合格者平均点 66.6点
受験者平均点 57.2点
想定合格点 60点
自律学習サカセルからもほど近い駒場東邦高校。
「面倒見も良い」 「理系にも強い」 「設備も充実」 「アクセスも良い」 その上で「進学実績も全国屈指」という男子進学校です。
高校募集をしない完全中高一貫校なので、中学受験においても最難関校の一角として知られ、各科目で課される特徴的な問題に腕に覚えのある男子受験生たちが挑戦しています。
特に2024年の入学試験では、2023年春の驚異的な大学合格実績を受けて例年以上の激戦となりました。
ここからは、そんな2024年の駒場東邦中の算数の問題を通して、どのような戦略で取り組めば合格を勝ち取ることが出来たのかを考えていきましょう。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、後回しにしてしまって問題ない
として1問ずつ見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) ① 〇 ② 〇
毎年のように年号にちなんだ整数問題を課す駒場東邦中の算数の入試問題。
2024年は最初の問題で不定方程式をテーマに課されました。
2024=2×2×2×11×23と素因数分解できることは2024年の受験生にとっては常識でした。
幸先よく正解できた生徒が多かったのではないでしょうか。
②も①の結果を利用するだけで、また答えを1通り出せば良いだけなので易しいです。
解答例では23=8+15と分解することで、条件に合う式に変形しました。
(2) △
数と図形に振り切った出題で知られる駒場東邦中の算数ですが、例外として変則的な時計算は時々出題されるテーマです。
この問題の条件もあまり見たことがないとは思いますが、まずは条件に合うように「こんな感じかな…」という図に落とし込んでみましょう。
20分で長針が120°短針が10°動いたことを図に整理出来れば、もとの短針と長針の間の角度を求められますね。
(3) ① △ ② × ③ ×
「バーンサイドの補題」と呼ばれる対称性がポイントになる図形の場合の数です。
戦慄の低得点勝負となった2022年の駒場東邦中のほか、近年では桜蔭中や豊島岡女子学園中でも出題されています。
適切に場合分けが出来たとしても注意すべき点が非常に多く、また答えのみしか問われていないので、試験では①だけ手をつけて、残りは後回しにした方が賢明でしょう。
(4) ① △ ② △
「平面図形と比・相似」も駒場東邦中の算数における最頻出テーマの1つです。
①は辺BAおよび辺FDを上に伸ばすことで大きな正三角形を作ることが出来ることに気づきましょう。
30°60°90°の直角三角形も利用する学習効果の高い問題です。
与えられている図がやや不正確ですが気にしすぎないようにしましょう。
②は三平方の定理の証明ですね。
駒場東邦中の算数では昔から「数学」の「証明」っぽい問題が時々出題されています。
ただあくまでも「算数」の試験なので厳密さは求められないでしょう。
「どこが減って、どこが増えたのか」を①を用いて自分の言葉で表現できれば充分です。
2024年の大問1はやや難しめの出題となり、2年前の2022年の恐怖を思い出した受験生も多かったかもしれません。
大問2
(1) 〇
正多角形の内角の和を公式通りに求めるだけの問題です。
駒場東邦中合格を目指す受験生にとっては非常に易しく、ここでようやく一息つくことが出来たのではないでしょうか。
(2) 〇
問題文を読んだだけでは状況がよく分からないので、まずは条件に沿って正十一角形の頂点を中心とする円をいくつか描いてみましょう。
すぐに「正十一角形の内角から60°を2つ除いた角を中心角とする、半径6cmの扇形の弧の11個ぶん」ということが分かるでしょう。
なお中心角は個々に計算するのではなく、合計で何°になるかを考えることで負担を軽減しましょう。
(3) △
問題文を読んだだけでは状況を把握しにくいものの、(2)で正しく図を描けていたら充分に勝負になります。
結局イは「正三角形が11個と小さいおうぎ形が11個」となり、「ウは正三角形が11個と大きいおうぎ形が11個」と分かります。
問われているのはイとウの差なので、おうぎ形の面積の差を求めれば良いと分かりますね。
適切な難度で過去問との類似性も高いので、駒場東邦中合格を目指す受験生なら充分に完答するチャンスもあった問題です。
大問3
(1) 〇
上から1個、3個、5個…と増えていく奇数の等差数列の和を求めるという基本問題です。
「1から順に奇数を足していくと、和は平方数になる」という知識も、駒場東邦中合格を目指す受験生にとっては常識でしょう。
(2) △
どの塾のテキストにも掲載されている「正方形を数える」タイプの問題を下敷きとした「図形と場合の数」の応用問題です。
2cm、4cm…と正方形の1辺の長さで場合分けをして、丁寧に調べましょう。
それぞれの場合の個数は比較的きれいな規則で数えられました。
適度な難度で、注意力や作業量で差のつく問題でした。
(3) ① △ ② ×
①は(2)で求めた「ベースになる正方形」をどう分けるか?がポイントです。
(2)が出来ていなくても正解するチャンスがありますし、また1つ抜けたとしても部分点が入る問題なので積極的に取り組みましょう。
②は「(2)の中にある(3)①の図形」を数えるほか「ズラして条件に合うもの」にも注目する必要があります。
非常に高度な処理能力が求められる一方で、答えだけしか問われていないので、後回しにしたほうが賢明でしょう。
大問4
(1) 〇
「平方数の和」を求める特殊な解法を問題文に沿って作業して理解を深めていく、駒場東邦中の算数らしい整数の性質の問題です。
なお全く同じテーマが2019年の浅野中で課されているので、類題を経験したことがある生徒も少なからずいたかもしれません。
今春に駒場東邦中に合格した僕が指導していた生徒も、まさに直前期の1月に2019年の浅野中の過去問に取り組んだばかりで「同じ問題が出た!」と驚いていました。
さて(1)ですが問題の指示に沿って作業をするだけなので易しいです。
(2) △
(1)の誘導に乗るためにも、まずは式を立ててみましょう。
2×2+4×4+6×6+・・・+□×□=2024
この式を4で割ると(1)のウと全く同じ式が出ることが分かります。
数の性質は駒場東邦中の算数の最頻出テーマの1つです。
充分に対策を積んできた受験生なら、この問題でも、最後の□×□を4で割った式を(□÷2)×(□÷2)=11×11と上手く置き換え、正答までたどり着くことが出来たのではないでしょうか。
(3) △
(2)と同じように、まずは条件に沿って式を立ててみましょう。
3×3+6×6+9×9+・・・+□×□=99999に近いもの
9で割ると、
1×1+2×2+3×4+・・・+△×△=11111に近いもの
と言い換えることが出来ますね。
あとは(1)の方法を用いて近い数を丁寧に調べていくだけの問題です。
作業量は多くはなりますが、算数男子にとって捨て問ではありません。
総評
例年の駒場東邦中の算数は、受験者平均点が75点前後、合格者平均点が90点前後という男子難関校の中では高得点勝負になることが多い難易度設定になっています。
一方で最初から最後まで気を抜けない出題だった2024年の駒場東邦中の算数は、受験者平均点が57.2点で、合格者平均点が66.6点という例年よりかなり低めの水準となりました。
たしかに難度は高かったものの、駒場東邦らしさは炸裂しています。
例年通り「数」と「図形」に振り切った出題で、特に「図形の場合の数」が複数題出題されたのは駒場東邦らしい出題と言えるでしょう。
また「数学っぽい」出題が散見されることも駒場東邦中の算数の特徴です。
特に2024年は「三平方の定理の証明」「バーンサイドの補題」「平方数の和」など、数学を算数に落とし込んだ問題が多く、数学っぽい問題が数多く出題されて物議を醸した平成中期を彷彿とさせました。
ここからは2024年の駒場東邦中の算数における合格ラインとクリアの仕方を考えていきましょう。
平均点が低いこの年度なら、合格ラインは半分の60点で問題ありません。
まず〇の箇所の大問1(1)①②、大問2(1)(2)、大問3(1)、大問4(1)を確実に正解することが前提でしょう。
ただこれだと50点に満たないくらいしか得点にはならないので、△から更に数問正解する必要があります。
△の中で比較的得点しやすいものとしては大問1(2)(4)①、大問2(3)、大問3(3)①、大問4(2)あたりでしょうか。
自身の得意なタイプの問題を見抜き、答えを出し切りましょう。
また駒場東邦中の採点は比較的部分点を与えてくれるとも言われています。
考え方を書く問題や複数の答えがある問題には積極的に取り組み「点数をもぎ取ってやる!」という意欲も見せたいところですね。
2025年以降に駒場東邦中合格を目指す受験生は、とにかく駒場東邦中で頻出の「数」と「図形」の学力を磨くことが大切です。
数の問題では「素因数分解を利用した整数の性質」や「場合の数」に親しんでおけると良いでしょう。
また来年の2025の年号にちなんだ問題は、ほぼ確実に何らかの形で出題されるので直前期には様々な予想問題に触れておきたいところです。
図形に関しては「平面図形と比・相似」「図形の移動」「立体図形の切断」等が頻出です。
「平面図形と比・相似」や「図形の移動」は、数の分野の難問と比べると取り組みやすいことも多いので、塾のテキストや併願校の過去問で充分に練習を重ねて、得意意識を持っておきたいところです。
過去問との類似性も高いので、問題を絞って平成中期までドンドン遡ってみても良いですね。
立体図形に関しては2024年は出題されませんでしたが、駒場東邦中の算数においては最重要テーマの1つです。
立体図形の複数回切断まで、解法を理解しておきましょう。
このように駒場東邦中は独特の出題がされる分だけ個別の対策が活きる学校です。
「塾のテキストだけで大丈夫?」「図形や数には才能が無くて…」と悩んでいるなら、お気軽にご相談ください。
毎年のように駒場東邦中に合格者を輩出している自律学習サカセルの講師陣が、具体的な対策を一緒に考え、合格まで伴走します。
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