受験者平均点 38.6 点
合格者平均点 49.5 点
算数の想定合格点 45 点
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平成の31年間、東大合格者数で不動の1位であり続けた開成。
その合格実績はもちろん、生徒主体の活気あふれる運動会をはじめとする学校行事や、各界に有力者を輩出し続けている人材育成力など、様々な魅力で首都圏男子中学受験生の憧れとして君臨しています。
もちろん中学受験においても最難関校。
毎年1000名以上のトップ生たちが学力を競う激戦となっています。
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算数は難度や形式が年度によって異なることが特徴です。
たしかに「数」「立体図形」「速さ」などの頻出分野はありますが、「対策はこれ!」と決めかからず、様々な問題に対応できる学力を養っておくことが必要不可欠です。
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ここからは2020年の入試において、どのように得点できれば合格を勝ち取ることが出来たのかを見ていきましょう。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:差がつく問題なので、出来れば正解しておきたい
×:やや難度が高く、正解できなくても差はつかない
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
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大問1
△
「点の移動とグラフ」と「推理と論証」の複合問題です。
どこから手を付けたら良いのか見えにくい問題ですが、グラフの距離に注目しましょう。
「0~1分で2目盛りぶん先行した点を、1~2で3目盛りぶん多く進んで追い越す」ということに気づくことが出来ると、速さの差の比を利用して、解答例のように1~2、2~3、3~4のカードを決めることが出来ます。
あとはAとBが逆の場合を考えれば、作業量自体は決して多くは無い問題です。
完答できたか、ほぼ点数が入らないか、差がつく問題が大問1から配置されたと言えそうです。
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大問2
(1) △
やや題意を捉えにくいものの、決して難しくはない問題です。
点Pは、点Bと点Cがしばらく移動してから動き出すという意味を、まずは把握しましょう。
点Bは点Pが動き出してから12分後、点Cは点Pが動き出してから12+8+12=32分後を基準にして戻りましょう。
(2)と(3)の誘導になっているので、確実に正解しておきたい問題でした。
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(2) △
(1)を利用すると、点Bより点Cが48+72-64=56°前にいる時だと考えられます。
点Bのほうが点Cより速いので、差が360-56=304°になる時だと言い換えられれば、決して難しくはありません。
(3) ×
(1)(2)の誘導を利用して、丁寧に状況を追っていく難問です。
(2)の76分後を基準として、点Pが何分後にどこにいるのかを丁寧に記録していきましょう。
ポイントは④が何秒間か、という箇所です。
⑤で12秒間かけて点Pは点Bに移動するので、Bがあと6×12=72°の時だと考えましょう。
複数の点の動きを把握しなければならず、計算もやや煩雑なので、部分点を取るだけでも問題ないでしょう。
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大問3
(1) (ア) 〇 (イ) 〇
(ア)は28円を10円、5円、1円で分解するだけの不定方程式の基本問題です。
枚数が10枚までという条件に気を付けましょう。
(イ)は1円の枚数が3枚か8枚なので、基本的なつるかめ算として処理できます。
(1)は2020年の開成中の算数における数少ないサービス問題です、絶対に失点は許されません。
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(2) ① 〇 ② 〇 ③~⑥ △ ⑦ △ ⑧ △
①は389円を分解するだけの基本問題です。
②は金額の小さい硬貨から、両替できないように、はじめて11枚になるまで順に調べていきましょう。
③~⑥は「1円増えると1枚増える、ただし5の倍数の金額になる時は枚数が減る」ことを、表で整理していきましょう。
⑦と⑧は、やや難度が上がります。
ただ解答例のように50円、100円、500円で作ることが出来る金額を、枚数に注目して表で整理できると決して難しくはありません。
あとは50円未満と50円以上の金額部分での順列として処理できます。
決して易しい問題ではないですが、開成中合格者なら完答できた者も多かったのではないでしょうか。
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大問4
×
「日光は平行」を意識して思考を組み立てる、影の難問です。
「窓穴1]の影が底面の右寄りに出来ることから、正面から見て左上から右下に向かって光が差し込んでいることを、まずは理解しましょう。
ここからは解答例のように (右,奥,上) それぞれ何マスのところに窓穴の頂点が来るのか考えると良いでしょう。
この「座標」を用いる解法は高校数学で扱う「ベクトル」に近い考え方ですが、最難関校の立体図形の問題へのアプローチ法として、知っておきたいところです。
解答例のようにア・エとその影の座標を求めると、光は ( 1 , 1 , -1 ) で進むことが分かります。
あとは残り6個の頂点の影が、右 10、奥 10、上 0のいずれかに来る時を調べましょう。
類題を経験したことが無ければ、かなり難しい問題だったと言えそうです。
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このように2020年度の出題は、例年通り大問4題という構成でした。
ただ算数の典型題は僅かしか出題されず、いわゆる「思考力」を問う問題が配点のほとんどを占めたので、算数が苦手ながらもコツコツ努力を続けてきた受験生にとっては手ごたえを感じにくい戦いになったのかもしれません。
ただ受験者および合格者の平均点も、20年ほど前に開成中が平均点を発表するようになって以降、最低の数値となったので、自分が取れるものを見極め、確実に正解することが出来れば充分に合格ラインに乗せられたと言えるでしょう。
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ここからは開成中合格に向けての得点戦略を考えていきましょう。
今回、開成受験生なら確実に正解できるのは大問3の(1)と(2)の①②だけ。
ただ、これだけでは10点ほどにしかならないでしょう。
合格のためには、大問1か大問3で満点近く取って30/45、あとは大問2で 10/20 と、大問4で 数点/20 と言った得点パターンでしょうか。
1問完答して、あとは少しずつ得点を拾い集めることが出来れば、なんとか半分の得点には届かせることが出来るでしょう。
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来年以降も、この難度が継続されるかは分かりません。
ただ開成中合格を目指すなら、やはり最高難度の内容まで解きこなせるよう、算数の学力を高める必要はあるでしょう。
今回のような出題でも、満点を狙えるような受験生はいます。
やはり中学受験は算数で決まります。
努力を重ね、最高峰に立ち向かってください。
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