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豊島岡女子学園中の算数分析(2022年 第1回) Column

過去問分析

豊島岡女子学園中の算数分析(2022年 第1回)

2022.12.06

受験者平均点 59.01点
合格者平均点 70.03点
想定合格点  65点

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「塾いらず」とも称される学習面の面倒見の良さで、今や女子校の中では屈指の進学実績を誇る豊島岡女子学園。
2022年度から高校募集を停止し完全中高一貫校になったことで全員に一貫した教育を行えるようになり、今後ますます優秀な人材を輩出していくことでしょう。

勉強面だけではなく部活動や学校行事も充実していて、特にコーラス部は合唱の強豪校としても知られています。
東京オリンピックの開会式でも重責を担ったことは記憶にも新しいですね。

当然、中学受験においては女子最難関校として知られています。
大手塾の発表している偏差値表では、女子トップ校に君臨し続けてきた桜蔭中と同等以上とランク付けされています。

優秀な教員たちが作成する入試問題も秀逸です。
各塾のカリキュラムに沿って努力を重ねてきた女子上位生の学力を正確に測ることの出来る質の高い問題が、各科目で課されます。
なお問題は「記号」や「答えのみ」で答える問題が中心です。
女子校最多の受験者数を誇りながら、当日中に合否を発表するためには適切な形式なのかもしれませんね。

さて、ここからは2022年の豊島岡女子学園中の第1回の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを考えていきましょう。

今回使用する指標

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので、可能な限り正解したい
×:正解できる生徒は少数、後回しにする判断も効果的

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇

基本的な計算問題です。
分数⇔小数の換算に気を付けて、確実に正解しておきましょう。

(2) 〇

216と「互いに素」な整数を求めます。
216を素因数分解すると2×2×2×3×3×3となるので、2の倍数と3の倍数以外のものを求めましょう。
こちらの問題も落とせません。

(3) 〇

食塩水の基本問題です。
面積図でも天秤でもやり取りの式でも、自分の使いこなせる方法で正解しておきましょう。

(4) 〇

半径の比=演習の比=5:7なので比例配分して考えましょう。
このように大問1は非常に易しい問題が4つ並びました。
豊島岡女子学園中合格を目指す受験生なら、難なく全問正解できるだけの学力が身に着いていることでしょう。

大問2

(1) △

「何を」「どう」設定するのかが鍵になる損益算です。
解答例では仕入れた個数を⑳として式を立てて計算しました。
その他、面積図など様々な解法が考えられる良問です。

(2) 〇

標準レベルの仕事算の問題です。
解答例では仕事全体を時間の最小公倍数である360と設定し、AとBの消去算として処理しました。
(1)と比べると、広義で同じ比の文章題でもこちらのほうが易しいでしょう。

(3) 〇

平面図形の面積比の複合問題ですが易しめです。
まずは△BEFの面積を求め、そこから3つの頂点を含む三角形を除きましょう。
特に計算量も多くはないですし、確実に得点すべき問題でした。

(4) △

立体図形の内部を通る直線を考える、小問集合としてはかなり難しめの問題です。
真上から見た図で状況を把握しても良いですし、解答例では右から見た図で整理して解いてみました。
なお解答例のような図の見方は平成21年(2009年)の第1回の小問集合でも扱ったことがあります。
この問題に関しては解法が思いつかなければ後回しにしてしまっても全く問題ないでしょう。

大問3

(1) △

難関校の入試問題で時々見かける、速さと比の発想問題です。
母は15:10に家を出て、15:14に家に帰ってきているので、15:12に豊子さんと出会ったことが分かります。
ここから時間の比⇒速さの比と考えていきましょう。
類題の経験の有無で差がつく問題です。

(2) △

(1)で速さの比を求められていたら特に難しい問題ではありません。
豊子さんが歩く速さを①とおいて、出会いの旅人算として処理できると良いでしょう。

大問4

(1) △

条件が多く、どこを手掛かりに解いていくのか、やや捉えにくい問題です。
解答例のようにXYZそれぞれでABCを何個使うのか整理すると、見通しを立てやすくなります。
今回は「X,Yあわせて35個」と「80個のBを使い切った」ことに注目出来れば、Bの個数で考える基本的なつるかめ算だと気づけます。
こちらも差がつく問題です。

(2) △

条件に沿って立式しましょう。
解答例ではYとZを同時に揃えることで消去算として処理し、Xから求めることが出来ました。
(1)が解けなくても正解に至ることが出来る問題だったので、豊島岡女子学園中への合格を目指す受験生なら勝負したいところです。

大問5

(1) 〇

「素因数分解した時に、2と5だけで構成される」という設定の、数の性質の良問です。
(1)は題意の確認です。
豊島岡女子学園中に合格を目指す受験生で失点するものは皆無でしょう。

(2) △

ただ闇雲に調べるのは大変なのでルールを決めて取り組みましょう。
今回はまずは2だけで構成される数を、(1),2,4,8,16,32…256と書き出し、それぞれに5,25,125をかけることで条件に合うものを調べ上げました。
この問題は解法の選択と正確な作業力が問われるので、差がつきます。

(3) △

1度でも5をかけると、1の位の数字は0か5になってしまうので、A,Bのいずれか、もしくは両方が2だけで構成される数だと気づけるでしょう。
解答例では2のn乗で条件に近い数を探すことで、すぐに解答にたどりつくことが出来ました。
7392を素因数分解するなど、理屈で丁寧に調べていっても良いですが、感覚的に正解できるとなお良い問題でしょう。

大問6

(1) 〇

「立体図形の切断」は豊島岡女子学園では頻出のテーマです。
(1)は易しいでしょう。
もとの立方体の半分にあたる大きな三角柱から何を除くかを考えます。
今回は右から見た図で、取り除くべき小さな三角柱の状況を捉えましょう。

(2) ×

大きな三角錐台から何を除くのか、を考えましょう。
真上から見た図で状況を捉えると、取り除いた立方体の左上奥の頂点を通ることが分かります。
あとは

「同一平面」⇒「平行」⇒「延長」

のセオリーに沿って除くべき立体を考えると、結局小さな三角錐を取り除けば良いと言い換えることが出来るでしょう。
やや状況を捉えにくい難問です。

(3) ×

(2)と同じように、もとの大きな立方体を切って残った立体から更に何を除くのかを考えましょう。
真上から見た図で整理すると、通る2点が見つかるので(2)と同様にセオリー通りに除く図形を求めます。
丁寧に作業することで、さらに除くべき図形は「大きな三角錐から小さな三角錐2つを除いた立体」と捉えることが可能です。
難度はかなり高めで、女子最上位層でも正解できた受験生は少なかったことでしょう。

このように2022年度の豊島岡女子学園中 第1回の算数の出題は、

「合格者平均点が70.03点、受験者平均点が59.01点」

という、豊島岡女子学園中としては標準~やや難しめという出題となりました。
想定される合格ラインは65点あたりでしょう。

〇の箇所を全て正解できても42点にしかならないので、△でいかに得点を拾い集めるかがポイントとなりそうです。
今回は大問3、大問4、大問5が女子上位生の学力を測るにあたって絶妙な難度で設定されているので、取捨選択の判断力も合否を分けたと言えるでしょう。

なお大問6の立体図形も決して難しすぎる問題ではないので、算数を絶対の武器とする受験生にとっては満点を目指すことの出来る、明確に学力差を測定できる質の高い出題になっています。
この安定した作問力は、さすが豊島岡女子学園ですね。

2023年度以降に豊島岡女子学園中への合格を目指す受験生にとっても、難度や構成において2022年第1回の出題は非常に参考になることでしょう。
大問3~大問5あたりで難度の低い問題が配置される年次も散見されるので、過去問演習を通して出題の傾向や自分なりの取捨選択の判断基準を掴んでおきましょう。

豊島岡女子学園の対策を重ねることは、そのまま受験算数の学力向上にもつながります。
女子最高峰を目指して、是非とも頑張りましょう!


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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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