合格最低点 105/200 点
算数の想定合格点 40点
2023年の東大合格者数は79名で第4位。
東大合格者数ランキングでどこよりも長くトップテンに入り続ける屈指の進学校である麻布高校。
華々しい進学実績はさることながら、その魅力は自由な校風で培われた個性を武器に各界で活躍するOBの数々。
学術界のみならず、様々な世界にトップランナーを輩出していることでも知られています。
もちろん中学受験においても最難関校の一角として君臨しています。
各科目においてその出題は独特で、特に「読む力」と「書く力」は共通して問われています。
算数においては「比と割合の文章題」「速さ」「平面図形」などの分野において「比への習熟度」が問われ、また小問のつながりを利用した誘導形式が特徴として挙げられます。
さて、ここからは2023年の算数の問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを考えていきましょう。
今回使用する指標
〇:麻布中合格のため必ず正解したい問題
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えたら充分
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
仕事算の基本問題です。
「蛇口2つ-排水口2つ」で1分あたりに増える量は「蛇口1つ-排水口1つ」で1分あたりに増える量の2倍になることは自明でしょう。
例年通り1問目は易しく、多くの受験生が安心して解き始めることが出来たのではないでしょうか。
(2) 〇
「蛇口3つ-排水口2つ」で1分間に増える量を求め、あとは消去算として処理しましょう。
数値もあまり複雑にはならず、この問題も自信を持って解答用紙に正答を記入できた受験生が多かったことでしょう。
比較的易しめの大問なので麻布中合格を目指す受験生ならば、数分以内に完答しておきたいところです。
大問2
(1) 〇
四角形ABEFが長方形になることに注目しましょう。
△PABと△PEFの和は等積変形により長方形ABEFの半分になることが分かり、また解答例のように正八角形ABCDEFGHの2/8になることも分かります。
(1)までは易しいでしょう。
(2) △
(1)を利用して考える、麻布中の算数では頻出の誘導形式の問題です。
解答例ではアイウエオと記号をふり、消去算の形で整理しました。
アイオの和やウエの和が(1)を利用して7.5㎠になることに注目しましょう。
適度な難度で合格者と不合格者の得点差がつきやすい問題だったと言えるでしょう。
なおこの問題は正八角形がテーマでしたが、麻布中では校章にちなんだ正六角形の問題が頻出です。
過去問を通して様々な着眼点に習熟しておきましょう。
大問3
ア 〇 周 ×
「円を折った時に弧が中心に重なる⇒正三角形の利用」や「半径は同じ⇒二等辺三角形の利用」など中学受験頻出の解法を組み合わせて考えます。
「点Aが中心Oと重なるように折った時の折り目」と「半径OA」が直角に交わること(OとCに関しても同様です)に気づけると、角アを求めることも易しいでしょう。
一方、周の長さは注意すべき点が多く難しめです。
それぞれの弧において、どこが中心で中心角が何度になるのか、丁寧に追っていきましょう。
右上や右下のもとの円周上の部分の足し忘れにも気をつけましょう。
もし答えを出しきれなかったとしても、分かった角度までは明示しておいて、部分点を拾っておくことが大切です。
時間がかかる割に完答は難しいので、途中まで取り組んだら後回しにするという判断も賢明ですね。
大問4
(1) 〇
「金額」と「濃さ」のそれぞれで考える平均算です。
まずは「金額」からAとCの重さの比を求め、次に重さの比から「濃さ」の比を求めます。
麻布中合格を目指す受験生なら確実に正解すべき問題です。
(2) 〇
(1)と同じようにBとCの重さの比を求めます。
麻布中合格を目指す受験生の多くが「きっと(3)の誘導になっているんだろうな」という視点を持って取り組み、正解できたのではないでしょうか。
(3) △
(1)(2)と同様に100gあたりの原価が110円になっていることから、(1)と(2)が誘導になっていることに気づきましょう。
「(1)の濃さと(2)の濃さを混ぜて22%にしたい」と考えられれば、決して難しくはありません。
(3)だけで問われるとなかなかの難問でしたが、今回は丁寧な誘導になっているので、形式に慣れている麻布中合格者の正答率は高かったものと思われます。
大問5
(1) 〇
題意の確認問題です。
中心の立方体が取り除かれるまでに、どのような順に立方体が取り除かれていくのか例を参考にして考えましょう。
当然ながら(2)を解くための誘導になっています。
(2) ×
245を素因数分解することで、積が245になる3辺の長さの組み合わせは容易に求めることが出来るでしょう。
ここまでで部分点を確保することが前提です。
回数は「中心が残る」ことを(1)からの誘導として考えましょう。
(7,7,5)の場合は、さすがに少し考えにくいかもしれませんが「5段のうちの真ん中の段の7×7の正方形」に注目出来れば、正解のチャンスはありそうです。
この大問を完答できると合格をグッと引き寄せられたと言えるでしょう。
大問6
(1) 〇
麻布中の算数の最頻出テーマの1つである「調べる」⇒「ルールに気づく」⇒「ルールを利用する」という規則性が最後の大問として配置されました。
(1)は題意の確認です。
まずは地道に計算して、表を埋めていけると良いでしょう。
確実に正解し、点数を拾っておく必要のある問題です。
(2) △
分母が64の列を縦に順に埋めていくと1250ずつ増えることが分かります。
また1250×8=10000より、8個=16増えるごとに周期になっていることにも気づきたいところです。
当然(4)につながる誘導になっています。
(3) △
(2)で表を埋めていると〈9/64〉=625が見つかります。
表を横に見ていくと2で割った数の右端の4個を順に書き出していくことで、答えを求めることが出来るでしょう。
こちらは4個ずつの周期になっています。
(4) ×
麻布中の算数の最後の問題らしい、誘導に沿ったまとめにあたる問題です。
まずは小数第一位が1になるということから「う」が205以上になることに言及し、部分点を拾っておきましょう。
続いて〈1/2048〉〈3/2048〉と調べていくと、分母が32の時と同じ並び方だとすぐに気づくことが出来るでしょう。
〈11/2048〉の時に9375となり、以降は8個16ごとに9375になることを利用して答えを求めることが出来ますね。
総評
このように2023年度の麻布中の算数の出題は、1枚目に大問3つ、2枚目にも大問2つ、1枚目にも大問1つという麻布中の算数としては、標準的な構成になりました。
麻布中の最頻出テーマの1つである「速さと比」が出題されなかったことは大きな特徴として挙げられますが、その他の出題分野は比の文章題や平面図形、規則性などで例年通りでしょう。
麻布中の算数の大きな特徴である「誘導形式」に関しても、大問2・4・5・6は誘導形式が色濃く、麻布中の対策を充分に重ねてきた受験生にとっては、比較的努力が報われやすい出題だったと言えるでしょう。
合格のためには〇の箇所を確実に拾って30点弱を確保し、その上で△の箇所を正解したり部分点を拾ったりして、40点くらいが必要だったと言えるのではないでしょうか。
特に2023年は大問3や大問5(2)の部分点の獲得が鍵になっていたかもしれません。
2024年以降に麻布中合格を目指す受験生の皆さんにとっても参考になることの多い出題でしたね。
麻布中の算数は「比」と「誘導」です。
過去問演習を通して「こう取り組めば30点を下回ることは絶対にない!」と言い切れるような麻布中合格への戦略を確立しましょう。
にほんブログ村にも参加しています。ぜひ下のバナーをワンクリックで応援もお願いします!