サカセルコラム

武蔵中の算数分析(2024年) Column

過去問分析

武蔵中の算数分析(2024年)

2024.04.23

受験者平均点 59.5点
合格者平均点 74.1点
想定合格点  70点

男子御三家の一角で、伝統ある進学校の武蔵中。

制服や校則もない自由な校風で、個々の生徒の個性を尊重しつつ「考える力」「調べる力」「書く力」を大きく伸ばす教育は高い評価を受けています。

また緑あふれるキャンパスは都内でも屈指の広大さを誇り、部活動も盛ん。
中学受験生の人気を集める魅力には事欠きません。
この環境だからこそ、政財界や学術界に有力なOBを数多く輩出することが出来たのでしょう。

近年は大学受験における合格実績が最盛期に比べると低下気味でしたが、受験を意識したサポート体制やカリキュラムも強まってきました。
入学者の偏差値も上昇傾向で、これから大学進学実績も再び伸びていくことでしょう。

独特な入試問題でも知られています。
4科目全てで「考える力」「調べる力」「書く力」を強く求められ、武蔵中の求める生徒像を強く反映していると言えるでしょう。

ここからは2024年の武蔵中の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを考えていきます。

〇:合格のためには確実に正解しておきたい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので、可能な限り正解したい
×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えたら充分

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇

176との最大公約数が1である整数とは、176と「互いに素」な整数である、と言い換えることが出来ます。
176を素因数分解し、条件に合う2の倍数でも11の倍数でもない整数をベン図で整理しましょう。
1問目らしく比較的取り組みやすい問題と言えるでしょう。

余談ですが176は武蔵中の1学年あたりの人数ですね。
僕の入学時の東大寺学園中と同じ人数なので、馴染みのある数字でした。

(2) ア 〇  イ 〇

仕事算の基本問題です。
全体の仕事量を220分、198分、180分の最小公倍数の1980とおくと良いでしょう。
(イ)も仕事算とつるかめ算の典型題です。

武蔵中合格を目指す受験生の大多数が、短時間で大問1を完答できたことでしょう。
大問1が難しかった2023年と比べて、自信を持って大問2に進むことが出来たのではないでしょうか。

大問2

(1) 〇

武蔵中の算数と言えば、平面図形と比・相似は外せない最頻出分野のひとつです。
まずは問題文で与えられている長さや角度の条件を図に書き込みましょう。
すぐに△AEDと△FDCが3cm:4cm:5cmの合同だと気づきます。
あとは3:4:5の相似がどこにあるのか、同じ角度に〇や✕の記号を書き込みながら捉えていきましょう。
(1)では△GEFが3:4:5の相似であることを利用するだけですね。

(2) 〇

(1)の続きです。
今度は△BGAが3:4:5の相似であることを利用しましょう。
ここまでは例年の武蔵中の平面図形と比・相似の問題と比べても易しめです。

(3) △

平行線を利用した相似の見つけ方がポイントです。
解答例ではDからBHに垂線DIを引いて、△ABHと△DIHの相似に注目しました。
他にもAGとDCの平行に注目して、△AGHと△DCHの相似で解いても良いでしょう。
計算量がやや多くなりますが、特殊な発想や着眼は問われないので、決して難問ではありません。
武蔵中への合格を目指すなら、正解できるとリードがとれる問題でした。

大問3

(1) 〇

難関校の入試問題でもたびたび見かける8の字型の旅人算です。
誰がどのコースをどの向きに進むのか、きちんと確認し、メモを記入した上で問題に臨みましょう。

(1)はAとCの出会いの旅人算なので、きわめて易しいです。
(2)以降を解くための条件の確認に過ぎないので、失点した受験生は皆無でしょう。

(2) 〇

基本的な追い越しの旅人算です。
小コースぶんだけ前にいるBを追いかけるという問題ですが「求めた時間に同じ円上で追いつく」という条件を満たしているのか、念のため確認できると(3)以降につながります。

(3) 〇 △

AとCの2回目の出会いは「Cが大コースを回ってS地点に戻ってきた時に、Aがどこにいるか」を確認し、計算するだけなので易しいです。
一方CとBの2回目の追い越しは「Cが小コースを回ってS地点に来た時にBがどこにいるのか」を考えて計算しますが、同じ円周上で追いつけない場合があるので、注意が必要です。
1周目だとどこ、2周目だとどこ…と粘り強く作業しましょう。

なお解答例ではダイヤグラムで整理しましたが、武蔵中を目指す受験生ならば「CがS地点にくるごと」に状況を整理して調べていった方が、馴染みのある解法かもしれませんね。

(4) △

A・B・Cがそれぞれ何分後にS地点にいるのかを丁寧に調べていきましょう。
Aは6分ごと、Bは10分ごと、Cは7分ごとにS地点に戻るほか、2・9・16…分後にS地点を通過します。
あとは2人以上が同時にS地点にいる状況はいつなのか、公倍数の基本通りに処理しましょう。
そこまで処理量も多くないですし、(3)よりむしろ易しい問題です。

大問4

(1) 〇

武蔵中らしい「調べ」の問題が例年の傾向通りに、最後の大問4に配置されました。
(1)は題意の確認問題です。
場合分けをして…などと変に頭を使おうとせずに、3×2×1=6通り全てを書き出して、それぞれ何点になるかを確認しましょう。

(2) △

4×3×2×1=24通りを書き出して調べてみることが確実です。
(1,2,3,4)と(4,3,2,1)の極端な場合が、それぞれ3点と0点になることは易しいでしょう。
残りの場合を調べていくと2点の場合と1点の場合が、結局同じ通りずつになることが分かります。
ここで「対称性」に気づくことが、難問の(4)を解く手掛かりとなっています。

(3) 〇

(2)よりもむしろ易しいです。
(1,2,3,4)のどこに5を置くのか、5通り調べるだけで正答を導くことが出来るでしょう。
どこに置けば点数が増えるかという発想も(4)を解くためのヒントになっています。

(4) ×

(2)(3)の誘導を利用しますが、かなりの難問です。
まずは全部で6×5×4×3×2×1=720通りあって、(1,2,3,4,5,6)の5点が1通り、(6,5,4,3,2,1)の0点が1通りになることに言及しておきましょう。
次に(2)を利用して1点と4点が同じ通りずつあり、また2点と3点も同じ通りずつあることを指摘できると良いでしょう。
その後の作業は細かな注意力を要するので試験時間内に完答することは難しいのではないでしょうか。

総論

2016年から2022年までは難易が交互に繰り返されていた武蔵中の算数の入試問題。
2023年は易しめで隔年現象に終止符が打たれ、さぁ次はどうなると注目されていた2024年。
結果、受験者平均点は59.5点、合格者平均点は74.1点というやや易しめの出題になり、これで2022、2023、2024と易しめの年度が3回続いたことになりました。
ただ易しめだったといっても、合格者平均点と受験者平均点は14.6点という大きな差がついています。

合計点に注目すると、合格者平均点は220.3点で、受験者平均点は191.4点
その差は28.9点で、算数での得点差が半分以上を占めています。

また合格最低点に注目してみると、合格最低点の206点と受験者平均点の191.4点との差は14.6点で、算数の合格者平均点と受験者平均点の差と完全に一致するという結果になりました。
算数で合格者平均点を取れれば、残りは平均点ちょうどで合格できるという、まさに算数で決まった受験と言えるのではないでしょうか。

この2024年の武蔵中の算数問題なら70点を目指したいところです。
この年度は問題ごとの難度差が非常に大きいので、取るべき箇所は比較的明確です。

〇の箇所の大問1(1)(2)、大問2(1)(2)、大問3(1)(2)、大問4(1)(3)が取れれば、その時点で合格ラインの70点近くの得点になりそうです。
ただ実際は大問2(2)、大問4(3)などを取りこぼすことは充分に考えられるでしょう。
本番の緊張下「解けるものを確実に解く、絶対に取りこぼさない!」というのは難しいものです。

そんな中でも上記の〇でのミスを極力おさえて更に大問2か大問3で完答できると合格を大きく引き寄せられたと言えるでしょう。
算数を武器にする受験生は大問4(4)で部分点を確保したら、残りは充分に満点を狙うことが出来たはず。

2025年以降に武蔵中を目指す受験生も、対策の仕方は変わりません。
受験算数の基礎学力を充分に養成したら、「平面図形と比・相似」「速さ」「調べ上げ」などの武蔵中の算数の頻出分野に力を入れましょう

過去問との類似性も高いです。
相似の見つけ方や調べ上げの小問間のつながりなど、同じような視点が繰り返し課されているので、10年と言わず20世紀まで遡ることも有効な対策になりますよ。

もちろん類題演習や答案作成の精度アップなど、お困りのことがあれば自律学習サカセルにご相談ください。
数多くの合格者を指導してきた講師陣が全力でサポートします。


にほんブログ村にも参加しています。ぜひ下のバナーをワンクリックで応援もお願いします!

関連記事

三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

同じ筆者の記事を見る

人気の記事