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渋谷教育学園幕張中の算数分析(2025年 1次) Column

過去問分析

渋谷教育学園幕張中の算数分析(2025年 1次)

2025.07.01

受験者平均点 43.4点
合格者平均点 56.8点
想定合格点 50点

渋谷教育学園幕張高校。
開校からようやく40年という比較的歴史の浅い学校ながらも、最難関共学校として全国にその名を轟かせている「渋幕の奇跡」は受験界に衝撃を与え続けています。
2025年春の東大合格者数は75名で第7位、私立共学校では1位という見事な実績も、もはや渋谷幕張にとっては当たり前と言える状況です。

進学実績だけではなく、自調自考の校訓のもと自主性を大きく育む自由で明るい校風も魅力で、東京都内に住み男女御三家に合格しても渋谷幕張に進学するという生徒は少なくありません。

ただその入学試験は最難関として知られています。
各科目の入試問題も独特で「合う・合わない」や「あたり・はずれ」の要素が大きく、盤石な基礎学力に加えて、その場での柔軟な対応力や「運」も持ち合わせた生徒しか合格を勝ち取ることは出来ません。
対策が難しい中学校の代表例として、中学受験生や塾を悩ませ続けています…

さて、そんな渋谷教育学園幕張中ですが、ここからは2025年一次の算数の問題を通して、どのような戦略で取り組めば合格の可能性を高められたのかを考えていきましょう。

今回使用する指標

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、捨て問と判断して問題ない

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) ① 〇  ② △

「タイル切り」と呼ばれる、中学受験において応用レベルに位置付けられる知識問題です。
①は縦と横の長さが互いに素なので、解答例のように端に寄せることで「縦+横-1」と考えられることは、渋谷幕張中合格を目指す受験生にとっては常識でしょう。
2本の対角線で切る②は、塾のテキストで学習したことのことのある生徒も少なく、やや難しめです。
真ん中近辺の対角線が2本とも通るタイルが何枚あるか、きちんと数値をふって検証しましょう。

(2) ×

(1)②の応用です。
まずはそれぞれの直線で何枚が切られるかを求めましょう。
なお直線SQで切る時は格子点を通るので縦1cm横3cmを7セットと考えることにも注意が必要です。
あとは2本の直線が通る可能性がある箇所を丁寧に確認しましょう。
答えがズレやすい難問なので、いったん後回しにしてしまうことも賢明だったかもしれません。

なお渋谷幕張中では定規の持ち込みが許可されています。
試験本番では解答例のように実際に図を描いて確認した受験生も少なからずいたことでしょう。
ズルでも何でもありません、最難関校を目指すならばむしろこのくらいの機転をきかせられると良いでしょう。

大問2

(1) 〇

渋谷幕張中の算数において頻出の「数の操作を伴う場合の数」です。
(1)は極端な場合を考えるだけの出題なので易しいです。

(2) △

もとの数(ア)と並び変えた数(イ)の差が出来るだけ小さくなる場合を考えます。
まずは該当するものを探しましょう。
結局A77B-AB77でB=6の時しか該当しないことが分かります。

(3) △

(2)と同様に、まずは該当するものを探しましょう。
今回は明確な場合分けが難しいので、近い数を調べて見つけるという方針で良いでしょう。

なお(2)(3)は解答例のようにA77Bの6×5=30通りを全て書き出すことでも正解することが可能です。
調べる量が少なく、たいした手間でもないですし、試験中に「こんなの全部書き出すだけで解けるやん!?」と判断できた受験生は大きなリードを取ることが出来たのではないでしょうか。

大問3

(ア) △

渋谷幕張中の算数の新たな名物である「グラフの読み取り」の問題です。
2025年の一次では「左半分がまるまる問題文」という超長文が課されました。
ただ問題文が長いということは、そのぶんヒントが多いとも言うことが出来ます。
臆さず怯まず問題に向き合いましょう。
(1)は真一先生、太郎さん、花子さんの3人がそれぞれ「もともと何%」「1分で何%減る」を整理し、グラフの境目が何を示しているのかを考えましょう。
(ア)は結局、太郎さんの充電残量が5%になる時を求めたら良いと分かります。

(イ) △

面倒ではありますが、真一先生、太郎さん、花子さんの充電残量をグラフで整理し直せると確実に正解に近づくことが出来るでしょう。 
(イ)では結局、花子さんの充電残量が太郎さんの充電残量を下回る時を考えれば良いと分かります。
あとは出会いの旅人算のイメージで丁寧に計算しましょう。
答えの数字が汚くなって不安を抱く受験生も少なくはなかったと思いますが、思考レベルは決して高い問題ではありません。

なお真一先生の充電残量はこの問題では全く関係がなく、結果としてダミーの条件となっていました。
最難関校の算数の入試問題としては作りこみが甘いように思えてなりません。

大問4

(1) △

渋谷幕張中の算数の大問4では例年、思考系の平面図形が出題されます。
2025年一次でも傾向は踏襲されました。
今回は図形の中にタイルを敷き詰めるという、パズルでも経験したことがありそうな内容が題材となりました。
ただ今回は何を手掛かりに解いていくのか、方針が立てられなかった受験生も多かったことでしょう。
解答例では最も小さな正方形の1辺を1cm、斜線の正方形の1辺を①cmとおいて、次々と長さを設定していくことで「同じ長さを2通りの式で表す」という方針で答えを導くことが出来ました。
結果として、パズル的な要素はあまりありません。

(2) △

(1)と同じような「同じ長さを2通りの式で表す」という方針で解くことが出来ますが、難度はもう一段上がります。
解答例では(1)と同様に最も小さな正方形の1辺を1cm、斜線の正方形の1辺を①cmと設定して、長さを順に求めていきました。
(PQの長さ):(QRの長さ)は斜辺の長さの比に注目しましょう。
(1)の最初の発想がやや難しいものの、処理量は決して多くはないので差がついた問題と言うことが出来るでしょう。

大問5

(1) 〇

渋谷幕張中の算数の最後の大問と言えば立体図形の難問です。
今年度は「錐の切断」という中学受験最難関単元から出題されています。
ただ(1)は渋谷幕張中合格を目指す受験生にとっては易しいです。
△OBCに注目してNPを延長して相似を作ることが出来れば簡単に正解することが出来ますね。

(2) ×

最難関校を志望する生徒なら「四角錐の切断は2つの三角錐に分けて考える」という経験をしたことがある者も多いことでしょう。
この問題でも△ODBで右側と左側に分けて考えましょう。
右側は辺の比と体積の比の問題として解くことが出来ます。
左側は大きな断頭三角柱から小さな断頭三角柱を除くというやや高度な発想を用いることで体積の比を求められますね。
たしかに難問ではありますが渋谷幕張中合格を目指して努力を重ねてきた受験生にとっては捨て問ではありません。
なお、この問題では答えが1/2というきれいな数になってしまいます。
もしかすると思いつきで書いた数値が当たってしまった受験生もいたかもしれません。
答えだけを求める形式の入試問題を課している以上、偶然正解できてしまうような数値を答えにしてしまうと、受験生の学力を適切に測ることが出来ないのではないでしょうか。

総論

2025年一次の渋谷教育学園幕張中の算数はこのような出題となりました。
学校発表の受験者平均点は43.4点、合格者平均点は56.8点で、難しかった2024年の一次の受験者平均点37.7点、合格者平均点54.9点と比べると若干ながら取りやすくなったと言えるでしょう。
とは言え、首都圏のトップ生が集う試験で平均点が40点強というのは異常なまでの難しさと言えるのではないでしょうか。
この出題における合格ラインは半分の50点で充分です。

今度は50点を取るための戦略を考えてみましょう。
渋谷幕張中を目指す受験生なら誰でも正解できるような大問1(1)と大問2(1)で、まずは15点くらいを確保しましょう。
残り35点/85点なので、約4割です。
2025年一次は捨て問レベルの難問は無いので、自身の得意な分野からあと4問ほど拾うことが出来れば合格ラインに到達が可能です。
難度だけを見ると次に易しい4問は大問1(2)、大問3(1)(2)、大問4(1)
でしょうか。
ただ大問1(3)や大問2(2)(3)は書き出すだけで正解が出来るので、泥臭い解法を選択することも戦略としては有効でした。
たしかに難しい問題のセットではありますが、合格ラインの50点を超えるだけなら決して無理な話ではありません。

では今度は2026年以降に渋谷幕張中の合格を目指すための対策を考えていきましょう。
まずは通っている塾の最上位コースを目指して努力を重ねて、盤石な基礎学力を獲得することは必須です。
その上で渋谷幕張中の対策を講じていくわけですが、幸い出題形式は安定していて過去問との類似性も高めなので出来る準備は少なくはありません。
「この大問が苦手だなぁ…」という傾向があれば、該当するものだけを何年分も遡っていことは有効です。
あとは渋谷幕張らしい「カン」の働かせ方です。
平面図形の発想系の問題なら「たぶんこれが二等辺だろうな…」という視点や「長さを測って与えられた比率からカン」、場合の数や規則性なら「たぶんこれとこれが同じ」という発想、他にも「全部書き出してみる」「当たりそうな数値をとりあえず書いておく」など、「ずるがしこさ」まで身につけられると最後に「運」を引き寄せることも出来そうです。

自律学習サカセルなら正攻法の学力養成はもちろん、最後の最後には渋谷幕張で点数を掠め取れるような狡猾さまで指導します。
是非ともお気軽にお問い合わせください。

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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。
社長としても10年目。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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