今年も例年通りの出題傾向でした。解きながら学べる、楽しい問題です。
◎読解
麻布中の最大の特徴は読解問題です。「リード文で説明された内容を読み取って記述で答える」パターンがいちばん多く、今年も大問[2]と[4]で多く登場しています。設問に該当する内容をリード文から探して答える国語的な要素の大きい問題ですが、内容を理解できないと解くのが難しいため科学的思考力が求められます。
◎誘導
穴埋め形式で語句を埋めていき(選択肢/自分で考える の両パターンあり)誘導に従っていくパターンです。男子校では出題されることが少ない、麻布ならではの問題です。今年は大問[1]と[3]で登場しました。
◎記述問題と選択問題
記述問題より選択肢から該当するものを選ぶ選択問題の方が難しいのが麻布中の特徴です。記述は受験生が考えられる/書ける問題だから記述問題になっており、受験生が一人で考えることが難しい問題が選択問題になっていることが多いです。今年も大問[4]にその傾向が見られます。
◎計算問題
計算を要する問題は算数の文章問題のようなものが多く、特別な解法知識は必要ありません。
◎時事問題
天体や感染症など、時事ニュースに関連する問題がよく登場します。今年は大問[4]新型コロナウイルス感染症が出ました。ある程度知っていることを前提として作問されたようで、例年の生物の問題より難しめでした。
◎求められる力
一にも二にも読解力です。毎年いろいろなテーマが選ばれるため、科学的な雑学があると有利ではありますが実際に合格している子に雑学タイプが多いわけではなく、読める子が合格している、という印象です。一般的な模試と内容が異なるため、他の学校の理科は出来ないけれども麻布の問題なら解ける子はいます。真面目な子より頭のいい子を取る入試問題です。
◎楽しんだ者が勝つ
麻布中に合格した生徒や卒業生に聞くと「理科の問題は解くのが楽しかった」という人が多数派です。リード文から該当する箇所を見つけてこれだ!と答えたり、リード文のルールを使って考えるのを楽しんだり。ゲームやパズルのような感覚のようです。
この先の解説が楽しみ方のヒントになれば幸いです。
問題の分類
読:読解問題
誘:誘導問題
考:思考問題
記:記述問題
計:計算問題
問題のレベル
〇:絶対に取りたい
△:この中から半分くらい取りたい
×:捨ててもよい
[1]揚力
物理は誘導で揚力を考えさせる問題が登場しました。とても麻布らしい、難しいけれども楽しい問題です。
問1 読 誘 考 ①~④:〇 ⑤⑥:△
①「旗がB側に曲がってじゃまをする」とありますのでB側の風は元の風と比べると「遅い」が選べます。
②B側が遅くなったので、A側はB側より「速い」が選べるでしょう。
③④ ①②と同様に考えて ③遅い④速い
⑤⑥ここがこの大問全体のいちばんポイントになっている問題です。
旗にはたらく力は
「速い方」→「遅い方」なのか
「遅い方」→「速い方」なのか
ヒントは「ⓑと©がくり返されることから」です。
ⓑ→©になるのです。図にかき込みをして考えるのがよいでしょう。
ⓑ→©になるためには図のようにB側(遅い)→A側(速い)に力がはたらくことが分かります。
解答 ①ウ②ア③ウ④ア⑤ウ⑥ア
問2 読 誘 考 ⑦:〇 ⑧:△ ⑨:△
今度は自分で語句を考える問題ですが、⑦~⑨までは抜き出しです。
⑦傘の「上側の表面」と「内部」でどちらの空気の流れが速いか?これは「上側の表面」だとすぐに分かるでしょう。
⑧⑨これは問1の⑤⑥が分かっていれば解けます。遅い方→速い方に力がはたらくので
「内部」から「上側の表面」に力がはたらきます。
⑩そしてこの力が「大きくなる」と傘がひっくり返ることになります。
解答 ⑦上側の表面 ⑧内部 ⑨上側の表面 ⑩大きくなる
正しく考えられていると、なるほど!風があるときはこういう原理で傘がひっくり返るんだ!と楽しく気持ちよく進んでいきます。
問3 読 誘 考 ⑪:△ ⑫:△ ⑬:〇
いよいよ揚力に入ってきました!
⑪⑫翼の形は、図2ⓑと対応しています。このことから、翼の下側の風は元の風より「遅い」と判断でき、上側の風は下側の風より「速い」と判断できます。
⑬力は遅い方から速い方へはたらきますから、下から上の「オ」になります。
解答 ⑪ウ ⑫ア ⑬オ
飛行機が上向きの力を受けるしくみが分かってしまいました!今まで⑤⑥で間違っていた場合も飛行機が上向きの力を受けることは分かるのではないでしょうか。このあたりで気付いて直せる→分かる子もいると思います。
問4 読 誘 考 〇
ヨットの帆の左右の風の速さ。これも図2のⓑに対応しています。左側が遅く、右側が速くなっています。
解答 右側
問5 読 誘 考 作図 △
遅い方から速い方へ力がはたらきます。図5の飛行機の図を参考にするとかきやすいでしょう。
解答 (左側の図の→)
問6 読 誘 考 ⑭:△ ⑮×
⑭ヨットの帆が受ける力は問5で考えた力ですから、右向きです。
⑮ヨットの船底にある板のようなもの…帆に受ける力で右に進もうとするが、船底にあるこれによって右斜め前に進めるらしい。これはリード文に直接的なヒントはありません。当てはまりそうな理由を自力で考えます。「水の抵抗を受ける」ため、が自然でしょう。
解答 ⑭右 ⑮水の抵抗を受ける
問7 考 記 役立つこと:△ 理由:△
ここもリード文にヒントはありません。ただ、そんなに難しくないので考えつく受験生も多いのではないかと思います。
いちばんのヒントは図9でしょう。Jがないとすぐ転覆してしまいそうです。
解答
役立つこと:転覆しにくくなる
理由:おもりになって重心が下がるから
[2]発酵
生物と化学の混合読解問題です。発酵食品は今注目されていますので、時事問題的な要素もありますが、内容は麻布らしい読解問題です。リード文に答えが書いてあることを確認してください。
問1 知 〇
五大栄養素を答える問題。理科のテキストにも一応載っていますが、家庭科や一般常識といってもよいでしょう。数少ない知識問題にこれを持ってくるのが面白いですね。
解答 ビタミン
問2 読 〇
完全な読解問題です。五大栄養素から甘味を探しましょう。
「炭水化物(でんぷんや砂糖)」と5行目にあります。砂糖は甘味ですから甘味は炭水化物と分かります。
旨味は一番下の行です。少し上に「アミノ酸の一種であるグルタミン酸を食べたときに感じる味」とありますのでたんぱく質が選べるでしょう。受験生ならたんぱく質は分解されるとアミノ酸になることは常識ですが、7行目をみると「たんぱく質はアミノ酸が…」とありますので覚えていなくても解けます。
解答 甘味 炭水化物 旨味 たんぱく質
問3 読 考 記 〇
発酵食品が消化・吸収しやすい理由。リード文の麹菌の説明部分がいちばん分かりやすいでしょう。「でんぷんを分解してブドウ糖にする酵素や…」の部分です。消化というのは食べ物を細かくして吸収しやすくすることです。でんぷんが消化されるとブドウ糖になることは受験生なら覚えているでしょう。本来は人体の消化酵素が行う消化を麹菌が行ってくれているので消化・吸収しやすくなる、と読み取れます。人体の細かい知識は問われていませんが、消化とは何なのか?は理解していないと解きにくいでしょう。過去問演習以前の勉強から、意味をよく理解しておくことが重要になります。
解答 栄養素が微生物によって分解されているから
問4 読 考 記 〇
これはほぼそのままの答えが書いてあります。米味噌のつくり方の(4)です。「塩を加え、麹菌を含む多くの微生物が死滅する濃度にし」でしょう。
解答 塩分濃度が高く、多くの微生物が死滅するから
問5 読 考 計 〇
化学の計算問題が始まりました。
炭素・水素・酸素に分けて考えます。「原子は増えたり減ったりしない」とあるので矢印の左側と右側で各原子の個数は同じになります。
炭素 6個→2個 2個 X個 X個
あと2個なのでXは1個ずつになります。
水素 12個→6個 6個 Y個 Y個
右側にすでに12個あるのでYは0個になります。
酸素 6個→ 1個 1個 Z個 Z個
あと4個なのでZは2個ずつになります。
Bは炭素1個と酸素2個が結びついた物質、二酸化炭素になります。リード文からもBは気体、とあるので自信を持って答えられるでしょう。
解答 X 1 Y 0 Z 2 二酸化炭素
問6 読 考 計 〇
ここは簡単です。リード文から炭素原子・水素原子・酸素原子1個あたりの重さの比が
12:1:16ですから
ブドウ糖1分子 12×6+1×12+16×6=180
エタノール1分子 12×2+1×6+16×1=46
B 1分子 12×1+16×2=44
180:46:44=90:23:22
解答90:23:22
問7 考 計 ×
ここは少し難しい計算問題です。
問6の比の値は重さなのでこれを反応式の下に書き込んでみます。
ブドウ糖→エタノール+エタノール+B +B
90g 23g 23g 22g 22g
Bが44g発生していますから、この値がそのまま使えることが分かります。
つまり、ブドウ糖は90g分解され、エタノールは46g出来ています。
ブドウ糖の重さを求めます。
20%の水溶液でしたからはじめは
1000×0.2=200(g) ありました。
ここから90g分解されたので
200-90=110(g) 残っています。
水溶液の重さは
気体が発生した分軽くなっていますので
1000-44=956(g) です。
この中にエタノール46g含まれていますから
46÷956=0.0481…4.8(%)になります。
解答 ブドウ糖110(g) エタノール4.8(%)
[3]天体(月と惑星)
この大問がいちばん一般的な中学入試問題です。他の学校で出題されていてもおかしくありません。今までの勉強が生きる問題です。誘導問題もありますが、難度的には易しめ。ここで確実に得点したいところです。
問1 知 〇
南の空に上弦の月が出ていたときの太陽の位置。西ですね。季節によって南よりになったり北よりになったりしますが、「9月半ば」とあるので秋分の頃、日の入りは真東なので悩まずに答えられるようになっています。
解答 カ
問2 知 考 〇
地球から見た太陽と満月の角度。問題が読めれば解けます。
解答 180(度)
問3 知 考 〇
金星の満ち欠け。説明はありますが、金星の満ち欠けについてはどの塾でも習いますので、知っている考え方を使って解けばよいでしょう。
解答 X C Y D
問4 考 △
ここから一気に麻布らしく、レベルが上がって楽しくなってきました。選択問題で内容が難しくなるのが麻布らしいところです。
条件1と条件2を少しかみ砕きます。
条件1:地球から見て太陽と金星は近い位置に見える→180度になることはない。
条件2:金星の大きさが変化する→地球と金星の距離が変化する。
条件1 地球からみて金星と太陽の位置が180度になっていたら×です。180度になることがあるかどうか調べます。アとウとエは図のときに180度になってしまいます。
イでは金星がどの位置に来ても金星と太陽は近くに見えます。
イが条件2も満たしていればOKです。図のように地球と金星の距離は変化しています。
解答 イ
問5 知 考 〇
金星が最も地球に近づくときに暗く見える理由。月でいうと(新月)と同じ位置関係…簡単ですね。
解答 新月
問6 読 考 〇
リード文から「近づくと明るく見える」とあるのでグラフの山から山までを数えます。グラフの始まりがちょうど山になっているので次の山までを数えればよいだけです。13か月くらいです。
解答 イ
問7 読 誘 計 (あ)(い)〇 (う)~(お)△
穴埋めで誘導しながら木星の公転周期を求める、麻布らしい楽しい問題です。
(あ)1か月で地球が動く角度 直前に「地球の公転は12か月で360°なので」ととても親切に誘導してくれています。
360÷12=30(°)
解答 30(°)
(い)地球と木星が動く角度の差、1か月での差 内容が難しくなってきましたが「360°を地球と木星の会合周期でわると」とあるのでそれをしましょう。
360÷13=27.69… 27.7(°)
解答 27.7(°)
(う)木星が1か月に動く角度
(あ)より地球が1か月に動くのは30°
(い)より地球と木星が1か月に動く角度の差は27.7°
よって木星が1か月に動く角度は 30-27.7=2.3(°)
解答 2.3(°)
(え)木星が360°公転するのにかかる時間
(お)より木星は1か月に2.3°動くので
360÷2.3=156.5…157(か月)
解答 157(か月)
(お)年に直す
157÷12=13.0…13(年)
解答 13(年)
[4]感染症
新型コロナウイルスについての出題です。いつもより説明が少なめで、内容も難しめでした。社会全体、小学生の生活にも大きく影響を及ぼしたテーマのため、ある程度知っているという前提で作問したのかもしれません。解説は出来る限り読解で解いていますが、内容が正しければ知識で解いても構いません。
問1 読 考 △
4行のリード文を論理的に読み解く問題です。
生きている細胞すべてで行われているはたらき。
リード文に「(1)~(3)のすべてのはたらきは…(2)で自らつくった…によって行われます」とあるので、(2)はすべての細胞で行われていることが分かります。
また「(2)は(1)で得たエネルギーを利用」とありますので、(1)もすべての細胞で行われていなければなりません。
(3)は「生きている細胞の一部でのみ行われます」とあるので簡単に省けます。
解答 エ
問2 読 考 △
これも、直前の6行のリード文から考える問題です。ただ、新型コロナウイルス感染症からの知識があると少し楽に解けたでしょう。
ア 最後に「症状がみられないこともあります」とあるので×
イ リード文から「感染→細胞が壊れる→からだがやっつけようとする→症状が出る」という流れが分かります。感染がなければ症状は出ません。〇
ウ 「症状がみられないこともあります」から、症状がみられなくても病原菌を外に出している可能性が考えられます。また、リード文から読み取れなくても無症状の人が他者に感染させてしまうことがあるのは知っているでしょう。×
エ 「病原体が体内に侵入し、増えることを感染」とあります。病原菌が体内に侵入しても、増えなければ「感染」ではありません。〇
解答 イ、エ
問3 読 誘 考 〇
図1を見ながら読むと簡単に当てはまる語句が見つかるでしょう。
細胞へ侵入するには、ウイルスの(表面たんぱく質)の構造が細胞の表面の構造と
細胞内に入ったウイルスの(遺伝物質)は、細胞自身の遺伝物質と同様に
下線部を対応させると分かりやすいです。
解答 A表面たんぱく質 B遺伝物質
問4 読 考 △
リード文から該当箇所を探し、正誤判断をする問題。難しめです。
ア 最後の方に「ウイルスに侵入された細胞は、ウイルス生産工場となりウイルスがいっぱいになると感染細胞は壊れて」とあります。侵入後すぐに壊れるわけではないと分かります。×
イ 「生きた細胞の(1)~(3)のはたらきを利用して増えるのです」とあります。×
ウ おかしくはなさそうなので保留
エ 感染細胞は生きた細胞なので問1で答えたように必ず(1)を行います。×
よって、ウが正しい。
解答 ウ
問5 読 考 △
症状がやわらぐ時期。
(6)で病原体が「やっつけられて」います。ここで問1の後のリード文を見ると
「やっつけようとするはたらきを強めます→鼻水などの症状が強くあらわれます」
つまり(6)の段階が一番強く症状が出ていることになります。症状がやわらいでくるのは(7)が始まったころと考えられます。
解答 (7)
問6 読 考 記 △
これはリード文ではなく問題文にヒントがあります。
「抗体は細胞内には入れませんが」です。細胞内に入っている病原体は細胞が壊れて外に出てこない限り残り続けることになります。
解答 抗体は細胞の中の病原体はやっつけられないから
問7 読 考 記 △
体内の損傷を大きくする病原体の性質をリード文から探します。問題の近くにないところが意地悪です。
リード文は
・生きた細胞の特徴(1)~(3)
・感染と症状
・ウイルスの増えるしくみ
・免疫
の順に書かれています。ありそうなのは、2番目ですね。ここから「損傷」に近い言葉を探します。
「この病原体が増えるほど、体内の細胞が壊されてしまいます」ここでしょう!
解答 増えるほど、体内の細胞を壊す
問8 考 知 記 △
ここはほぼ知識問題です。
手を洗ったり、消毒したりする理由を麻布志望生なら知っているでしょう。理由も考えずに「言われたからやっている」は麻布中が求める生徒から離れている気がします。
ウイルスがついた手で口や鼻を触ったり、ウイルスがついた手で触ったものを食べることで、生きた細胞にウイルスがくっついてしまうのです。
解答 手指で鼻や口を触ることで、生きた細胞にウイルスがくっついてしまうから
問9 読 考 〇
問題文にヒントがあります。「使わせず休ませすぎると弱ってしまいます。また、激しく使いすぎると壊れてしまいます」これを使って考えましょう。常識でもかなり解けます。
ア 休ませすぎると弱ってしまうので×
イ 〇
ウ 激しく使いすぎると壊れるので×
エ 〇
オ 激しく使いすぎると壊れるので×
カ ×
キ 〇
解答 イ、エ、キ
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