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栄光学園――。
言わずと知れた神奈川御三家の一角です。
東大合格者ランキングトップ10の常連校です。
キリスト教(カトリック)を信仰する学校ではありますが、「宗教」の授業を設置しない、礼拝も強制することはないという自由な校風の学校です。
◆各種データ
受験者平均点 42.5点
合格者平均点 48.7点
想定合格点 46点
◆出題形式
試験時間50分 70点満点
◆大問3題構成
1.説明的文章(論説文) 約6問
2.文学的文章(小説文) 約6問
3.漢字書き取り 15問
◆問題の種類
・記述 約40%
・選択肢 約30%
・抜き出し 約10%
・漢字 約20%
という割合になっており、記述の割合が高いのは間違いないのですが、意外にも漢字の出題割合も高くなっています。
漢字の内容は平易なものが多いので、トメ・ハネをしっかりアピールして全問正解を狙いたいところです。
漢字の出題の割合が高いのは難関校の中では珍しいケースと言えると思います。
文字数の指定がある問題はほとんどなく、1~2行の自由記述がほとんどです。本文から必要な要素を「複数の箇所」から見つけ、「1行もしくは2行でまとめる」作業が必要となります。
説明的文章の場合、「本文の内容が読めているか」を確認する問題が多いです。指示語の中身や、本文独特の表現を言い換える記述問題が中心となっています。
文学的文章の場合、「心情」にかかわる問題が中心となっています。その心情に至った理由・とった行動からどういう心情になっているかを記述する問題が中心となっています。
ここからは2021年度の栄光学園中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
解答例はこちら
大問1「食べるとはどういうことか」藤原辰史
問1 ○
指示語の1行記述です。
実は直前の2文が「ある食品会社の広報部の方」の具体例となっています。
「~~を理想だと考える人がいることも事実」
という文に繋がるように3文前の一文を利用して答案を作成しましょう。
問2 △
理由の2行記述です。
傍線部の次の段落(5段落)に、
「なぜかといいますと、一つは…」
という表現から、【筆者が食事を楽しんでいる】ことを拾います。
6段落では、「言語聴覚士の友人」の具体例が出てきていますが、具体例の直後に
「食べることは、実は…」
という「抽象」が出てきています。ここを使い【食べることは人間が人間であるための根源的な行為】と拾います。
7段落に
「二つ目に…」
とあるので、以降の段落から「抽象」表現に注目していくと、12段落の
「食べものから噛みごたえが…わたしは望ましいものではないと…」
とあるので、ここの段落から「二つ目」の内容を拾います。
ここから、
【噛むことで生まれた時間が食事に「共在感覚」を生む】
【人間を人間たらしめる】
を拾って、【 】の内容を文にしていきます。
問3 ○
指示語の20字以内の記述です。
傍線部の続きの文から、
「給油のように…しないことが…人間を人間たらしめている」
とあるので、「給油」が「遠回りとは逆の立場」であることが押さえられるかがポイントです。
そこから「遠回り」が時間のかかる行為とわかれば、【食べものをよく噛んで時間をかけて食べる】とわかります。
問4 △
設問の条件に当てはまるものを探す2行記述です。
傍線部の続きの文を見てみると、
「それは、…です。ただ、宗教や国籍を問わないで…」
という内容があるので、「ただ、」以降に注目します。
そうすると、【宗教や国籍に関係なく無料で食事を提供する食堂を設置する】という内容が拾えます。
あとは、傍線部と同じ文の「その半分以上は…」から、15段落に注目。
「こんな食堂が世界中に広がれば…飢餓はかなり減らせる」
という文から【食堂を世界中に広げる】を拾います。
「こんな」の中身をチェックして、【つくりすぎて余ってしまった企業や国の倉庫にある食糧を使用して、】と拾って、【 】の内容を文にしていきます。
問5 ○
選択肢問題です。
×のポイントは、
ア「若者が」
イ「ゼリーやムースは」
ウ「無関係」
オ「大企業…利用しさえすれば」です。
ひっかかりやすいですが、解けてほしいところ。
問6 △
意味段落分けの問題です。
個人的に、「読む上で必須となる技術」と考えていますが、「読み方」を教えられない担当は軽視する傾向にある問題です。
普段ロクに解説されていない可能性があるので、優先順位を○から1つ下げて△としています。
7段落の「二つ目に…」に注目して、「切れ目」が入れられるかどうか。
7段落から始まった「ゼリーやムース」の話が12段落で終わり、13段落で「14段落以降に語ることの小さな紹介」
14段落で「食べものが全部無料になる」話が始まる、と気付ければ、どれが正解か導けます。
大問2「朔と新」いとうみく
問1 △
語彙の選択肢問題です。
「閉口した」を「飽き飽きしてしまった」ではなく「困り果ててしまった」
「おずおずと」を「落ち着かない様子」ではなく「おそるおそる…行動する様子」と拾えるかどうかがポイントです。
問2 △
「背景→きっかけ→気持ち」で書く理由の1行記述です。
3つの要素が必要ながら、1行でまとめきるのが難しいと思います。
きっかけ:傍線部の直前の梓のセリフ「空いててよかった…」とその前の「座席に座った」から【電車内が空いていて座席に座れた】ことになります。
気持ち:傍線の1行後から、「普段外を歩くときの朔は口数が少なく、表情がかたい…緊張しているのがわかる」とあるので、「電車の座席に座れたことで【緊張がゆるんでいる】」と判断できるかどうかがポイントです。
背景:「きっかけ」をヒントに、「電車においてマイナスの印象が感じられる要素」を傍線部の前から探し、「マイナスの要素」を加えて【電車を使っての外出は今日が初めてで不安】と拾います。
【 】の内容を文にしていきます。
問3 △
「背景→きっかけ→気持ち」で書く心情の2行記述です。
きっかけ:傍線部の前の数行の会話から【今から会う人が盲学校の関係者】であることを拾います。
気持ち:傍線部の後の「…もう少し気を遣って…」「最寄り駅まで来て…」などから【最寄り駅に来るなどの気遣いをしてほしいと考えているが、そうしない】こと、さらに後の「梓の不満気な声に…」から【不満】を拾います。
背景:問2でも書いた「電車を使っての外出は今日が初めてで不安」に、「きっかけ」の逆の内容となっている、「…オレが視覚障がい者だから、…気を遣うべき…」の内容を足して【初めての電車での外出で、視覚障がい者の朔には不安があるのだから、】と拾います。
これらの【 】の内容を文にしていきます。
低得点率の△が続出しそうな問題になっています。
問4 ○
傍線部の行動を取る理由を拾う選択肢問題です。
傍線部の直前の「きっかけ」の「…オレが視覚障がい者だから、…気を遣うべき…」という内容をしっかり反映させた選択肢を選びたいところです。
問5 ○
抜き出し問題です。
設問内に
「この後の文中に」
「境野が視覚障がい者…に対して必要な配慮を示している箇所」
とあります。
この内容から、「目が見えない人だと気付けないものは何か」と考え、【視覚を使わないとわからない何かについて伝えている】と「解答イメージ」が浮かぶかどうかがポイントだと思います。
境野が【テーブルに置かれたものと大体の場所を伝えているセリフ】を拾いましょう。
問6 ○
言い換えの1行記述です。
傍線部「じゃあ」は梓のセリフの中にあるので、そのセリフを言った「きっかけ」を探します。
「……………」は梓が沈黙している様子なので、
そのさらに前の「いままでのオレ…」という朔のセリフが「きっかけ」となります。
あとは「文章を読んでいない人にも伝わる形」で、「じゃあ」を言い換えましょう。
国語が出来る人からすると「読めば誰でもわかるでしょ」と片付けられてしまいそうな問題ですが、こう言った内容に引っかかることなく、自然に答えられる「国語力」が求められていると言えそうな問題です。
大問3 漢字の書き取り 15題
1~15 全て○
内容としては平易です。
トメ・ハネに注意して、ゆっくり丁寧に書き、全問正解を狙いましょう。
この年度の栄光学園中の設問には×のレベルがありません。漢字でパーフェクトを取って15点、○の問題の指示語の記述、選択肢、抜き出しをきっちり拾って約15点、残りの問題で△を重ねて15点少々重ねれば、合格の想定の点数には到達します。
記述の形式が目立つ学校で、漢字以外の形式も設問に用意している学校は、漢字などの設問で安定した点数が作れていれば、記述が「○でないと合格しない」という状況にはなりません。
逆説的ですが、日々の漢字・知識をしっかり対策しておくことは、合格への近道になる、と言えそうですね。
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