サカセルコラム

桜蔭中の理科分析(2022年) Column

過去問分析

桜蔭中の理科分析(2022年)

2022.09.09

【傾向】

30分で配点60点、大問は4問~5問、総問題数は40~50問程度です。知識、実験観察、思考、記述問題がバランスよく配置されています。難問はありませんが、優秀な受験生を選抜するために練られた問題が多い印象です。

出ない分野・単元はない

よく出題される単元はありますが、出ないと判断できる単元はない学校です。今年の大問Ⅰでは動物の分類の知識問題が出題されていますが、これは今までほとんど出題されていません。他にも、過去問では出ていない単元をポンと大問で出してきています。苦手単元を作らないことが重要です。

特別な解法知識は必要ない

力学や化学の計算問題はよく出題されていますが、原理を理解し、標準的な解法を知っていて日本語をしっかり読み取れれば解ける問題です。この「読み取る力」は桜蔭中にもっとも必要かもしれません。ここを見極めるためのテストに感じます。

一人で整理して考える計算問題が多い

溶解度が頻出の桜蔭ですが、把握しなければいけない情報や数値が多く、一般的な中学受験生はごちゃごちゃになって分からなくなってしまう、という問題がよく登場します。今年の大問Ⅱ、Ⅲもこれに近い問題です。情報を整理出来るしっかりした受験生を求めていることが分かります。

問題は簡潔

図やグラフ、問題文ともにとても簡潔で、必要最低限のものだけが提示されます。分かりやすく親切に説明してくれるような学校もありますが、その真逆です。

知識

特別に詳しい知識は出題されませんが、まんべんなく網羅しておく必要があります。

常識

今年はタオルを干す問題が出ました。一般的な常識があると楽に解ける問題です。中学受験の講師をしていると、力学の計算問題はとても得意だけれども10月の季節は分からない(暑さ寒さをあまり感じない/1年をサイクルでとらえられていない)というような子にはよく会います。小学生なので普通のことですが、もう少し大人に近い感覚を持っていた方が桜蔭中には有利です。

何かひとつ天才的な能力がある子ではなく、バランスの取れた、完成形に近い、大人っぽい受験生が求められています。実際、そういう子でないと桜蔭中学・高校で勉強していけないのでしょう。

入学者選抜試験として、とても有効は出題と感じます。

記述

今年の記述問題は簡単でした。例年はもう少し難しく、指定文字数が少なめなのが特徴です。受験生は桜蔭志望なので、書くべき内容は分かっていて、口頭で説明させれば十分な解答が出来ますが、文字数が少ないために苦戦します。簡潔に過不足なく表現する力が必要です。

トレンド

中学受験の問題にはどこかの学校が新しい良問を出すと他校も出してくる、といった流行がありますが、桜蔭もトレンドは押さえてきます。今年は大問Ⅱのガリレオ温度計がそれです。

模試にはトレンド問題がよく出るので、模試の復習はマストです。

頻出単元

溶解度、中和、気体、てこ、浮力、気象、流水のはたらき、生物の実験観察問題、発電所…がよく出ています。はじめに述べたようにすべての単元が出る可能性がありますが、上記の単元は得意にしておくとよいでしょう。

問題のレベルと分類は以下です。
〇:絶対に取るべき
△:この中で半分以上は取りたい
×:捨ててもよい

知:知識問題
考:思考問題
計:計算問題
記:記述問題

【解説】

Ⅰ動物の分類・発生

問1 〇 知

穴埋めの知識問題です。簡単なので全問正解したいところです。

解答 A精子 B受精卵 C関節 D筋肉

Cの関節は漢字の間違いが多い語句なので注意してください。×関接

Dの筋肉が少し思い浮かびにくいかもしれませんが「骨につながっている」や、先にある「からだを支えたり、動かしたりする」を読めば絞れるでしょう。

問2 △ 知 考

X ウ…メダカ(魚類)は一生えら呼吸/カエルとイモリは両生類なので成体になると肺呼吸・ハムスター(ほ乳類)は一生肺呼吸

Y ア…魚類と両生類は子の世話をしない/ほ乳類は子の世話をする

Z エ…冬眠するのは両生類・爬虫類のように変温動物で陸上で生活している動物と一部のほ乳類(ヤマネ、コウモリなど)です。

※クマは冬ごもりといって、穴の中で活動しているので厳密には冬眠ではありません。

上記のように、動物名そのままで考えるより魚類・両生類といった分類名で考えた方が分かりやすいでしょう。

カエルとイモリは両生類なので常に同じところに分類されますが、この2つが両方入っているので不安になるかもしれません。

桜蔭志望生はイモリ=両生類/ヤモリ=爬虫類は知っているはずですが、両生類2つってことはないだろうからイモリは爬虫類なのかも?と惑わされる受験生もいるかもしれません。しっかり生態を覚えていないと難しい/時間がかかってしまう問題だと思います。

解答 X ウ Y ア Z エ

問3 〇 知 

メダカの図で示されているので「えら」と分かるでしょう。ウーパールーパーはえらが外に出ている、という知識がある受験生もいるでしょう。

解答 えら

問4 〇 知 考

中学受験の大定番問題「ひだ状」ときたら「表面積」でしょう。

解答 イ

問5 △ 知 考

後ろ足にあたるものははらびれです。

もちろん知っていて答えた受験生がほとんどでしょう。

知らなくても、後ろ足→位置的にはらびれかしりびれ/足は2本なので2枚あるひれ→はらびれ と判断できます。

解答 う

問6 △ 考 記

ウーパールーパーがイモリに近いことはすぐに分かるでしょう。

えらに注目して判断する子が多いと思います。しかし記述で使う部位にえらはありません。えらとひれを混同してしまう受験生もいることと思います。

思考が浅いとはじかれる問題です。

よく見比べると足の出方と尾がイモリとウーパールーパーで共通していて、カエルは異なっていることが分かります。

解答 イモリ 前足が先に出ているから/成体になっても尾が長いままになっているから

字数制限はありませんが、解答欄はせまいので簡潔に書くことがポイントです。

問7 〇 知

これは簡単でしょう。子宮と胎児の図はヒトのものでしか見たことがない受験生がほとんどと思いますが、知っている用語は「子宮」「胎盤」「へその緒」しかないはずで、当てはめればよいです。                     

解答 く 子宮 け 胎盤

Ⅱ重さと体積・ものの浮き沈み

この問題を見たとき「うわ!出ちゃった」と思った受験生も多いのではないでしょうか。

桜蔭志望生なら受験までに1~2回は出会っているはずの、ガリレオ温度計。

流行の問題です。トレンドも押さえてくる学校です。

問1 △ 考 計

はじめから方針がたつ場合もありますが、そうでなくてもとりあえず分かることを書き抜きましょう。

グラフから43℃のところの値を読み取ります。

130㎤ 100g    容器は10㎤なので、下に書きます。

10㎤        エタノール10㎤の重さを出します。

100×10/130=7.692…

解答 7.7(g)

エタノールの温度が高いとき、体積は大きくなります。するとエタノール10㎤の重さは7.7gより軽くなります。よってこのおもりは沈みます。         解答 沈む

難しいところなのでもう一度。

温度が高くなる→周りの液体が膨張する→周りの液体の密度が小さくなる→おもりは沈む

問2 × 考 計

今年いちばん難しかった問題です。

問1を自信を持って解いた人は頑張り、そうでない人は時間をかけずに埋めればよいでしょう。

ただ、面白い問題です。

おもりは7.7g、7.8g、7.9g、8.0g、8.1gです。

3つが浮き、2つが沈んだので、7.9gまでは浮き、8.0gは沈んだことになります。

この2つを考えましょう。おもりは10㎤ですから

10㎤ 7.9g  グラフはエタノール100gの体積が出ていますから、100gを下に書きます。

   100g  エタノール100gの体積が求まります。

10×100/7.9=126.58(㎤)→グラフを見ると18℃くらいです。

同様に8.0gのおもりも考えます。

10㎤ 8.0g

   100g

10×100/8=125(㎤)→グラフ→7.5℃くらい

この間の温度になりますから、イの13℃です。

解答 イ

問3 〇 知 考 

エタノールの液体  100g 117㎤
エタノールの固体  100g 107㎤

同じ体積で比べると固体の方が重いことが分かります。

よってエタノールの固体はエタノールの液体に沈みます。

水は同じ重さで比べると固体の方が軽く、固体(氷)が液体に浮くことは知っているでしょう。

水は特別な物質であり、他の物質はほとんど固体が液体に沈むことを知っていて解く受験生も多いでしょう。                 

解答 ①ア ②エ ③イ ④ウ

記号で答えることもあり、ミスが出やすい問題です。

問4 〇 計

単純な計算問題です。

2mの鉄の棒 45℃↑で 1㎜のびる

25m     50℃↑  

1×25/2×50/45=13.88…(㎜) 小数第1位を四捨五入なので14㎜

解答 14(㎜)

両側にのびるから…と悩むこともあるかと思いますが、45℃のときの図を見ると一方をそろえていますので両側には0.5㎜ずつのびていることが分かります。

レールのすきまには両側からのびてきますので結局0.5×2=1.0㎜すきまが縮まることになります。結局この数値だけを計算すればよいことになります。

Ⅱの計算は比例の計算のみだったことにお気づきでしょうか?

もう少し解法知識が必要な年度もありますが、テクニックよりも原理の理解と整理の仕方で解けるような問題がほとんどです。

Ⅲ湿度

ここは湿度について理解していれば難しくない問題です。

問1 〇 考

室内のDは(あ)がない→風   庭と室内では日光(光)も考えられますが、庭のAは日かげになっているので、風に絞られます。

室内のDは(い)が低い→気温  庭のA23℃室内D20℃と書いてあるので簡単です

解答 (あ) 風 (い) 気温

問2 〇 考

タオルのもっともかわきやすい場所は庭の日なたの端に干してあるCです。

上から見た図になっており、タオルは線で表されています。

まわりに他のタオルが干してあるBはまわりの湿度が高くなるため乾きにくくなります。

もっとも乾きにくいタオルは室内で、さらに真ん中に干してあるEです。

解答 オ

解説のように考えてもよいですが、実体験で洗濯物の乾きやすさを知っていればさらに素早く、または自信を持って答えられるでしょう。

一般常識があるとラクに解ける問題です。

問3 〇 計

(ⅰ)ぬらして軽くしぼったタオルは151g、かわいたタオルは43gですので

ぬらして軽くしぼったタオルにふくまれている水の重さは

151-43=108(g) です。

(ⅱ)24時間後のタオルの重さは60gなので

タオルから部屋の空気中に移動した水の重さは

181-60=91(g) です。

解答(ⅰ) 108(g) (ⅱ) 91(g)

計算としてはとても簡単な引き算2問です。

【実験2】の手順が少し長いので、これが読み取れているかをチェックする出題でしょう。

問4 〇 計

20℃での飽和水蒸気量は1㎥あたり17.3g、部屋の容積は15㎥なので

17.3×15=259.5(g) 小数第1位を四捨五入なので260gです。

こちらの方が受験生にとっては慣れた問題でしょう。

ただ、四捨五入の指示を読み飛ばして259.5と答えてしまった受験生はかなりいそうです。注意力を求められています。                     解答 260(g)

問5 △ 計

(問4より)この部屋は最大259.5gの水蒸気をふくむことができますが、(問3より)タオルから部屋に移動した水蒸気は108gです。

よって、干しはじめたときにふくまれていた水蒸気量はこの差を求めればよいでしょう。

259.5-108=168.5(g) 小数第1位を四捨五入なので169gです。

解答 169(g)

24時間後、部屋の中の水蒸気が飽和状態になっていなければ求められない問題ですが、【実験2】の最後に明記されています。

問6 △ 計

干しはじめたときの部屋の水蒸気量は168.5g、部屋の飽和水蒸気量は259.5gなので

168.5÷259.5=0.649…小数第1位を四捨五入なので65%になります。

1㎥あたりを求めて

168.5÷15=11.23…

11.23÷17.3=0.649… と求めてもよいです。

解答 65%

問3から問6は誘導問題になっています。

【実験2】から必要な情報を探し出し、誘導に従って解いていけば難しくないはずです。

表やグラフではなく、文で情報が与えられる形式は、この学校ではよく登場します。

日本語をしっかり読み取れる生徒を求めているのが感じられます。

Ⅳ 燃焼・気体

問1 〇 知

酸素の性質

解答 ウ、カ

問2 〇 知

ろうそくが燃えてできる気体は二酸化炭素尾と水蒸気ですから、気体Aは二酸化炭素

二酸化炭素の性質

解答 イ、オ

問3 〇 知 記

鉄板は燃えないがスチールウールは燃える理由。

中学受験では定番の問題です。桜蔭志望生なら「表面積!」と即答でしょう。     

解答 酸素とふれあう表面積が大きいから

問4 △ 考

使いすてカイロについて

リード文の最後の方に使いすてカイロの説明が記されています。

ア、オ、キが正しい。

ア…内袋には小さな穴がたくさんあいていて、外袋から取り出すとすぐに鉄が空気にふれて温度が上がり始める。

この「すぐに」が気になるかもしれません。使いすてカイロが「すぐに」は温まらなかった経験があると悩むと思います。

ただ、イでは小さな穴のあいている理由が「中の空気が膨張して袋が破れるのを防ぐ」になっていておかしいですし、ウは論外です。

また、アの「すぐに」が「鉄が空気にふれて」かかっていると考えれば、おかしくありません。

オ、キは簡単に選べるでしょう。

解答 ア、オ、キ

問5 △ 考

グラフを見て考える問題。グラフだけで考えることがポイントです。

①カイロを振らずにそのまま置いておいたもの

②カイロをときどき振ったもの

ア~ウ…温度の上がり方についての選択肢なので、ここから1つ選びます。

最高温度に達するのは3分後くらいで、ここまでのグラフは重なっています。

よって「差はない」のウになります。

エの最高温度は、①②どちらも3~5分くらいのときの53℃くらいで重なっています。

よって×

オ、カ 高い温度が続く時間帯。

5分~24分くらいまでは②振ったもののほうが温度が高いのでカが正しい。

解答 ウ、カ

問6 △ 計

燃焼計算。情報が見つけにくい問題です。

グラフの右横の

「実験後の①の重さは実験前より5g重くなっていました」を見つけます。

この増えた重さはすべて鉄と結びついた酸素の重さですから、酸素の体積が出ます。

酸素1L 1.31g   結びついた酸素は5gなので下に書きます。

     5g

酸素の体積は

1×5/1.31=3.816…(L)

これが空気の体積の21%なので、空気は

3.816÷0.21=18.17…(L) 小数第2位を四捨五入なので18.2Lです

解答18.2(L)

問7 △ 考

ア~ウ①と②の重さ比較…②のときどき振ったほうは、よりたくさんの酸素と結びついたはずですからより重くなります。→ウ

エ~カ①と②の磁石の引きつけ方比較…リード文の最後に「①で、実験後は引きつけ方が弱くなった」とありますので、酸素と結びつくと磁力が弱くなると判断できます。

②はより多くの酸素と結びついているのでより弱くなると考えられます。     

解答 ウ、カ

ここで、酸化鉄は磁石につく、という知識があると混乱するかもしれません。

実は、酸化鉄にはいくつか種類があり、磁石につくものとつかないものがあります。

この問題では、リード文から酸素と結びつくと磁力が弱くなる、と判断できますから、それに従って考えればよいでしょう。


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齊藤弥生

この記事を書いたのは...

齊藤弥生

指導歴 約25年

個別指導講師/家庭教師→日能研講師→個別指導講師/家庭教師
結果の確実性と生徒や一緒に組んだ算数講師に合わせる柔軟性で重宝される。

理科が好き。仕事を通して理科好きを増やすのが野望。
そのためにテストで数字を上げる、合格に導くといった仕事はそれをいちばんにしている講師以上のレベルを目指している。
個人の趣向はあるので、理科の内容自体にあまり興味が持てない子に対しては「好きではないけど点が取れる科目」を目指す。こういうものが好きな人もいるんだな、と多様性を感じてもらえればさらにうれしい。

趣味は坂巡りと買い物。坂や崖の写真を撮っているとたまに怪しまれるため、マニアな行動をするときはなるべくオシャレをして出かけます。

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