サカセルコラム

駒場東邦中の国語分析(2022年) Column

過去問分析

駒場東邦中の国語分析(2022年)

2023.01.06

ああ、これ、ほんとすこ。
「マ?なんで?」
ワンチャンあるかもしれない。
森生えるわ。
「まぁ、ちょっとエモかったよね」
つらみが深すぎる

などなど、本文に「ネットスラング」が使われた文章が駒場東邦にて出題されました。

◆各種データ

合格者平均 83.8点
受験者平均 78.3点
想定合格点 80点(120点満点中)

◆出題形式

試験時間60分 120点満点

◆大問1題構成

大問1 小説文 約29問(小問数)

◆問題の種類(2022年度)

・記述 約17%(5問)
・選択肢 約31%(9問)
・抜き出し 約0%
・漢字 約52%(小問15題)

という割合になっています。

選択肢問題、記述問題を中心として、大問1題、超長文の小説文の出題となっています。

記述は例年5問程度の出題です。

麻布中同様、「長年にわたって出題傾向を変えない」学校です。

2022年度は、割と平易な漢字が15問。選択肢が9問。

選択肢の出題が昨年よりも多かったので、抜き出しの出題がなかったのではないかと思います。

記述では「理由」もしくは「気持ち」の形で「気持ちを問うタイプ」の問題が中心です。

また、登場人物の気持ちの「変化を問うタイプ」の問題もほぼ毎回出題されます。

「国語に苦手意識がある子でも、きちんと対策を積めば、勝負になる」学校と言えるのは相変わらずですね。

きちんとした個別指導や家庭教師の先生であれば、有効な対策を講じられる学校でしょう。

ここからは2022年度の駒場東邦中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。

○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題

大問1 小説文 相沢沙呼「教室に並んだ背表紙」

問1漢字 ○

平易ですので、全問正解したいところです。

「単行」のみ難しく感じるかもしれません。

問2語彙 ○

ここで3題ほど出題されています。

A「億劫に感じて」、B「参っちゃった」に関しては文を読まなくても取れてしまうかもしれませんが、
C「かまえて」に関しては(他の語彙の問題もそうですが…)波線部を含む一文をきちんと読むことが重要です。

「課題図書だって思うと、どんな感想を書いたらいいかかまえて読んじゃって、内容が頭に入ってこなくなるでしょう?」

「かまえて」に【身構えて】【固くなって】【緊張して】などの意味を入れられれば、答えを出すのは難しくないでしょう。

答えは、

A オ面倒くさく感じて
B ウ困ってしまった
C オ緊張して 

となります。

問3理由の記述 ○

あかねが「アイルーの返信」を「そっけない」と感じたのはなぜかを答える問題です。

背景→きっかけ→気持ちで書くと書きやすいでしょう。

直前のきっかけを拾うと、「彼女もこの番組をチェックしているからだった。すぐに語り合いたい。」とあります。

ここから【アイルーとすぐに語り合いたいと考えて連絡を取った】というきっかけを拾うことができます。

傍線部の後に「ごめん観てなかった」とあるので、

【(語り合えると思っていたのに、)期待を裏切られた】など、気持ちを当てはめられると良いですね。

あとは、背景で「アイルーと何を語りたかったのか」から【自分の見ていたネットテレビの番組】などとして、

背景【自分の見ていたネットテレビの番組について、】
きっかけ【アイルーとすぐに語り合いたいと考えて連絡を取ったのに、】
気持ち【期待が裏切られたように感じたから。】

としました。

問4選択肢 ○

あかねが「リビングで観るには、あそこはなんだか、広すぎるような気がして」と感じるのはなぜかを答える問題です。

傍線部の前の根拠(前根拠とします)は
「明るいリビングのソファに座りながら、おばさんと一緒にテレビを観て笑い転げてるんだと思った。」
「あたしは、もう長いことテレビを観た記憶がない。あたしの部屋にはないし」

から、【リビングでテレビを見ること=楽しいこと】【あかねは長い間、リビングでそういう経験をしていない】ことがわかります。

傍線部の後の根拠(後根拠とします)は
「お母さんもテレビを観ない」
「昔はそうじゃなかったのになと思った。お父さんがいた頃は、お母さんとお父さんに挟まれて、ソファに座っていた気がする。」

から【お父さんがいた頃、家族でテレビを見ていたときのことを思い出している】のがわかります。

前根拠と後根拠をどちらも満たしている、「一番マシなもの」はオです。

問5気持ちの記述 △

「風船が、しぼんでいくような感じがした」というのは、あかねのどのような気持ちを表すかについて書く問題です。

気持ちを聞かれているので、背景→きっかけ→気持ちで書くと書きやすいでしょう。

傍線部の前より、
「お母さんの眼が、じろりとこちらを向いた。」
「携帯の通信料、また高くなってるじゃない〜変な動画ばっかり見るんじゃないって」

ここから【お母さんに携帯電話の通信料について咎められた(「叱られた」「小言を言われた」あたりでも良いと思います)】というきっかけが拾えます。

傍線部の後より、
「だって、仕方ないじゃん。うち、誰もネットしないからワイファイないし。スマホがないと、だって。」という内容から、

お母さんに反発する気持ちが読み取れます。

ただ、今回は「風船がしぼんでいくような感じがした」を直す必要があります。

突拍子もなく「風船」が出てきています。これが「比喩表現」と気付ければ、
【(何かの気持ちが)すぼんでいく】という気持ちが読み取れるのではないでしょうか。

きっかけで拾った「お母さんの眼が、じろりとこちらを向いた。」の3行前に、
「その代わりみたいに、お母さんが大きく息をもらした」とあるので、「その代わり」の中身をチェックして、背景を拾っていきます。

「アイルーが観ているお笑い番組って、まだやってるんだろうか。お母さんは、そういうのって観るんだっけと、少しだけ考えた。それから、しおり先生が言っていた〜ジジツトリック?スイリ小説を読むなら、お母さんも知っているんだろうか。息をいっぱいスい込むみたいに、胸の中が膨れあがっていく。」

から、【お母さんとお笑い番組や推理小説のことを話そうという期待が高まっていた】として、

背景【お母さんとお笑い番組や推理小説のことを話そうという期待が高まっていたのに、】
きっかけ【携帯電話の通信料について咎められたことで、】
気持ち【そういった気持ちがすぼんでいき、失意に陥っている。】

としました。

問6選択肢 ○

「怪獣みたいに不細工な声をあげながら、ベットに飛び込んだ」ときのあかねの気持ちがどのようなものか答える問題です。

傍線部の後は*️⃣が入り、場面が切り替わっているので、その前を見るのが大切です。

「あたしは、なにか言おうとした。唇を開けて、でも、そこがとても震えて、だからなにも話せない。喉ににつかえて、キカンを押し上げようとして、なにかが溢れ出そうとするんだけど、それの正体がなんなのかわからない。モヤモヤとした正体不明のガス。あたしの身体に、それが溜まっている。なにか言いたい。でもよくわからない。三崎さんのときと同じだ。考えると、頭がこんがらがって、爆発しそうになる。」

ここから、◇【お母さんに何か言おうとするが、何を言うべきかがわからず、混乱している様子】が読み取れます。

「あたし、なにを言いたいの?唇を噛んで、それに耐えて、歯ぎしりしたときには、目が熱くて燃えるみたいだった。頬をぞわぞわ這っていくものを感じながら、あたしは叫んでいた。『おまえのせいじゃん!うるせえんだよクソババア!』」

ここからは、◆【混乱した状態のまま、お母さんに暴言を吐いている様子】が読み取れます。

◇と◆のどちらも満たすものを選び、答えはウです。

問7選択肢 ○

「アイルーが、不思議そうに言う」のはなぜかを答える問題です。

傍線部の前と後の両方から根拠を拾っていきます。

「教室の空気が変わった気がして、あたしは振り向いた。教室に、三崎さんが入ってくるところだった。彼女は唇をきゅっと結んで、うつむきカゲンで歩いていた。それを遠巻きに見たみんなが、くすくすと嗤い声をもらしている。近くにもれた小さな嗤い声に、あたしは眼を向けた。アイルーも嗤っていた。しばらく、あたしはアイルーを見ていた。」

ここから、
◇【教室に三崎さんが入ってきて、みんながばかにして笑うのと同じように、アイルーもばかにして笑う様子を私が見ている】
というのが読み取れます。

「また、モヤモヤした気持ちで胸がいっぱいになる。お母さんに怒られたときは、これがぱんぱんに膨れ上がって爆発したんだと思った。すっぱくて、そわそわして、むかむかする感じがした。あたしはアイルーになにかを言いたかったけど、なんて言ったらわかりみがあるって返してくれるかわかんなくて、結局それを伝えることができなかった。」

ここから、
◆【アイルーに何かを言おうとするが、何を言ったら相手に理解してもらえるのかがわからず、混乱している様子」】
が読み取れます。問6の◇とほとんど同じですね。

◇と◆のどちらも満たすもの…としたいところですが、「理由」を聞く選択肢というのもあって、傍線部の前から拾った根拠である◇を反映した選択肢が答えとなっています。

答えはイです。

問8選択肢 ○

「ここで◯◯しないとね」の◯◯に何が入るのかを答える問題です。

傍線部の前から根拠を拾うと、
「司書室の中は畳敷きだった。」
「どうしてこんなところに招かれたのか不思議に思っていると、先生はあたしの気持ちを見抜いたみたいに、いたずらっぽく笑って言う。『生徒の不正を手伝うんだから、ここで◯◯しないとね』」

ここから、
◇【どうして司書室に招かれたのかあかねは不思議に思っている様子】
◆【生徒の不正を手伝うんだから、に繋がるような表現】
であることがわかります。

◇と◆のどちらも満たす、エの「密談」が正解です。

問9記述 △〜×

しおり先生があかねを「騙」して、どのようなことをさせたのか答える問題です。

傍線部の前と後から根拠を拾っていきます。
「実を言うと、あかねちゃんは課題図書をもう読んでいるんだよ」
「あかねちゃんに貸したのは、ハードカバーの本だったでしょう。あの作品は、文庫本になるときに、題名が変わっているの」
「タンコウ本が文庫になるときにね、タイトルが変わることって、たまにあるんだ。〜あかねちゃんはもう課題図書を読み終えて、先生にたくさん感想を話しているってこと。あとは先生に話してくれたのを、箇条書きでいいから文章におこすだけ」

これらの内容から、
◇【文庫本になる時にタイトルが変わった課題図書を、あかねに伝えずに、読ませた】【課題図書を読んでいるという感覚を持たせないまま、読み切らせ、感想を言わせている】
ことがわかります。

さらに、

「課題図書だって思うと、どんな感想を書いたらいいかかまえて読んじゃって、内容が頭に入ってこなくなるでしょう? それより、すっごく面白い本だってオススメされて読んだほうが、なにも考えずにお話を楽しめるじゃない?」
ようやく理解が追いついて、あたしは半分だけ笑いそうになる。

これらの内容から、

◆【課題図書だと意識させると、身構えて内容が頭に入ってこなくなるので、それを伝えずに、とても面白い本だと勧められて読んだ方が、話を楽しめる】
という先生の意図がわかります。

◇と◆をどちらも反映させて、「しおり先生があかねにさせたこと」を答えます。

【課題図書だと意識させずに最後まで読ませ、自分なりの感想をたくさん言わせたこと。】

としました。

全ての内容を反映させるには抽象化が必要だと思います。△狙いで良いでしょう。

問10選択肢 ○

読書感想文に取り組むことで、しおり先生はどう言うことができるようになると考えているかを答える問題です。

傍線の前と後から根拠を拾っていきます。

「先生は、何枚かの紙を取り出して、ちゃぶ台に置いた。〜まっさらな原稿用紙だ。」

■【先生はまっさらな原稿用紙を取り出している】ことがわかります。

さらに、

「あかねちゃんは読書感想文を書くことが、自分の世界とは無関係なことだって言っていたけれど、たぶん、そんなことはないんだよ。あかねちゃんはさ、自分の気持ちや感情に説明がつけられなくて、モヤモヤしちゃうときってない?」先生は、まるで私の心を覗いたみたいに、やさしく笑う。「先生にもね、そう言う経験がたくさんあった。自分の感じていることをうまく整理できなくて、自分自身のことがわからないときがあるの。だから、誰かに伝えて聞いてもらうこともできない。そういうときはね、自分の気持ちをノートに書くの」
「そう。不思議なんだけれど、自分の気持ちを書き出そうとすると、自分の心を整理することができるのね。書いているうちに自分が感じていることとか、こんがらがっていた考えが綺麗にまとまっていく。読書感想文を書くことも同じなの。自分の気持ちを整えていくと、モヤモヤの正体が見えてくる。誰かに伝えることができるようになる。その練習になるの」

ここから、

◇【あかねが自分の気持ちや感情に整理をつけられなくて、モヤモヤするときがあることを先生は見抜いている。先生にもそういう時期があった。そんな時には自分の気持ちをノートに書くのをすすめられていること】

◆【自分の気持ちを書き出すことは自分の心を整理することに繋がる。書いているうちに考えがまとまってきて、モヤモヤの正体が見えて、誰かに伝えることができるようになる。それは読書感想文も同じである】

ということがわかります。

■と◇と◆を反映させて選択肢を選んでください。

答えはエです。

問11理由の記述 △〜×

あかねが最後の短編を気に入らなかった理由を書く問題です。

設問、傍線部に直接描写が書かれていないので、背景→きっかけ→気持ちで書くのが良いでしょう。

傍線の前と後から根拠を拾っていきます。
「自分のこころをかたちにしてくれる原稿用紙。自分でも分からない気持ちを整理して書き出すための場所。本当にそうなんだろうか。そんなの、意味があるんだろうか。わからないけど、モヤモヤしたものが、胸の中で膨らんでいる。」

ここから、
◇【自分でもわからない気持ちを整理して書き出す原稿用紙に対して疑問を抱き、モヤモヤしたものが胸の中で膨らんでいる】
ということがわかります。

さらに、

「あのお話は……。だって」いらいらする。腹が立つ。苦しさが溢れて、うめくみたいに言う。語彙力、ないから、うまく言えないんだけど。ぜんぜんきれいじゃないんだけど。「主人公の、女の子が、お母さんと仲良くて」〜うまく言えない。わからない。整理できない。
「あたしとは、ぜんぜん違って、だから」

これらから、
◆【主人公の女の子と母親と仲が良い話を読むと、自分と正反対の状況であることに、心がモヤモヤして、いらいらしたり、腹が立ったり、苦しくなる】
ことがわかります。

◇と◆の内容を、背景→きっかけ→気持ちにあてはめて、

背景【母親と仲が良い女の子の話を読むと、】
きっかけ【正反対の自分の状況を実感させられ、】
気持ち【負の感情で満たされるから。】

としました。

問12変化の記述 △〜×

あかねがここでお母さんに話をしようと思ったのはなぜか答える問題です。

「本文全体を踏まえて」とあること、設問に直接描写が載っていないことから気持ちの変化の記述ととらえられれば良いでしょう。

変化前→きっかけ→変化後で書くのが良いでしょう。

「それから、最後の短編にふれて、お母さんのことを書いていた。仕事が忙しくて、いつも家にいなくて、最後にあたしと遊んでくれたのは何年前だろうってこととか、だからこの主人公のことが羨ましいってこととかを。」
「この気持ちを、なかったことにしたくはないと思ったんだ。」

ここから、

変化前【仕事が忙しく、会話も、自分との思い出もない母に対して、寂しさや、そういう状況とは真逆の人間に羨ましさを感じることに、】

「伝えられるだろうか。伝わるだろうか。大丈夫、少しだけ、自分の気持ちのこと、整理できたような気がするから。」

きっかけ【しおり先生との会話の後、自ら感想文を書き、自分の気持ちに整理をつけて、気付くことができた。】

「言いたいことがたくさんある。知ってほしいことがたくさん。たとえば読んだばかりの小説の話とか、図書館にいる子どもっぽい先生のこととか、アイルーのこととか、教室で浮いちゃっている子がいて可哀想でどうしようって話とか、たまにはピザじゃないものを食べたいとか、それから、それから……。」

変化後【それにより、知ってほしいことや、自分の気持ちを母に伝えたいと言う素直な気持ちになったから。】

としました。

少々難しいと思いますが、「変化の記述」と気づくこと、気持ちの変化のきっかけが、しおり先生と感想文にあることに気付ければ、例年通りの「最後の記述」と言えると思います。

問13選択肢 ◯

点線の表現について述べたもので誤っているものを答える問題です。

×イ「自分で勝手に納得して物事を進めていく、あかねの性格」

→それだと自分の中のモヤモヤする気持ちに自分なりに決着がつけられるのでは…。

×オ「これは『涙』という言葉すら出てこない、あかねの語彙力のなさを伝えるものである」→久々に選択肢を見て笑いました。「差し出された原稿用紙に、なにかが落ちて」と書いたのは筆者であってあかねではないですよね…。

しおり先生と読書感想文によって、自分の中の「モヤモヤ」と向き合い、母と話をしようと考えたあかね。

主題としてそれが読み取れれば、比較的取り組みやすかったのではないかと思います。

ただ、読み取った内容を全て記述に盛り込んでいくのは難しいと思います。

記述問題以外の「客観系問題」、漢字・知識などの「努力が反映されやすい問題」がきちんと取れるだけで、入試本番の安定感は変わってくるでしょう。

特に、「客観系問題」については、自分なりの「読み方」「解き方」が構築されているかで印象は大きく変わると思います。


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増田 雄介

この記事を書いたのは...

増田 雄介

圧倒的な指導力、学校別の専門性の高さ、そして面倒見の良さを持つ自律学習サカセルの国語・社会の看板講師。

その驚異的な指導力を武器に、大手集団塾の開成中コースの国語担当や有名個別指導塾のリピート率1位の凄腕講師として活躍。
成績が本当に伸びる実戦的な指導に目を付けた自律学習サカセルからのスカウトを受け、満を持して文系科目の講師として指導開始。

個別指導の業界では指導力No. 1の呼び声も高く、逆転、順当のどちらの合格にも強く、生徒のレベルに関係なく指導できる幅広さを持っている。

生徒だけでなく、自分の子供の成長を見守るのが楽しみな一児の父でもある。
趣味はぽっちゃりの自分でも着られるファッションの構築。

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