浅野学園中学の特徴や傾向分析、2018年の算数分析はこちら
浅野中。
「神奈川御三家」の一角である難関校です。
他の2校(栄光学園、聖光学院)とは違い、特定の宗教に基づく学校ではありません。
部活動に参加する子が多く、「文武両道」を地で行く生徒が多いことでしょう。
また、補欠繰り上げの際、算数>国語>理科>社会の高い順で、得点が高い生徒から合否が決まるという変わった特徴もあります。
理数系の合格実績が高く、学校側もそういう生徒を広く求めているという現れなのでしょう。
◆各種データ
受験者平均点 69.6点
合格者平均点 79.3点
想定合格点 75点(120点満点中)
◆出題形式
試験時間50分 120点満点
◆大問3題構成
大問1 漢字の読み書き(10問)
大問2 文学的文章(小説文) 約8問
大問3 説明的文章(論説文) 約8問
◆問題の種類
記述 約10%
選択肢 約50%
抜き出し 約5~10%
漢字 約30~35%
という割合になっています。
選択肢問題を中心とした大問3題構成の形式となっています。
2015年度までは100字記述が出たり、作文が出たり、漢字の大問を最後に持ってきたりと細かい変更を多く取り入れる学校という印象でしたが、2016年度~2021年度は上記の通り、選択肢中心、記述は30字程度のものが全体を通して2~3題という形式で固定されつつあります。
また、8ページ~9ページ分が素材文になっており、50分で解くにしては文章の量は多めであると言えるでしょう。
選択肢は「消すべきひっかけ」を入れ込んで、ひっかけさせる設問が多いので、文章をつかんだうえで「×の箇所」を確かめるというのが有効です。
都度、選択肢のどの箇所が×なのか確認しながら解けると正答率がUPするでしょう。
ここからは2021年度の浅野中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
解答例はこちら
大問1 漢字 ○
書きが8問、読みが2問の毎年10問の出題です。
2021年度なら①「講話」②「補修」などは少々手間取るかもしれませんが、全問正解を狙いたいレベルの出題となっています。
大問2「左手のルロイ」香月夕花
問1 傍線部の被修飾語を答える問題 ○
文法問題です。確実に得点しましょう。
問2抜き出し △
本文中の空欄補充問題です。
「 A されるのって、一体どんな気持ちだろう。」
という表現から、
【それまでに登場している表現】の中で【「される」に繋がる表現】と判定できるかがポイントです。「される」に似た表現として、「する」という原形の表現に気付けるかどうかがカギでしょうか。
直前の「むやみに励まそう」を使おうとすると引っかかります。
問3選択肢 ○
決められた範囲の中の兄の描写から、兄の性格などを捉える問題です。
兄のセリフ・行動などから判断しましょう。
見る範囲は広いですが、兄について書かれている箇所はそんなに多くないです。
問4選択肢 ○
決められた範囲の中の母と若葉の描写から、彼女らの性格などを捉える問題です。問3よりも選択肢の行数が長くなっていますが、その分×ポイントもわかりやすくなっているという印象です。
【母の性格と若葉の性格が似ていることを、若葉はマイナスにとらえている】ことからエとなります。
問5空欄補充(記述問題) △
B に入る表現を答える問題です。
【「私、得意なの」と、きっぱり答えた。】
【得意なものは得意だとハッキリ言う。】
などという表現から、 B に【謙遜(けんそん)】と入れる問題です。
実は条件に「漢字指定」はされていないので、割り切って書けば○なのですが、諦めてしまった子も多いと思います。「五字以内」ではなく「四字以内」としたのは学校側からの「ヒント」でしょう。
問6選択肢(空欄補充問題) ○
C と D に入る表現を答える問題です。
Cはその前にある
「若葉はそのしっぽを追いかけながらずっと追いつけずにいるような~」
から気後れする様子を、Dはその後にある
「千夏は次々に色に命を吹き込んでいく~」
から判断しましょう。
問7記述 ×
「若葉」が「千夏」の言葉からどのようなことに気づいたかを書く問題です。
「名前を覚えて、ちゃんと呼んで~。他の色と一緒にされたりしないように」
から
【トトを「ルロイ」と呼ばないのは、トトとルロイを区別していること】
「トトとルロイを区別している」→【トトをルロイと認めていない】
という2つが読み取れるかどうかがポイントです。
「名前を呼ぶ」と言う内容から、「トトを他の家族のようにルロイと呼べていないこと」と関連があると気付けるかどうか。
文章にするのが難しいという生徒さんも多そうですね。
問8選択肢 △
若葉の「涙は止まってしまった」理由を答える問題です。
父がルロイに似た仔猫を用意して、
「ルロイは死んでない」
「嫌なことは全部忘れて」
と言ったことで、若葉の
「頭も心もショートしてしまった」
ことから判断します。
ウと悩むところですが、イが答えです。
問9選択肢 △
「本文の内容に合うもの」を答える問題です。
選択肢は長めですが、×のポイントは見極めやすくなっています。
×イ死んだ直後
×ウ昔の家よりも気に入っている
×エずっと幸せな生活
からアが答えです。
大問3「子どもの難問」野谷茂樹、「煙の謎」道尾秀介
問1選択肢 △
「子どもにしか哲学はできない」理由を答える問題です。
傍線部①の中の「だから」に注目できるかがポイントです。
「哲学の問いは、『前に進め』という声から自由な者だけに許されている」
と同じ段落から、
「前に進め」という圧力に縛られた者=【仕事などに追われる大人たち】
「蟻の行列に目を奪われ~子どものような姿」=【何かに夢中になる子どもたち】
と押さえられるかがポイントです。
答えはエとなります。「強迫観念」「楽観的」「従事」「多様性」「根源」などの語彙に惑わされないようにしたいですね。
問2選択肢 ○
「明確な答えをもつような問いではないばかりか、問いの意味さえ、定かではない」
とはどういうことかを答える問題です。
同じ段落の
「問いの答えが何であるかと、そもそも自分が問うている問いの意味は何かを、同時に手探りしていかなければならない」
「哲学の意味を問うにも、独特の技術と力を必要とする」
を押さえて、選択肢を検討しましょう。
答えはイです。
問3選択肢 ○
A に入る表現を答える問題です。
同じ段落を読み進めて、
「自由にさまざまな視点からものごとをとらえなくてはならない」
「そんなフットワークを~」
を発見できるかどうかがカギとなるでしょう。
答えはウの「軽やか」です。
問4選択肢 ○
B と C に入る表現を答える問題です。
同じ文の中の
「煙には~ B 的なダメージよりも C 的なダメージの方が大きく、~おならにそっくりなにおいだった」
から、 C に「精神」などの表現を当てはめられるかどうかががポイントです。 C の選択肢の中で「精神」に一番近いのがアの心理、となります。
問5選択肢 △
「先生は『先生』だし」
とはどういうことかについて答える問題です。
同じ文の中の「両親」「先生」「八百屋」「魚屋」「スーパーの店員さん」の共通点を考えて、【身近な人間】であることが押さえられるかがポイントです。
×ア社会的に必要な存在
×イ近い距離にいるわけではない
×ウ子どもと同じ発想で
の部分を消去するというやり方でも良いでしょう。
問6記述 △
「だとしたら、あの煙には感謝しなければならない」
理由を答える問題です。
「製紙工場の煙を見た筆者の経験が、」が設問に用意されているので、
「製紙工場の煙」「見た」「筆者の経験」と似た内容を探しましょう。
傍線部④のひとつ前の段落の、
「小学生時代に見たあの製紙工場の煙は、きっかけの一つ~」
を見つけ
「きっかけくらいで小説家になれたら~」
から、何のきっかけかが分かれば、答えにたどり着けると思います。
問7空欄補充(並び替え) ○
D にあてはまるように文を並び替える問題です。
D の前には、
「王子製紙は王子に工場を持っていなかった。」
「いや、昔はあったのだが、~十條製紙が~引き継いだ~」
D の後には、
「―― ?」
とあるので、前後の内容にきちんと繋がるように検討しましょう。
ヒントは3つ。指示語、接続語、キーワードです。
まず、指示語、接続語に注目して、
アその
イそう
エつまり
オあれは~この原稿を~
から、ウに指示語や接続語がないので、「1番目に来そうだな」と予想します。
イの「そう言っている」が、ウの「『王子製紙の工場がさぁ』と言い合っていた」と対応しています。
オの「あれは十條製紙の工場だったのかと、」と、ウの「『王子製紙の工場がさぁ』」が対応していますが、イ「そう」オ「あれ」とあるので、ウ→イ→オが確定。
オ「また驚いた」内容が、アの「その工場は~二年も前に閉鎖されていた」になるので、オ→アが確定。
最後に、アの「その工場は~二年も前に閉鎖されていた」と、エ「つまり、煙突から煙なんて出ているはずがなかった」の対応を見つけ、ア→エ。
総合すると、ウ→イ→オ→ア→エとなります。
問8記述 △
筆者が
「ここは敢えて調べないようにして。~魅力的な謎を、しばらくこねくりまわしてみよう」
と決めた理由を答える問題です。
まず、
「敢えて調べない」
「謎を、~こねくりまわしてみよう」
傍線部⑤の前の段落「何だったのだろう。」「~のか。」
などから、【敢えて謎の答えを調べずに、自分で答えを考えてみようとしている】ことに気付けるかどうかがポイントです。
あとは、「自分で答えを考えることをどう考えているか」ですが、これは傍線部⑤の中から「魅力的」と取って、私は答案を作成しました。
初めの【 】内の置き換えに気付けるかどうかが勝負の分かれ目になるでしょう。
問9選択肢 ○
「働くということに関して、[文章1][文章2]から気付く内容をまとめた文」を見つける問題です。
傍線部が指定されていない問題であること、選択肢が三行に渡っていることから、×ポイントを見つけて消去していくのが楽でしょう。
×ア「哲学者」になることで
×イ問いかけに答えることができる
×エ完全に一致させることは難しいと指摘
より、答えはウです。
◆まとめ
最近の問題の主流、「文章長め」「記述短め」「全体が読み取れていれば解ける」というタイプの出題となっていました。
本文中に、空欄補充で表現を問う形式が多いのも、学校側が「文章全体が読み取れているかどうか」を問いたいのではないかと思います。
各選択肢の「強すぎる表現」などに注目して、「消去法で解ける」問題も存在しているので、国語が苦手な子にもチャンスを作っている、と言えるかもしれません。
難解な問題(×と評価した問題)は1問のみとなっています。
「読む」ために必要な技術が習得できているか確認する上でも、良い問題と言えそうです。
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