筑波大附属駒場中。通称「筑駒」。
東京大学現役合格率約45%を誇る、超難関国立中です。
40年連続で東大合格者数トップを走る開成中よりも、合格者「数」は少ないですが、卒業生の数が筑駒高約160名に対して、開成高約400名という「絶対数の違い」も考慮に入れるべきところでしょう。
ひと昔前は「抽選」があり、約10人に1人は受験すら出来なかった学校ですが、近年は抽選での不合格者は出さず、当日の学力+通知表の成績で合否を出しています。
学校生活においては、「自由・闊達の校風のもと、挑戦し、創造し、貢献する生き方をめざす」という目標を掲げ、学業だけでなく、学校行事やクラブ活動にも手を抜かない学校で有名です。
◆各種データ
4科目400点+調査書100点の合計500点満点
最高点 391/500点
最低点 334/500点
※平均点などの発表はありません
◆出題形式
試験時間40分 100点満点
◆大問3題構成
大問1 論説文 約5問
大問2 随筆文 約4問
大問3 詩 約3問
◆問題の種類(2021年度)
・記述 約90%
・選択肢 0%
・抜き出し 0%
・漢字 約10%
という割合になっています。
選択肢問題、抜き出し問題が出題される年もありましたが、近年は記述中心の出題です。
2020年度は、漢字の出題は無し。
「差がつかない」形式を削っていった結果なのでしょう。
2021年度は、2020年にはなかった漢字が復活し、一般的な形式での出題がありました。
(2019年度までは「タるをシるモノはトむ。」を漢字で書け、のように、フレーズで漢字を書かせる出題でした。)
基本的に大問3つ~4つの構成が多く、「説明的文章」「文学的文章」「詩」の3つが出題されることが多いです。
トピックスは「詩」。
ここ近年だと2012年度以外出題があり、「小説文」が出題されなかった2019年度は「論説文」「漢字」「詩」の3題構成で、中学入試で数多く出題される「小説文」の出題は無し、という珍しい構成でした。
開成と同様、記述の「練度」で勝負が決まる学校です。
ここからは2021年度の筑波大附属駒場中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
解答例はこちら
大問1 論説文 小島俊明「ひとりで、考える――哲学する習慣を」
問1言い換えの記述 ○
傍線部①「よろこびを与える」とは、ここではどういうことなのかを答える問題です。
傍線部①を含む一文を見てみると、「待たせてから、よろこびを与える」とあります。
傍線部①の前から、待たせる相手は【赤ちゃん】、
後から、
「ぐずる原因は、空腹だからか~どこかに痛みがあるからか、等々、それを見極めるのです。」
から抽象化して、【泣いた原因に合わせた対応を親が行うこと】としました。
傍線部①の前後をよく読めば、答えが出る問題ですので、是非とも正解したいところです。
問2言い換えの記述 ×
「『孤独』の味」とはどのようなものか、答える問題です。
傍線部②と同じ文の中に、
「これは、ぼくの考えでは、『孤独』の味を覚えさせてもいるのです。」
とあるので、「これ」の中身をチェックして、
「赤ちゃんが泣き止んで、眠りに入ったり、『待つ忍耐』を覚え、『ひとり遊び』をはじめることだってあるのだというのです。」
のところをまとめて答えにし…ません。
もう一度傍線部②を見ると、「これは、~『孤独』の味を覚えさせてもいるのです。」とあるので、
「これの中身」と、「『孤独』の味」は別物のはずです。
その証拠に、傍線部②の7行後に、
「乳飲み子の時から『忍耐と気の長さ』を教え、ひとり遊びから『孤独の味』を教える育児法は、~」
とあるので、
ひとり遊び → 「孤独の味」 という関係になるように、答案を作成します。
増田は【自分一人だけで何かを考え、次にどのような行動をとるべきか考えさせる時間の必要性】としました。
(今回は 「孤独」の味 と 「孤独の味」 は同一の表現として、問題を解いています。)
指示語の誘導に乗ってしまい、生徒さんだけでなく、大人も失点してしまう問だと思います。
問3 比較の記述 △
日本で普段使われる「躾ける」という言葉と比べて、この文章にある「教える」にある特徴を答える問題です。
設問に「比べて」とあるので、比較の記述で良いでしょう。
「『躾ける』は、…………だが、『教える』は~~~であるという特徴。」
という書き方で、内容を当てはめて書いていきます。
傍線部③の後、傍線部④の周辺から、
「フランス~では、列車が遅れる~みんな黙って待ちます。駅の放送では、遅れることを知らせるだけです。『列車が遅れて、~申し訳ありません』などとは、けっして言いません。」
という内容から、「列車が遅れると謝罪する日本」と、「列車が遅れても謝罪しないフランス」が対比の関係になっているとつかみます。
ということは、「躾ける」と、「教える」も対比の関係、「内容が反対になる」ということをつかみたいところです。
問2でおさえた「孤独」の味の話もヒントになるでしょう。
「自分から考える・行動するのが目的」→「子どもが能動的になる」とわかったら、その逆の内容を検討し、
「他人から強制されて、自分の意志が働かない」→「子どもが受動的になる」として、あとは当てはめるだけです。
問4 理由の記述 ×
傍線部④「『列車が遅れて、ご迷惑をおかけして、まことに申し訳ありません』などとはけっして言いません」の理由を答える問題です。
これは、問2・3がしっかり考えられていないと、解くのが難しい問でしょう。
「孤独の味」の正体は、【自分一人だけで何かを考え、次にどのような行動をとるべきか考える時間の必要性】
フランスの「教える」の特徴は【自分から考え、行動するようにする】でした。
ですので、「電車が遅れたときに謝罪をしない」ということと、問2・3を合わせて考えられるかどうかがポイントです。
列車が遅れた際に、そこから時間通りに電車を走らせる手段は「列車を早く動かす」くらいしかありません。つまり、謝罪をされても、電車を時間通りに走らせる結果には繋がらない。
自分で考えられる人は、「謝罪→列車が時間通りに走る」という因果関係が成り立たないことを知っているということです。
そこを解答に出来るかどうかがポイントです。
問2の難易度が非常に高く、ここで誤答してしまうと、問3のヒントから解くしかなくなり、解くときの方針すら立てられなかった生徒さんも多かったのではないかと思います。
問5 漢字 ○
筑駒を受けるなら、全問正解したいところです。
大問2 随筆文 五味太郎「ときどきの少年」
問1 理由の記述 ○
傍線部①「何故かぼくに言った」の「何故か」が書かれている理由を書く問題です。
設問に「気持ちの分かる表現」がないので、「背景→きっかけ→気持ち」の形で書きます。
「きっかけ」を拾うと、「Mちゃんのおとうさん、絵を描く人だよ」とぼくに言ったことが拾えます。
ぼく=Mちゃんのおとうさん なので、「ぼくに『ぼくの仕事を伝えてきた』こと」が不思議だったのですね。
今回は「何故か」と書かれている理由なので、背景に「きっかけ」の逆の内容を書きました。
背景:ぼくの仕事を知らない人間に、それを説明するのであれば、自然なことである
きっかけ:ぼくにそれを伝えてきた
意味付け:意図が分からない
気持ち:奇妙に思えた
と4つのパーツで答案作成をしています。
問2 言い換えの記述 ○
傍線部②「なおさら罪である」とは、どんな点について言っているのか、説明する問題です。
「なおさら」「罪」を言い換えて、「箇条書き」パターンで書けばよいでしょう。
傍線部②と同じ文の中に、「それならば」とあるので、まずは「それ」の中身をチェック。
【運転手は運転中、乗客に話しかけてはいけないし、話しかけられても答えてはいけないという服務規定がある】です。
また、後の段落から、
「規則正しい運転操作も、口頭確認も、~全て服務規程~。その罪深さを慮れば、~。」
と見つかります。ここを使い抽象化して、【電車の運転に集中させない】【子どもたちの悪意なき行動に対して、ただ我慢しかできない】としました。
傍線部②の前・後から答案を作成できる問題なので、しっかり点数を作りたいところです。
問3 気持ちの記述 △
傍線部③「猫の目を三回も塗ってしまった」からわかる様子を書く問題です。
傍線部③から「気持ち」が読み取れる表現がないので、「背景→きっかけ→気持ち」のパターンで書くのが良いでしょう。
これは問2の内容が参考になると思います。
問2より、
「運転手は服務規程で、注意どころか不満も漏らせず、子どもたちの悪意なき行動に対して我慢しかできない」
ことと同様の状況が、「画家である現在の自分にも起きている」と押さえられたかどうかがポイントです。
背景:自分の経験上、子どもたちに悪気がないのは理解しているので、なれなれしく近づいてきたり、仕事の邪魔をしたりして苛立ちを覚えても、
きっかけ:我慢して仕事に集中しようと考えているが、それができない
気持ち:冷静さを欠く
意味付け(行動):余計な作業をする様子。
としました。各パーツをしっかり書ききるのが難しそうです。
問4 気持ちの記述 △
傍線部④「悪気はないんだ」には筆者のどのような気持ちが込められているか記述する問題です。
「悪気はない」で気持ちを読み取ることはできるので、「気持ち」抜きの「背景→きっかけ」で書くと書きやすいでしょう。
傍線部④と同じ文の「そう、これだって、悪気はないんだ」の「これ」の中身をチェックすると、
「こら、いいかげんにしろ。あっちへいけ」という筆者のセリフだとわかります。
また、ここと同じ段落の中に、
「そう、机に肘をかけながら、いつの間にかぼくんもスケッチブックに悪戯書きを始めているこのガキにも、悪気なんてないんだ。ないに決まっている。そこのところは一応理解しておくとしても、~」
とあります。ここから、時系列順に並べて、
背景:子どもたちが悪気なく行動しているのは理解している
きっかけ:自分の仕事道具に悪戯をすることは看過できず、注意をした
意味付け(気持ちの補足):自分も悪意から行動したわけではないので、同じように理解してほしい
と並べられると、「悪気はないんだ」という気持ちに繋がりそうです。
大問3 詩 貞久秀紀「体育」
問1 言い換えの記述 ○
傍線部「こころをこめた体」とはどういうことか、書く問題です。
これよりも後の方で、
「垣根がある/むこうからひとがあるいてくる/すれちがいながら/垣根ごしに会釈をかわし/それきりで/過ぎ/ふたたび会うこともなかった」
「けれど/会釈をするとき/こころ/には/体がこめられた/そんなふうに/かろやかにすれちがうのだった」
とあります。
つまり、「垣根越しにすれ違う時に、会釈をしたこと」が「こころに体がこめられた」ということです。
すれ違うから、「何もしないのはいけない」や「人がいるから会釈をしておこう」などの気持ちが現れて、会釈をすると判断し、
【自分の現在の気持ちが、表情や動作となってあらわれること。】という解答としました。
傍線部以外にも同じ表現があるので、ヒントがある分、答えを作りやすかった問題と言えそうです。
問2 言い換えの記述 △
傍線部「あるきながら考えていると/考えながらあるいてもいた」とは、どういうことを言っているのか答える問題です。
傍線部の前に
「ひとの世~あるかもしれない/と/あるきながら/考えている」
とあります。
「あるきながら/考えている」とは、2つの動作を行うことですが、
「歩く」が先に発生→「考えている」が後に発生しています。
つまり、「歩くという動作が主として存在していて、それをしながら考えている」ということです。
これが逆になると、
「考えている」が先に発生→「歩く」が後に発生となります。
「考えるという動作が主として存在していて、それをしながら歩いている」ということなので、【考えることをしすぎて、どこを歩いているかわからなくなる】と考えます。
「頭の中ではわかるが、答案にするにはちょっと書きにくい問題」と言えるかもしれませんね。
問3 言い換えの記述 △
傍線部「会釈をかわし」とありますが、この「会釈」とはどのようなものだったのかを書く問題です。
会釈をかわす相手は「それきりで/過ぎ/ふたたび会うこともなかった」ですので、【人生で二度以上会う人が相手ではない】として、「そんなふうに/かろやかにすれちがうのだった」から、「軽やか(かろやか)」→「軽く感じられた」とし、【自然に感じられた】
「重々しい動作ではない様子」から【特別な感情からの動作ではなかった】としました。
「会釈」は【相手への気遣いなどの気持ちからする動作】として、文意が通るように並べています。
問1がヒントになっていると言えるでしょう。
◆まとめ
記述中心、詩の出題、40分の試験時間、小さめの解答欄と、多くの生徒が苦しむ出題形式となっている筑駒。
首都圏最難関国立中にふさわしい出題となっています。
特に、詩の読解については国語科講師でも苦手に感じている人は多いことでしょう。
詩でどんなことをすれば良いのか、高得点を取るには何が必要なのか、どうすれば「守りの点数」に到達するのかなど、
筑駒の国語の対策で困ったら、是非自律学習サカセルまでお問い合わせください!
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