2018年2月1日、女子御三家筆頭の桜蔭中の入学試験が実施されました。
桜蔭は言わずと知れた女子トップ校、毎年多くの卒業生が東大や国公立医学部に進学する実績は女子校随一です。
中学受験における倍率は2倍前後。
他の難関校と比べると一見、入りやすそうですが、トップ生しか受験しないため、大激戦であることは周知の事実です。
桜蔭の算数の出題における特徴は、
「計算量が非常に多く、答えが煩雑な数値になることが多い」
「丁寧に調べ上げる作業力や注意力を要する」
「速さや水量の変化など、グラフの利用が必須」
「解答欄は狭く、ポイントを絞った答案作成術が求められる」
などが挙げられます。
ただ例年は方針を立てにくい問題は少ないため、合格には70%近い得点が求められる高得点勝負になることも特徴でした。
ところが2018年、状況は変わりました。
出題の傾向や求められる力は例年と変わらないものの、
「例年2問だった計算が1問に減った」
「近年は大問5問構成だったが、今年は4問に減った」
「例年以上に面倒で注意力を要する問題が並んだ」
という変化がありました。
たしかに1問当たりにかけられる時間が増え、また解答欄も広がったので、じっくり考える余裕は増えたものの、難度そのものはかなり上昇したと言えそうです。
平均点など一切発表されない桜蔭の試験。
今年はどのくらいの得点率で合格を勝ち取ることが出来たのか、1問1問を追って確認してみましょう。
〇:合格のためには確実に正解したいもの
△:合否の差がつく問題
×:解けなくても合否には影響しない、部分点狙いで良い問題
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
桜蔭らしい非常に面倒な逆算です。
例年通り、答えも汚い数字になってしまいますが、確実に正解したいところです。
(2)① 〇
平方数の1の位だけに注目します。
1~10まで調べたら、あとは規則になっているので易しいでしょう。
(2)② ×
17を15で割ったあまりは2。
2を17回かけた数の2乗で、つまり2を34回かけた数を15で割っていくという問題です。
たしかに規則にはなっていますが、この発想は高校数学以上の整数分野で扱うものなのではないでしょうか。
正解できなくても全く問題ありません。
(3) △
7と47は互いに素なので48日目ということが分かります。
以降の日歴算の処理は桜蔭では定番ですね。
祝祭日はないので、処理量は標準的です。
大問2
(1)① 〇
それぞれの図形を分けて和を求めるだけの基本問題です。
計算量も少ないので完答は必須です。
(1)② △
まずAが10個の場合を求め、1箇所Bに変わったら、面積がどれだけ増えるのかを計算します。
方針を立てることは難しくないですが、計算も非常に煩雑でミスが出ても仕方ないかもしれません。
(2)① △
「回転して同じになる」という状況を苦手とする受験生は多いものです。
①では1箇所だけなので、正六角形を6等分した1つの正三角形内での置き方を考えれば良いでしょう。
(2)② ×
先ほどの6等分した正三角形のうち
「同じ三角形から2つ選ぶ」・・・4C2で6とおり
「隣り合う三角形から1つずつ選ぶ」・・・4×4=16とおり
「ひとつ空いた三角形から1つずつ選ぶ」・・・4×4=16通り
「向かい合う三角形から1つずつ選ぶ」・・・4×4-6=10通り(重複を除く)
と場合分けをして考えますが、重複部分で非常にズレやすい難問です。
大問3
(1) 〇
場合分けして調べるだけの基本問題で、桜蔭では頻出です。
確実に正解しましょう。
(2) △
出来るだけAを多くする場合と、Bを無駄なく活用する場合の両方を調べます。
答えに自信を持ちにくい内容ですが(3)もヒントと捉えましょう。
(3) △
Aを5セットの場合と、Bを出来るだけ多くする場合で分けて考えます。
Bを多くする場合、最安値はBで40冊購入、8冊もらい、Cで9冊購入する4828円です。
ここからBを1冊増やし、Cを1冊減らすと8円ずつ金額は増えていきます。
4900円は含まないことに気を付けましょう。
大問4
(1) △
水面は2/9cmずつ下がり、重りは1/2cmずつ上昇する、出会いの旅人算です。
この時点ではAやBの底面積を考える必要はないものの、状況を捉えにくい出題です。
(2)① ×
常に図で状況を把握しなければならないうえ、計算量も非常に多い難問です。
重りが着地するまでが、(1)を利用して162/13+162/13+5/0.5=454/13秒
ここから排水した量を求めて、状況を把握します。
幸いABともに全て水に浸かっているので、排水した量を空気の量として処理できますが、非常に面倒であることは否めません。
(2)② △
まずは75秒後に残っている量を求めましょう。
排水した量は50×75=3750㎤なので、
15×15×30-10×10×10-5×5×5-2750=1875㎤が残ります。
あとは下から10cmのBまでと、残りのAのどこまでかを丁寧に計算して調べましょう。
①よりは処理量が少ないので、①が出来ていないからと諦めずに取り組みたい問題でした。
このように今年の問題は確実に正解できる問題が少なく、受験生にとって不安を抱きやすい構成となりました。
小問の難度から合格ラインを想定してみましょう。
〇は4題
△は7題
×は3題なので、
〇で4/4、△で3/7、×で0/3で、7/14=約50点、あとは部分点で5点程度の、
おそらく55点程度ではないでしょうか?
例年と比べても合格ラインは低いことは確実でしょう。
来年以降に桜蔭を目指す皆さんは、是非ともこのセットで6割以上の得点を取れるよう、研鑽を積んでほしいところです。
典型題の解法知識の充実はもちろん、丁寧な処理力と鉄壁の計算力は桜蔭合格には必須です。
その他、今年出題されなかった桜蔭頻出テーマとしては
「ダイヤグラムと相似」
「不定方程式、3段つるかめ」
が挙げられます。
こちらも過去問を通し、入念な対策をとっておきましょう。
女子最難関校への合格、期待しています!