算数の想定合格点 55 点
桜蔭中学校の併願パターンや過去の試験の解説はこちら
東京大学や医学部医学科への進学実績は全国屈指。
日本一の女子校として君臨している桜蔭学園。
もちろん進学実績だけが魅力ではありません。
生徒達は規律のもとで個性を磨き、卒業後は様々な業界で活躍を見せています。
そんな桜蔭学園は2024年に創立100周年を迎えます。
記念事業として閑静な文教地区に佇む趣のある校舎の建て替えも計画されていて、ますます魅力が増すことでしょう。
もちろん中学受験においても女子最難関校の地位を維持し続けています。
算数においては「正しく読む力」と「粘り強く取り組む力」が問われます。
基礎学力を築き上げていて、才能もある受験生だとしても、入念な対策が必要であることは言うまでもありません。
ここからは2023年の桜蔭中の算数の入試問題を通して、どのように学習すれば合格ラインを超えることが出来るのかを見ていきましょう。
今回使用する指標
〇:合格のためには必ず正解したい
△:差がつく問題なので、出来れば正解しておきたい
×:やや難度が高く、部分点を拾うことが出来れば充分
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
中学受験界屈指の煩雑さで知られる桜蔭中の計算問題。
2023年も2022年と同様、若干ながら負担は小さめの出題となりました。
最終的な答えも桜蔭中の算数としてはシンプルな数値となったので、比較的短時間で正解できた受験生も多かったのではないでしょうか。
(2) イ 〇 ウ △
5年生の「反比例」の導入でもよく見かける歯車の問題が課されました。
イは「噛みあう歯の数は同じ」「同じ軸の歯車は回転数が同じ」という基本に沿って立式できれば、確実に正解できたのではないでしょうか。
ウは回転数と時間の関係を掴めば良い、という方針は立てやすいことでしょう。
ただ桜蔭中ではお馴染みの「汚い数」「面倒な計算」が必要なので、なかなか大変です。
まだ今年度の出題構成の中では序盤で、答えのみが求められていて途中式は計算対象とはなっていないので、いったん後回しにしても良いでしょう。
(3) ① 〇 ② × ③ △
①は易しいでしょう。
題意を正しく把握すれば正答が求まります。
②はどこに注目し、どの図で整理すれば良いのか分かりにくい難問です。
Bに注目し、線分図で範囲を考えられると良いでしょう。
③は3つのベン図で整理するだけなので、方針を立てるだけなら難しくはありません。
②よりもむしろ易しいです。
ただ、この問題も答えだけを求められているにもかかわらず、非常に計算量が多くなってしまうので、いったん後回しにするという判断で良いでしょう。
大問2
(1) 〇
基本的な植木算です。
周りの長さを旗の間隔で割り、植えない四隅を除きましょう。
計算の負担も非常に軽く、桜蔭中受験生なら確実に正解できる問題でした。
(2) △
歩いている時間と、旗を立てている時間を分けて考えましょう。
「旗を立てたら終わり」なので、最後の10mは進まなくて良い事に気を付けられれば正解することは容易ですが、ひっかかってしまった受験生も少なくないかもしれません。
(3) 〇
(2)より易しいです。
花子さんと桜さんのそれぞれの歩いている時間と旗を立てている時間を丁寧に計算するだけの問題です。
こちらは(4)を解くためのヒントになっています。
(4) ×
桜蔭中の算数らしさが炸裂した問題です。
まずは(3)で求めた桜さんがCに着いた時に、花子さんがどこにいるかを考えましょう。
あとは目星をつけて丁寧に調べていくしかありません。
幸い花子さんと桜さんの歩く速さが同じで、旗を立てる速さも大差がないので「真ん中あたりかな」と考えられると良いでしょう。
非常に面倒で数値も汚くなるので、試験中は後回しにしたほうが得策でしょう。
大問3
(1) △
「勝敗」と「得点」でそれぞれルールが細かく、題意を把握するだけでも一苦労…というような問題です。
このような題意の正しい読み込みを要する問題では「例」に沿って実際に勝敗や得点のルールを確認することが必須です。
(1)は「1回目は両者が3を出してあいこ」「2回目はAが勝った」状況を考えられると良いでしょう。
サイコロの目ごとの勝敗は、事前に何らかの形で整理しておけると良さそうです。
桜蔭中受験生でも得点差がついた問題でしょう。
(2) ×
2点以上の得点で同点にしようと思うと「あいこ⇒勝負がつく」が2回必要で、少なくとも4回さいころをふることになり成立しません。
したがって同点になる場合は「3回ともあいこで0点」か「1勝1敗1分で1点」しかありません。
あとは解答例のようにそれぞれの場合で何通りになるのかを丁寧に調べましょう。
「あいこ」の位置によって状況が変わる事や、ABの勝敗の順序が逆になる場合など、注意すべき箇所が多いので、正解できた桜蔭中受験生は少なかったかもしれません。
ただ部分点は拾いやすい問題です。
分かる箇所まで食らいついておきましょう。
大問4
(1) 〇
桜蔭中で頻出の「図形の移動」です。
「速さ」「図形」「グラフ」の複合問題として課されることが多く、難度が高い出題になることも多い分野です。
(1)は立方体から円柱を除くだけの基本問題です。
2023年度の桜蔭中の算数においては数少ないボーナス問題です、確実に正解しておく必要がありました。
(2) 3秒後 〇 5秒後 △
上から円柱をくり抜き、正面からは四角柱をくり抜きます。
また四角柱は真ん中からズラしてくり抜いているので、重なる部分には細心の注意が必要です。
3秒後の時点では重なっていないので、円柱と四角柱それぞれの体積を除くだけです。
易しいでしょう。
5秒後では重なりが生じます。
正面から見た図や真上から見た図で整理すると、半円柱が重なっていることが分かるので、引きすぎている部分を戻してあげましょう。
桜蔭中合格を目指すなら、是非とも正解しておきたい問題です。
(3) △
(2)と同じように正面から見た図と真上から見た図で捉えましょう。
重なっている部分は四分円の柱になることが分かります。
(2)を解けたという手ごたえがあれば、チャレンジしておきたい問題でした。
(4) ×
(3)までの発想を逆の視点で考える問題です。
まずは除かれる円柱の体積を求め、あとどれだけ除けば良いのか前から段階ごとに丁寧に調べていきましょう。
方針自体は決して難しくはないものの、処理量が多く、また最後の問題ということもあって充分な時間を設けられなかった受験生も多かったことでしょう。
総評
「問題用紙が黒い、と称されるほど問題文が長大で情報量が多い」
「方針を立てること自体は、決して難しくない」
「処理量が多く、正解に辿り着くことは困難」
という明確な特徴を持つ桜蔭中の算数。
近年は大問4つという形式が定着してきました。
その傾向が維持されるか注目された2023年は例年の傾向をより色濃く反映した出題となりました。
まずは例年と同等かそれ以上に情報量が多いことが特徴として挙げられます。
例年ならB4の問題用紙ギッシリ2枚に詰め込まれた情報量に対して、2023年は問題用紙が3枚に及ぶなど、ますます問題文の長大化が進みました。
出題内容も例年通り「方針は立てやすいが非常に処理量が多い」ものになりました。
そんな出題となった2023年の桜蔭中の算数における合格ラインを考えてみましょう。
合格最低点が公開されていない桜蔭中ですが、2023年の出題と受験生のレベルを考えると、55点前後が合格ラインと想定されます。
2023年度の出題において極端な難問はありません。
ただ大問1(3) 大問2(3) 大問4(4)など極端に処理量の多い問題も数問配置され、方針は立てられても、時間内には解き終えられないという事態は充分に想定されます。
2023年の出題において合格ラインを上回るためには、「取捨選択」を鍵とした制限時間内に最大限の得点を取りきるための戦略が重要だったと言えるでしょう。
非常に処理量が多かった問題を敢えて後回しにして、比較的易しく配点も大きそうな大問4に時間を残すことが出来れば、合格の可能性を高められたのではないでしょうか。
逆に1問1問に一生懸命取り組みすぎて、大問4を充分に考えられなかったというように、時間配分に失敗した受験生は悔しい結果になったことも考えられます。
2024年以降に桜蔭中合格を目指す受験生にとって、2023年の出題は「かなり処理量が多い年度」として参考になることでしょう。
桜蔭中の算数においては、必ずしも全ての問題に前略で向き合う必要はありません。
制限時間内に得点できるものを正確に判断し、答えを出し切る意識を持っておきましょう。
なお2023年には出題されなかった桜蔭中の算数の頻出単元としては「素因数分解を利用した整数問題」「処理量の多い日暦算」「ダイヤグラムを活用した速さ」などが挙げられます。
過去問演習を通して充分な類題演習を重ねておきましょう。
桜蔭中は傾向が明確で、その意味では対策を立てやすい学校です。
入念な準備を重ね、日本一の女子校への合格を目指しましょう。
自律学習サカセルは受験生の皆さんを応援しています。
にほんブログ村にも参加しています。ぜひ下のバナーをワンクリックで応援もお願いします!