サカセルコラム

おでん屋と塾 Column

学生講師の小話

おでん屋と塾

2020.12.26

こんにちは、慶應義塾大学4年のH・Yです。

最近は方法論ばかりであったので、今日はブログ風に最近やったことや考えたことを少し書いてみたいと思います。

この季節、私はよくおでんを食べます。出汁が染み込んだ大根や巾着餅はとてもおいしいですよね。普段はスーパーでおでんの種を買って調理してしまうのですが、この間、たまには乙なものかと思っておでんの種屋に買いに行きました。

ただ、普段いきつけのおでん屋があるわけでもなく、商店街事情に特別詳しいわけでもない僕は、今時の若者らしくGoogle先生に聞くわけです。

「東京 おでん種」と。

検索結果を見ると意外と少ないもので、おいしいと紹介されていたところでも閉店してしまったところが多くありました。小さいときにはいつも祖母がおでん屋さんから買ってきたおでんを食べていましたが、その時祖母が買っていたおでん屋さんも潰れてしまったらしいですし、この検索結果からトレンドが改めてわかるとともに寂しい気持ちにさせられます。それでも少し調べたら、江東区にある1918年創業のおでん屋さんが見つかったため足を延ばすことにしました。

いざ到着してみますと、さすが、シーズンだからなのかお客さんが多く、列を作っていました。しかも、中にはビニール袋4袋分いっぱいに入ったおでんの種を買っていく人もいるじゃありませんか。その人は居酒屋の店主の方で、その日のメニューに出すのかもしれません。さすがにおでんの種屋だけあって、その種類も豊富で、さつま揚げだけでも、野菜天、しょうが天、あさり天とありましたし、餃子揚げやシュウマイ揚げなど、スーパーではあまり見かけないものもありました。

では、様々な種類があって、おいしいおでんを売っているおでん種屋はどうして数を減らしているのでしょうか。

これはスーパーチェーンの拡大に伴い、おでん種屋が存在する商店街全体として客足が遠のいてしまったことが大きな理由の1つでしょう。やはり、輸送ルートの最適化や仕入れの一元化によるコストカットが可能なスーパーの方に経営面での優位性が存在するのは否定できません。さらに、コストカットは低価格につながり、安価で商品を買えるようになるという点では消費者にとって良いかもしれません。しかし、それがいつも商品を買う人にとってプラスに働くわけではないと思います。スーパーでは代わりに店主との会話がなかったり、パッケージで売られているために毎回自分の欲しいものに合わせておでんの具の内容を柔軟に変化させられなかったりすることが往々にしてあるからです。それでも低価格であることや、おでん以外のものも同じ場所で買えてしまうことはとても魅力的で、実際自分も普段はスーパーで買い物を済ませてしまっていました。

それでも、たまには今回のように商店街のおじちゃんに会いに行きたくなることがあります。そのため、好みでどちらも選べる選択肢がいつまでも残されていたらいいなあと個人的には思うのです。

こんなシチュエーションはおでん屋だけに限られないのではないのではないでしょうか。個人指導塾は必ずしも何か1つの教科に特化しているわけではありません。そのため、アナロジーとしては不十分であることは承知の上ですが、それでも少し強引にサカセルのような個人指導塾を1対1のコミュニケーションが残る商店街のおでん屋さん、大手予備校を1対多で標準化された商品を売るスーパーと考えてみることができると思います。自分は受験生時代にスーパーばかり利用していました。しかし、商店街のおでん屋さんも試してみたら実は後者の方が好みだったかもしれません。好みに合わせた選択をしなかったことよりも、そもそも、試してみようと考えなかったことは少し残念だったなあ、などと考えながらその夜食べたおでん屋さんのおでんは、種自体のおいしさと出汁のコクが相まって極上でした。

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H.Y

この記事を書いたのは...

H.Y

パリ政治学院修士1年
ハンドボール、スカッシュ、尺八と
マイナーなものをせめがち。

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