2018年2月1日、開成中の入試が実施されました。
東大合格者数トップを独走する圧倒的な大学進学実績に加え、運動会などの多彩な(男くさい)学校行事で人間的にも大きく成長できる環境は、男子中学受験生の憧れとして中学受験界に君臨し続けています。
さて開成における算数の出題は、一般に「傾向がないことが傾向」と評されます。
たしかに開成の算数では平均点の大幅な上下はもちろん、出題数や出題内容も年度ごとに様変わりすることが当然と考えられています。
ただこの数年は
①「超長文問題で、適切な問題把握力と緻密な作業力を問う」
②「真新しい図形問題で、着眼点や柔軟な思考力を問う」
という、知識・発想・精度を高度に備えた受験生を選別する試験傾向が維持されていました。
平均点も低いため、合格のためには50/85のほぼ6割を目指し、基本問題を確実に拾った上で、難問で部分点をかき集めていくことがポイントと言えました。
多くの講師が、開成受験生に対して①②の対応力を伸ばそうと指導していたことでしょう。
ところが今年は受験者平均点が、62.0/85=約73%、合格者平均点にいたっては73.9/85=約87%という空前の高得点勝負となってしまいました。
出題構成も、ここ数年の「大型の大問が4つ」ではなく、大問は全部で3題、うち大問1が小問集合という2013年と同じ形式です(この年も合格者平均点が80%を上回る、基礎力重視の出題でした)
このように多くの受験生の予想を覆す出題だった2018年の開成において、どうすれば合格を果たすことが出来たのか、小問ごとに見ていきましょう。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えれば充分
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
逆比を利用したい計算問題です。
決して易しい問題ではありませんが、開成志望者なら確実に正解する必要があります。
(2) 〇
やや条件の細かい場合の数です。
赤が左端に来る場合で樹形図をかいて、3倍するのが良いでしょう。
(3) 〇
流水算と逆比の基本問題です。
初めて流水算を習う5年生への導入問題かと疑うような、基本的な出題でした。
(4) 〇
設定の数値が汚いものの、2つの容器の間でのやり取りに過ぎません。
食塩量の合計量が変わらないことに注目すれば、易しいです。
(5) 〇
展開図からもとの立体を考える灘で頻出のテーマです。
今回はベースとなる立体が立方体なので捉えやすいでしょう。
(6) 〇
正六角形分割の基本パターンで、落とせません。
来年以降、開成合格を目指す皆さんは、各辺の中点を結ぶ問題だけではなく、例えば「各辺を1:2で分ける点を結んで出来る正六角形ならどうなるか?」なども考えてみましょう。
(7)(ⅰ) 〇
平面図形と相似の頻出パターンです。
△AEFを取り出して、考えたい内容を絞り込みましょう。
アルファベットのAのような三角形に注目する発想は頻出ですね。
(7)(ⅱ) △
(ⅰ)の三角形から、さらに△AHKを除きます。
解法は(ⅰ)と同じではあるものの、やや計算量が多いので、ミスをしやすい問題です。
大問2
(1) 〇
3つの半円の半径の和がちょうど10mになります。
×3.14で整理するのは中学受験算数の基本ですね。
(2) 〇
1/7=0.142857・・・と循環するので、6個を1組と考えます。
1組の長さは84.78mなので、
2018÷84.78=23組・・・68.06m
68.06mは結局6個必要なので、
6×23+6=144個となりました。
計算量は多いものの発想は4年生レベルなので、開成合格のためには正解しておきたい問題です。
大問3
(1) 〇
連続数の和、等差数列の和の標準的な問題です。
今回は奇数個なので、真ん中がちょうど整数になることを利用しましょう。
もし方針が立たなかったとしても、少し調べるだけで確実に正解できる問題です。
(2) △
(1)と同じく、連続数の和に関する問題です。
まずは積が100になる組み合わせをかき出し、奇数個の場合を考えましょう。
また偶数個の場合は真ん中が、~.5となります。
積が200になる組み合わせを考えても、積が100になる組み合わせを2で掛け算、割り算して探してみても良いでしょう。
書き出して見つけることも不可能ではありません。
(3) ×
(2)と同じ方針で、積が300になる組み合わせを書き出したうえで、奇数個の場合と偶数個の場合で調べ上げましょう。
手間が多い内容なので、完答は難しいかもしれません。
部分点は確実に拾い集めましょう。
・・・という訳で今年度の出題は、小問で13個となりました。
〇が8個
△が4個
×が1個
なので、やはり非常に得点しやすい出題だったと言えるでしょう。
合格の目安は〇で8/8、△で2/4、×は0/1、ここまでで10/13=約77%=65/85
あとは部分点で5点ほど稼いで、70/85は取りたいところです。
ただ、このような基本事項中心の出題でも、受験者と合格者では約12点という明確な得点差が生じています。
基本的な知識があり、焦らず正確に取り組める生徒が合格を勝ち取ったと言えるのではないでしょうか。
算数だけが特化してできるという受験生よりも、4科目バランス良く学習している生徒が欲しいというメッセージなのかもしれませんね。
来年以降、開成を目指す受験生の皆さんは、くれぐれもこれが開成の算数だ!とは思わないようにしてください。
平成28年や平成29年のような出題にも対応できるよう、中学受験の最難問レベルまで演習を重ねておきましょう。
中学受験の一講師としては、平成21年や平成24年のような、各大問のテーマが明確で、難度のバランスも良い出題に戻ることを、開成に期待しています。