す受験生なら丁寧に作図するだけで難なく正解できるでしょう。
大問2
(1) 〇
近年の首都圏中学受験のトレンドの「長い問題文に沿って作業する」タイプの場合の数の問題です。
男子難関校では武蔵中や聖光学院中で毎年のように課されています。
(1)は題意の確認です。
問題文の指示通りに作業するだけなので、失点してしまった開成中合格者は皆無でしょう。
(2) ア 〇 イ △ ウ △ エ △
問題文を読むだけで「きっと誘導形式になっているんだろうなぁ…」と見抜くことが出来るでしょう。
アは場合分けを考えるよりも、とりあえず「1」「2」「3」を並び替えて出来る全6通りを書きだして調べてみましょう。
イはアから「4」のカードが増えても結果が変わらない状況を考えます。
1枚目に「4」を使わないように、アの2通りそれぞれに「4」を書き足せば良いですね。
ウ①はまさに誘導形式の典型題です。
イの状況に「1枚目が「5」にならないもの」が何通りずつあるかを考えましょう。
それぞれ4通りずつになりますね。
ウ②はウ①の逆で、イの状況に「1枚目が「5」になるもの」を考えます。
こちらは1通りずつしかありません。
エはウ②の6通りの状況に「1枚目が「6」にならないもの」を考えれば良いですね。
5通りずつになります。
(3) △
これまでのまとめにあたる問題です。
まず75421と並べ(2)のように小さい順に「3の場所」「6の場所」「8の場所」「9の場所」と考えていきましょう。
方針さえ立てられれば、処理量も多くはありません。
鮮やかな誘導形式の大問で、無事に完答できた受験生は合格に大いに近づくことが出来たのではないでしょうか。
大問3
(1) 〇
「切断後の立体図形の展開図から戻って、切断面を考える」という斬新な視点の問題です。
(1)はABCを含む②が直方体の奥の面にあたることをベースにして「直角」に注目して考えてみましょう。
③はもとの底面の一部、④はもとの右の側面の一部、①と⑤は切り口にあたると感覚的にも掴んでほしい問題です。
(2) 〇
(1)が出来ていたら、1めもりを1cmとして数値を記入するだけなので易しいでしょう。
ここまでは多くの開成中受験生が正解できたのではないでしょうか。
(3) △
どうすれば②③④のように切れるのか考えましょう。
特に③と④は複数回切らないと作れません。
特徴的な部分に注目し「多分こうなるんだろうな」と類推する力も必要です。
(4) △
③で3つの断面を確定できていれば、見取図に落とし込めているはず。
正しく図を描けていたら易しいです。
(5) △
(4)と同様に(3)で見取図が完成していたら、開成中合格を目指す受験生にとってはオマケのような問題です。
大問3は立体図形の切断に対する経験と感覚が問われる、差がつく問題でした。
総評
このような出題となった2024年度の開成中の算数。
合格者平均点は58.3点で、受験者平均点は48.6点となりました。
合格者平均点と受験者平均点の差は僅か9.7点。
例年だと15点弱の差がつく開成中の算数において、差が10点を下回ったのは平成22年(2010年)以来という珍しい年度になりました。
ただ決して特異な出題だったわけではありません。
出題分野に関しては「数」「図形」「文章題」からバランス良く課されている、まさに受験算数の王道です。
また問われた力も「経験値や知識量」「作業力」「発想力」と、偏りがなくこちらもバランスが良い構成となりました。
「合格者平均点」と「受験者平均点」という形で均すと、たしかに差は大きくはありません。
ただ「誰もが解けないような超難問」は課されず「やや難」レベルの問題が大半を占めたので「算数が超得意!」という生徒なら大きなリードを取ることが出来たのではないでしょうか。
また算数が苦手な生徒にとっては大問1(3)くらいしか自信を持って解答できず、算数が原因で悔しい受験結果につながってしまったケースも想定されます。
2025年以降に開成中合格を目指す受験生の皆さんにとって、2024年の出題は非常に学習効果の高い年度になったと言えそうです。
難しすぎる問題は課されていないので、最終的な到達目標を把握するにあたって参考になりますね。
2023年の開成中の算数の出題は空前の高得点勝負となり「どうした開成!?」と心配させられましたが、2024年の開成中の算数の出題は様々な側面から受験生の学力を測る、最難関校の入学試験として質の高い出題になりました。
僕自身も開成の懐の深さを改めて知らしめられました。
2025年以降の出題も楽しみにしています。
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