算数の想定合格点 60 点
2024年に創立100周年を迎えた、日本一の女子校の呼び声も高い桜蔭学園。
東館の建替工事も竣工し、ますます教育環境が充実しました。
そんな桜蔭学園ですが、やはり目立つのは驚異的な進学実績でしょう。
2024年の東大理3の合格者数は12名。
この数値は開成・灘と並んで最多で、2023年は2位、2022年は1位と、もはや首都圏女子の理系最上位層は桜蔭に集結しているのではないかと言えるほどの圧倒的な実績を残しています。
もちろん進学実績だけが魅力ではありません。
「礼と学び」を大切にする教育方針で高い自立心を涵養したOG達は、各界で強い個性を発揮して活躍しています。
女性の社会進出の象徴のような学校と言えるのではないでしょうか。
中学受験においても女子トップ校としての地位は揺るぎません。
2024年を含めて実質倍率は2倍弱と決して高くはありませんが、そもそも最上位生しか挑戦しないので「まぐれ合格」の生徒は皆無。
入学者の基礎学力や向学心が驚異の合格実績の礎になっていることは確実です。
算数は「方針は立てやすいものの異常なまでに処理量が多い」問題で知られます。
この傾向は年々強まり「大問の数が減ったのに、むしろますます間に合わなくなった」という声が相次いでいます。
さて、ここからは2024年の桜蔭中の算数の入試問題を通して、どのように学習すれば合格ラインを超えることが出来るのかを見ていきましょう。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:差がつく問題なので、出来れば正解しておきたい
×:難度が高く、部分点を拾うことが出来れば充分
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) ① 〇 ② 〇
①は基本的な計算問題です。
桜蔭中で課される計算問題は非常に煩雑であると知られてきましたが、この数年で処理量は少し落ち着いてきました。
②の逆算も比較的易しめです。
見直しの際は代入して、正解を確信できると良いですね。
(2) ① △ ② △
「場合の数」も桜蔭の算数において頻出です。
①は(あ)~(え)まで条件が多いぶん、どこに注目するのかが鍵になりました。
今回は他のマスへの影響が大きい上から2マス目が●の場合と○の場合で分けてみましょう。
樹形図で丁寧に整理することで、正解に辿り着くことが可能です。
②は①を利用して考えます。
ADが●でBCが○の時と、ADが○でBCが●の時に、それぞれ何通りになるか計算しましょう。
①を樹形図で正確に整理できていれば、特に難しくはありません。
(3) ① △ ② △ ③ △
中学受験の平面図形における頻出テーマの「折り返し」の問題です。
①は最後の状況から戻って考えましょう。
もし切り落としている部分を正確に捉えられなかったとしても「1/4を3等分しているから1/12で…」というように考えることで、なんとか正解までたどり着くことが出来たのではないでしょうか。
②は①が出来ていれば易しいです。
△ABCはABの2.8cmを底辺として高さは正方形の半分の5cm、これが12個あるだけです。
③も②から半円と正方形を12個ずつ除くだけと考えることが出来るでしょう。
①が出来たならば確実に点数につなげておきたい問題でした。
大問2
(1) 〇
桜蔭中の算数らしい、長文からなる割合の問題です。
(1)は題意の確認です。
問題文7行目の「10mLで立方体の1と1/5面」に注目するだけですね。
(2) ① 〇 ② 〇
①は(1)の続きです。
6面なら何mL必要かを求め、赤の全体量の200mLと比べましょう。
②も易しいです。
問題文より黄緑色を作るには青色:黄色=1:2で混ぜると与えられているので、最も多く黄緑色を作ることが出来るのは青色100mLと黄色200mLの時だと分かります。
(3) △
(2)②と同じように考えましょう。
オレンジ色と緑色には共通して黄色が用いられるので「黄色を使い切る」イメージを持てると良いでしょう。
決して易しい問題ではありませんが、桜蔭中合格を目指す受験生にとっては正解しておきたい難度です。
(4) ① △ ② △
1つの立方体の6面を異なる6色で塗った場合、青色・黄色・赤色をそれぞれ何mLずつ使うのかを求めましょう。
やや面倒ですが方針も立てやすく、そもそも桜蔭の算数の問題としては処理量が少ないほうです。
この大問を完答できた受験生も少なくはなかったと思いますが、どのくらい時間を残せたのかが今後の大問3と大問4の戦略を左右します。
大問3
(1) ○
正三角形の転がり移動の典型題です。
動きの変わり目に注目して、丁寧に作図しましょう。
正三角形の1辺が半径になることに注目すれば、通過した部分の面積がどんな図形で構成されるのか捉えることが出来るでしょう。
3.14を用いた計算が多少煩雑になりますが、確実に正解しておきたい問題です。
(2) △
長大な問題文からなる正三角形の転がり移動の問題ですが、設定自体は特に難しくはありません。
(1)と同様に「動きの変わり目」に注目し、点Cの動きを丁寧に追いましょう。
正確に図を描くことが出来ると、正方形の内側と外側で面積が等しい箇所がいくつもあり、計算を簡略化できることに気づけるでしょう。
桜蔭中らしい「方針を立てることは難しくないが、やや面倒な問題」でした。
大問4
(ア)~(シ) 〇 ((エ)だけ△)
「水量の変化とグラフ」の問題です。
「水量」の変化と「深さ」の変化の2つのグラフが与えられていますが、それぞれのグラフの折れ目が何を示しているのかを丁寧に追っていけば、特に難しくはありません。
なお(エ)に関しては「水そうA,Bに入っている水の量は含まない」という条件を見落としてしまった受験生も散見されたのではないでしょうか。
なお「複数のグラフが与えられ、変化を丁寧に追っていく」という問題は、桜蔭中と併願する受験生も多い渋谷幕張中でも頻出のテーマです。
その点でも類題演習の機会を充分に設けられていた受験生も多かったことでしょう。
総論
2024年の桜蔭の算数の出題も、2023年に続いて「問題用紙3枚、大問4つ」という構成になりました。
2018年に大問4題の形式になって早7年、この大問数は定着したと言って良いでしょう。
文字量や情報量が多い問題用紙が3枚という形も桜蔭中の算数の形式として、今後定着していくのではないでしょうか。
出題内容に目を向けると、
「方針を立てることは決して難しくない」
「非常に処理量が多い」
「粘り強く正確な作業力が求められる」
という桜蔭中の算数の傾向を色濃く踏襲した出題となっています。
ただ2024年の出題では捨て問レベルの難問は無く、若干ですが易しめと言ってしまっても良いでしょう。
合格ラインは60点で充分です。
この年度で合格ラインを上回るためには、基礎学力はもちろんですが「判断力」が鍵だったと言えるでしょう。
実際に思考レベルは序盤の大問1(2)が最も高く、最後の大問4が(大問1(1)の計算を除けば)最も低いという構成になっています。
大問2や大問3で「解けそうだけど、時間がかかってしまいそうだから後回し」と後ろ髪を引かれながらも先に進むという判断を下せた受験生は問題全体に目を通すことが出来て、結果として合格を引き寄せられたのではないでしょうか。
2025年以降に桜蔭中合格を目指す皆さんにとっても、近年の傾向を色濃く反映した参考になる年度です。
早い段階で「桜蔭中の算数で課される処理量はどれくらいのものなのか」を把握し、今後の戦略立案に役立てましょう。
なお2024年に出題されなかった頻出テーマとしては「速さと比・ダイヤグラム」 「素因数分解を利用した整数問題」 「面倒な日暦算」 「条件の多い不定方程式」などが挙げられます。
過去問を通して問われ方とその対応を理解しておきましょう。
桜蔭中がトップ校であることは紛れもない事実です。
ただ凡人には手が届かない、という訳ではありません。
算数に関しては、むしろ対策が活きる代表校の1つです。
是非とも適切な準備を重ね、最高の学習環境を勝ち取りましょう!
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