この記事を書いたのは...
松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。
個別指導・家庭教師の自律学習サカセル
サカセルコラム
桜蔭中の国語分析(2021年) Column
言わずと知れた女子の最高峰の1つである桜蔭中。
倍率は高くないですが、難易度は非常に高いです。楽に進める道のりではないですが、少しでもお手伝いさせて頂ければと思います。
それでは桜蔭中の解説をしていきますね。
◆各種データ
受験者平均点 非公表
合格者平均点 非公表
想定合格点 7割程度
◆出題形式
試験時間50分 100点満点
◆大問2題構成
◆問題の種類(2021年度)
・漢字・語彙 18%
・記述 80%
・空欄補充 2%
国語の記述を出題する学校の中ではトップクラスに難しい学校です。
文章の全体を把握する能力が問われ、俗に言う「読めれば解ける」学校でもあります。
小手先の技術ではなく、根本的な国語力(読む力・解く力)を鍛えておく必要があります。特に説明的文章においては具体と抽象の読み分けが出来ているか否かで大きく得点に差が出ます。
また、記述の比重が大きく、論理的に物事を組み立てていく力が問われます。
ですので、記述の書き方をしっかり固めておき、「この記述はこの型だから、これとこの要素が必要!」と設問を読む段階で方針が立てられるように訓練をしておくとスムーズに解くことができるでしょう。
漢字・知識の比重は少ないですが、文章内で当たり前のように難しい言葉が出てきますので、最低限の語彙力は身に付けておく必要があります。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
解答例はこちら
漢字の出題です。
丁寧に書き、しっかり取りきりましょう。
心情の記述になります。
背景→きっかけ→気持ち→行動反応 を主軸に書いていきましょう。
※通常の説明的文章の記述としてもかけますが、ここでは分かりやすいので心情記述をもちいます。
傍線部②を行動反応と置きます。そして「なぜ」と問われているので、【きっかけ】【背景】【気持ち】の順番で探して行きましょう。
【きっかけ・気持ち】
これは雑草に心が惹かれる理由です。
傍線部②が抽象的な文であり、その直後から具体的な内容が続き、傍線部③の直前の部分が抽象的な文になっています。
よって傍線部③の1〜4行前の部分「しかし、人間が〜羨ましくもあるのです。」が要素になることがすぐに分かります。
よって〈雑草は人が作ったルールや固定観念にとらわれずに生きており、それが痛快で羨ましい〉が直接的な理由になります。
※この抽象、具体、抽象の構造は説明的文章を読む上での基本のきの字であり、非常によく出てくるので、しっかり抑えましょう。
【背景】
では次にもう一つの理由である傍線部①のついて考えていきます。
なぜ心を惹かれるのか。
傍線部①の後ろは雑草の話題に切り替わっており、意味段落が異なっています。よって傍線部①の前から探しましょう。
すると、傍線部①の10〜14行前に書いてありますね。
「こうして、人は〜ないでしょうか。」
です。
ここから〈人は周りの人が作った「らしさ」に影響され、「本当の自分らしさ」を見失い、違いに苦しむこともある〉が背景の情報として挙げられます。
あとはまとめていきましょう。
なんですか問題の記述になります。
「戦わずに勝つため」に「何」をすれば良いのか。この答えとなる要素を探します。傍線部③の直前は雑草の意味段落になるので、傍線部③の後ろを見ていきましょう。
すると、傍線部d〜中略の部分にその答えが書いてありますね。
ここをまとめていきます。
〈数多く戦ったこと〉〈ナンバー1になれるオンリー1のポジションを見つけたこと〉が「戦わない戦略」に繋がることが分かります。
ここで〈ナンバー1になれるオンリー1のポジション〉が分かりにくいので、もう少し詳しく考えていきましょう。
まずナンバー1とは1位のことです。そしてオンリー1とはただ1つだけという意味です。そして、中略の1行後に「苦手なところで勝負する必要はありません。」とあります。
これらから、〈ナンバー1になれるオンリー1のポジション〉とは〈自分が負けずに生き残れる自分の得意分野〉であると分かります。それを見つけ、その分野で戦うことが重要なわけですね。これは文章の最後にも同様のことが書かれています。
以上をまとめていきましょう。
X
オオカミを使って「何」を言いたかったのかという、なんですか問題の記述になります。
これはオオカミの内容がが具体例になりますので、その具体例の前後にある抽象的な文を探し、要素としましょう。
すると、中略〜傍線部bにかけて筆者の伝えたい抽象の部分が読み取れます。
傍線部bの1〜2行前の
「本当のところ〜しまいがちです。」
が筆者の言いたい部分ですね。
これをまとめていきましょう。
Y
お次はモモンガです。
これもXと同じように探します。すると、文章の最後に大きな抽象がありますね。
傍線部eの7〜10行後の
「勉強は得意なこと〜大切なのです。」
が要素となります。ここをまとめていきましょう。
漢字の出題です。
丁寧に書き、しっかりと取り切りましょう。
語彙の問題です。
「水と油」となります。
この表現を知らなかったとしても、文脈から「相性が悪い」という意味であることは掴めると思います。そうであれば、水と〇〇となった場合、水と仲が悪いものとして油が挙げられるのではないでしょうか。
空欄補充の問題です。
直前に「同じ犬とは思えん。」とあり、主人公の飼う柴犬とアフガンハウンドという犬を比べ、別の生き物であるかのように表現しているのが、いもようかんと【イ】というわけです。
柴犬=いもようかん(和菓子) であるならば
アフガンハウンド=(洋菓子) であるのが自然ですね。
また、どちらも犬であるということから形は同じであることも留意しましょう。
そうすると、四角形の形をした洋菓子が適切であると考えられますね。
カステラやガトーショコラを書きましょう。
心情記述です。
背景→きっかけ→気持ち→行動反応 を主軸に書いていきましょう。
まず傍線部A・Bは行動反応に当たります。そして「なぜ」と問われているので、【きっかけ】【背景】【気持ち】の順番で探して行きましょう。
※見つけやすい順です。
きっかけ:直前を見ればすぐに分かりますね。
「ほな塩でもしょうゆでも〜高血圧になったらええわ」
と〈主人公の学校の給食に対しての軽口に対して真紀が本気で否定をしてきた〉ことがきっかけに当たります。
背景:ここでは真紀ちゃんとの今までの関係のことです。気心の知れた友人であればこれほどのショックを主人公は受けていないですよね。では真紀とはどういった関係であったのかしっかり本文から拾っていきましょう。
まず、傍線部Aから23〜22行前やその他にも繰り返し書かれているように主人公は真紀ちゃんのことが苦手であり、真紀ちゃんも主人公のことが苦手であるとあります。
そして、そんな2人の関係は傍線部Aの12行前にもあるように「古い橋みたいにぐらぐらしとった……」わけですね。つまり、〈お互いが苦手であると感じながらも、口には出さず微妙な均衡を保っていた〉のです。
気持ち:最後に気持ちを考えていきましょう。
まず傍線部A・Bの行動反応から気持ちがマイナスであることは分かると思います。
そして、前述した【背景】と【きっかけ】から〈思いもよらぬ真紀の言葉に精神的に動揺している〉様子が読み取れます。
あとは上記の要素を繋げて書いてみましょう。
これも同じく心情記述です。
背景→きっかけ→気持ち→行動反応 を主軸に書いていきましょう。
まず傍線部Cは行動反応に当たります。そして「なぜ」と問われているので、【きっかけ】【背景】【気持ち】の順番で探して行きましょう。
きっかけ:まずは前後を探していきましょう。すると直前に書いてありますね。
友人であるミーヤンに真紀のことを愚痴っていたところあるアドバイスをもらっています。
傍線部Cから15行前「どうにもならん〜時間の無駄や。」
傍線部Cから11行前「そや。馬が合わへんちゅうのは〜だれにでもおるねん」
傍線部Cから1行前「どっちがええとか、あかんとかの話ちゃう」
などですね。
ここから〈真紀との相性の悪さは生まれつきの相性の問題であり、どちらが良いとか悪いとかではないとはっきり言ってもらえた〉ことがきっかけとなります。
背景:通常であればきっかけより前に書いてあることが多いですが今回は直後に書いてあります。直後を見ていくと
『親や先生に話したら「人を嫌ったらあかん」とか、「ええとこ探したれ」とか言われるやん。〜困っとるねん。』
と書いてあります。
よって、〈真紀のことは嫌いであったが、人のことを嫌ったりしてはいけないと教わってきたため、なんとか良いところを探そうとして困っていた〉が背景になります。
気持ち:上記の背景ときっかけから気持ちを考えていきましょう。
主人公は困っていた状態でした。そこに友人から困る意味はない、と諭されます。
よって、〈悩みから解放され、気持ちが楽になった〉などとまとめましょう。
心情変化の記述です。
前の気持ち→きっかけ→後の気持ち
を記述の主軸として書きましょう。
また、読点の打ち方に注目して、という条件がありますね。出題者の意図を考えることが必要です。
前の気持ち:これは問4や問5を解いていれば分かりやすいですね。
〈真紀との関係が上手くいかず悩んでいた〉などが良いでしょう。
きっかけ:ここでは傍線部Dがそのまま要素になっていますね。
傍線部D「頭でなかでなんどもくりかえしとるうちに」とありますので、〈馬が合わへん、という言葉を何度も繰り返していると〉となります。
後の気持ち:これも下線部Dがそのまま要素になります。
下線部D「みるみる元気になってきた」とあります。また、読点の打ち方にも注目すると、
「〜うちに、なんや、うち、みるみる〜」
とぶつ切りになっていますね。ここから段階的に(徐々に)元気になっていった様子が読み取れます。
ですので、〈徐々に馬が合わないという言葉に納得がいき、気持ちが楽になっている〉わけですね。
これも心情の記述になります。
背景→きっかけ→気持ち→行動反応 を主軸に書いていきましょう。
傍線部Eは行動反応にあたります。
そして「なぜ」と問われているので、【きっかけ】【背景】【気持ち】の順番で探して行きましょう。
きっかけ:これは直接の描写はないですが、空欄イの3行前に「散歩で会うたび、ガーッて〜おこっとるもんな。」とあることから飼い犬のタロとクリストファーは相性が悪く、喧嘩をよくしているわけですね。
よって〈飼い犬のタロの喧嘩〉がきっかけになります。
背景:傍線部Eの15行前から場面が変わっているとは分かりましたか?
ここからミーヤンからのアドバイスの後、スッキリはしたものの、傍線部の15〜10行前にあるように、未だに腹が立つことがよくあるわけですね。
よって〈ミーヤンからの助言をもらった後も真紀とのギスギスした関係は続いており、腹を立てることがよくある〉くらいで良いでしょう。
気持ち:そして最後に気持ちです。
なぜ高度な会話が通じない犬に対してこのようなことをしているのでしょうか?
ここが大きなヒントになります。
それはつまり、飼い犬に伝えるというよりも自分に言い聞かせているのです。
ミーヤンからのアドバイスを言葉にしてまとめることで、心を整理しているのですね。
よって〈飼い犬のタロに対して語りかけることが、自分に言い聞かせることに繋がり、自分の気持ちを整理している〉わけです。
全体を通して、文章全体の把握の力や論理的な思考力が問われており、非常に良い問題でした。
大問1に関しては、悩める思春期を迎える子供たちに対しての助言となるような内容でした。本文は綺麗に具体と抽象に分かれており、見分けがしっかりと出来ていれば読みやすかったと思います。また、記述の要素もほとんど抽象部分に書いてあるので、読み分けさえ出来ていれば、そこまで苦労しなかったと思います。
一方、「出題者、作者の意図」を考える形で出題がなされているので、相手の気持ちを考えることが出来ないと苦労したかもしれません。
大問2に関しては、これまた悩める子供にはもってこいの題材でした。
文章の内容も読みやすく、問題自体も心情の記述の書き方を理解していれば、要素を集めるのは難しくなかったはずです。
読み方、解き方、双方が求められる非常に良い問題だったと思います。
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松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
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もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。