サカセルコラム

桜蔭中の国語分析(2023年) Column

過去問分析

桜蔭中の国語分析(2023年)

2024.01.12

◆各種データ

合格者平均点 非公表
受験者平均点 非公表
想定合格点  7割程度

◆出題形式

試験時間50分 100点満点

◆大問2題構成

大問1 説明的文章(随筆文)  設問5
大問2  物語文        設問5

◆問題の種類

・記述 80%  (8問)
・漢字・知識 20% (10問)

女子の最難関の一角であり、国語の問題としては男女問わず、最高に難しい学校の1つです。

文章を「読む力」が問われており、問題を読み解くのはもちろん、出題者の意図を設問からしっかりと把握していくことも求められています。

当然、「解く力」も必要ですが、これは「スタートライン」と言っても良いでしょう。

さて、今日はそんな桜蔭中の国語の問題を一緒に見ていきましょう。

実際の2023年度入試の問題を通して、どのように点数を確保していくのかをお話ししていきますね。

今回使用する指標

○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題

大問1 高橋源一郎 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

問1 漢字 ○

漢字の出題です。

送りがなに注意して、丁寧に書きましょう。

問2  記述 ○〜△

まずは設問をしっかり読みます。

「何にとまどい」「何に怯えて」とあるので、「何」に当たる内容を答えれば良いと分かります。

傍線部に「だから」とあるので、直前にカミュが怯える理由が書かれている予測できます。

そして、傍線部①の直前を見ると、「誰でも、自分は正しい〜沈黙するしかありません」とあります。

ここをまとめれば終わりです。

【人が発する言葉は、本人が正しいと思って発したものであっても、必ず誰かを傷つけることにつながるということ。】

問3  記述 △

世界がひとつになって欲しくない理由を探します。

こちら峯田さんの気持ちに関しての記述なので、「背景」「きっかけ」「意味付け」「気持ち」の順番で書くと良いです。

また、「Aをしたくない理由」という設問の時は「Aをすると、Bになるから」と考えると分かりやすいと思います。

まず、きっかけは「世界が一つになる」と置けますね。

比喩的な表現なので少し書き換えます。空欄Aの3行後に「世界の中で何かが起こった〜世界と一個になんかなれないよ」とあるので、「自分と関係のない出来事に対して言葉を用いて発信する」と置き換えても良いでしょう。

次に気持ちですが、傍線部②の前後を見ていくと、傍線部②の5行後に「ひとつの意見、ひとつの考えになった瞬間に、その世界は狭く、息苦しいものになっていく」とあります。ここを使います。

さらに背景を探していきます。すると、傍線部②の5行前に「バラバラだからおもしろい。バラバラだから、広い」とあり、ここを使用しましょう。

これらをまとめていくと、

「背景」:世界は多様性があるからこそ広く、面白いものであるのに、
「きっかけ」:自分と関係のない出来事に対して言葉を用いて発信する
「気持ち」:世界を狭く、息苦しいものと感じるようになってしまう(から)

という形になります。

ただし、この記述だと「世界が一つになる」→「息苦しい」の因果関係が弱いですね。

そこで「意味付け」を考えます。

世界が一つになることがなぜ苦しいものになるのか?

本文を探していくと、傍線部②の7行前に「世界の中で何かが起こった〜世界と一個になんかなれないよ、そんなの」とあります。ここをまとめてあげると「(インターネットの発達によって)人々が自分とは関係のない世界の話を自分のことように感じたりする」となります。

また、傍線部①の6行後に「峯田さんは、ツイッターやSNSで〜押し流されていくからだと。」とあり、ここをまとめると「(インターネットの発達により、)人々の考え方が同じ方向に傾いていく(ことが怖い)」となります。

以上をまとめていきます。

「背景」:【世界は多様性があるからこそ広く、面白いものであるのに、】
「きっかけ」:【人々が自分と関係のない出来事に対して言葉を用いて発信することで、】
「意味付け」:【自分とは関係のない話題を自分のことのように感じたり、】
「意味付け」:【人々の考え方が同じ方向に傾いていったりする。】
「気持ち」:【峯田さんにとって、そういった世界と人々が一つになって狭くなっていく世界の流れが、怖く、また息苦しいと感じるから。】

問4 記述 ○〜△

抽象的な言葉を言い換える問題です。

傍線部④の直前の「けれども」という接続表現から、この2つの言葉が対比の関係になっているのに気がつけると楽に解けるでしょう。

傍線部④

3つ目の意味段落から7行後に「この言葉にはどんな意味が〜ただひとりで前へ進んでゆくのです。」とあり、ここを使いましょう。

「進んでいく」が表現的に抽象的すぎるので、ここは具体的に書き換えましょう。

【周りの世界をしっかり確かめ、一人で物事をじっくり考えろ(取り組め)。】

傍線部③

前述の問題との対比と考えると分かりやすいですね。

「見る前」というのが、「周りを見る前」であるとすぐに分かると思います。

また対比で考えると「ゆっくり・しっかり」⇆「急いで・悩まず」と置き換えましょう。

「跳べ」とは何を指すのでしょうか?跳ぶという動作は後戻りが効かない動作です。ですので、何かを考える・何かに取り組むというより、後戻りができない「決断する」などの言葉の方が良いかと思います。

【周りの意見を知り悩む前に、物事を決断しろ。】

問5  記述 △

筆者がカミュと峯田という表現者のどのような点に希望を感じているかを答える記述です。

希望とあるので、「背景」「きっかけ」「意味付け」で答えていきましょう。気持ちは希望とすでに書いてあるので無理に書かなくても良いです。

問2と問3の設問からカミュと峯田氏の詳細が分かります。

カミュは問2でもやったように「言葉は人を傷つける」と言っており、峯田氏は問3でやったように「言葉を発信することによって世界が一つの方向に動き、息苦しいものになる」と言っています。両者ともに「言葉の持つ危険性」ということに触れています。そして、そんな危険性があることを知りながらも両者は作家と歌手という職業を続けているわけです。この生き様に作家という言葉を発信する側の筆者も勇気を貰っている、と考えられますね。

これが背景、きっかけ、意味付け、となります。

しかし、これだけだと文字数が明らかに少ないのと、第3段落を使用していない点から満点とは言えないですね。

そこで第3段落を見ていきましょう。

すると2行目「なんだか、ぼくたちも、なにかをしなきゃならない、なにかをいわなきゃならない。」とあり、また漢字Bの一文に「そして、原発についての情報〜ゆっくりやろう、とぼくは自分にいい聞かせたのです。」とあります。以上から、カミュや峯田氏の言葉から言葉の危険性を学んだことにより、「何かについて知識不足で慌てて発言するよりも、知識をしっかり学んでいくことが大切だと思った」と判断できます。

以上をまとめましょう。

【カミュと峯田氏は、人を傷つけ、多くの人を同じ方向に誘導するという言葉の持つ危険性を知りながらも、言葉の持つ可能性を信じて、言葉を発信し続けた。そして、筆者は言葉が危険であるがゆえに、発信する場合は慌てずしっかりと知識を身につけていく必要があるということを学ぶとともに、その可能性を信じる2人の姿に、言葉を発信する側の同じ人間として勇気をもらった。】

大問2 岩瀬成子 「ひみつの犬」

問1 漢字 ○

丁寧に書きましょう。

問2 言語知識 △

知識勝負というよりは頭を使う問題でしたね。

直後の「伸びる」という言葉から【芽】が正解だと分かります。

直前の「正しい行いの中に〜が混じる」という表現から「打算的・偽善」といった言葉が思いつけると良いですね。答えは【計算】です。

問3  記述 ○〜△

指示語の問題です。指示内容を見つけましょう。

指示内容が直前にないですが、比較的簡単だったと思います。

傍線部①を少し前から見ていくと「今井さんはやさしそうなおばあさんに見える。あんなことをするような人には見えない。」と書いてあり、ここから「あんなこと」の内容がマイナスの内容であるとイメージできます。

それでは今井さんがおこなったマイナスの行動を探しにいきます。

*2の一文に「このマンションの入り口のところに生ゴミが捨て〜被害に比べればなんてことないって」とあります。

ここから「犬猫から受けた被害の抗議のつもりで、マンションの入り口に生ゴミを捨てた」と分かります。

次に、二重傍線部の3行前に「隣の家からピアノがきこえてきたり〜空き地で遊ぶのもいやみたいだった」とあり、ここから犬猫の被害以外に「ピアノの騒音や家の前の無断駐車、子供が空き地で遊ぶこと」などに悩まされていると分かります。

また、同じく二重傍線部の3行後に「佐々村整体〜張り紙などを見た」とあり、ここからゴミを捨てる以外に今井さんが「張り紙などを貼って抗議もしていた」ことが分かります。こちらは難しかったと思います。しかし、この張り紙が意味のない張り紙である場合、そもそもこんな描写を書かないので、この張り紙は確実に今井さん関連だと推測できます。

さらに、傍線部②の10行後に「なにそれ。今井さん〜やっぱり悪いことだよね」とあり、ここから今井さんが「悪口を書いた手紙を近所に配ったりしている」ことが分かります。

以上をまとめて書きましょう。

【今井さんが受けた様々な迷惑行為の抗議のつもりで、今井さんがマンションの入り口に生ゴミを捨てたり、張り紙を貼ったり、悪口を書いた手紙を近所に配ったりしたこと。】

問4 記述 △

大問1の文章のカミュの話に通ずるところがありますね。

こちらは物語の理由の記述なので基本的な「背景」「きっかけ」「意味付け」でまとめていきましょう。「気持ち」はすでに傍線部②の中で書かれているので、書く必要はないです。

また、設問の中に「くわしく説明」とあるので、可能な限り具体的に書きましょう。

まずきっかけですが、傍線部②の前の姉の発言を読んでいくと分かります。

傍線部②の6行前に「それはね、わかんない。もしかしたら〜うっとうしかったかもしれないんだよね」とあり、姉が「おととい」になって初めて「親切にされるのって苦しいかもしれない」ということに気がついたと分かります。

つまり、この気づきを得るまでに数年間という長い時間がかかったと分かります。

ここから、

きっかけ:「(姉が)時間をかけて精神的に成長したことにより」
意味付け:「親切にすることは、自分がいい気分になるかもしれないが、相手によっては気分を害することがあるということが分かるようになった」

これは「同情や情けをかけることは相手を自分より下の弱者と見ることになり、同情や情けをかけられた側は怒る」という中学受験の記述のテンプレパターンの記述です。この弱者のパターンはLGBTQのマイノリティの話と絡み、最近の流行のテーマなので確実におさえておきましょう!

次に背景です。

これは、姉が時間をかけて上記の気づきを得たさらに前の出来事を考えていくと分かります。

「かすみちゃん」の出来事ですね。

では具体的に考えていきます。かすみちゃんの昔話が書かれている部分を見ましょう。

傍線部②の27行前の中略の後に「かすみちゃんのお母さんが病院に行くとき〜言われたんだよね」の部分です。ここをまとめましょう。

背景:【姉はかすみちゃんに嫌われた理由として、かすみちゃんの両親の離婚理由というデリケートな話について聞いてしまったことだと長年思っていた。】
きっかけ:【しかし長い年月が経ち、精神的に成長してきたことにより」
意味付け:【親切にすることは、自分がいい気分になるかもしれないが、相手によっては気分を害することがあるということが分かるようになった】

問5 記述 △

姉が公園に妹を誘った理由の問題です。

こちらも「背景」「きっかけ」「意味付け」「気持ち」で考えていきましょう。

まずきっかけです。

二重傍線部の前を読んでいくと妹の羽美(主人公)が、今井さんが良い人なのか悪い人なのかということを決められず、悩んでいる様子が言動から読み取れます。直前の羽美のセリフを読んでいくと、今井さんを評価する言葉を発さずに、やった事実だけを述べており、どういう人間か断言していないですね。ここをきっかけにします。

次に背景です。

前述のきっかけの内容と被りますが、妹の羽美は今井さんのやった問題行動(問3参照)と今さっき今井さんにあった時の印象、また、普段の綺麗好きな今井さんの印象などを総合して、今井さんがどういう人間なのか分からずに迷っています。ここが背景です。

背景:「妹が今井さんの多くの行動から良い人なのか悪い人なのか判断がつかず」
きっかけ:「悩んでいた」

次に意味づけと気持ちですが、公園についてからの姉の言動に注目するとそのまま書いてありますね。

漢字Eの一文「あのね、いい人間になるって難しいよ」や、漢字Eの6行後「わたしね、小さいときからどうしたら〜なりたいと思ってたから」から、姉が「いい人間とは何かを話したいから連れてきた」ということが推測できますね。

そして、かすみちゃんの話が始まり、この経験から伝えたいことがかすみちゃんの話の後、傍線部②の3行後から始まります。「羽美が、誰が悪いことをしている人かって〜言いたかっただけ」や、空欄のアの「いい人の中から悪い〜いい悪いは簡単には言えないよ」などから、姉は「人の善悪は簡単に分けられるものではない」ということを妹の羽美に伝えたかったと分かります。

意味付け:「姉は長い時間をかけて人の善悪は簡単に分けられるものではないということが分かったので」
気持ち:「妹にもそのことを理解して欲しいと思うと同時に、しっかり時間をかけて考えていってほしいと願っている」

以上をまとめていきましょう。

背景:【妹は今井さんの多くの行動から良い人なのか悪い人なのか判断がつかず】
きっかけ:【悩んでいた。】
意味付け:【しかし姉は長い時間をかけて人の善悪は簡単に分けられるものではないということが分かったので】
気持ち:【妹にもそのことを理解して欲しいと思うと同時に、しっかり時間をかけて考えていってほしいと願っている。】

◆まとめ

設問はオーソドックスな「答えを聞くタイプ」「言い換えのタイプ」「理由のタイプ」でバランスよく出題されていました。

大問1の随筆文は設問同士の繋がりがあり、最後の設問に記述が繋がっていましたね。そこに気が付けると取り組みやすかったのではないかと思います。

難しい語彙の登場や抽象内容の連続などもなかったので、読みやすい文章でもありました。

大問2の物語文は登場人物が少なく、会話が多めで人物の内面を深く掘り下げていくタイプの物語でした。

明確な出来事や心情を表す言葉が少ないので、慣れないお子様にとっては記述を作るのに一苦労だったかと思います。

以上となります。

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松田 浩志

この記事を書いたのは...

松田 浩志

自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。

大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。

現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。

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