受験者平均点 44.2点
想定合格点 55点
2024年春の東大合格者数は31名。
千葉県内では渋谷教育学園幕張に次いで2位となり、名実ともにトップ進学校としての評価を確立しています。
もともとは公立王国だった千葉県の勢力図が、この20年で大きく変わっていることには驚きを禁じ得ません。
ただこの高い合格実績にもかかわらず「勉強一辺倒!」の雰囲気は非常に薄く、明るい雰囲気の共学校であることが大きな特徴となっています。
部活動も盛んで、運動部や文化部を問わず様々な分野で全国レベルの活躍が見られます。
また2009年よりSSHに指定されていて、各種の科学オリンピックでの活躍も目覚ましいことでも知られています。
中学受験においては、毎年1月20日に幕張メッセで実施される第1回入試が2000名を超える上位生を集め、まさに風物詩となっています。
都内トップ校を目指す受験生の前哨戦としてだけではなく、第一志望校として市川中合格を目指す生徒も非常に多く、首都圏の1月受験の山場と言うことが出来るでしょう。
出題は首都圏では珍しい4科100点ずつの均等配点で、各科目においてその場での対応力が問われるトリッキーな出題も散見される千葉私立御三家の一角の難関校です。
ここからは2024年の第1回の市川中の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを見ていきましょう。
〇:合格のためには確実に正解しておきたい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので、可能な限り正解したい
×:完答できる生徒は少数、捨ててしまっても問題ない
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
基本的な計算問題です。
途中計算は分数で統一し、確実に正解しておくべき問題です。
(2) 〇
食塩水のやりとりと混合の基本問題です。
食塩/全体でやりとりを整理し、面積図かてんびんで混合の処理を進めましょう。
(3) 〇
多くの受験生が楽しんで取り組んだであろう推理算の問題です。
条件に合うようにあてはめても、もちろん表で整理しても良いでしょう。
時間をかけずに正解しておきたいところでした。
(4) △
場合の数は苦手にする生徒が多い分野です。
(4)は条件が多いので適切に整理することが求められました。
今回は大人に注目すると「1列目は運転席に」「2列目は左右いずれか」「3列目は真ん中に」座れば良いことが分かります。
(5) △
円と多角形は「中心から境目に補助線」が基本です。
今回も定石通りに取り組んでみましょう。
具体的な面積を求めるのではなく、1辺1cmの正方形Aと1辺1cmの正三角形Bが何個と問われているので、下の部分のBに該当する箇所に気を付けて求めましょう。
問2
(1) 〇
「長文形式で作業をともなう数の性質の問題」は近年の首都圏中学受験算数における頻出テーマです。
(1)は題意の確認問題です。
D,E,F,G,Hのいずれかに進んだら終わりという条件に気を付けて、確実に正解しておきましょう。
(2) 〇
「最後にDに進んで終了する=3で3回割れる=3×3×3=27の倍数」と言い換えるだけの問題です。
こちらも題意を理解さえしていたら易しい問題でしょう。
(3) △
「最後にGに進んで終了する」場合は「A→B→G」と「A→B→C→G」の2種類があることに気づきましょう。
解答例のように調べていくと、それぞれが等差数列になっていることに気がつきます。
決して難しくはありませんが、場合分けに気づけない受験生や、場合分けをした後どう調べるか思いつかずに手が止まってしまった受験生も多かったことでしょう。
大問3
(1) 〇
市川中で頻出の作図の問題です。
(1)は中心同士を結んで直径を描くことが出来れば易しいでしょう。
(2) △
どの大きさの円が何個増えたり減ったりするのかを正しく捉えましょう。
解答例では表で整理しました。
もとの円の大きさは①とおくことが万能でしょう。
解答例では(3)を見越して1/4を5乗しても整数になる(1024)と設定しました。
処理量はやや多いですが、ここで正解することが出来れば大きくリードを取ることが出来たでしょう
(3) △
(2)の続きです。
丁寧に表で整理できていれば、計算するだけの問題ですね。
「フラクタル」と呼ばれる、前の結果を利用する数の性質の難関テーマの中では、比較的易しめの出題でした。
大問4
(1) △
駒場東邦中などの難関校で散見される、特殊な設定の時計算です。
問題文の指示に沿って「だいたいの状況」を図で把握しましょう。
時計算において「角を二等分する」発想は、受験生なら一度は経験しているはず。
「シャドー」を使ってみても良いですね。
(1)は勝負したい問題でした。
(2) ×
「どの針が真ん中になる状況が考えられるか?」を8時から丁寧に追っていきましょう。
注意点が非常に多く、正解できた受験生はかなり少なかったことでしょう。
(3) ×
(2)が出来なかったとしても解答するチャンスがある問題です。
だいたいの状況を図示し、どことどこが等しいかを上手く立式しましょう。
かなりの難問ですが、トップ校合格を目指す受験生なら勝負したい問題です。
なお、こちらももちろん「シャドー」を用いて解くことも可能です。
余裕があれば確認しておきましょう。
大問5
(1) △
ニュートン算を下敷きにした複合問題です。
牛1頭と豚1頭の1日当たりに食べる草の量が異なりますが、
『全体の量÷(減る量-増える量)=時間』
の基本通りに、与えられている3つの条件を立式しましょう。
あとは消去算として処理できます。
難しくはないですが、見慣れたニュートン算と形式が違ったので、戸惑ってしまった受験生も散見されたことでしょう。
(2) △
(1)で求めた数値を用いての「3段つるかめ」です。
22日間で新しく生えてきた66kgも加えて考えましょう。
この処理自体は市川中合格を目指す受験生にとっては常識に近いことでしょう。
ただ(1)が出来ないと、どうしようもありません。
その点では差がつく問題と言えるのではないでしょうか。
(3) △
(2)の状況のうちAとBの和が最も小さいものを考えます。
途中で全ての草を食べ終えないよう気を付けましょう。
(2)が出来た生徒に対するボーナス問題としての側面も強いです。
総論
2024年の市川中の第1回の算数の平均点は男子46.2点、女子40.4点、全体で44.2点となりました。
かなりの難問が出題されることも珍しくない市川中の算数としては「普通~やや難」くらいの構成です。
合計点に注目すると、受験者平均点は217.8点、合格最低点は227点なので、算数で平均点+10点の55点くらい取れれば、合格の可能性を充分に高められたと言えるでしょう。
ただ、この55点というのは、そう簡単に越えられるラインではありません。
確実に正解して欲しい〇のレベルの問題は6問しかなく、これだけでは40点にも届きません。
△から3~4問、更に正解する必要がありました。
鍵になったのは最後の大問5でしょう。
ニュートン算の変形ではあるものの、この程度のレベルなら典型題の範疇に入ります。
(1)を正しく立式できれば、大問レベルでの完答も決して難しくない問題でした。
ただ1つ前の大問4が非常に難しく、充分に時間を残せなかった受験生も少なくなかったのではないでしょうか。
また「難関校の市川中の最後の大問だから…」と身構えてしまい、充分に考えずにとばしてしまった受験生もいたかもしれません。
さて、ここからは2025年以降に市川中合格を目指す受験生が、どのような戦略で取り組めば良いのかを考えてみましょう。
まず市川中の算数において受験生が意識しなければならないのが「面倒なのに答えのみしか問われない」という特徴です。
「惜しい」はありません、近い考え方をしていても、全く分からなくても同じ✕です。
そう考えると、この試験において最も重要なのは「取捨選択」に他なりません。
その場での対応を問われる初見っぽい問題も正しく題意を把握し、どこまで取り組むのか?どこで見切りをつけて次に進むのかを適切に判断することが必要です。
その上で「取れる」と判断した問題を正確に解き切れば合格が見えてきます。
そのためには当然ながら「計算力」や「解法知識」などの基礎学力を充分に養成しておくことが必要で、その上で過去問演習を通して傾向を知り、戦略を立てることが重要です。
ただ市川中の算数は年度による難度差が大きいことも悩みの種。
易しい年度は70点前後になる一方、難しい年度は30点前後になることも。
充分な実力を身につけ、充分な準備を重ねたとしても、最後はどうしても「出たこと勝負!」になってしまう側面は否めません。
ただそれでも「取捨選択」は活きてきますよ。
自律学習サカセルは市川中合格を目指す受験生を応援しています。
自分に合った戦略ってどんなだろう…という疑問があれば、お気軽にご相談ください。
ひとりひとりの得手不得手を踏まえた具体的な戦略を一緒に模索し、確立します。
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