サカセルコラム

市川中の算数分析(2025年 第1回) Column

過去問分析

市川中の算数分析(2025年 第1回)

2025.04.13

受験者平均点 55.5点
想定合格点  60 点

かつては県立千葉や県立船橋が傑出した合格実績を残す、いわゆる「公立王国」だった千葉県の教育界ですが、ここ30年で情勢は大きく変化しました。

最大のトピックが渋谷幕張の驚異的な躍進であることは言うまでもありません。

ただ市川の共学化からの超進学校化も千葉の受験勢力図に大きな影響を与えています。

近年は東京大学への合格者数が千葉県内では渋谷幕張に次ぐ2位に輝く年度も増えてきて、千葉県を代表する進学校として確固たる地位を築き始めています。

進学実績だけではなく、明るく活気のある雰囲気や、様々な分野で結果を残す課外活動も人気で、自律学習サカセルが位置する世田谷区から通学する生徒も少なくはありません。

幕張メッセで実施される第1回の入学試験は「中学受験の風物詩」とも言える一大イベントで、毎年2000人を超える難関校志望者が鎬を削っています。

出題は首都圏難関校では珍しい100点ずつの均等配点が特徴で、各科目で基礎知識はもちろん、思考力や作業力まで問われる高度な出題で知られています。

ここからは2025年の市川中の第1回の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格ラインを上回ることが出来るのかを見ていきましょう。

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:正解できる生徒は少数、捨ててしまっても差し支えない

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇

基本的な計算問題です。
分数⇔小数の換算を意識して、丁寧に計算しましょう。
求まった答えを□に代入し、確実に正解していることを確認できると安心ですね。

(2) 〇

食塩水の基本問題です。
今回はAとBの「食塩の重さ」が同じであるという条件に気を付けましょう。

(3) △

段に分けて考える、いわゆる「スライス法」の典型問題です。
基本的には上の段から順に考えていきますが、今回は切り始めや切り終わりの長さが分数になってしまうので、きちんと数値を記入して検証することが重要です。
なお解答例では前列・中列・後列と分けて考えることで処理量を減らしました。

(4) 〇

「速さと時間の逆比」の習熟度を問う良質な基本問題です。
はじめのAとBの具体的な速さが与えられていることを手掛かりに、順を追って考えましょう。

(5) 〇

「平面図形と比・相似」の良問です。
まずは与えられた長さを記入し、次に平行を利用して同じ角度に同じ記号を記入すれば、様々な相似・合同に気づくことが出来ます。

難しくはないですが算数の教材としても得られるものが多い問題でした。

大問2

(1) 〇

一見するとニュートン算っぽいですが、規則を利用する和と差の文章題です。
(1)は結局「60分で何人増えたか」と「60分で何人減ったか」を考えるだけで正解できますね。

(2) △

30分+20分の「50分で60人減」が周期になります。
周期を2回繰り返した10時40分に残りが80人になり、次の周期の途中で並んでいた人がいなくなることが分かります。
3周期の150分で180人減⇒あと20人、と安直に考えないよう気をつけましょう。

(3) 〇

10時の時点で、はじめの200人+追加の3人×30分+10人×20分+3人×10分の合わせて520人が入場したことが分かります。
あとは基本的なつるかめ算として処理できるので(2)よりも易しいでしょう。

大問3

(1) 〇

一般的な中学受験の入試問題としてはあまり課されない「推理と論証」ですが、独特な出題で知られる市川中では散見されるテーマです。
(1)は問題のルールの確認程度なので易しいでしょう。

(2)(ⅰ) 〇

(1)と同レベルの確認問題です。
月曜日に国語が2時間あることに注目すれば、難なく正解することが出来ますね。
ここまでは満点に近いペースで解き進められた受験生も多かったのではないでしょうか。

(2)(ⅱ) ×

水木金の3日間の時間割が白紙なので、方針が立てにくい問題です。
ただルールに沿って条件を記入していくと「水曜日は算算国社の並び替えを考えるだけ」「木曜日と金曜日は4時間目が理科で1,3時間目が算数と確定する」など、かなり絞り込むことが出来ました。

とは言え試験時間中に気づいて解ききることは難しいでしょう。
捨て問と判断して問題ありません。

大問4

(1) △

PQRがそれぞれ何秒ごとにもとの位置に戻るかを考えましょう。
PとQは1周ごとなので易しいですが、Rは左右の円それぞれを1周するごとに元の場所を通っているので、注意が必要です。

(2) ×

「角速度」で考えると状況を捉えやすいでしょう。
Qは45°/秒で回転するので、42秒後は5周と2秒⇒90°進んだ時、つまりBから真下に4cmの場所にあることが分かります。

ただここからは「コンパスの使用は1回以下」という不慣れな制約があり「合同な三角形を見つけて利用する」という発想も要するので、正解できなくても問題ありません。

(3) △

まずは2024秒後の位置関係を捉えましょう。
この後のQとRの角速度は等しいので、平行を利用して角RQBが160°になるのが何秒後か分かります。
あとはPが何度進んだかを求めるだけですね。
設定は長大ですが問題の難度自体は高くはありません。

大問5

(1) 〇

約数の個数が偶数個か奇数個かで条件が変わるので「おそらく平方数に注目するんだろう」と思いながら手を動かして調べてみましょう。
確かに平方数を境目に偶数・奇数が入れ替わっていることに気づくことが出来るでしょう。

(2) △

(1)で気づいた規則に注目し、平方数ごとに改行してみると「1までに1個、4までに2個、9までに3個…」というように、個数は三角数が鍵になっていることに気づきます。
100以下の最大の三角数は1から13までの和の91なので、13×13=169の9個後の数だと考えることが出来るでしょう。

易しい問題ではありませんが、難関校を目指す受験生なら正解しておきたいところでした。

(3) ×

「0が何個⇒素因数分解して5が何個」は定番の発想ですね。
あとは(1)(2)で気づいた「平方数」「偶数・奇数」に注目して丁寧に調べましょう。

捨て問レベルではないですが、最後の問題で作業量も多いので、正解にたどり着くことは容易ではありません。

総論

このような出題となった2025年の第1回の市川中の算数の平均点は男子が57.5点、女子が51.7点、全体で55.5点という結果になりました。

2021年や2024年のような高難度になることも珍しくはない市川中の算数としては若干ながら易しめといったところでしょうか。

例年と比べて点数が取りやすかった要因としては

「大問3(2)(ⅰ)までが例年以上に易しかった」

「難問も受験算数の範疇の問題で、これまでの努力や対策が活きやすかった」

「異常なまでに作業量が多い問題が見られなかった」

ことが挙げられるでしょう。

「普通の難関校の入試問題」という印象の強かった2025年第1回の市川中の算数は、2026年以降に市川中合格を目指す生徒はもちろん、他の難関校を目指す受験生にとっても参考になる出題と言えるでしょう。

かつてはその場で考える思考力・対応力重視の問題が目立っていましたが、ここ数年はトリッキーな問題が減り、そのぶん受験算数らしい難問が増えています。

市川中の対策が他校の準備にもつながる場面が今まで以上に増えることで難関校志望者にとっては受験しやすくなり、今後のさらなる競争の激化は必至。

千葉を代表する名門校を目指す皆さんを自律学習サカセルは応援しています。

市川中の算数分析(2024年 第1回)はこちら
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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。
社長としても10年目。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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