サカセルコラム

中学受験とスポーツの共通点 Column

学生講師の小話

中学受験とスポーツの共通点

2021.01.11

はじめに

みなさまは年始の箱根駅伝をご覧になったでしょうか。駒澤大学が最終区で逆転優勝をしたり、往路優勝、復路優勝、総合優勝がそれぞれ違う大学であったりと、話題が尽きない大会で、自分も家で観戦していて今まで以上に興奮しました。

箱根駅伝を見ていてふと思ったことがあります。

受験ってまさしくスポーツと同じだなあ

実際、受験本番を試合に例えた表現は人口に膾炙したものだと思います。ただ、改めて考えると、学べることや、中学受験の問題点も見えてきたためまとめてみたいと思います。

受験とスポーツの共通点について以下のものを思いつきました。

  • 共通点1:「ゴールまでの道のり、ゴール、そしてその先」という積み上げ方
  • 共通点2:競争の世界
  • 共通点3:メンタルと回復の重要性 

さて、順番に見てゆきましょう。

共通点1:ゴールまで、ゴール、そしてその先

勉強は練習、確認テストは練習試合、試験本番は大会

まずは、スポーツと受験の形式について見てみましょう。

よく例えられるように、スポーツにおける大会の本番というのを受験そのものとすると、それに向けての予行演習としての練習試合は確認テストであると言えます。練習試合と確認テストの両者には以下の役割があります。

  • 本番と同じ形式で自分の実力を試す
  • 練習や普段の勉強がどのくらい身についているかを確かめる

この最終目標に向かう道中で同じ過程を反復しながら、らせん状に積み上げてゆく道筋はまさしく両者に共通しているのではないでしょうか。

(図1:受験に向けた積み上げ(左)と試合に向けた積み上げ(右))

受験や大会は同時に通過点でもある

しかし、この積み上げた結果を披露する大会や受験が終わった後はどうでしょう。

スポーツの大会に参加する人の多くは、人生で1つの大会だけに参加するわけではないと思います。春の大会の後は夏の大会、そして次の年にも大会に参加するはずです。つまり、大会の結果を受けて、その先の自分の行動にその反省を反映させながらより高みを目指すはずだと思います。

では、受験ではどうかというと、学校に合格することがもちろん目標であると思いますが、より大きな視点で考えると、中学受験の後には大学受験をするかもしれませんし、ある学校に入ることよりも、それぞれの学校に入ったあとの生活が人生の中で真に重要な部分かもしれません。つまり、受験も大会のどちらもそこが最終的なゴールとは言えないという点でも同じであると言えます。

また、この点を意識することで、中学受験に対するモチベーションを保ち続けたり、中学校に入学した後も勉強を続けたり、学校生活に精を出すことが可能になるのではないでしょうか。

共通点2:  競争が支配する世界 

ある指標に基づいた結果が全て

もしかしたらこれは人によって立場が分かれるところかもしれませんが、スポーツは結果が全てであると思います。

つまり、自分がただ楽しむためにやるのではなく、競技として行っている限り、自分なりの目標を立て、それを達成できない限りは満足するべきではないと思います。これは、受験にも同じことが言えるはずで、受験をする限り、楽しかったから満足や、ある問題だけ解けたから十分、ということはなく必ず合格することが目標であり、それが達成できたかできなかったかが一番大事な指標であるはずです。しかし、スポーツに参加している人全員が勝利することは不可能ですし、受験をする人全員が合格することは残念ながらできません。

これは、受験とスポーツのどちらにも、その内容に強い競争性があるという共通点を表しています。

しかし、この競争性には前提があると思います。

というのは、これら2つを芸術と比較すると分かりやすいと思いますが、自分に対する客観的な評価が絶対的指標なり、相対的指標なりでハッキリ出るということです。芸術では、たとえコンクールであっても、それぞれの作品や演技を単純に数値化して他人と比べることは困難だと思います。よって、結果的に審査員の印象や好みが大きく作用することになります。

しかし、それが例えばスポーツであれば、タイムやゴールの数、そして受験であれば点数という形で個人が客観的に比較可能な形に落とし込まれることになります。これによりオンリーワンではなく、ナンバーワンを決めたり、結果の良い生徒を決めたりする競争が可能になるのです。

ルールは公平なはず、ただ、近年その前提がぐらついている?

もう1つ、このような競争を行うための前提となる重要な共通点が受験とスポーツの間には存在します。それはルールがどちらも明確に決まっていて、全員がそれに従う公平なものであるということです。

例えば、当たり前ですが、サッカーにおいてゴールキーパー以外手でボールを扱ってはいけません。同様に、受験では電子辞書を使用したり、スマートフォンを使用したりすることは禁止されています。つまり、全員が持てるものは基本的には自分の頭、体、そしてゆるされたもののみ。同じ土俵で戦うことが前提で、機会の平等は保証されているはずです。もちろん、生まれつきの能力の差はどちらにも存在します。しかし、それも本番までの準備と努力で誰にでもその差を縮めることが可能なはずです。

しかし、近年この公平さがある点で歪められているのではないかということが指摘されています。それは、受験においていえば性別による差別の存在や、経済的格差の学力への影響などです。中学受験とは離れますが、東京大学での上野千鶴子氏の祝辞は記憶に新しいと思います。実際日本でも女性や浪人生であるというだけで試験の結果が低く計算されたりしたのではないかという疑惑が浮上するという事件もありました。また、学校そのものや塾の費用も生徒の学習の機会を金銭的に限定づけてしまうものと考えられます。

残念ながらこれはスポーツの世界でも共通していることかもしれません。サッカーを上手くなりたい生徒がサッカースクールに行くには費用が掛かります。また、アーチェリーや乗馬のように、プレーするための用品に高い費用が掛かるものも存在します。これらは、スポーツの世界においても金銭的制約によって機会の平等性が担保されていない例かもしれません。さらに、プロの世界でも問題になっているのは人種差別の問題です。観客や選手同士などで人種差別的な発言があることが指摘されてきたのみならず、審判やコーチ、そしてメディアによる選手への態度にも差があるのではないかと問題になることがあります。これは、日本においても決して他人事ではありません。

もし、「公平で厳密な競争」を理想的な形とするのであれば、これらはスポーツと受験のどちらでも是正していかなければいけない問題であると思います。

共通点3: メンタルと回復の重要性 

練習の実力をいつも本番でだせるわけではない

最後に、受験とスポーツの特徴に関して共通点を考えてみましょう。

皆さんもたくさん考えつくものがあると思いますが、私がまず思いつくのは、練習での実力をいつも本番で発揮できるわけではないということです。例えば、今年の箱根駅伝1つを取って考えてみてもすぐにわかると思います。青山学院大学の監督さんも順位を落とした5区の選手に関して「練習では本番よりかなり早く走れていた。本番でこの結果になるというのは、箱根に魔物が住むというか、駅伝はメンタルスポーツだと改めて実感した」とおっしゃっていました。また、このようなメンタル面の重要性は特にスポーツの世界では重視され始めていて、ラグビー日本代表の躍進にはメンタルコーチの存在も欠かせなかったことが知られています。

私はこれには受験に通じるところがあると思います。というのも、自分自身でも、普段問題なく解けるレベルの問題でも、試験になると、時間の制約や焦り、不安があっていつも通りにいかないということが1度や2度ではなくあったからです。これには様々な理由がありました。自分は元々不安になりやすい性格であることも影響していると思いますが、もう一つ関係していると感じるのが体調です。単純に身体的に疲れていたり、プレッシャーがかかる状態が長く続いて精神的に疲れているときには、特にネガティブに考えすぎたり、本番でいつも通りに行かないように感じます。そこで重要なのは次のことではないでしょうか。

疲労回復は不可欠

運動をするスポーツ選手にとって体の休息と疲労からの回復が重要であることは火を見るよりも明らかだと思います。近年プロの世界では、科学的に疲労を数値化して選手のコンディションを管理しているといいます。このようなコンディション管理が勉強においても重要なのではないでしょうか。ただ、その種類はスポーツ選手と異なります。基本的に椅子に座って行う勉強での身体的な疲労の水準は低いはずです。では、どんな疲労が溜まるかというと、精神的な疲労、そして脳の疲労でしょう。

この精神的、そして脳の疲労は何が原因で発生するのでしょうか。僕自身は専門家でもありませんし、医学を学んでいるわけではないため、あくまで自分の経験をもとにした想像の域を出ませんが、これはすなわち自分に入ってくる情報の量であると思います。何かを読んだり、聞いたり、触ったりしたことは全て情報として脳内で処理されますが、その処理量にある程度の限界があったとしても不思議なことではありません。パソコンのCPUも計算をさせすぎると処理落ちをするということと同じことが我々にも起きているのだと思います。

では、これをどう解決すればいいのか。一番簡単なのは、睡眠のタイミングを習慣化し、ブレの無い一定の睡眠時間を確保するという事だと思います。自動車学校などで必ず注意されることですが、睡眠時間が減ると、それだけ判断速度や制度が鈍ります。これはつまり、脳の疲れが抜けず、情報の処理速度が鈍るということです。逆に、規則的な睡眠は脳の疲労回復にも役に立つでしょう。また、僕自身が小学生の時にはなかったもので、今は小学生や中学生でも扱うのが普通になってきているのがスマートフォンです。この便利な機会により、今までとは比べ物にならないくらいたくさんの情報に簡単にアクセスできるようになりました。しかし、同時に自分を情報の大海原に投げ出してしまって、処理が追い付かなくなる可能性が高まったともいえます。画面のブルーライトそのものが睡眠障害の原因になると言われることもありますし、スマートフォンの使用時間は改めて気を付けた方がよいと思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。まだまだ、共通点は挙げられると思いますが、本日はこの辺にしようと思います。

ある分野が抱えている問題や、性質というのは、その分野に似ている他の分野にも意外と適用できるものです。また、その中でも違う点があったら、そこに着目してみるのも面白いかもしれないですね。それでは。

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H.Y

この記事を書いたのは...

H.Y

パリ政治学院修士1年
ハンドボール、スカッシュ、尺八と
マイナーなものをせめがち。

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