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市川中の国語分析(2021年) Column

過去問分析

市川中の国語分析(2021年)

2022.10.21

千葉の名門中である市川中。

自立の精神や個性の重要視を理念に掲げており、非常に人気の高い中学校です。

帰国生の入試や高校受験も行っています。

また、千葉県の入試のため1月に第1回の入試があるのも特徴的ですね。

今日はそんな市川中の入試の解説を行っていきます。

◆各種データ

受験者平均 68.5点
合格者平均 公表なし
想定合格点 70点後半

◆出題形式

試験時間 50分 100点満点

◆大問4問構成

◆問題の種類

・漢字・語彙 20%
・記述 25%
・選択肢 40%
・空欄補充 15%

全体を通して記号と記述を中心に構成されており、出題パターンもオーソドックスなものばかりです。受験者のレベルは高いですので、当然高得点勝負となります。

選択肢の問題に関しては、解答の根拠が傍線部に前後を読めば大体解けるようになっていますので、国語の基本的な読み方解き方ができれば取りこぼしは避けられます。ここで稼ぐというイメージを持つと良いかもしれません。

記述に関しては、記述の基本的な書き方や具体と抽象の読み分けを求められます。こちらは選択肢に比べると多少骨が折れるかもしれません。しかし、高難易度というわけではないので、きっちり差がつきます。国語で稼ごうと考えている方はここで差をつけたいですね。逆に国語が守りの科目である方はここで差をつけられないように最低限の記述力を身につけておきたいです。

今回使用する指標

○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題

解答例はこちら

大問1 榎本博明 「さみしさの力」

問1  △

理由の問題です。

理由を探していきましょう。

すると、まず傍線部1の1行後に「反抗期になった」とあります。

これが簡単な理由ですね。

そして、さらに「反抗期」の内容を具体的に述べている文が後に続きます。

傍線部1の6・7行後:「親の価値観とは異なる〜示している。」

傍線部1の10行後:「心の中に主体性が〜言える。」

以上から選択肢を見ていくとウが選べますね。

問2  A B C  △

空欄補充の問題です。

空欄の前後をチェックし、内容をチェックして、選択肢を見ていきましょう。

A:まず、前後を読むと空欄の1行後に

「たしかに行動は外から観察可能だが……」

とあります。

「外から観察可能・心の中で何を考えているかは外からは分からない・伝わってしまう・見透かされることはない」

という内容から「隠れて・己を隠す」などの言葉が入っているウが正解です。

B:前後を確認すると、空欄の前に「反抗期の親子関係」のついての内容が書かれています。

ここから考えると「そんな親子の間…」で始まるアが正解だと分かります。

C:空欄の前後を確認します。

すると、空欄の直後に「結局、反抗というのは…」と反抗期のまとめについて書かれていますね。

よって、「反抗期についての具体」が書かれているイが正解となります。

問3  △

理由の問題です。

理由を探しにいきましょう。

まず、前後を読んでいくと同じ形式段落である傍線部の前の部分に理由が書かれていることに気がつけますね。

傍線部2の4行前:「認知能力の発達により〜我が子との間に」

以上からウが正解だと選べます。

問4  ○

空欄補充の問題です。

空欄の前後をチェックして、内容を確認してから、選択肢を見ていきましょう。

まず、前後を読んでいくと、空欄の直後に「〜ではなく」とあることから、その前の内容の逆の内容が空欄に入ると予想できます。

そして、その前には反抗期の子供の反抗についての様子が書かれており、

「たしかに親と怒鳴り合ったり〜そこまで激しいもの」

と書かれています。これは「直接的」な反抗であると理解できます。

よって、空欄には「間接的」と同じ意味となるエが正解と分かります。

問5  ○

間違いを選ぶ問題です。

まずは選択肢を読み、怪しいと思った選択肢をピックアップし、本文と照らし合わせて考えましょう。

先に正解を述べますと、オが正解となります。

オは「世代間境界の設定がうまくいっていると」が誤りです。

世代間境界が設定できていないので花子さんの親子関係はぎくしゃくしているのですね。

大問2 寺地はるな「水を縫う」

問1  ○

語彙の出題です。

しっかり取り切りたいです。意味を知らなくても文脈で把握していきましょう。

問2  △

心情の問題です。

【背景】→【きっかけ】→【気持ち】→【行動反応】をしっかり抑えていきましょう。

【行動】:主人公の「私」の行動をまずは把握します。

すると、傍線部1の直後に

「もうすこし心配してくれても〜関心ないの?」

とあります。

また、傍線部1の8行後に

「ありがたいな〜接したくない」

とあります。

ここから、母の放任主義に対して「感謝」をしていた一方で「否定的な意見」を持っていることが分かりますね。

以上からエが正解だと分かります。

問3  △

理由の記述です。

理由を本文から集めていきましょう。

こちらも先程の問題同様に【背景】→【きっかけ】→【気持ち】→【行動反応】で考えていきます。

【気持ち・行動反応】:まず、息子の清澄が将来、デザイナーでは食べてはいけない(生計を立てられない)と「私」は思っています。これは単純に気持ちに当たります。

そして、その行動反応として反対しているわけですね。

ここがはっきりすると、今探さないといけないのは理由に当たるきっかけであると分かります。

【きっかけ・背景】:では「私」がなぜ清澄がデザイナーになれないと考えているのかを探しにいきましょう。

すると、

傍線部2の1行後:「きびしい世界・突出したセンスとか才能とかあるわけない」

傍線部2の9行後:「全がなし得なかったこと〜言えるのだろう」

以上から記述をまとめていきましょう。

問4  ○

気持ちの問題です。

前後から【背景】→【きっかけ】→【気持ち】→【行動反応】を意識して探しましょう。

【気持ち】:傍線部の近くに気持ちがそのまま書いてあるので容易ですね。

傍線部3の2・3行後:「他人から見たら〜いっぱいあった。」

とあります。

ここから他人との比較ではなく、自分が納得できていれば良いと思う様子が読み取れます。

以上からイが正解と選べますね。

問5  △

気持ちの変化の選択肢です。

前の気持ち→きっかけ→後の気持ち を文章から探していきます。

【前の気持ち】:傍線部1〜傍線部2にかけて「私」の気持ちが書かれています。

傍線部1の14行後:「失敗してほしくないもん。自分の子供に」

傍線部2の12行後:「ほどよい進学と就職と結婚をしてほしい〜思っているだけだ。」

などから息子の失敗を恐れ、成功を望んでいることがわかりますね。

【きっかけ】:上記の感情を持っていましたが、母と会話をしていくうちに徐々に「私」の気持ちが変わっていきます。特に傍線部3の14行前に

「あんたの人生は、失敗やったのかしら?」

という母の問いかけで自分の人生を振り返り、悪くなかったと思い直していますね。

【後の気持ち】:上記のきっかけを通して、失敗をしても良いのではないかと考えるように少し変わっています。

傍線部3の2行後:「他人から見たら失敗だとしても、いいような気もする。」

とあり、母に相談する前とだいぶ気持ちが変化していることがわかりますね。

以上から、選択肢を選んでいくとアが正解だとわかりますね。

問6  ○

誤りを見つける選択肢の問題です。

先に選択肢を見てから考えていきましょう。

怪しいなと思う選択肢に関しては一旦保留をし、文章中の該当箇所を読み返し確認を行いましょう。

正解はイとエです。

イは「強いかり」が誤り。強い怒りを表す描写は本文中には書かれていません。言い過ぎの表現ですね。

エの選択肢は『「母」に甘える気持ちが生じていたこと』が誤りです。本文中からは甘えると言う描写は見つかりません。

大問3  △

答えの記述です。

要素を探して、まとめていきましょう。

まず、大問1の文章の青年期の特徴について探して行きます

ここは大問1の文章を読む段階で抽象の部分への線引きを行っていると非常に容易に要素が集まっていきます。

傍線部1の1行後:「いわゆる反抗期になったのだ」

傍線部1の6行後:「自分なりの価値観ができつつあること」

空欄Aの2行前:「心の中に主体性が育ってきている」

空欄Cの2行後:「つまり自分の意見を押し通そうとすることである」

などが挙げられます。

いずれも抽象部分であり、読む段階で線を引いておきたい場所になります。

訓練次第では誰でも線が引けるようになりますので日ごろから意識をして線引きをしましょう。

大問4  △

漢字の問題になります。

とめはねはらいに注意をして丁寧に描きましょう。

講評

全体を通して文章の把握する力や基本的な国語の解き方を問う良い問題でした。

説明的文章では理由を考えさせる問題が多く、苦戦された生徒さんもいたかもしれませんが、しっかり傍線部の前後を読んでいくこと、そして具体と抽象の意識が大切です。特に、傍線部や空欄の前後を読む癖が付いている生徒とそうでない生徒では差がついたことでしょう。

2021年度入試の問題に関しては抽象部分への線引きが読む段階でできている生徒に関しては非常に有利に働いたことは間違いありません。特に記述の問題で時間や精度に大きな差がついたことでしょう。

物語文では大人の心情をとらえる問題が多く出題されました。

12歳の子供にとっては離婚をした母親の心情を捉えていくことは難しかったかもしれません。しかし、しっかりと傍線部の前後をとらえる練習ができている生徒にとっては多少理解し難い内容だったとしても大きく崩れる事はなかったと思われます。いずれにせよ、しっかりとした基本的な国語の解く力を身に付けていた生徒にとってはそこまで難しくなかったと思われます。


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松田 浩志

この記事を書いたのは...

松田 浩志

自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。

大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。

現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。

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