サカセルコラム

鷗友学園女子中の国語分析(2022年) Column

過去問分析

鷗友学園女子中の国語分析(2022年)

2023.02.14

◆各種データ

各科目100点満点、4科目合計400点
合格者最低点 ①268/400 ②297/400
合格者平均 ①66.7点 ②80.5点
受験者平均 ②59.1点 ②72.0点

◆出題形式

試験時間45分 100点満点

◆大問3題構成

大問1 小説文 4問
大問2 論説文 2問
大問3 漢字  5問

◆問題の種類(2022年度)

・記述 90%
・選択肢 0%
・抜き出し 0%
・知識 0%
・漢字 10%

という得点の割合になっています。

漢字が小問で5つのみ、それ以外は記述問題という形式の学校です。

合格者平均点が60%〜80%ほどと、年によって大きく難易度が変化する問題となっています。

2022年度は66.7%なので、近年で言うと「標準的」と言えるでしょう。

また、学校が出版している「○年度 入試対策問題集」というものが存在しています。

こちらは学校のホームページにて取り寄せが可能なものとなっており、国語に関しては配点や模範解答、講評だけでなく、

設問の意図・採点基準・記述で許容できる内容・多かった誤答例などに関しても詳細に載っています。

受験を検討している場合は、こちらは必ず手に入れるべきだと思います。

採点基準に関しては、A要素〜E要素(最大5要素、多くはA要素〜C要素までの3要素)の記述の要素を設定し、そこが具体的でも抽象的でも7触れられていれば」要素点が入ります。

要素の内容の不足、表記ミスでの減点があります。

本文の内容から推測していく記述の要素は出題されますが数は少ないので、

「本文の中から的確に記述の要素を抽出して、文にまとめ上げる作業」が求められます。

言い換えれば、過去問を通した演習による努力が認められやすい形式、と言えるでしょう。

SAPIXの6年後期のマンスリーテストなどは「本文の主題を捉えること」すらとても難しくなるので、こう言った努力が結びつきやすい形式というのは個人的には好印象です。

ここからは2022年度の鷗友学園女子①の出題を通して、どのような戦術で取り組めば良いのかについて書いていこうと思います。

今回使用する指標

○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題

大問1 小説文 平岡陽明「道をたずねる」

問1記述 ○(10点)

「葉造」と「うちの親父(永伍)」の主張を具体的に説明する問題です。

傍線部①の後から見つけます。

「〜やっぱり葉造さんは、お前を高校へ行かせたいっち。うちの親父が『本人の希望を優先してやれ』ち言うても、てんで耳を貸さん。〜」

「一般的にいえば、父親は息子が自分の仕事を継ぐことを歓ぶはずや」

自分の仕事を継ぐとは、「キョーリンで働くこと」を指します。

要素① 葉造は息子である俊介を高校に進学させたいと考えているが、
要素② 永伍は俊介の希望通り、卒業後にキョーリンで働かせても良いのではないかと考えている。

としました。

問2変化の記述 △(16点)

傍線部②「湯太郎はみるみる表情を喪っていった」とあるが、湯太郎の変化を、そのきっかけを含めて説明する問題です。

傍線部②の前より、湯太郎の様子に注目します。

「いいとも」「ノー・プロブレム」「えっ?」

より、軽口を叩ける様子や、さらに前から、

「たぶんな。じつは神父さんが僕を引き取って後を継がせてくれるち言うたんやけど、丁重にお断りした。『そんなんじゃ将来、メシが食えへんぞ』ちおじさんが言うけん」

湯太郎の声には落ち着きがあった。母の看取りを経て、いくらか大人びたようだ。

より、自分の将来について落ち着いて話をする様子が読み取れます。

また、傍線部②と同じ一文に、俊介が訊ねると、とあるので、直前からきっかけを読み取ります。

「〜やけどお前は一人や。それはどれくらい不安なん?寂しいか?哀しいか?お前の本当の気持ちはどうなん?」

とあるので、ここを使用します。

傍線部②の後より、

利発な湯太郎が言葉を見失うことじたい、珍しいことだった。
やがて湯太郎の目からツーっと涙が流れた。
〜「なんで母さんは死んでしまったんだよ!」
〜「なんで母さんやないといけんかったん?」

とあります。

胸に納めていた、母の死への悲しみがこみ上げてきている様子が読み取れますが…

本文の加工が使えないので、少々こちらの要素を捻り出すのは難しいでしょう。

要素① 初めは自分の将来について落ち着いて話していたが、
要素② 俊介から自分の本当の気持ちについて問われ、
要素③ 胸に納めていた
要素④ 母の死の悲しみが込み上げてきている。

としました。

要素③、要素④の説明が少々難しいと思います。

問3言い換えの記述 △(18点)

傍線部③「一平の策士ぶり」とはどのようなことか、具体的に答える問題です。

策士とは「自分が思う通りに物事を進めることができる人」を指します。

ちなみに、傍線部③の直後の「絵を描き、」は「陰謀・策略を練ること」の意味合いとなります。

昭和時代の俗語です。(苦笑)

一平の行ったことに注目していきながら、答えを検討していきます。

要素① 父たちが結んだ、「友のピンチは助ける」「友の頼みは断らない」「友に隠し事はしない」と言う3つの内容の誓いを、自分たちも同様に結んだ上で、
要素② 湯太郎の学資を一平の父が全額持つこと、
要素③ 高校の寮に入るまでは一平の家の離れに住むことを提案し、
素④ 湯太郎に受け入れさせたこと。

としました。

①を結んだ上で、②・③を提案しているため、①を入れ忘れないようにしたいところです。

本文に書いてある内容ではありますが、全ての要素を書き切るのは難しいでしょう。

△狙いで良いと思います。

問4記述 △(16点)

三人が何のために、この日に「クスノキに集合した」のか答える問題です。

この日の正体は【中学卒業の日】です。

クスノキには【父親たちの文字の横に、自分たちの名前をナイフで刻み込んで】います。

父親たちと同様の動きをしているところから、【父たちも結んだ誓い】が関わっている、ということを読み取れるかどうかがポイントでしょうか。

要素① 中学卒業の日に、
要素② 父親たちと同様に、クスノキに自分たちの名前を刻み込んで、
要素③ 友への誓いを改めて確認するため。

としました。

要素③は推測して書く内容となっているため、難しいと言えるでしょう。

学校側の用意している模範解答のレベルが高いので、全てを拾い切るのは難しいです。

×を避け、本文から拾える要素①と要素②について書ければ、十分だと思います。

大問2 論説文 新庄秀規・藤山純久「伝える技術はこうみがけ!」

問1記述 ○(12点)

新聞のどのような点が「初心者向け」なのか答える問題です。

傍線部①の直後を見ると、

「新聞=古い/大人向け」「ネット=新しい/若者向け」という先入観でつい見落としがちになってしまうのですが、世の中で起きていることについて、自分なりに考えることができるようになるには、世の中の動きに関する基本的な知識が必要です。

いま何が起き、いま世の中は何に関心があり、将来、どんな方向に向かおうとしているのか。そうしたことを考えるベースになる情報をニュースのプロが無駄なくざっくり選んでくれるのが新聞なのです。

新聞の説明から、必要な箇所を切り取って答えにします。

要素① 世の中で起きていることについて、自分なりに考えることができるようになるための基本的な知識が必要で、
要素② それをニュースのプロが無駄なく大まかに選んでくれる点。

としました。

本文の「ざっくり」は「大まかに」に言い換えています。

問2理由の記述 ○〜△(18点)

なぜ「これからの社会でメディアリテラシーが求められる」のか答える問題です。

傍線部②を含む一文を読んでみると、

少し話がそれますが、〜これからの社会でメディアリテラシーが求められる理由について、記者の立場から考えていこうと思います。

とありますので、これより後の箇所から、該当の内容を拾います。

まずは社会の話を見てみると、「つまり、〜社会は〜」とあるので、つまりの前から拾います。

人工知能(AI)を含む科学技術の進歩で、私たちの暮らしは急激に進化しています。この傾向は今後も加速度的に進む見通しで〜。

つまり、私たちが今、見ている社会は子どもたちが大人になる頃には大きく姿を変えている可能性がある。

【科学技術の進歩で、私たちの暮らしや社会は急激に進化している】ことがわかります。

次はメディアリテラシーを探します。

正解のない問題に取り組む=不確定な未来を見通すためには、答えを導き出すための材料(引き出し)が必要です。正しい情報や自分に必要な情報を適切に取捨選択できるメディアリテラシーはその材料探しの基盤になるもの。

とあります。

ここを使用します。

要素① 科学技術の進歩で、私たちの暮らしや社会は急激に変化していて、
要素② その中で不確定な未来を見通すために、答えを出すための材料が必要で、
要素③ その基盤になるのは、情報を適切に取捨選択できるメディアリテラシーであるから。

としました。

大問3 漢字(各2点、合計10点)

寄宿、博覧、均整、護身、同工異曲。

全問正解を狙いたいところです。

◆まとめ

本文をきちんと使用して取り組めば、きちんと合格ラインに到達します。

また再掲になりますが、学校が出している「入試対策問題集」は必ず手に入れて、対策を練るようにしましょう。


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増田 雄介

この記事を書いたのは...

増田 雄介

圧倒的な指導力、学校別の専門性の高さ、そして面倒見の良さを持つ自律学習サカセルの国語・社会の看板講師。

その驚異的な指導力を武器に、大手集団塾の開成中コースの国語担当や有名個別指導塾のリピート率1位の凄腕講師として活躍。
成績が本当に伸びる実戦的な指導に目を付けた自律学習サカセルからのスカウトを受け、満を持して文系科目の講師として指導開始。

個別指導の業界では指導力No. 1の呼び声も高く、逆転、順当のどちらの合格にも強く、生徒のレベルに関係なく指導できる幅広さを持っている。

生徒だけでなく、自分の子供の成長を見守るのが楽しみな一児の父でもある。
趣味はぽっちゃりの自分でも着られるファッションの構築。

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