受験者平均点 93.1点
合格者平均点 110.9点
想定合格点 100点
100名。
2024年の大学受験界の最大のトピックとなった聖光学院高校の東京大学への合格実績です。
合格者数1位の開成高校を大きく上回る現役合格率も記録し、まさに東大受験史に名を残したと言えるでしょう。
聖光学院の凄みは、この驚異の進学実績をほぼ学校の勉強だけで残していることにあります。
首都圏や関西のトップ校の東大合格者の多くが、学校の勉強だけではなく塾も併用している現状の教育界に一石を投じたとも言えるでしょう。
この実績は聖光学院のカリキュラム設計の精度や教師陣の指導力の高さの証明に他なりません。
もちろん勉強だけではなく「紳士たれ」の校訓のもと、学年やカリキュラムにとらわれない「聖光塾」での探求型の学習や、音楽や芸術に触れる機会も多いことも聖光学院の魅力です。
豊かな人間性を養われた卒業生たちは様々な業界で活躍を見せています。
このような魅力にあふれた聖光学院は、もちろん中学受験においても最難関校の1つとして君臨しています。
ただ各科目の出題内容は、あくまでも中学受験の基礎に基づいた堅実な学力を測定するものになっています。
他のトップ校のように独自性が強く奇をてらった出題ではない「普通の」出題であることが、かえって大きな特徴だと言えるのではないでしょうか。
聖光学院中への合格を目指すならば、特別な対策を講じることよりも、まずは通っている集団塾の最上位コースを維持できるような学習を進めることが大切です。
「普通の」出題であるぶん逆転合格は決して多くはなく、各塾のトップ生たちが普段の力を発揮して合格を勝ち取っていくケースがほとんどです。
また聖光学院対策は基礎学力の向上に直結し、他校の準備にも役立つので併願パターンにも組み込みやすいことも魅力の1つかもしれません。
さて、ここからは2024年第1回の聖光学院中の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを考えていきましょう。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので、可能な限り正解したい
×:正解できる生徒は少数、後回しにする判断も効果的
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
2024年の聖光学院の第1回の算数の入試問題も、ごく普通の計算問題から始まりました。
1.375を分数に換算して計算しましょう。
□を求める逆算なので、答えが出たら代入して正解できていることを確認してから次に進めると良いですね。
(2) 〇
倍数の基本問題です。
15個ごとに区切って考えても良いですし、等差数列のように「最初の数」「最後の数」「個数」で考えても良いでしょう。
120がちょうど区切りになっているので、特にひっかけもありません。
(3) 〇
仕事算の基本問題です。
全体をA,B,Cの最小公倍数の600で設定すると計算負担も小さくなりますね。
何日「目」を聞かれていますが、聖光学院中合格を目指す受験生なら難なく正解することが出来たでしょう。
例年だと大問1で1つくらいは難しい問題が課されていますが、2024年の第1回は全て基本問題で構成されました。
落ち着いて取り組めた受験生も多かったことでしょう。
大問2
(1) 〇
1回の操作で縦が1/2倍、横が2倍になることは容易に読み取れます。
7回の操作の後の正方形の1辺を1cmと置いても、128cmと置いても良いでしょう。
2をn乗した数も受験生活を通して何度も計算してきて見慣れているはず。
(1)は特に難しくはない問題でした。
(2) △
1周の長さは「縦×2+横×2」で表せます。
横×2は必ず偶数になるので、1周の長さを奇数にするためには「7回目の操作後に縦の長さが~.5cmになれば良い」と言い換えられれば、正解は目前です。
聖光学院中合格を目指す受験生なら、正解できた者も多かったことでしょう。
(3) ×
何を手掛かりに解いていくのか、方針を立てにくい難問です。
「2:1が1:2になる時に周りの長さが変わらない」ことに注目出来れば「3回目と4回目が同じ時」と「4回目と5回目が同じ時」で範囲を考えることも出来るでしょう。
方針を立てにくく、また出た答えに確証を持ちにくいので、後回しにしてしまっても構いません。
大問3
(1) 〇
立方体の転がり移動の基本問題です。
正面から見た図で状況を捉えましょう。
正方形の対角線の長さは求まりませんが、対角線×対角線なら求まるというのは、聖光学院中合格を目指す受験生にとっては常識でしょう。
(2) △
想像力で解こうとしたり、1回1回見取り図を描きなおしたりするのは大変です。
サイコロを転がす問題のように、真上から潰した図で状況を捉えられると良いでしょう。
解法の選択で差がつく問題でした。
(3) △
操作1~4のそれぞれの状況を丁寧に追いましょう。
やや面倒ではあるものの、個々の動きは単純です。
(1)(2)を参考にして丁寧に取り組み、是非とも完答しておきたい大問でした。
大問4
(1) 〇
聖光学院中の算数で頻出の「複数人の旅人算」です。
(1)は少々面倒ではあるものの、題意の確認に過ぎません。
はじめの9分の後、4分×3を繰り返すことを意識できれば(2)(3)にもつながります。
(2) △
聖さんの4分×3の12分と光さんの12分で進む距離が同じであることに気づけると、はじめの9分の後は9~21分の状況を繰り返すだけだと分かります。
9分と21分の時点での2人の位置を求めるとそれぞれ75m差になるので、そこから聖さんが追いつく時間と追い越される時間を求められれば、その間は聖さんのほうが光さんよりも前にいたことが分かります。
着眼点もやや気づきにくく、処理量も少なくはないですが、聖光学院中合格を目指す受験生なら正解できた者も少なくはないはず。
最上位生の中では差がつく問題です。
(3) ×
(2)の聖さんが光さんより前にいる状況で、学さんがすれ違えば良いという問題です。
各周期の1.5分から10.5分までで成立するかを丁寧に調べていく問題ではありますが、34.5分~43.5分の状況以外は、計算するまでもなく条件には合わないことが分かります。
あとは34.5分後と43.5分後に学さんがどこにいるかを計算するだけです。
(2)も充分に難しく、計算結果の数字も汚くなってしまうので、正解できた受験生はさすがに少なかったと思われます。
大問5
(1) △
「グラフの読み取り=データの分析」という大学入試共通テストや、国立中、公立中高一貫校などで散見されるテーマが2024年の聖光学院中の第1回の最後の大問で課されました。
(1)は①を選びたい気持ちも分かりますが「変化の量が同じなら分母が小さい方が、差の占める割合は大きい」と考えましょう。
100⇒150⇒170⇒190等、具体的な数値を設定しても良いですね。
(2) 〇
具体的な%が与えられているぶん(1)よりも解きやすいでしょう。
1月の売り上げを100として、5月までの売り上げを求めましょう。
落ち着いて問題を読むことが出来ていれば、聖光学院中合格を目指す受験生なら確実に正解できる問題です。
(3) △
「1月と3月が同じで、2月が多い」という比較的単純な状況ですが、丁寧に検証しないと意外に間違えやすい問題です。
極端な数値を設定することで解きやすくなるでしょう。
(4) △
何度も1.05倍しつづけることは大変なので、だいたいの数で考えると良いでしょう。
解答例では3ヶ月で1.2倍以上⇒次の3ヶ月(=6か月)で1.44倍以上⇒…と3ヶ月ごとに考え、12ヶ月で2倍以上になると考えました。
「2」つと設定されているので、条件が相談する「①と②」「③と④」から1つずつ選ぶ、と考えると少し楽かもしれません。
(5) 〇
12ヶ月の具体的な数値が与えられているので、状況を捉えやすい問題でしょう。
12ヶ月の平均が135万円、多い2ヶ月は200万円と180万円、少ない2ヶ月は80万円と100万円…など、①~④の条件を検証していきましょう。
大問5の中では最も取り組みやすかった問題でしょう。
最難関の聖光学院中の最後の問題だから…と敬遠せずに、きちんと向き合いたい問題でした。
総論
このような出題となった2024年の聖光学院中の第1回の算数の出題は、
合格者平均点が110.9点、受験者平均点が93.1点
と、聖光学院中としては標準的な難度となりました。
大問5のような新傾向の問題も取り入れつつ、いつも通りの平均点に帰着するような高度な作問力には驚かされます。
合格ラインは合格者平均点と受験者平均点の間の100点前後でしょう。
〇の箇所をかき集めるだけでは75点前後にしかならないので、あと3問ほど正解する必要があります。
△の中では大問3(2)(3)や、大問5(1)あたりが取り組みやすいでしょう。
合格の戦略としては
「易しめの大問1と大問3を完答」
「決して難易度順にはなっていなかった大問5で出来る限り拾う」
「大問2と大問4は(2)まで食いつけば充分」
という取り組み方が想定されます。
2025年以降に聖光学院中への合格を目指す受験生の皆さんにとっても、学習効果の高い年次だったと言えるでしょう。
特に大問2~大問4は聖光学院中らしい出題として非常に参考になるでしょう。
大問2の「数の性質・数の処理」は聖光学院中の算数における頻出テーマなので、過去問を遡ることで様々な発想の仕方に触れておきたいところです。
大問4の「問題文が長大で、登場人物や条件が処理量の多い旅人算」も過去問で頻出です。
ダイヤグラムを用いた整理法に慣れておく必要があります。
上記の2問はたしかに難問ではありますが、解答までのプロセスは理解しておきましょう。
このような高度に「中学受験を分かっている」出題が課される聖光学院は、才能のある生徒がちょっと勉強しただけで合格できる学校ではありません。
一定以上の能力がある受験生が真面目に頑張りを積み重ねて、初めて挑戦する権利が得られる学校です。
この高度な入学試験において選ばれた俊英たちを大きく伸ばせる環境が聖光学院にはあります。
最高峰を目指す受験生の皆さんを、自律学習サカセルは応援しています。
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