算数の想定合格点 84点
受験者平均点 73.4点
合格者平均点 88.5点
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首都圏屈指の男子進学校である海城中。
2020年の東大合格者数は59名で全国トップテンに入り、また医学部合格者数も非常に多いことで知られます。
また、ただ大学合格実績が高いだけではなく、実体験を通した学びや、論文、発表などの機会も多く、大学受験という枠にとどまらない真の学力を養成する機会も数多く用意されていることも魅力です。
アクセスの良い山手線内の学校としては校舎の広さも有数で、多くの中学受験生が入学を熱望しています。
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ここからは2020年の第1回の海城中の算数の問題を通し、どうすれば合格点を取ることが出来たのかを考えていきましょう。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:差がつく問題なので、出来れば正解しておきたい
×:やや難度が高く、出来なくても仕方がない
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
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大問1
(1) 〇
基本的な計算問題です。
0.875などを分数で処理することで、計算結果も整数となりました。
確実に正解すべき問題です。
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(2) 〇
食塩水の基本問題です。
解答例では10gの水を先に除いて、天秤で求めました。
食塩の量に注目してのつるかめ算でも良いでしょう。
いずれにせよ必ず得点することが求められます。
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(3) 〇
角度の基本問題です。
●×それぞれの角度が求められなくても、和に注目することで答えを導くという発想は当たり前のように使いこなしましょう。
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(4) 〇
比の基本問題です。
もとの赤と白を⑤と③と置いても良いですし、赤を15と置いて考えても良いでしょう。
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(5) 〇
アとイそれぞれの面積は求まらなくても、共通部分を足すことで具体的な面積を求められるという、どのテキストにも掲載されている典型題です。
ここまでの大問1は、かなり易しい問題が並びました。
海城中受験生ならば、確実に満点を取っておきたい内容でした。
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大問2
(1) 〇
1から6のカードが1枚ずつしかないことに注目して、普通の順列の問題として処理しましょう。
間違える要素はありません。
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(2) 〇
4年生のテキストにも載っているような基本問題です。
解答例のように、まずは600台、500台などで絞り込み、そこから詳細を詰めていくと良いでしょう。
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(3) 〇
こちらも倍数条件の典型題です。
「各位の和が3の倍数」という基本に沿って、丁寧に調べていきましょう。
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大問3
(1) 〇
様々な線が引かれていると考えにくいので、必要な箇所だけ取り出してみましょう。
全体の三角形から周囲の3つの三角形を除くだけの問題です。
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(2) △
どこの相似に注目するかで、いくつかの解法が考えられます。
解答例ではFHを延長して相似を作る、いわゆる「角出し」で求めましたが、(3)とのつながりを考えると、△RFGと△RHSの相似で考えた方がスムーズだったかもしれません。
いずれにせよ相似への習熟が問われる問題でした。
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(3) △
こちらも様々な解法が考えられます。
解答例では△PQHから△SRHを除くと考えました。
(2)を正解できているならば、合わせておきたい問題です。
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大問4
(1) 〇
2人の進んだ距離の和を線分図で把握すると、はじめてすれ違ってから再びすれ違うまでの40秒で、2人合わせて1往復分進んだことが分かります。
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(2) 〇
Aが800m進む時、Bは750m進むから、速さの比は16:15と求まります。
秒速は少し汚い数字になりますが、分数で処理することで手間をかけずに正解に至ることが出来るでしょう。
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(3) 〇
(2)を利用し、最後の50mのBの速さを求めましょう。
こちらも分数で処理することで、時間をかけずに正解に至ることが可能です。
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大問5
(1) △
多くの受験生が苦手とする変則時計算です。
基本に立ちかえって、長針・短針が1分間にそれぞれ何度回転するかを、まずは整理しましょう。
その後も基本通り「●時ちょうど」の状況を基準として差が何度小さくなったかを考えましょう。
数値になじみは無いものの、発想はごく基本的な時計算です。
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(2) △
0時をスタートとして初めて90°になる時を求めましょう。
その後は長針と短針の進んだ角度の差が180度になるごとに、長針と短針の作る角の大きさが90度になることを利用し、解答例では等差数列として解きました。
もちろん「1時間に2回ずつあるが、●時ちょうどの場合は重複するから除く」と考えても良いですが、答えがズレやすいので気を付けましょう。
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(3) △
(1)の設定を用いて、普通の時計算として処理しましょう。
今回は「4時ちょうどの時、短針は長針より180°前にいる」⇒「16分で長針は短針に126°近づき、差は54°になる」⇒「その後、54°追いつき128°離す時を求める」と考えていくと良いでしょう。
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大問6
(1) 〇
水槽の問題に見えますが、立体の切断の問題です。
(1)は△CGHを底面、FGを高さとする三角柱の体積と考えましょう。
確実に正解する必要のある問題です。
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(2) △
「向かい合う平行な面の切り口は平行」という鉄則に基づき、前後もしくは左右の平行を利用し、解答例のようにHからDに向かって2cmの点を通ることを確認しましょう。
また求める体積は四角形EFGHを底面とする四角柱を平面で切ったものなので、高さの平均を利用できると良いでしょう。
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(3) △
(2)と同じく「向かい合う面の平行」を前後の面で利用することで、FからGに向かって4.8cmの点を通ることを確認しましょう。
その後はABの延長線とEFの延長線の交点に注目することで「大きな三角錐から小さな三角錐を除く」として求めることが可能です。
もちろん相似比と体積比の関係を用いても良いですが、今回はあまり計算量の省略にはつながりません。
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このような出題がなされた2020年の第1回の海城中の算数は、受験者平均点が73.4点、合格者平均点が88.5点という、やや高めの得点水準となりました。
捨て問が無かった点と、例年と比べて場合の数の問題が易しかった点が、平均点を押し上げる要因になったものと考えられます。
今年度は全20問で、〇の問題が13問、△の問題が7問という構成だったので、合格のためには〇で12/13、△で2/7の合計14/20、すなわち7割が一つの基準になったと言えるのではないでしょうか。
ただ全体として易しかったこともあり、算数が得意な受験生にとっては満点を目指すことが出来る出題です。
2021年以降に海城中の合格を目指す受験生の皆さんは、この出題なら間違い直しをしたら満点を取れるような学習を重ねましょう。
なお例年の海城中では、目新しい設定の問題や、調べ上げを伴う場合の数が足止め問題として配置されることが多いです。
また解答のみが求められ、部分点は与えられない出題なので、過去問を通して、どんな場合には粘り強く取り組んで、どんな場合には思い切って後回しにするのか、自分なりの判断基準を設けておきましょう。
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