受験者平均点 69.7点
合格者平均点 77.7点
想定合格点 70点
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埼玉県私立女子トップ校の浦和明の星女子中。
在校生の数も比較的少なく、過度な競争を強いることもない穏やかな校風ながら、高い大学進学実績を誇ります。
都内から通う生徒も少なくはありません。
中学受験においては、首都圏の女子上位生の前哨戦としての側面も強く、毎年約2000人もの受験生が挑戦しています。
各科目の入試問題も、中学受験に向けて努力を重ねてきた受験生の学力を適切に測ることの出来る質の高さで知られ、進学先としてだけではなく力試しの受験校としても高い人気を誇ることに頷けます。
さて、ここからは2024年第1回の浦和明の星女子中の算数の問題を通して、どのような戦略で取り組めば合格を勝ち取ることが出来たのかを考えていきましょう。
今回使用する指標
〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、後回しにしても問題ない
として1問ずつ見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
基本的な計算問題です。
分数で処理することで計算負担を減らしましょう。
確実に正解し、幸先の良いスタートをきりたいところです。
(2) 〇
易しめの比の文章題です。
容積が一定なので、速さと時間の逆比を利用して短時間で確実に正解しましょう。
(3) 〇
相当算の基本問題です。
全体を①とおいても、最小公倍数の(45)でおいても、どちらでも良いでしょう。
(4) 〇
食塩水の混合の基本問題です。
まずは3パーセントの食塩水400gに、0%の水を何g混ぜれば1.2%になるかを求めましょう。
無理に1つの図でまとめて解こうとせず、条件を分けて考えた方が得策です。
確実に正解しておきましょう。
(5) ア 〇 イ 〇
円を利用した角度の問題は、「中心から境目に補助線⇒二等辺三角形の利用」が定石です。
この問題でもセオリー通りに「二等辺」と「外角」で容易に正解することが出来ました。
(6) 〇
虫食い算の典型題です。
「Aは9倍しても繰り上がらないから1」
「Dに9をかけると1の位は1」
「Bは9倍しても繰り上がらない」
などから答えを絞り込んでいきましょう。
女子トップ生なら数分もかけないような短時間の試行で正解する必要があります。
(7) △
比の文章題と「両替」の複合問題です。
比の処理は浦和明の星女子中合格を目指す受験生ならお手のものでしょう。
両替に関しては、
「50円2枚を100円1枚に両替すると合計の枚数は1枚減る」
⇒「8枚減ったと言うことは、50円玉16枚を両替した」
と考えられると良いでしょう。
類題の経験があまりない受験生は少し手が止まってしまったかもしれません。
(8) 〇
円と正十二角形も中学受験生にとっては「常識」とも言える内容でしょう。
受験生の多くが30度の二等辺三角形⇒正三角形の利用と瞬間的に捉えられたはず。
ここまでの大問1は例年と比べても非常に解きやすかったと言えそうです。
大問2
(1) 〇
浦和明の星女子中の算数では、速さと比・ダイヤグラムの良質な難問が毎年のように出題されることが特徴です。
本年度も大問2で速さの問題が配置され、さぁどんな視点を求めてくるんだろう…と思っていたら。
(1)は線分図でも容易に整理できる基本問題でした。
電車が4分で何m進んだのかを考えれば良いだけなので、間違える要素はないでしょう。
(2) 〇
太郎が9時4分から9時16分までに何m進んだのかを考えましょう。
(1)と同様に、ほとんどの受験生が難なく正解できたことでしょう。
(3) 〇
(2)で求めた太郎の途中からの速さに注目することで、9時10分に何m地点で出会ったかが分かります。
特に比を用いる場面もなく、ダイヤグラムで整理する必要もない、拍子抜けするほど易しい大問でした。
大問3
(1) 〇
受験算数において数多く経験してきたであろう立体図形の「くり抜き」の問題です。
「重なりに気を付けて、くり抜いた図形を見取り図に落とし込む!」などと無理をせず、解答例のように、スライス法として段ごとに状況を捉えていけると良いでしょう。
(2) 〇
さすがに見取り図で捉えることは難しいでしょう。
(1)と同様、スライス法で段ごとに整理しましょう。
この大問3までは非常に易しく、少なくない浦和明の星女子中受験生がノーミスで辿り着くことが出来たのではないでしょうか。
大問4
(1) 〇
円周上の点の移動は「角速度」として「1秒間に何度進むか?」と考えると捉えやすいことが多いです。
今回もPを4°/秒、Qを1°/秒と設定して考えると良いでしょう。
1秒間に5°ずつ近づくので72秒ごとに重なることに注目しましょう。
(1)は易しいです、確実に正解しておきましょう。
(2) △
いったんペンを置き、右手人差し指と左手人差し指を点Pと点Qに見立てて、状況を視覚で捉えましょう。
1回目は点PがBを少し越えた時だと気づくことが出来るでしょう。
このタイプの点の移動の問題は2点が動いた距離の和や差に注目することが定番です。
今回は2点が動いた距離の「差が180°」になりました。
2回目は同じように指をグルグルしていても、意外に捉えにくいことでしょう。
Qが1周した時にもとに戻ることに注目して、周期の最後から戻って考えていけると良いですね。
このような「対称性を利用する」という考え方は、上位校を目指す受験生なら使いこなせるようにしておきたいところです。
(3) △
(2)と同じように指を動かして考えると良いでしょう。
Pの1周目では起こらないので、捉えにくさを感じた受験生も多かったことでしょう。
正確に動きを捉えられると、Pが1周と少し進んだ時に1回目の垂直になる状況が起こると分かります。
2回目に関しては(2)と同じように、後ろから戻って考えるという発想が適切でしょう。
女子トップ生でも正答率の差が大きくついたであろう問題です。
(4) △
(3)まで正解できていればサービス問題に近い難度です。
60°120°240°300°から正六角形の分割を連想することが出来れば、
底辺が等しい⇒高さの比=面積の比
として考えられるでしょう。
この大問4を完答できれば合格をグッと引き寄せられたと言うことが出来るでしょう。
大問5
(1) 〇
平方数の差に注目しましょう。
1,4,9,16,25,36…の差が3,5,7,9…となっていることから「何番目」に注目して、差が37になる平方数の組を見つけましょう。
作業量も決して多くはないので、最後の大問とは言え、確実に正解しておきたい問題でした。
(2) ×
今年度の浦和明の星女子中の最後の問題です。
まずは360-104=256=16×16から、もともと1辺16枚に正方形を並べたことが分かります。
その後の処理はやや題意が捉えにくい問題ですが、結局のところ「1辺何枚の正方形にしたら赤を使い切るか?」と考えましょう。
奇数の平方数の時に赤と青の枚数の差が1枚になることに注目すれば、正解に至ることも充分に可能です。
やや捉えにくい問題で、正解できなくても合否には影響ないでしょう。
総論
ここからは2024年の第1回の浦和明の星女子中の算数で、合格ラインに乗せるための戦略を考えていきます。
4科合計での合格最低点が199点であるのに対して、全受験者の4科総合での平均点は198.8点となっています。
2024年の第1回も例年通りに平均点が合格ラインになっているので、算数に関しては70点で充分に合格点に達すると言えます。
この70点に乗せるためには失点を6問以内に抑えることが目安です。
今回の出題では大問4(2)(3)(4)と大問5(2)の4問の難度が高かったので、これ以外での失点を僅か2問以内に抑えなければならないことを考えると、さすが女子トップ生の激戦と言うことが出来るでしょう。
なお2024年第1回の算数は合格者平均点が77.7点であるのに対して、受験者平均点は69.7点。
例年だと10数点の差がつく算数で、僅か8点の差しかついていないことは異例です。
やはり今回の出題はいつも以上に易しい問題と難しい問題の差が大きかったと言えるのではないでしょうか。
出題分野に関しては例年通りの構成ですが、いつもよりも「比の習熟度を問う」難問が少なかったように思います。
2025年以降に浦和明の星女子中への合格を目指す受験生の皆さんは、大問5(2)以外は充分に理解しておく必要があります。
また過去問を通して比の難問にも慣れておきましょう。
特に「ダイヤグラムと比・相似」は他の難関校にも通じる学習効果の高い問題が毎年のように課されているので、準備は必須です。
その他の問題も「中学受験の入試問題のお手本」と言えるような質の高い構成になっているので、教材として学習効果も高いです。
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