この記事を書いたのは...
松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。
個別指導・家庭教師の自律学習サカセル
サカセルコラム
聖光学院中の国語分析(2021年) Column
言わずと知れた神奈川の名門中である聖光学院。
その学力は神奈川県トップの座だけには留まらず、全国でも屈指であり大学受験の実績でも華々しいものを毎年残しております。
また、キリスト教(カトリック)のミッションスクールであり、キリスト教的教育理念を大切にしている学校でもあります。
本日はそんな聖光学院の国語の解説をしていきます!
◆各種データ
受験者平均 94.7点
合格者平均 105.1点
想定合格点 100点程度
◆出題形式
試験時間 60分 150点満点
◆大問4題構成
◆問題の種類
・漢字・語彙 10%
・記述 30%
・選択肢 60%
全体を通して、解き方というよりも読み方を重要視していることが分かります。また、設問の繋がりというものがあり、その意識も重要だと言えます。設問は理由を問う問題が多いのも特徴の1つだと言えます。
物語文では心情の捉え方を重要視しており、登場人物の【行動反応】や【きっかけ・背景】から心情を捉えられるかどうかを受験者に求めています。
記述問題でも【背景】の部分を書けるかどうかを重要視しており、ここで差がつくと学校側も明言しています。
説明的文章では、具体と抽象の読み分けや意味段落分けが重要であり、どこになんの話題が書いてあり、抽象と具体の位置関係を意識しながら、読みましょう。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
解答例はこちら
漢字と語彙の問題です。
難しい問題もあり、知識によって差が出たことでしょう。
語彙の出題です。
しっかりと正解したいところです。
心情の選択肢になります。
背景→きっかけ→気持ち→行動反応 を主軸に考えていきましょう。
傍線部①を行動反応と置きます。そして「先生の心情」と問われているので、探していきます。
気持ち:これは前後チェックをしていればすぐに分かりますね。
1行前と3行前に「喜ぶ」とあります。
きっかけ:ではなぜ喜んだのか。これも3行前に書いてあります。
火山の研究に付き合っていけそうな、目標のない暇な学生を見つけたからですね。
背景:これは人物像に当たります。火山の研究を心底素晴らしいものだと先生は考えています。
以上から選択肢はイが正解だと分かります。
アは「医学部を目指していた学生」が誤り。目標のない暇な学生を見つけたから喜んだんですね。また「今までになかった研究」も誤り。
ウは「励まそう」が誤り。
エは「多くの人の命を救おうという志」が誤り。
オは「心を揺さぶろうと」が誤り。そのような意図は読み取れないです。
心情の選択肢になります。
背景→きっかけ→気持ち→行動反応 を主軸に考えていきましょう。
傍線部②を行動反応と置きます。そして「学生の心情」と問われているので、探していきます。
気持ち:これは前後チェックをしていればすぐに分かりますね。2〜5行後から自分の人生を面白いものにしたいと考えていることが分かります。また、7〜8行後から「衝撃」を受けたことも分かります。
以上から選択肢はアが正解だと分かります。
イは「社会貢献」が誤り。そのような内容は読み取れませんね。
ウは『「火山の医者」にさえなれれば、家族に引け目を感じることなく』が誤り。
エは「労力をかけることなく」が誤り。
オは「どんな仕事にも価値を」が誤り。
どういうことですか、と問われているので言い換え・説明をしていきます。
ここで気をつけたいのが、下線部③から14行前までの部分は場面が異なっているということです。ジロのことを書いた回想シーンになります。
それを念頭に置いて考えていきましょう。
きっかけ:「頂上に立ち、深呼吸をする」がきっかけです。
また1行前を読むと「いろんな記憶と感情が蘇ってきた」とありますので、ここもきっかけに入れます。
言い換えを行うと「山登りをしていく中で、記憶と感情が甦り、自分を取り戻す」くらいが‘良いでしょう。
背景:飼い犬のジロが死んでしまったことです。愛情をそそいで育てた飼い犬が死んでしまい強いショックを受けていたわけですね。
気持ち:上記からプラスの気持ちに戻っていくことが分かります。
マイナスの気持ち→山登り→プラスの気持ち
という流れになります。
以上からウが正解と分かります。
アは「ジロが近くにいるような気持ち」が誤り。
イは「自分を犠牲にしてきたかが再確認」が誤り。
エは「先生や学生さん」が誤り。場面が異なります。ミスリードに乗らないように気をつけましょう。
オは「忘れることができ」が誤り。
心情の記述になります。
背景→きっかけ→気持ち→行動反応 を主軸に考えていきましょう。
傍線部④を行動反応とおきます。
きっかけ:これは簡単ですね。傍線部に「さっきの話、先生に言っちゃダメですよ」とあるので、ここまでの一連の先生の話を知られたくないわけです。さらに、「調子に乗るんで」とあることから、先生についての良い話なわけですね。
良い話とは傍線部②の1〜10行前にある通り、先生に対して尊敬の念を抱いていることとなります。
背景:これは少し難しいかもしれません。先生と学生の会話を追っていくことで見えてきます。傍線部②の4〜5行前や傍線部④の4行後にある通り、先生に対して軽口を叩いています。
ここから先生と学生はこういった軽口を叩けるほど仲が良いということが分かります。
決して仲が悪いわけではないので注意してください。
気持ち:では最後になぜ先生に対して尊敬の念を抱いていることが知られたくないのか考えていきます。
これは背景からも分かる通り、近い関係だからこそ、尊敬しているという気持ちを知られることが恥ずかしいわけですね。
以上を軸に記述を書いていきましょう。
心情の選択肢です。
前後をチェックしていきましょう。
傍線部⑤の2行後に
「目尻にしわを寄せて」
とあります。「な?」という問いかけの意味がわからない学生に対しての反応です。ここから気持ちが分かりますね。
自分の問いかけに対して相手が当然のように理解している思っていたら、意味が分かっていなかったので、このような反応なわけですね。
以上からイが正解と分かります。
心情の選択肢です。
問6の問題の続きとなります。
気持ち:傍線部⑥の1〜9行前を見れば気持ちが分かります。
山の魅力を子供たちに伝えなかったことを後悔しているとともに、それを伝えようと考えていますね。
きっかけ:先生の山の魅力を語る様子を見たことです。
これは傍線部⑤の部分ですね。
背景:家族との上手く行っていない関係が背景に当たります。
以上からオが正解になります。
これは心情の記述になります。
まず、「山小屋を譲る」を行動反応とします。
きっかけ:これは傍線部⑦の8行前に書いてあります。
古いカメラで写真を撮っている私、がきっかけになります。
背景:1行前に「商売っ気だけの連中には〜譲らんよ」とある通り、金儲けを第一に考えている相手には売る気はないと考えていることが分かります。
気持ち:傍線部⑦の7〜8行後に「あんたのカメラだよ〜つとまらんからね」とあるのでここから主人公のような古いカメラを大切に長く使っている人なら、山小屋も大切に使ってくれる、と考えていることが分かります。
以上をまとめていきましょう。
心情の選択肢です。
想像の内容が傍線部⑧の後に書いてありますので、ここを見ていきます。
また問7の続きにもなっています。
問7で山の魅力を伝えようと思い、そして伝えたという想像の中での話です。
きっかけ:傍線部⑧の直前の学生の様子がきっかけとなります。
学生の様子を見て、自分の息子だったら……という想像に入ります。
気持ち:傍線部⑧の後に気持ちが書いてあります。
そして、この想像から「息子との距離が縮まる」ことへの期待が読み取れますね。
以上からエが正解になります。
アは「一緒に山に登れば」が誤り。
イは「整えたさえすれば」が誤り。
ウは「一度山にさえ登れば」が誤り。
オは「信じている」が誤り。
語彙の出題です。
聖光学院ではお馴染みの形式ですね。しっかり取り切りたいです。
理由の問題です。
傍線部①の6〜8行後に
「自身が有利になれる」
「自身の将来の可能性」
「自身の成長するイメージ」
とあるのでここが書いてる選択肢を選びましょう。
よってオが正解になります。
イは「何事も動じない境地」が誤り。
ウは書いていないので誤り。
アとエは部分的に正解にはなりますが、オと比べると最もふさわしくないので誤り。
エは「誰よりも」も誤り。
理由の記述です。
傍線部の前後を追っていきましょう。
まず傍線部②の直前に傍線部④「これを常に意識している」の「これ」の指示内容が書いてありますね。
『「意外性」というものも、「面白さ」を誘発する要因、あるいは条件』
です。
では上記の内容の理由となる部分を考えていきます。
傍線部②の後ろを見ていきます。
すると、
傍線部②の1行後:「人間が未来を予測する」
3行後:「この行為自体が、人間の特徴でもある」
とあります。
以上からまとめていきましょう。
理由の選択肢になります。
前後を見ていきます。
すると傍線部③の後ろに理由が書いてあることが分かりますね。
1行後:「思考力や知性が要求」
3〜4行後:「突拍子〜変化する」
以上の部分が読み取れれば選べますね。
答えはエになります。
アは「偶然性に対して面白さ」が誤り。
イは「前向きに捉える」が誤り。
ウは「戸惑いを解消していくこと」が誤り。
オは「未知なる面白さ」が誤り。
「答え」の選択肢問題です。
不思議なものはなんですか、と聞かれているのでまずは傍線部④の前後から探していきましょう。
すると直前に
「両者は相反する条件なのに〜という点は、非常に不思議だ」
とありますので、傍線部④の直前がそのまま解答の根拠になります。
よって答えはウになります。
具体例の問題です。
「動物的である」の意味を理解すれば問題ないです。
もしくは具体例と同じものを探しましょう。
傍線部⑤の直後に「動物的」の具体例が書いてありますね。
ここを参照して選択肢を選びましょう。
よって選択肢はアです。
説明・言い換えの選択肢です。
傍線部⑥の言い換えを探していきましょう。
すると2行前から
「答が明かされたときに〜ちょっと方向がずれていた」
とあります。
ここからウが正解だと分かりますね。
アは「緊張感を味わえる場合にのみ」が誤り。
イは「高揚感を繰り返し味わう」が誤り。
エは「悔しさに、人は面白さを覚える」が誤り。
オは「難しい問題に挑戦する気持ちが刺激され」が誤り。
答えの記述になります。
突飛な面白さを感じる場合はどのような場合かを答えます。
まず、突飛な面白さについては傍線部⑦から最後にかけて書いてあります。
この中からどのような場合に人が面白いと感じるのかを探していきます。
すると、まず傍線部⑦の2行後に
「不意打ちに近いものだ。予測もしないところへ、全く違った方向から飛んでくるようなものである。」
とあり、その後に
『だが、人によっては「面白い」と感じる要因の一つとなりうる。』
と続くので、この部分が1つの要素となります。
次に、その後に比喩表現に関しての具体例が続きます。よって、具体が終わった部分の抽象が要素の可能性が高いので、そちらを見ていきます。すると、最後から5〜6行前に
「自分にそれが思いつけたか〜として評価される」
とあります。ここが2つ目の要素です。突飛な面白さを感じる場合が書かれていますね。
以上の2つの要素をまとめましょう。
全体を通して文章の把握する力や論理的思考を問う良い問題でした。
物語文では登場人物の背景までしっかり捉えられているかが攻略の鍵でしたね。人物像などを読む段階でチェックしておきたいところです。また、場面分けがしっかり出来ていないと間違えてしまう問題もありました。読む力で大きく差が出る良い問題でした。
説明的文章では理由を考えさせる問題が多く、苦戦された生徒さんもいたかもしれませんが、しっかり傍線部の前後を読んでいくこと、そして具体と抽象の意識が大切です。特に具体例が多く登場していましたので、抽象部分の把握という部分で差が出たことでしょう。
いずれにせよ、しっかりと文章を読む訓練を行うことが重要な問題でした。
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松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。