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海城中の算数分析(2022年 第1回) Column

過去問分析

海城中の算数分析(2022年 第1回)

2022.08.17

受験者平均点 71.5点
合格者平均点 85.1点
想定合格点  80点

海城中学校の2020年の第1回の算数の出題分析はこちら

首都圏男子トップ進学校の一角である海城中。

学習面の面倒見の良さに定評があり、大学合格実績も全国屈指です。

また「新しい紳士」を育てるという教育目標のもと、在校生や卒業生には真面目で実直な生徒が多く、社会に出てからも多くのOBが活躍しています。

中学受験においては各科目で「海城らしい」出題がなされます。

算数に関しては「場合の数」「図形」「速さと比」などが頻出分野で、個々の問題の難度も高めです。

また難関校には珍しく「答えのみ」が問われる出題で、部分点は与えられません。

丁寧な場合分けや調べ上げを伴う問題も少なくはないので、問題の取捨選択の判断力も合否を分ける鍵になります。

ここからは2022年の海城中の第1回の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを考えていきます。

今回使用する指標

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので、可能な限り正解したい
×:正解できる生徒は少数、後回しにする判断も有効

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇

基本的な計算問題です。

分数⇔小数の換算を意識し、確実に正解しましょう。

(2) 〇

(1)(1,2)(1,2,3)…と三角数を意識した群数列の基本問題です。

100番目は14組の9番目ですね。

こちらも確実に正解すべき問題です。

(3) 〇

食塩水の混合の基本問題です。

天秤でも面積図でも、自身の得意とする解法で確実に正解しておきましょう。

(4) 〇

ニュートン算の基本問題です。

1分あたりで減る量が分数になりますが、設定は典型題そのままなので、この(4)までは確実に完答しておきたいところです。

(5) △

回転移動を利用した角度の問題です。

錯角の利用、二等辺三角形の利用など、柔軟な視点を持って取り組みましょう。

もし発想が行き詰ってしまったら、いったん後回しにしてしまったほうが賢明です。

大問2

(1) 〇

辺BHを2通りの比で表して考える典型題です。

解答例のように左上、右下に延長することで相似を作る、いわゆる「角だし」と呼ばれる解法も、海城中合格を目指す受験生にとっては常識でしょう。

(2) 〇

平行四辺形BGDHが全体の1/2倍になっていて、その面積を(1)で求めた2:1:1で分けるという流れが良いでしょう。

(1)を正解できていたら、確実に得点しておきたい問題です。

(3) △

様々な解答方針が考えられる問題です。

解答例では、まずは△ABHを求め、次に△ABLを求め、その後△BEIを除くと考えました。

やや処理量が多いものの、海城中への合格を目指すならば勝負したい問題です。

大問3

(1) △

通過算とグラフの良問です。

グラフの変わり目が何を示すのかを考えて、2つのトンネルの位置関係を図で整理しましょう。

・10秒で160m⇒秒速は16m

・80mになる⇒10+5=15秒後⇒電車の「先頭」がトンネルBに入った

・30秒後⇒電車の「先頭」がトンネルBを抜けた

など、電車の「ある1点」に注目して丁寧に処理しましょう。

(2) ×

(1)の状況をもとに、列車の長さが200m・秒速が20mになった場合を丁寧に考えましょう。

注意すべき点が多く、完答はなかなか難しいものと考えられます。

時間もかかってしまう問題ですし、後回しにしても問題はありません。

大問4

(1) ×

丁寧な作業を伴う場合の数の問題です。

どこで曲がるかに注目し、樹形図で丁寧に処理すると良いでしょう。

特に対称性も利用できず、作業量も多いです。

解答のみを求められる海城中の算数においては、後回しにすると判断しても良いでしょう。

(2) △

(1)とは別の問題で、難度も決して高くはありません。

出来る限り遠回りするよう、手を動かしながら考えましょう。

こちらは感覚的に正解したい問題です。

大問5

(1) 〇

立体図形の切断の典型題です。

「同一平面」⇒「平行」⇒「延長」

のセオリー通りに丁寧に取り組みましょう。

「延長」を用いて大きな三角錐で考える発想は決して易しくはありませんが、直方体を1回切断するだけのよくある問題ですし、海城中合格を目指す受験生ならば正解しておきたいところです。

(2) △

(1)で数値を正しく記入できていれば難しい問題ではありません。

大きな三角錐の体積から左手前、右側の三角錐の体積を除いても良いですし、体積比の関係を用いて計算しても良いでしょう。

少々数値は煩雑になりますが、是非とも勝負したいところです。

(3) ×

上から見た時の対角線で切った時の切り口である長方形AEGCに注目し、切断面と直線CEの関係を捉えましょう。

解答例のように真上から見た図で切断面を把握できると正解のチャンスはあったことでしょう。

やや難度は高めの問題なので正解できなくても仕方がないですが、海城中合格を目指す受験生ならば解法を理解しておく必要はあるでしょう。

大問6

(1) 〇

「1回だけひっくり返されたもの」が黒色になります。

4の倍数は全て2の倍数なので、「2の倍数だが4の倍数ではないもの」の個数を求めましょう。

題意を把握できれば非常に易しい問題です。

(2) 〇

(1)と同じように考えます。

今回は「1回か3回ひっくり返されたもの」の個数を求めれば良いと分かります。

1の目が出た場合は全てのコインがひっくり返されるので結局、解答例のように「2と3の公倍数」と「2の倍数でも3の倍数でもないもの」を求めれば良いと分かります。

こちらも海城中合格を目指す受験生ならば正解しておきたい問題です。

(3) △

どのような状況なのか、やや捉えにくい問題です。

必ず奇数回ひっくり返すためには、要するに全ての目の出方でひっくり返せば良いと考えましょう。

1~6の公倍数のコインを求めれば良いと分かります。

このような出題となった2022年の海城中第1回の算数の出題は、

「合格者平均点が85.1点、受験者平均点が71.5点」

という、海城中としては標準的な難度となりました。

出題内容も例年の傾向に沿ったもので、難度が高かった問題も、大問3の「速さとグラフ」、大問4の「場合の数」、大問5の「立体図形」と例年通りです。

海城中の対策を重ねてきた受験生にとっては、比較的報われやすい試験だったと言えるのではないでしょうか。

算数における合格ラインとしては80/120点くらいが想定されるでしょう。

絶対に正解しておきたい〇の箇所で60点強になるので、そこから△をあと2~3問正解できれば合格です。

2022年第1回の海城中の算数の出題は例年の傾向を色濃く反映していたので、2023年以降に海城中合格を目指す受験生にとっても、非常に参考になる回次となりました。

海城中の算数は受験算数の総合力を問うバランスの良い出題で、対策を重ねることはどの学校にも通用する基礎学力の養成につながります。

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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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