◆各種データ
国語算数120点、社会理科80点の4科目400点満点
合格者最低点 248/400
合格者平均 73.56点(61.3%)
受験者平均 65.16点(54.3%)
◆出題形式
試験時間50分 120点満点
◆大問3題構成
大問1 漢字 10問
大問2 小説文 9問
大問3 論説文 9問
◆問題の種類(2022年度)
・記述 約10%
・選択肢 約47%
・抜き出し 約3%
・知識 約10%
・漢字 約30%(小問数10)
という割合になっています。
合格者平均点が60%〜70%ほどと、年によって大きく難易度が変化する問題となっています。
2022年度は61.3%なので、近年で言うと「難しかった」と言えると思います。
目を引くのは大問3の論説文で、2種類の論説文を読み取って答える形式となっていました。
この形式は近年一定割合で見ますが、難度が高いことが多く、それに伴って平均点が低めになっているのかと考えられます。
また、浅野中の難しさは「本文の主題を読み取れていないと、大問の最後の2問に答えることが難しいこと」「選択肢の根拠が傍線部の周辺にない問題が多い」ということが挙げられると思います。
後者については「傍線部の周辺の言い換え」選択肢で差異を出すSAPIX、「超長文の選択肢の中に×の要素を混ぜて引っかけを作る」渋谷教育学園系の学校とも違います。
ここからは2022年度の浅野中の出題を通して、どのような戦術を当てはめていけば良いのか検討していきたいと思います。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
大問1 漢字 ◯
前途洋々の「洋洋(洋々)」「中興」「服薬」あたりは難しいと思います。
8割正解以上を確実に目指したいところです。
大問2 小説文 芦沢央「恩返し」
問1 選択肢 △
「なぜ気に病み続けるのが馬鹿げているのか」について答える問題です。
傍線部の周辺をチェックすると、
小平の解釈が真実だとしても、まったくの的外れだとしても、これ以上自分が気に病み続けているのが馬鹿げていることはたしかだった。とにかく自分は、自分の信じる道を進み続けるしかない。
とあるので、小平の解釈について傍線部の前から探していくと、
「つまり、国芳棋将は白峯さんと春峯さんの関係に、自分と弟子の関係を重ねてみたんじゃないか〜決意表明のために白峯さんの駒を選び直したんじゃないかって」
とあります。
つまり、【自分の駒が国芳棋将に選ばれなかったことが真実だとしても、全く的外れだとしても、自分の道を進み続けるしかない】というのが傍線部の周辺の内容だとわかります。
アと悩みますが、「分かった」が×。分かっていたら傍線部の前で「だとしても」という表現にはならないはずです。
エが答えとなります。
問2 選択肢 ◯
「そうであるがゆえに異様だった」理由を答える問題です。
傍線部の周辺をチェックすると、
しかし、国芳棋将は穏やかとも言える空気をまとったまま、<私はもう棋将ではありません>と言った。
〜大変失礼いたしました、と頭を下げる取材者に、国芳棋将ーー国芳英寛は、<こちらこそ>と会釈をした。
その怒気を感じさせない優雅な素振りは、そうであるがゆえに異様だった。
〜この人は、本当に取材者に対して怒っているわけではないのだとわかった。だが、それでも訂正せずにはいられない激しさが、この人の中にはある。
つまり、【自分が棋将という将棋のタイトルをもう持っているわけではないことを訂正せずにはいられない激しさがありながら、】《それを感じさせない優雅な素振りをしていること》が「異様」だと言っています。
【 】と《 》と「異様」の全てを言い換えているのはイです。
問3 空欄補充 ◯
[ A ]に入る内容を答える問題です。
[ A ]の周辺をチェックすると、
段位が九段であることは間違いないとはいえ、長くタイトルを持ち続けていたために、もはや国芳九段という響き自体に違和感がある。
ーータイトルの有無によって呼称が変わるというのは、何と[ A ]ことだろう。
周囲としてはそのようなつもりがなくても、まるで手のひらを返したような印象すら受ける。
つまり【棋将というタイトルを長く持っていただけに、周囲としては悪意がなかったとしても、「国芳九段」と呼ぶのは手のひらを返したような印象を受ける】ということです。
[ A ]に当てはまるのはイの「残酷な」です。
比較的易しいという印象です。
問4 空欄補充 ◯
[ B ]一重 に当てはまる表現を答える問題です。
答えは紙、「紙一重」を作る問題です。
危機一髪などから「髪一重」にしないように注意しましょう。
問5 選択肢 △
「国芳は、躊躇いも気負いも感じさせない口調で言った」のはどのような思いからか答える問題です。
まずは「言った」とあるので、セリフを見てみると、
<来るべきときが来たのだろうと感じています。でも、私はこれで終わるつもりはありません>
とあります。
特に「でも、」以降の部分から、ア後半「敗北を受けいれながら今後を考えている」イ後半「何事にも心を動かされることはない」の二択に絞りたいところです。
6ページの本文に
国芳は、それまでに長い時間と労力をかけて積み上げてきた自分の将棋を壊そうとしていた。
とあります。これはア前半「今までの自分のやり方を大きく変えてまで勝負に向かった国芳は」と一致します。
答えはアです。
丁寧に解こうとすると、傍線部から離れた箇所から根拠を拾わなければならないという浅野中の難しさが出ている問題だと感じます。
問6 選択肢 ◯
国芳が何を知っているのかについて答える問題です。
傍線部の周辺をチェックして、
『口さがない将棋ファンの中には、さすがに国芳棋将の時代もこれで終わりだろうなんて言うやつもいるんですよ』
国芳は、自分について世間がどんなことを言っているのか、理解している。ーー世間が自分に何を見て、何を期待しているのか。
夢や希望を託され、羨望や妬みを向けられ、一つタイトルを失冠するごとに落胆や激励や安堵や嘲笑の声を聞きながら〜
『 』の中身は、【将棋ファンに自分の悪口を言われている】ということです。
周辺の内容をきちんとおさえているウが正解です。
アは「噂を流しているのは小平だということ」
イは「兼春が画面のむこうで〜冷静な目で見続けている」が完全に超能力者選択肢で×。
エはプラスの印象なので、内容とズレます。
絶対に正解したい問題ですね。
問7 選択肢 ◯
取材者の言葉に、初めて国芳が微かに表情を和らげた ときの国芳の気持ちを答える問題です。
取材者の言葉とは、「生田七段の『恩返し』」の話。
これ以降のところで、「本当に、楽しい時間でした」「徐々に口調が速くなり、声のトーンが上がっていく」「唐突に始まる感想戦」などから、【弟子との将棋(対局)を楽しんだ様子】が読み取れます。
答えはイです。
問8 選択肢 △〜×
兼春は一つ息をつき、刃先を、まだ何も刻まれていない木の欠片へ押し込んだときの兼春の思いを答える問題です。
傍線部の前をチェックすると、
だから自分は、国芳英寛に駒を選び直されたことに、あれほど揺さぶられたのだ。
心にひっかかり続けていたのは、なぜ選ばれなかったのかではなかった。
この、誰もがかなわないほどの将棋への狂気を持った男が、自分の駒を選び、そして手放す間に、何を見ていたのか。
とあります。
国芳が何を見ていたのかチェックしていきます。
5ページに、
『新しいうちから長く使い込んだような振りをする必要はない』
師匠は、面取りを深くして駒の滑りを良くしようとする自分に対し、この言葉を口にしていた。
6ページに、
そして、あのとき、国芳は駒を選び直す直前に、駒の角を指でなぞっていた。
〜国芳は、それまでに長い時間と労力をかけて積み上げてきた自分の将棋を壊そうとしていた。
〜だから師匠の駒は、自分の駒に比べて面取りが浅い。立った角は、指に刺激となって引っかかる。
まだ使い込まれていないことを、これから育っていくことを象徴するように。
つまり【国芳は駒の角を指でなぞって、長く使い込んだような振りをしていた面取りの深い自分の駒でなく、面取りが浅い師匠の駒を選んだ】と自分(兼春)は考えています。
これが反映されているのはイです。
問9 理由の記述 △〜×
最終的に兼春は、国芳が白峯の駒をなぜ選んだと考えているかについて答える問題です。
主題に大きく関わってくる問題です。
問5・8もここに関わってきます。
面取りをして長く使い込んだふりをして仕上げた自分の駒 と、
面取りをせず、新しさを出した師匠(白峯)の駒 を比べ、
今まで積み上げてきた自分の将棋を壊して対局に望もうとした国芳は師匠の駒を選んだ、ということです。
師匠の駒と、対局前の国芳には共通点がありますね。
これらをまとめて
【自分の将棋を壊し対局に臨む国芳には、角の立った駒は成長する自分との共通点が感じられたから。】
としました。
要点を盛り込みながら、文字数を守るのが難しい記述であると言えそうです。
大問3 論説文 鴻上尚史・佐藤直樹「同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか」、佐倉統「科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点」
問1抜き出し △
文章1にある「『空気を読め』の風潮」を、文章2から探す問題です。
傍線部①と同じ段落から、
・『空気を読め』が同調圧力であること
・さまざまな理不尽を受け入れるしかない空気
であることをおさえた上で、二十字ちょうどという条件から探していきます。
答えは文章2の最後から二つ目の段落にある【文化や文脈に依存する暗黙知的な「場の力」】から、最初と最後の三文字を書きます。
設問でなく本文を見てきちんとヒントを取る必要があるので、文字数指定の条件から力技だけで答えを探している子には厳しいのではないかと思います。
問2文法の選択肢 ◯
主語に対応する述語を選ぶ問題です。
きちんと主語「コロナは、」とイコールの関係となる述語を選びたいところです。
答えはウ「突きつけた」です。
問3理由の記述 △
感染者やその家族に向けられた差別やバッシングが、なぜ日本で起こるのかについて答える問題です。
傍線部③と同じ段落に
日本では、殺人などの重大犯罪が犯された場合、加害者の家族がひどい差別やバッシングを受けます。これは、コロナ感染者に対する差別やバッシングと非常によく似ていると思いました。
とあります。この直後の四文に理由が書いてあるので、これを利用します。
【感染者とその家族は同罪という意識が浸透し、敵とみなした相手を一斉に排除するという同調圧力が働くから。】
としました。
全ての要素を盛り込むのがベストですが、部分点狙いでも良いでしょう。
問4 語彙の空欄補充 ◯
〔 A 〕暗鬼、〔 B 〕未聞を埋める問題です。
答えはA疑心、B前代です。
絶対に正解したい問題です。
問5 選択肢 ◯
日本人は「世間」に住んでいるけれど、「社会」に住んでいないとはどういうことなのかについて答える問題です。
傍線部④の続きに、「傍線部④ということですね。」とあるので、直前の内容に注目します。
世間は「あなたと関係のある人たちで成り立っている(世界)」で、「お互いが名乗り、どこに住んでいるということを語り合う関係」
社会は「あなたと何も関係がない人たちがいる世界」で、「何回かすれ違って会話するようになる程度の関係」であることがわかります。
どちらも反映しているイが正解です。
直前を見て判定する問題なので、取り組みやすい問題と言えそうです。
問6 選択肢 ◯
僕らが今言っている世間・社会論とはどのような考え方か答える問題です。
傍線部⑤を含む一文を見てみると、
ウチソト論と、僕らが今行っている世間・社会論とは、どこが違うと思いますか。
とあるので、この後から、質問に答えている「佐藤」に注目します。
〜結局、世間の内側の人間に対して非常に親切にするけど、外側の人間に対しては無関心か排除する。これが基本的な構図です。それで、日本人は社会に生きていないから、「世間」のソトにもやはり違う「世間」があって、そこでもウチとソトをつくっている関係じゃないですかね。「世間」の外側が社会になっているということではなく、たくさんの「世間」があって、それがお互い島宇宙みたいな感じで存在している。
ここを言い換えているイが正解です。
これも問5と同様、すぐ近くから根拠がほぼそのまま取れるので、取り組みやすいと言えます。
問7記述 ◯
対談者の一人である佐藤さんが考える「社会」とはどのような場かについて記述する問題です。
これは設問のヒントの通り、「佐藤さん」の発言の中から、「社会とは…」と語っているところを探します。
それが見つかるのが13ページの中略以降の箇所です。
佐藤 ぼくはこう言うんですよ。社会というのは、原理的に一つしかないんです。一つしかないものにはウチもソトもないわけですよ。たった一つしかないものにはウチもソトもない。だから社会はあまり排他的にならない。ところが「世間」というのは〜
と見つかります。「ところが」より前の部分をまとめて、
【原理的に、ウチもソトもない一つしか存在せず、あまり排他的にならない場。】
どの箇所か見つけられれば、本文の加工で勝負ができるので、◯としています。
問8選択肢 △
本文を読んだ生徒たちが、同調圧力によって起こる行為をテーマに話し合っている場面を見て、本文の趣旨に合わない発言をしているものを答える問題です。
文章1の「同調圧力」について語られている箇所は、
11ページ
同調圧力とは、少数意見を持つ人、あるいは異論を唱える人に対して、暗黙のうちに周囲の多くの人と同じように行動するよう強制することです。
犯罪被害者への同情や正義感でもありますが、「敵」とみなした相手を一斉にバッシングする排除の論理が働いているのでしょう。一種の処罰感情とも言えます。この同調圧力が、加害者家族を苦しめます。〜感染者が悪くもないのに謝罪するのも、そうした圧力があるからですね。
14ページ
ところが日本の場合、なぜ被災者があんなに冷静に行動できたのかといえば、「みんな同じ」ような悲惨な状況に置かれた場合、「みんな同じ」という同調圧力が働く。自分がこういう状況でも「しかたがない」と考える。「世間のルール」が働くんですね。
そういうかたちで、小さい頃から「世間のルール」を学んでくる。そうしたルールを学ぶことで、強い同調圧力が形成される。警察が機能しなくなって「法のルール」が崩壊しても、結局、「世間のルール」が働いて、略奪も暴動も起きない。これが、日本が世界で一番治安がよくて安全な国と言われていることの理由だと思うんですね。
文章2の「同調圧力」について語られている箇所は、
15ページ
日本社会は社会的同調圧力ーームラ意識ーーが強いのと、前にも述べた公的空間と私的領域の境目があいまいなこととから、専門的技能を公共のために使うことに、あまり熱心ではないところがある。
これらを見ていくと、オは本文の趣旨と合わないとわかります。
オの「募金した有名人がネットで偽善だ売名だと大勢からたたかれることがあるのは」と11ページの「犯罪被害者への同情や正義感でもありますが、「敵」とみなした相手を一斉にバッシングする排除の論理が働いているのでしょう。」から、
「敵」とみなした相手は犯罪を犯した、などのマイナスイメージの存在であるはずなのに、オは「募金した有名人」となっています。募金した人間はプラスイメージのはずです。
文章の内容がきちんとおさえられている、もしくは「同調圧力」について書いてある箇所を選抜できているのであれば、解ける問題だと思います。
問9選択肢 △
文章1・文章2から読み取れる内容について答える問題です。
これは、問8で見つけた「同調圧力」のところを参照するとわかりやすいと思います。
答えはエです。
問8をきちんと本文を読み取った上で解けていれば難しくない問ですが、そうでなければ少々難しいと思います。
◆まとめ
大問2の小説文はスッと読めても設問が難しかったです。
大問3は本文が2つ分用意されてはいますが、本文に書いてあることをきちんと拾えば問題が解けるという形式になっていました。
「文章の主題がきちんと読み取れる子が欲しい」というメッセージが感じ取れますが、現状の合格者平均を見る限り、その領域に達していなくても合格ラインに乗れてしまうという状況なのでしょう。
まずは書いてあることを確実に拾って筆者のイイタイコトを整理できるようにするのが大事そうですね。
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