サカセルコラム

開成中の算数分析(2023年) Column

過去問分析

開成中の算数分析(2023年)

2023.12.29

受験者平均点 61.7点
合格者平均点 76.4点
想定合格点  70点

開成中学校併願パターンや過去の試験の解説はこちら

40年以上にわたり東大合格者数1位をひた走る開成高校。

進学実績はもちろん、運動会をはじめとする学校行事も盛んで、先輩後輩のつながりの強さも大きな魅力となっています。

各界にも有力なOBを数多く輩出し、卒業後も様々な場面でつながりを実感することも多く、愛校心の強さも特徴と言えるのではないでしょうか。

このように日本を代表する進学校である開成高校は、多くの受験生の憧れの的です。

ただ中学受験・高校受験における最難関校として君臨している開成、生半可な学力では合格が難しいことは言うまでもありません。

一定以上の才能があり、その上で適切な努力を重ねなければ合格には決して届きません。

算数の出題は、傾向が一定しないことで知られています。

難度も乱高下し、出題数も大問で3~4題が不定期に課されます。

ただ一貫して「正しく読み取ること」と「自身の考えを答案として落とし込むこと」は問われ続けています。

出題の変化に動じない「胆力」も合格には必須です。

ここからは2023年の開成中の算数の問題を通して、どのような戦略で取り組めば合格を勝ち取ることが出来たのかを考えていきましょう。

今回使用する指標

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えたら充分

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇

中学受験における「速さ」の問題の導入問題にあたる旅人算からの出題です。

複数人が登場し、途中で休んでいる時間も含まれるので、線分図よりもダイヤグラムで整理できると良いでしょう。

(1)は全く難しい問題ではありません。

どの状況からどの状況までを問われているか確認し、確実に正解することが必須です。

(2) 〇

(1)で描いたダイヤグラムを利用しましょう。

正しく描けていたら、(1)で求めた時間でカメがどれだけ進んだかを求め、そこから100mを引くだけで正解できますね。

こちらも失点する要素はありません。

(3) 〇

(2)で求めた距離の差になるのが、出発してから何分後かを求められれば易しいでしょう。

(3)まで非常に易しい問題となった大問1は、開成中合格を目指す受験生なら短時間で難なく完答できたことでしょう。

簡単すぎて拍子抜けした生徒も多かったかもしれません。

大問2

1回目 〇

点の移動の問題に見えますが、ごくありふれた六角形分割です。

まずは左:右=1:2となる場合を考えます。

面積の6等分の基本図形に基づいて、解答例のように真ん中の長方形を1:3に分ける、と捉えられれば易しいでしょう。

確実に正解しておきたい典型題でした。

2回目 〇

今度は左:右=2:1と分ける場合を考えます。

今回は「右側に正三角形を付け足す」という発想が出来ると良いでしょう。

「受験生の常識」と言えるほど易しくはありませんが、開成中受験生にとっては基本問題です。

こちらの問題も多くの受験生が完答できたのではないでしょうか。

大問3

(1) 〇

多くの受験生が苦手とする「立体の2回切断」ですが、開成中を目指すならば何度も練習を重ねてきた単元でしょう。

(1)は見取り図を描くだけの問題で、しかも点線の誘導までついているので非常に易しいです。

「2つの面は直線で交わり、その直線が新しい切り口の一部となる」という基本通りに取り組みましょう。

(2) 〇

もとの立方体から三角柱AMN-DOPと三角柱AIJ-BKLを除き、重複して除いている図形部分を足すと考えましょう。

重複部分は△AMNを底面とする断頭三角柱となります。

計算量もあまり多くはないですし、こちらの問題も開成中を志す受験生にとっては基本と言って問題ないでしょう。

大問3までを短時間で完答できた受験生もかなり多かったものと思われます。

大問4

(1) 〇

「複数の点が行ったり来たり」なので、ダイヤグラムを用いて整理しても良いですが、まずは問題に与えられている形で手を動かしてみると良いでしょう。

問題の例のように動きの向きも意識できると、より正確に作業することが出来そうです。

なお(1)で求める6秒後の状態が(2)(3)を解くためのヒントになっています。

(2) 〇

(1)より6秒かけてPがQの位置に、QがRの位置に、RがPの位置に移動し、動きの向きも同一になることが分かります。

6秒1セットを3回繰り返すことで元に戻ると分かるでしょう。

決して易しい問題ではありませんが、開成中の受験生にとっては基本問題です。

こちらも確実に正解しておきたいところでした。

(3) △

(2)で求まった周期を考えると、5セットと10秒後と分かります。

(1)の続きを10秒後まで描いていっても良いですが、10秒後が6秒+4秒後だと考えて、4秒後の位置関係を利用できるとなお良いでしょう。

(4) △

丁寧に状況を確認すると1セット18秒の間にPとRが出会う状況が、1回+1回+2回で4回あることが分かります。

あとは周期を利用すれば難なく完答することが出来るでしょう。

この大問も易しめでした。

大問5

(1) ア 〇

「大問5…やと!?」と思わず声が出てしまいます。

例年だと大問数は4つ、稀に3つという開成中の算数において異例の構成となりました。

内容に目を移しましょう。

ここまで異常なほどに易しかった2023年の開成中の算数の出題ですが、ここで1ページ半にわたる長大な問題文からなる、数の性質の大型問題が課されました。

とは言え(1)は丁寧すぎるほどの誘導に乗るだけなので易しいです。

(2) イ 〇  ウ 〇

考え方自体は高度ですが、こちらも誘導がかなり丁寧です。

イは(1)の発想そのままなので30通りとなり、ウはそれに表で挙げられている4通りをかけるだけです。

ここまでは問題文を素直に読むことが出来れば、開成中受験生なら確実に正解できるでしょう。

(3) エ 〇  オ △  カ △

エは(1)(2)の誘導と全く同じです。

972=960+12になることを利用しましょう

オは(1)(2)の誘導の方法に沿って和が97になる場合を調べましょう。

同じように作業するだけなので難しくはありません。

カはこれまでのまとめになっています。

一の位の組み合わせがエが3種類、オが3種類となりますね。

素直に読み込んでいけば難なく正解できたはずですが、上手く誘導に乗れなかった受験生は、ここで手が止まってしまったかもしれません。

(4) キ △

(1)~(3)の思考に沿って考える、2023年の開成中の算数の最終問題です。

(1)(2)の発想を用いて、

9723=9710+13

9723=9720+3

と分け、それぞれの一の位での場合分けを考えましょう。

971も972も(3)までで考えているので処理量は決して多くはありません。

開成中を目指す生徒の中でも差がつく問題でしたが、最後の問題としては易しすぎでしょう。

総評

このような出題となった2023年度の開成中の算数の合格者平均点は76.4点で、受験者平均点は61.7点になりました。

合格者平均点は驚異の約9割。

最高峰の受験に向けて算数を磨きあげてきた受験生にとっては肩透かしという、さすがに易しすぎる出題です。

理科や社会も易しめの出題だったこともあり、総合での合格最低点も237点/310点で76.5%という空前の高得点勝負となりました。

合計点で75%を取っても不合格というのは、なかなか中学受験では見られません。

平成初期以来の大問数が5つで、しかも異常な高得点勝負となった異例ずくめの入試となりましたが、合格者平均点と受験者平均点の得点差は14.7点。

異様に易しい出題ではありましたが、例年と同様か、それ以上の得点差はついています。

実は入学試験としては充分に機能していると言うことが出来るでしょう。

そんな2023年度の開成中の算数で合格点を勝ち取るためには、3問間違い以内におさめることが目安と言えるでしょう。

トップクラスの学力を誇る受験生たちが解けない可能性がある問題と言うと、大問4の(3)(4)と大問5の(3)(4)くらいしかありません。

あとは「どのくらいミスを抑えられるのか」という作業の精度が合否を分けたということが出来そうです。

2024年以降に開成中合格を目指す受験生の皆さんは、2023年の出題をあまり意識しすぎないようにしましょう。

さすがにこれほど易しい出題が続くことは考えられません。

様々な難問にも対応できるような、最高峰を目指す学習を続けていきましょう。

ただ「やや易しめ」「長文を読み込み、指示に沿って素直に作業する」「作業の丁寧さや正確さ」が求められる、という傾向はある程度続くかもしれません。

どのような出題であっても動じないような胆力も身につけて、トップ校合格を目指しましょう!

心より応援しています。


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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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