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開成中の算数分析(2019年) Column

過去問分析

開成中の算数分析(2019年)

2019.04.16

受験者平均点 51.0点

合格者平均点 64.6点

想定合格点  60点

 

開成中学校の学校の特徴や傾向分析、2018年の分析はこちら

2019年春も187名の合格者を輩出し、見事に平成の東大合格者数ランキングで1位に君臨し続けた開成高校。

約400名の卒業生のうち300名は中学受験を経て入学しています。

もちろん開成中学の入学の難度は全国屈指です。

ただ算数の出題の難度や傾向は年度による差が大きいことが特徴として挙げられます。

やや難しめの出題が続いた2016年、2017年。

一方、昨年2018年は、近年まれにみる易しさで合格者平均点は85%を越える、空前の高得点勝負となりました。

 

ここからは今年2019年が、果たしてどのような出題となり、どうすれば合格点を取れたのかに注目していきましょう。

〇:合格のためには必ず正解したい

△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく

×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えたら充分

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

 

大問1

(1) 〇

K君の動きを解答例のようにダイヤグラムで整理すると考えやすいでしょう。

60m/分と80m/分の速さの比の逆比が、時間の比になることを利用します。

15/16倍なので、60m/分での所要時間を⑯分と置くと効率的です。

 

(2) 〇

K君が引き返して再びおばさんの家に着くまでの③分を、100m/分と80m/分の逆比で分けましょう。

速さが80m/分で同じなので「③×5/9分が⑫分の何倍か」と時間の比で考えると良いでしょう。

 

(3) △

自宅からおばさんの家までの距離を80m/分×⑫と置き、K君とS君が出会った地点が自宅からどれだけ離れているかを求めましょう。

計算量はやや多いですが、決して難しい問題ではありません。

 

大問2

(1) 〇

立方体、直方体の切断は中学受験の定番です。

「同一平面」⇒「平行」⇒「延長」のルール通りに取り組みましょう。

この時点では長さが与えられていない箇所があるものの、切り口が六角形になることは開成受験生ならば常識として解くことができるでしょう。

 

(2) △

正面から見ると、解答例のように左下および右上が欠けた図になることが分かります。

立体図形の捉え方として投影図にも慣れておきましょう。

 

(3) △

まずは上から見た図の左上と右下の三角形が1:2になることを利用し、DS=①、BT=②と置きましょう。

続いて以下の図の左側の相似に注目することでSAの長さを表しましょう。

 

決して難問ではありませんが、様々な相似を利用する点、演習量が得点に結びつきやすいと言えるでしょう。

 

大問3

(1) 図1 〇  図2 〇

基本的な道順の問題です。

「直前にどこにいるか」に注意して、頂点に何通りかを書き込んで考えましょう。

題意の確認問題なので落とせません。

 

(2) 図4 △  図5 ×

「どこで戻るか」で場合分けして考える方法が無難ですが、非常に処理量が多くなってしまいます。

ここで図3の例がなぜ掲載されているのか、また図1と答えが同じなのかに着目しましょう。

図4を丁寧に処理すると図2と同じ答えになることが分かり、そこから図1図2で奥に進むことと、図3図4で左に戻ることが同じことを示していると気づきましょう。

あとは解答例のように丁寧に作業すれば正答に辿りつくことが可能です。

(1)の誘導を利用する、麻布中のような出題でしたが良問です。

 

大問4

(1) 〇

題意の確認問題です。

確実に正解しておきましょう。

 

(2) a△ b △

中学以降の数学の証明で用いる、いわゆる「背理法」の思考方法をたどる問題です。

ケに3がないとすると、当然Cからもらってきたことになります。

その場合Cのもう1枚のカードは1か2となりますが、1だと同じ奇数で、この時点で席を立つことになってしまうなので、xは(2,3)しかありえないと分かります。

以降も同じように思考を重ねていくと、結局ケに3がないと条件が成立しないということが分かります。

中学受験生には馴染みのない思考法で、また難度も高い出題です。

 

(2) c ×

まず1回目では誰も席を立つことはなかったので、全員が偶数を渡したことが分かります。

以降は細かな場合分けと試行錯誤を要する難問です。

また答えも1通りしか出てこないので、試験会場で自信を持って完答できた生徒は極めて少ないのではないでしょうか。

 

このように2019年度の出題は、通常通りの大問4題の構成となりました。

速さと比の解法知識の習熟度を問う大問1。

立体図形の切断の解法知識と着眼点を問う大問2。

誘導を利用した発想力(もしくは丁寧な作業力)を問う大問3。

題意を読み取り思考する力を問う大問4と、出題バランスも良い、算数の実力差の現れやすい出題と言えるでしょう。

 

合格の目安は、

〇〇△の大問1で16/20

〇△△の大問2で14/20

〇〇△×の大問3で14/20

〇△△×の大問4で10/25

あとは、どこか自分の得意な問題を完答して+5点くらいで約60点でしょうか。

 

2019年度の開成中の問題は決して易しくはありません。

予想以上に平均点が高かった理由は、開成中受験生のレベルの高さに加えて、部分点の比率も比較的高かったことが推測されます。

普段から添削を受け、過不足のない答案を作ることが出来ていれば手応えを上回る得点をあげることが出来たのではないでしょうか。

来年度以降に開成中学に合格を目指す受験生の皆さんにとって、2019年の出題は、開成レベルの実力が身に付いているのかを測る試金石となることでしょう。

是非とも頑張りましょう!

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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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