日能研の育成テスト算数 本当の振り返り方法(前編)はこちら
前編の冒頭でも触れたように育成テストは単元別確認テストです。
その最大の利点は復習のしやすさにあります。例えば速さが苦手なお子さんは、第34~36回の3回分のテストの復習をまとめてすることによって、速さを強化することが可能となります。
本科テキストや栄冠の復習をするよりは、育成テストを復習する方がコンパクトにまとまっているので扱いやすいと思います。
あともう少しでMクラスに上がれそうというお子さんは、一緒に綴じられている応用問題の冒頭2題くらいを解いてみるのも良いでしょう。そうすればMクラスに上がったとき、問題のレベルの高さに面食らわないで済むはずです。せっかくMに上がったのに、テストで全然点が取れず、すぐにAに落ちてしまったという生徒さんを何人も見てきました。
そうならないよう、Aクラスにいる間に応用問題レベルに慣れておくのです。
別にMクラスに近くなくても算数が得意なお子さん、算数が好きなお子さんはどんどん応用問題にチャレンジしてみてください。最近は算数1科目入試の学校が増えてきましたので、こちらをお考えでしたら、応用問題を解かない理由はありません。(せっかく問題が手元にあるのですから)
Aクラスの授業とテストだけでは、上位校の算数1科目入試のレベルまで対応できないのが実情です。
では何をもって解き直し、復習、振り返りとするのでしょうか。この際、細かい言葉のニュアンスはこだわらなくてもいいでしょう。ここではほとんど同じ意味で使用しています。
とにもかくにも最終的にお子さんが「わかった!」という状況になり、実際に力がついていれば良いのです。
「わかった!」には様々なレベルがある
ところで、私は子どもの「わかった!」「理解した!」「大丈夫!」をほとんど信用していません。言い方を変えれば、信用していないというより、批判的精神で受け取るようにしています。
なぜなら、子どもの「わかった!」はザッと考えてもこんな感じで実に様々なレベルがあるからです。
レベル1:全くわからなかったけど正解した。→→「わかった!」
レベル2:感覚的になんとなくこのくらいかな?で正解した。→→「わかった!」
レベル3:何でそうなるかよくわからないけど、授業で習った解き方を真似て数をあてはめたら正解した。→→「わかった!」
レベル4:ある程度考え方を理解した上で正解した。→→「わかった!」
レベル5:本質をしっかり理解した上で正解した。→→「わかった!」
レベル6:本質を理解した上で解き方を説明できるレベルで正解した。→→「わかった!」
レベル7:レベル6に加えて、複数ある解法を適宜選択して正解した。→→「わかった!」
レベル8:レベル7に加えて、算数の苦手な友だちから質問を受けた時、わかりやすく解説した上でその友人の算数の力を底上げできる。→→「わかった!」
いかがでしょう。レベル8まできたらそれこそ我々と同業のプロレベルですね。
このように、子どもの「わかった!」には段階があるので、それを全て真に受けていたらお子さんの重大な欠点や弱点を見落としてしまうのです。これはプロ講師としてあってはならないことです。現時点では小さなほころびだとしても、それが後々どんな大きなマイナスとなって返ってくるのか・・・考えるだけでもゾッとします。
私は指導中に、ん?少し怪しいな、と感じたら、何でそうなるの?この式の意味は?と本当にわかっているのかどうか、確認の意味を込めて口で説明してもらいます。また、あきらかに公式をあてはめているだけだなと感じたら、なぜそのような公式になるのかを説明してもらいます。このような対話式思考訓練はお子さんにとって非常に有用です。
話を戻しましょう。
間違え方次第で振り返り方は変えるべき
それでは具体的にどのように振り返りをすればいいのか説明していきます。
6年生前期のうちは最低でも上記レベル4を目標にします。
まずは、毎回育成テストが終わったら本科テキスト、栄冠、授業ノート、MY NICHINOKEN からアンサーガイド(詳解)と模範解答をプリントアウトしてご準備ください。しかしすぐには見ません。
次に、間違えた問題を大まかに区別にします。
(あ)時間がなくて全く解いてない問題
(い)まったく歯が立たなかった問題
(う)ある程度までは解き進められた問題
(え)転記ミス等、算数の本質的な間違いではない問題
これらを以下のように扱います。
(あ)時間がなくて全く解いてない問題
(う)ある程度までは解き進められた問題
→→ テスト終了後、模範解答は見ずに、もう一度問題にチャレンジします。長くても1問10分程度を目安にします。
(い)まったく歯が立たなかった問題
→→ アンサーガイドをまずはじっくり読んで理解に努めます。何が書いてあるかほとんど理解できないとしたら、現時点でまだその問題を解くレベルに達していないということです。解き直しはしなくても良いでしょう。
(え)転記ミス等、算数の本質的な部分以外のミスによる問題
→→ 模範解答を見ずに解き直します。
次に(い)のまったく歯が立たず、解説を読んでも理解すらできない問題以外を徹底的に復習します。
その復習方法は以下の通りです。
アンサーガイド、本科テキスト、栄冠の該当問題のページを開き、授業ノート、これらをすべて広げて準備し、必要に応じて参照します。
そして、以下の事柄に留意しながら振り返りをします。
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図形の移動問題なら図を何度も書いて練習する。
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ダイヤグラムや進行図を書いて考える。
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表を書いて考える。
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線分図や面積図を書いて考える。
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等辺記号、等角記号を図にしっかり書き込んで考える。
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連比をしっかり書く。
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実際の数はそのまま、比の数値を〇、□、△などで囲い、はっきり区別する。
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通過算なら電車の図をしっかり書いて考える。
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樹形図や場合分けをしっかり書く。
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解法パターンが身につくまで、式1つ1つの意味を考えながら何度も書いてみる。
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理解したことを実際に声に出して説明してみる。
いかがでしょう。「書く」と「考える」・・・ごく当たり前のことばかりです。
上記のテクニックは受験算数の力を上達させる必須のテクニックです。
繰り返しになりますが、前期育成テストは単元別確認テストです。例えば平面図形の移動の回なら徹底的に図形を書き、速さの回なら進行図とグラフを書いて状況整理をする習慣を身に着けるのです。
「テーマごと徹底的に習得させる」
そういう意図をもって作成されたテストなのです。
入試本番は何も無い余白スペースに、自分自身で無の状態からすべて書き起こさなくてはなりません。しかも試験時間は限られています。ゆっくりていねいに書いている時間はありません。普段から書く練習をしないで本番で書けるわけがありません。
話を戻しましょう。
それでもなお理解できなければ、夜寝る前にベッドの中でなぜだろう?と考えながら寝てください。朝食を食べている時、翌日の小学校にいる時、トイレの中、塾や習い事の送迎の車の中、電車の中・・・どこでも考えることはできます。
算数という科目は、問題を頭の中に叩き込んでしまえば、勉強机と紙と鉛筆が無くても考えるこができるのです。頭の中に図形を思い描くことができるくらい、問題文を暗記するくらい執着するのです。
そして、本当にもうわからない!ギブアップ!となったら、家庭教師や個別指導の先生、教室の授業担当の先生に質問しましょう。
少し見ただけでわからないとすぐに投げ出して質問した時と、ここまで徹底的に考えてから質問した時では、得られるものは天と地ほどの差があるはずです。
余談ですが、フェルマーの最終定理を証明したイギリスの数学者アンドリュー・ワイルズは、仕事のある時以外は何年間も屋根裏の勉強部屋にこもって考え続け、ベッドに入っても、朝起きても1日中考え続けたそうです。
このエピソードからも頭を使って考え続けることの大切さがわかります。
振り返りが必要な問題
最後に、正答率と振り返りが必要な問題についてお話しします。
例えば、A1には、算数は得意だけど他の科目が足を引っ張ってA1にいる生徒さんだっているはずです。Mクラスの生徒さんでも、算数が苦手でかろうじて他の科目でカバーしてMクラスでふんばっている状況のお子さんもいるはずです。
そういうところをすべて丸めてしまって、Aクラスなら何%以上の問題、Mクラスなら全部直すというのはいささか粗雑なような気がします。
まずは、正答率関係なく間違えた問題すべてを上記の方法でアプローチしてみてください。
その中で前述した、(い)まったく歯が立たず、解説を読んでも何が書いてあるのか理解すらできない問題以外はすべて直しの対象としてください。
こうすることで、個々人に応じたレベルでの直しが可能となり、A××クラスだから50%未満はやらなくていいや!なんてことにはなりません。
6年前期の育成テストには正答率50%未満でも、非常に重要な入試問題のエッセンスが含まれている問題が多数あります。これらをクラスと正答率でブツ切りしてしまって、学ぶ機会を逸してしまうのはとてももったいないことですよ。
「じゃあ、(い)のまったく歯が立たず、解説を読んでも理解すらできない問題はどうすれば良いの?」と心配になったお子さん、親御さんにお話しします。
解説を読んでもまったく理解ができない問題については、以下の理由から、現時点で解き直しをしなくて良いと判断しています。
(理由1)このような問題に取り組むと、時間と労力が非常に削られてしまいます。それよりも優先度の高い問題があるはずなので、そちらに力を注いでください。
(理由2)後期になり、算数の力がついてきたなというタイミングで、(い)の問題に再チャレンジしてみてください。前期の時点ではまったく分からなかったのに、不思議と「あれ、解ける!わかる!」と手ごたえを感じることがよくあります。つまり、時機が来るまであえて手を出さないでおくのです。
繰り返しになりますが、振り返りは子どもたちがもっとも嫌がる作業です。しかしながら前期のうちにこの作業に慣れてルーチン化しておくことで、後期の過去問演習の振り返りに絶大な効果を発揮しますので、歯をくいしばって頑張ってください。
今回は冗長を避けるために前後編に分けてお届けいたしました。
お読みいただきありがとうございました。
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