サカセルコラム

麻布中の理科分析(2023年) Column

過去問分析

麻布中の理科分析(2023年)

2024.01.30

問題の内容・形式ともに例年通り、麻布らしい出題でした。
科学の読み物としても楽しめ、問題を解きながら理解も深まるだけでなく、読解力・科学的思考力・記述力を測れる出題になっていて、これを毎年作る麻布の先生には尊敬しかありません。
計算問題が例年よりやや多く時間的にハードだったかもしれません。
穴埋め形式で当てはまる言葉を考えさせたり、選択させたりしていく誘導問題が多い学校ですが、今年もたくさん登場しました。
テーマは今までに出題されたものと重複するものも多く、過去問を解き込むことがいちばん有効な対策であることは間違いありません。

出題

[1]生物

感覚神経と身体の反応を考えさせる問題。
高温・辛み・痛みは同じ感覚神経によって伝えられることから、人体でどのようなことが起こるか?を読解と穴埋め誘導で考えていく問題でした。雑学的な読み物としても楽しめる内容になっています。
内容も分かりやすく、ここでつまずいた受験生はほとんどいなかったのではないかと思います。

[2]地学

遠くの天体の動きを考える問題
問1~問3で視差の問題が登場しましたが、この「視差」は麻布中でとてもよく登場していて、そこから毎回色々なテーマに発展していきます。
問4以降は、遠くにある天体は視差が小さいので奥行きが分からない→遠くの天体(ガスのかたまり)の実際の動きと見かけ上の動きを誘導によって求めていく計算問題でした。
ガスが実際に動く速さと、光が進む速さを混同しないように考えるのがポイントで、やや難しかったと思います。

[3]物理

電磁石を使ったマイクとコンデンサーを使ったマイクを考える問題。
電磁石タイプのスピーカー/マイクは以前も登場していますが、コンデンサーを使ったタイプは初めてで、きれいにリニューアルされていました。
問5がポイントになっていて、ここを理解できないとその先は難しかったでしょう。

[4]化学

水の温まり方から考える熱量(カロリー)と食品の熱量(カロリー)を考える問題。
比較的平易な読解計算問題だったと思います。
問2の前のリード文の内容がやや難しいかもしれませんが、そこができなくても問6以降は解けるので、うまく拾うことが重要になるでしょう。

どの問題を親しみやすく感じるか/難しく感じるかは、受験生個々でかなり違うと思います。取りやすい問題を見つけて得点できるスキルを身につけていってください!
楽しんで解けると強いです!

解説

問題の分類
知:知識問題
考:思考問題
誘:誘導問題
計:計算問題
問題のレベル分け
〇:絶対に取りたい
△:この中から半分以上取りたい
×:捨てても可

[1]生物

問1 考 知 〇

水が水蒸気になるときに温度が下がるものを選ぶ。

解答 ア、オ

問2 考 読 記 △

額や胴体によく汗をかく理由。
額と胴体の共通点を考えるのがよいでしょう。額→脳を冷やすため、はすぐに思いつくのではないでしょうか?
はじめのリード文に「人間の脳は熱に弱い」とあるのもヒントです。
胴体(胸、背中)は…胸は心臓と肺、背中は背骨とその中にある神経でしょうか。
この共通点はざっくりと「大事なところ」でよいでしょう。

解答例 脳や心臓など、体の大事なところを冷やすため。

問3 読 考 誘 〇

空欄に当てはまる言葉を考える問題。
辛さと(あ)の情報は混同して脳に伝わる
    ↓
問2の後のリード文10~13行目に
感覚神経は、高温・辛み・痛みの3種のどの刺激を受けても区別せず
カプサイシンを舌で感知すると「熱い・辛い・痛い」と感じ
と書いてありますので「熱さ」と入れるのは難しくないでしょう。

汗の効果で体が(い)ので、暑い日にすっきり
汗の効果を考えればよいので「冷える」でしょう。 

解答 あ 熱さ い 冷える

問4 読 考 記  〇

辛い料理を食べても汗をかかないようにする工夫
下線部②より、高温・辛み・痛みの刺激が重なると脳に伝わる刺激が大きくなる
とあります。
辛い料理は大抵温かいですから、高温と辛みが重なって刺激が大きくなってしまいます。

辛い料理を食べるのですから辛さをなくすわけにはいきません。
    ↓
熱さをなくせばよい、と考えられます。

解答例 冷たい水を飲みながら食べる。

問5 読 誘 考 〇

日焼けをしたときのことを考える問題

33℃は(あ)より低い
これは「体温」とすぐにわかるでしょう。
常に熱さだけでなく(い)も感じることになる。

問2の後のリード文13行目に
皮ふで感知すると「熱い・痛い」と感じます。とあります。
   ↓
熱さととともに「痛み」を感じることが分かります。

日焼けをする
   ↓
熱さ感じる感覚神経が体温以下で反応するようになる
   ↓
常に熱さと痛みを感じるようになる

日焼けをしたときに皮ふがひりひりと熱く・痛くなることが説明されました。
面白いですね。  

解答 あ 体温 い 痛み

問6 読 考 〇

今度は冷点の問題。25℃以下の温度を感知する感覚神経がないマウスA
表1より 正常なマウスは 20℃より30℃を好むことが分かります。→オ
     マウスAは 20℃と30℃に同じくらいの時間滞在した ことと
           25℃以下の温度を感知する感覚神経がない ことから
     マウスAは20℃と30℃を区別できない と考えられます。→イ

解答 イ、オ

問7 読 考 △

約25℃以下の温度を感知する感覚神経はメントールにも反応、本来冷たくなくても冷たいと感じる
ア、イの前半 体が冷やされたと感知→〇
ウ、エの前半 メントールによって体が冷やされ→実際に体が冷やされたわけではないので×

後半は、冷やされたと感知
     ↓
お風呂で本当は体が温まっても温まったと感知されない
     ↓
   汗が出ない → ア        

解答 ア

[2]地学

問1 考 〇

視差(右眼で見たときと左眼で見たときの見え方の違い)の問題は麻布の定番です。
左眼で見たときは棒と矢印の間隔が狭く、右眼で見ると間隔が広く見えます。              

解答 左眼 エ 右眼 ア

問2 考 誘 〇

棒が遠くへいくとxもyも小さくなります。両方とも小さくなるので差も小さくなります。
左右の像の違いで奥行を測っているので、この差が小さくなると奥行が分かりにくくなります。

解答 a ア b ウ c オ

問3 考 誘 〇

文の最後に「遠くの物体の奥行をつかめる」
とあるので、奥行きをつかめる条件にすればよいでしょう。さかのぼって考えていきます。
奥行をつかみたい
      ↓
左右から見える像が異なるようにする
      ↓
xとyの大きさの差を大きくすればよい→bはエ
      ↓
左右の眼よりも間隔の広い2つの場所から見ればよい→aはイ

解答 a イ b エ

問4 考 誘 計 (1)〇 (2)〇 (3)△ (4)△

(1)AB間の距離が18光年、ガスのかたまりの速さが0.9光年/年なので
18÷0.9=20(年)               

解答 20(年)

(2)AH間の距離
zが60度なので、AB:AH=2:1
AB=18光年なので、AH=9光年      

解答 9(光年)

(3)BCとHCの距離が等しいので、A→Bにかかる時間とA→Hにかかる時間の差を求めればよいことは分かるでしょう。
ポイントは
A→Bはガスのかたまりが動くのにかかる時間
A→Hは光が進むのにかかる時間
というところです。問題文にも書いてありますが気付けたでしょうか?

A→Hを光が進むのにかかる時間は
距離9光年
光が進むのにかかる時間なので9年 となります。
よってかかる時間の差は
20-9=11(年) になります。       

解答 11(年)

(4)問題の誘導にしたがって考えましょう。
(3)で答えた時間(11年)の間にガスのかたまりはH→Bに動くように見えるので
HBの距離÷11年 を求めればよいことになります。
HBの距離は
AH:HB=1:1.7、AHは9光年と求めてありますから
HB=15.3光年 です。
よって、15.3÷11=1.39…→1年あたり1.4光年

解答 (1年あたり)1.4(光年)

問5 考 計 △

問4で求めた解き方を使って、zが30度のときのガスのかたまりの見かけの運動を求める問題。問4を理解していれば解けます。
自信があればもちろん解いてほしいですが、問4の時点でよく分からない…という状態なら捨ててもよいでしょう。
AB=18光年で、z=30度なので
AB:AH:HB=2:1.7:1=18:15.3:9

まず、ABをガスのかたまりが動くのにかかる時間は問4と同じなので20年
AHを光が進むのにかかる時間は15.3年
見かけ上HBを動くのにかかる時間は20-15.3=4.7年
HBの距離は9光年なので
9÷4.7=1.91…→1年あたり1.9光年      

解答 (1年あたり)1.9(光年)

問6 難 考 △

問4と問5が正解できていれば
30度:1.9、60度:1.4 なので、イ・エは×

zが0度のときBとHが重なってしまうので、ガスのかたまりは見かけ上動かない→速さは0
zが90度のとき
HB=AB=18光年
これを動くのにかかる時間は20年
よって見かけの運動の速さは
18÷20=0.9  1年あたり0.9光年
これを満たすのはオになります。

これはかなり難しい問題です。選択問題なので空欄にしてはいけませんが、あまり時間をかけない方がよいでしょう。

解答 オ

[3]物理

問1 考 記 ○

電池とスピーカーをつなげたままでは音が出ない理由。
音=振動です。また、「つなげたまま」がヒントです。
電池とつなげると膜がへこみますが、そのまま止まってしまい、膜は振動しません。
電流を流す/切るを繰り返したり、電流の大きさを細かく変えたりすれば膜は振動します。

解答例 膜が振動しないから。

問2 考 知 ○

これは選びやすいでしょう。音=振動なので、エです。
問1が分からなかった受験生も、ここで気付けるのではないでしょうか。

解答 エ

問3 考 読 誘 ○

直前のリード文に
マイクの膜を押す→スピーカーの膜が出っ張った
マイクの膜を引く→スピーカーの膜が引っ込んだ
とあります。
また、図2から電流の向きが変わるとスピーカーの膜が逆向きに動くことが分かります。
よって
マイクの膜が(a 振動する)と、スピーカーに(b 向きが変わる)電流が流れ、スピーカーの膜が(c 振動し)、音が出る。
となります。               

解答 a ア b オ c カ

問4 考 読 ○

より電気をためられるコンデンサーの問題点。
実験1から、Bの方が多く電気をためられると分かります。Bの方が大きいコンデンサーです。
また、樋の直前のリード文に金属板の面積が大きいほど多くの電気がためられます、とあります。
よって「コンデンサーが大きくなってしまう」ことが問題点だと分かります。

解答 ウ

問5 考 読 誘 △

実験2より間隔が近い方が多くの電気をためられます。
よって、間隔を近づけるとためられる電気の量が(a 増え)ます。
ためられる電気の量が増える→電気がコンデンサーの(b 外から入ってくる)ことになります。
コンデンサーに電気が入っていく向きを選ぶので(c ←の向き)になります。 

解答 a ア b ウ c カ

問6 考 読 誘 (1)△ (2)△

(1)金属板の間隔をはなしたので問5とは逆向きに電流が流れます。→ですね。

解答 イ

(2)問6の前のリード文に「コンデンサーの充電中スピーカーの膜は出っ張っていた」
とあります。
問5はコンデンサーに電気が入っていっていたのでコンデンサーは充電中でした。電流の向きは←ですね。
今回はその逆向きに電流が流れますから、膜は引っ込むことになります。  

解答 エ

問7 考 記 △

コンデンサーマイクが小型化できる理由
ダイナミックマイク(図3)と図7を比較してみましょう。
ダイナミックマイクには小型化が難しい部分があります。磁石とコイルです。
特にコイルはある程度の巻き数が必要なため、小型化は難しいでしょう。

解答例 磁石とコイルをつけなくてよいから。

問8 考 記 △

コンデンサーマイクを使用するには電源が必要な理由
問6から、コンデンサーを充電する向き(←)に電流が流れるとスピーカーの膜が出っ張り
逆向き(→)に電流を流すとスピーカーの膜が引っ込むことが分かっています。
つまり、電流の向きを変えることで膜が出っ張ったり引っ込んだりして振動し、音が出るのです。電源をつないでおかないとコンデンサーを充電する向き(←)に電流を流すことができません。

解答例 コンデンサーを充電する向きにも電流が流れるようにするため。

[4]化学

問1 計 ○

カロリー(cal)=水の重さ(g)×温度変化(℃)
33000=1000×□
温度変化は33℃
20+33=53(℃)              

解答 53(℃)

問2 考 読 計 △

ブドウ糖分子1個の重さが出ていないのが少し難しいところです。
ブドウ糖分子:水分子=10:1なので、ブドウ糖分子=10g、水分子=1gとおいて考えてみましょう。
ブドウ糖分子は
360÷10=36(個) あると考えることができます。
2個ずつつながるので麦芽糖分子は
36÷2=18(個) できます。
麦芽糖分子が1個出来るたびに水分子が1個とれるので
水分子は18個とれ、その重さは
1×18=18(g) になります。

よって、麦芽糖分子の重さは
360-18=342(g) になります。       

解答 342(g)

問3 考 読 計 △

問2で出来た麦芽糖を燃やしたときにはブドウ糖360gを燃やしたときに出る熱に
水分子がとれたときにたくわえられた熱が加わります。
ブドウ糖180gを燃やすと669kcal
ブドウ糖360gなので669×2=1338kcal
水分子18gで24kcal
今回とれた水分子はちょうど18gなので、たくわえられた熱は24kcal
よって、麦芽糖342gを燃やしたときに出る熱は
1338+24=1362(kcal)
麦芽糖1gあたりは
1362÷342=3.982…→3.98kcal

解答 3.98(kcal)

問4 考 読 計 ○

グリセリン:脂肪酸:水=92:284:18 とあるので、そのまま
グリセリン分子=92g、脂肪酸分子=284g、水分子=18gとおいて考えましょう。
グリセリン分子は92gなので1個
脂肪酸分子は 852÷284=3個
これを合体させると1個の油脂ができます。
このとき水分子が3個とれるので
18×3=54(g) 軽くなります。
92+852-54=890(g)

解答 890(g)

問5 考 読 計 △

グリセリンの発熱量+脂肪酸の発熱量+水がとれてたくわえた分の熱量を考えます。
グリセリン92g→406kcal(そのまま)
脂肪酸284g→2516kcal
852g→2516×3=7548(kcal)
水分子3個→24×3=72(kcal)
406+7548+72=8026(kcal)
これは油脂890g分なので、1gあたりを求めると
8026÷890=9.017…→9.02kcal

解答 9.02(kcal)

次のリード文で炭水化物1g、脂質1gあたりの発熱量が4kcal、9kcalと示され、求めた値が正しいことが確認できるようになっています。

問6 考 読 誘 計 a○ b○ c○

aはサービス問題ですね。
タンパク質 7.0g 
1gあたり4kcalなので 4×7=28(kcal)
脂質 8.1g
1gあたり9kcal 9×8.1=72.9(kcal)
炭水化物 9.7g
1gあたり4kcal 4×9.7=38.8(kcal)
28+72.9+38.8=139.7(kcal)
b 「210gあたり」と書いてあるのにタンパク質、脂質、炭水化物の重さを足しても25g程度しかありません。重さの大部分を占めているのは…水!です。エネルギーの計算に含めないことからも確認できます。
c 水がほとんど…牛乳かスポーツドリンクです。タンパク質と脂質がかなり入っていることから、牛乳と判断できます。

解答 a 139.7 b 水 c ウ

問7 考 記 △

食塩相当量はエネルギーを計算しない理由
エネルギーとは、それを燃やしたときに出る熱量です。リード文に何回も登場しています。
食塩は燃えません。よってエネルギーは0です。

解答例 食塩は燃えないから。

問8 計 考 △

食物繊維の発熱量はタンパク質、脂質、糖質の発熱量を求め、全体のエネルギーから引けば求められます。
437-(4×11+9×22+4×47.5)=5(kcal)
食物繊維は2.5gなので1gあたりは
5÷2.5=2(kcal)
解答 2(kcal)
食物繊維を食べたときのエネルギーが少なくなる理由
食物繊維…なんとなく固そうなイメージがあるでしょうか?もしくは、食べたときに筋のようなものが感じられたり。ゴボウあたりがイメージしやすいと思います。
この食物繊維、ヒトの消化酵素では消化できないのです。なので、ヒトの体内を素通りしてしまってエネルギーになりません。ただ、腸内にいる細菌はこれを分解できるので、細菌が分解したものをもらってエネルギーにすることはできます。素通りしてしまったり、細菌自身が使う分もあるため、ヒトがエネルギーとして得られる量は少ないのです。
もちろんここまで詳しく書く必要はありません。
「消化されにくい」と書ければ十分です。

解答例 食物繊維は消化されにくいから。


にほんブログ村にも参加しています。ぜひ下のバナーをワンクリックで応援もお願いします!

関連記事

齊藤弥生

この記事を書いたのは...

齊藤弥生

指導歴 約25年

個別指導講師/家庭教師→日能研講師→個別指導講師/家庭教師
結果の確実性と生徒や一緒に組んだ算数講師に合わせる柔軟性で重宝される。

理科が好き。仕事を通して理科好きを増やすのが野望。
そのためにテストで数字を上げる、合格に導くといった仕事はそれをいちばんにしている講師以上のレベルを目指している。
個人の趣向はあるので、理科の内容自体にあまり興味が持てない子に対しては「好きではないけど点が取れる科目」を目指す。こういうものが好きな人もいるんだな、と多様性を感じてもらえればさらにうれしい。

趣味は坂巡りと買い物。坂や崖の写真を撮っているとたまに怪しまれるため、マニアな行動をするときはなるべくオシャレをして出かけます。

同じ筆者の記事を見る

人気の記事