サカセルコラム

女子学院中の国語分析(2025年) Column

過去問分析

女子学院中の国語分析(2025年)

2025.05.03

2025年度の女子学院中では物語文が出題されました。
例年、随筆文と説明的文章の組み合わせだったので、2025年度の受験生は面食らったことでしょう。
本番の入試には想定外はつきものです。想定外が起こるという前提で心の準備をしておくと焦りが生まれず、力を出し切れると思います。

また、全体を通して非常に誘導の強い入試問題でした。
しっかりと誘導に乗っていけた受験生にとっては非常に解きやすい問題が多かったと思われます。
これから過去問として2025年度の問題を解くお子様は、誘導を意識して取り組んでみてください。

●出題形式
試験時間 40分 100点


●大問2題構成
随筆文/物語文


●今年度の問題の種類
記述(空欄補充形式) 25%程度
記述(通常)     30%程度
選択肢      25%程度
知識       5%程度
抜き出し     5%程度
漢字       10%程度



今回使用する指標


○ 確実に取れて欲しい問題
△ 合格の勝負所、差がつく問題
× 落としても合否には大きく影響しない問題

大問1 オオカミのこと (星野道夫)

問1 選択肢 ○

比較的簡単な問題だったと思います。
まず、傍線部①に「物語上の架空の生き物」とあり、そして傍線部①の2行後に「子どもの頃、ディズニーやシートンの世界で想像した生き物」とあります。
以上より、【ウ】が正解と分かります。

ア 「慣れ親しんでよく知っている」が読み取れない。
イ 「昔は身近な存在」が読み取れない。また「絶滅」が言い過ぎ表現。地球上では絶滅していない。
エ 「悪者としてしか」が言い過ぎ表現。また「楽しみ」も読み取れない。

問2 知識 ○

もぬけの【から】 
漢字で書かないように注意。

問3 選択肢 知識 ○

傍線部前後の文脈から考えた上で、自分の知識と照らし合わせて選びましょう。
傍線部③の形式段落を読みます。
「巣穴を見つけた」オオカミの生活圏に侵入している。
「もぬけのから」オオカミの家族は逃げ出した。逃げたということは、オオカミは筆者に脅威に感じている。
以上から【イ】が選べます。

ア 「勢いよく行動」が読み取れない。
ウ 「なにもかも自分のものに」が言い過ぎ表現、且つ読み取れない。
エ 「わかっていながら踏みにじる」が読み取れない。

問4 記述 △

心情の記述です。「背景→きっかけ→(意味付け)→気持ち」の順番でまとめていきます。考える順番は「きっかけ→気持ち→背景→意味付け」が今回は分かりやすいです。(基本、きっかけから探す)

A背景   オオカミは、筆者にとって憧れの生き物・非日常的な生き物・レアな生き物・尊い生き物
Bきっかけ オオカミの縄張りに誤って侵入・生活の邪魔・荒らしオオカミは警戒・引越し
C意味付け 失敗したことに
D気持ち  罪悪感・申し訳ない

Bのきっかけは傍線部④と同じ形式段落の内容をまとめます。問3が誘導になっていますね。
「巣穴を見つけた」→生活圏に侵入。
「もぬけのから」→オオカミの家族は逃げている。→逃げるということはオオカミにとって筆者が脅威だった。→生活の邪魔・荒らし 

Dの気持ちはきっかけと傍線部④の「苦い思い出」から考えます。→罪悪感など

Aは傍線部①や問1の内容から読み取れます。これも誘導です。Dの気持ちに罪悪感が来ると分かっていれば、背景にプラスの内容を入れた方が罪悪感の説明ができ、より丁寧な記述になります。
→罪悪感を覚えている。→オオカミが筆者にとって憧れの生き物だから。(例えばアリの生活圏に侵入しても罪悪感を覚える人は少ない、と考えると分かりやすいかと思います。)

Cの意味付けは背景ときっかけをまとめます。→失敗した。

以上をまとめましょう。

【オオカミは筆者にとって憧れの生き物であったのに、誤って生活圏に侵入し、生活の邪魔をしてしまい、オオカミたちを警戒させ、巣から追い出してしまった。以上の失敗により、罪悪感を覚えている。】

問5 記述 △

言い換えの記述です。
「状況」と「みよう」を言い換えていきます。
直前の内容を読むと以下の内容が分かります。

「ムースの個体群の減少」

「オオカミをわざと減らす」

「ムースの状況を見る」

〈状況の言い換え〉
では、ここでオオカミを減らしてまで人が見るものは何か?と考えます。
それは「ムースの個体群の様子」と分かりますね。

〈みようの言い換え〉
そして、「個体群の様子を」をどうするのか?と考えます。
それは「確認する」くらいが適当でしょう。

以上をまとめます。

【(ムースの)個体群の増減がどう変化するのか確認するということ。】

問6 記述・空欄補充 ○

傍線部⑥の直前の内容を読んでまとめるだけです。非常に簡単だったでしょう。

A 「人間」「乱獲」がヒントです。→【バイソン】

B 「乱獲」の結果起きたこと。→【食べ物がなくなる】

C 「食べ物がなくなった」結果、「オオカミ」がすること。→【人間の家畜を襲い始める】

D 本文を読むと「家畜を襲い始めた」結果、「人間に害を与えるさまざまな現象のシンボルとして扱われてきたオオカミの伝説は復活し」と書いてあるので、まとめる。→【(オオカミの)持つ人間に害を与えるという象徴性が復活(したために)】

E 「人間が」何をしたのか。→【狂ったようにオオカミを殺す】

問7 記述 △

皮肉の言い換えです。
皮肉の意味が書いてあるので親切ですね。

設問から皮肉の意味は「予想に反して」「よくない結果」と分かります。これを言い換えていきます。

「予想」→ムースの個体群が減少したのは、オオカミが原因。 (問5がヒントになっている。傍線部⑤の直前)

「結果」→多くのオオカミが殺された後に、グリズリーが原因だと分かった。(傍線部⑦の直後に記載あり)

【ムースの個体群が減少したのはオオカミが原因だと予想され、多くのオオカミが殺されたが、その後グリズリーが原因だと分かったこと。】

問8 抜き出し ○

精神の健康を維持してゆくために(      )が必要だ。
上記に当てはまる内容を考えます。精神の健康を維持してゆくために必要なものですね。

傍線部⑧の一文を読むと「健康を維持してゆくためにいろいろな食べ物が必要なように、同じことが精神の健康にも必要なのだろう」とあります。

「いろいろな食べ物」 → 「健康の維持」
「        」 → 「精神の健康」

以上より、傍線部の前後を読むと【文化の多様性】が拾えます。
※生物の多様性という誤答が考えられます。注意しましょう。

問9 選択肢 △

傍線部⑨の言い換え問題です。
直前の内容から考えていきましょう。

まず、傍線部⑨の直前の段落を読むと「多様性」が重要とあります。(問8でも登場)
その文脈から傍線部⑨の段落を読むと「多様性を否定したらこうなるよ」という脅し文句になっていることを読み取って欲しいです。以上を踏まえて言い換えをしていきましょう。

「一部の人間〜価値観」ある人間たちの価値観で
「異なるものの存在を」自分たちとは違う価値観、考え方の人たちを
「脅かしてゆく」   →攻撃していく批判していく
「それ自身が」    →ある人間たちが
「袋小路へと」    →逃げ場のない場所(書いてないので知識勝負)
「追い詰められてゆく」追い込まれていく発展性を失う

問7で登場した「皮肉」にもなっていますね。
「予想」→自分たちの利益のためにあるものを排除
「結果」→自分たちの首をしめる結果になる

以上より【ア】が正解です。

イ 「支配が強まってしまう」が根拠の内容と真逆です。
ウ 「社会全体が混乱」が△。「袋小路へと追い詰められる」の言い換えとしてアの選択肢に劣ります。
エ 「消滅してしまう」が根拠の内容と真逆です。

問10 選択肢 △

傍線部⑩を通して筆者が感じたことを考える問題です。

傍線部⑩の直前から直後を読むと、「違うものの存在を認めるということ。あの夜〜それを語りかけ、教えてくれた」とあります。「それ」を語りかけとあるので、指示内容を拾います。すると「違うものの存在を認めるということ」とあるので、ここを根拠としましょう。

以上より【イ】が正解となります。

ア 「この世界を守っていくことが大切だ」が不適切。読み取れません。
イ 本文の傍線部⑦の3行後に書かれていますが、ここを根拠とするのであれば設問で「本文を通して」などの文言を入れると考えられます。それがないので、今回は不正解とさせていただきました。
ウ 「違う生き物の視点を通して」が△。視点というのが少し変です。動物の視点から物事を考えるとは日本語として一般的に使わない表現です。「違う生き物の立場」などであれば正解の選択肢だったかもしれません。

大問2 桜の木が見守るキャフェ (標野凪)

問1 空欄補充 △

傍線部①と設問から考えます。
「菓子だといわれなければ」「勘違いしてしまいそう」とあるので、何と勘違いするのか考えれば分かります。【本物の柚子/果物の柚子】などが良いでしょう。

2の方が少し難しいかもしれません。和菓子の柚子と本物の柚子が似てるという表現を考えましょう。
【精巧な出来/そっくり】

問2 選択肢 ○

驚きの感情のきっかけを考える問題です。

傍線部②の直後の緋桜の台詞を読むと「楽しみ/嬉しさ/なかなか人任せにできない」とあります。
ここから
「経営者である緋桜が自分で買い付けに行っている」「驚く」→「楽しみで人任せにはできないと説明」
以上の流れが読み取れます。
よって答えは【イ】

ア 「和菓子は日持ちしない」という知識があるとわかりやすいですね。逆に、先日買ってきたなんて言われた方が驚いてしまいます。
ウ 「買いに」に驚くということは緋桜が和菓子を自前で作っていると可奈は思っていたことになります。カフェの経営者が精巧な和菓子を自前で作っているとは考えにくいですね。
エ ウの選択肢の同様の理由です。

問3 選択肢 ○

心情の問題です。
「いい切った」という内容から「強さ/揺らぎなさ/堂々」などの内容が連想できれば簡単だったでしょう。

また、直前の台詞2つに注目します。「そこまでのこと〜そうですね」「その人だけの作品、と思って作ってはいます」この2つから「セミオーダーではあるが、オーダーメイドのつもりで作っている」というこだわりと、「購入者のために作っている」というこだわりが読み取れます。

以上をまとめると【ウ】が正解ですね。

※商品の一般的な価値基準として、オーダーメイド>セミオーダー>既製品ということはを知っておくと良いでしょう。本文の会話からも読み取れますね。

ア 「自分にしか作れない」が言い過ぎ表現です。
イ 「誰にも負ける気はない」が不適切。本文から読み取れないですね。
エ 「理解してほしい」という表現だと、理解されていないという意味になってしまい不適切です。

問4

(1) 選択肢 ○

「言い淀む」の意味です。知っていれば簡単です。意味を知らない場合は文脈から考えましょう。
直前の会話を読んでいくと

可奈「その人だけの作品、と思って作ってはいます」
緋桜「あ、でも私の…」

とあります。緋桜が言葉に詰まってしまっています。
その理由は直後の内容「緋桜が愛用している可奈の作品は〜プレゼントされたものだ。」になります。
以上より選びましょう。
答えは【ア】です。

(2) 記述 △

上記の内容を「背景、きっかけ、意味付け、気持ち」でまとめていきます。

A背景   自分の愛用している可奈の作品は人からもらったもの
Bきっかけ 可奈は購入者のために作るという強いこだわりを持って作品を作っていると知る
C意味付け 可奈のこだわりを否定する形になり
D気持ち  気に障っているのではと心配になっている

Cの意味付けはAとBの内容を抽象化したものにしています。最悪書けなくても大丈夫でしょう。
Dの気持ちはA〜Cから考えると同時に(1)の言い淀むの選択肢からも考えることができます。

【購入者のために作品を作るという強いこだわりを可奈は持っていると知り、自分の愛用している可奈の作品は人から譲ってもらったものだったので、可奈の思いを否定する形となり、気に障ったのでは無いかと心配になっている。】

問5 文法 △

「れる」の用法です。
受け身、尊敬、自発、可能の見極めになります。

A
「贈り物として選ばれる方は」とありますが、この文章は目的語が省略されているのと、「方」の内容が不明瞭なので、それを補ってあげると分かりすくなります。

「贈り物としてバッグを選ばれるお客様は」

以上より「尊敬」の意味だと分かります。

B
「悩まれるんです」が文の述語なので、主語を拾うと分かりやすいです。

「贈り物としてバッグを選ばれるお客様は〜あれこれ悩まれるんです」

以上より「尊敬」の意味だと分かります。

C
主語を少し変えてあげると分かりやすくなります。

贈ったプレゼントが相手に喜ばれる」

「プレゼント」が主語で「喜ばれる」が述語です。プレゼントが喜ぶことはあり得ないので、「受け身」だと分かります。

以上より【エ】が正解となります。

問6 選択肢 ○

言い換えの選択肢問題です。
傍線部の内容の言い換えを作り、選択肢を選びましょう。

傍線部⑤の直前の内容を読むと「プレゼントは品物そのものの奥に、贈り主の想いが詰まっている」とあり、それをさらに具体的にしたものが傍線部A〜Cの台詞に書かれています。「贈り物として〜選んでくださっているんです」
以上より、「贈り物を贈る行為は相手のことを考えるという行為であり、それ自体が良いものなんだ」という趣旨の言い換えが作れます。
答えは【エ】です。

ア 「あえて記念日という特別な日でないときに」が不適切。この表現だと記念日の贈り物は劣っているかのような表現になってしまいます。
イ 「相手の好みにふさわしい」が不適切。本文では贈る行為自体が良いものという趣旨の話をしています。この表現だと贈り物の良し悪しの話になってしまっています。
ウ 「相手と品物に似ているところがある」が不適切。そんな話はしていません。

問7 記述 △

文章が読めているかどうかの記述です。
読めているお子様にとっては非常に簡単だったと思いますが、気付けないお子様にとっては意味不明な問題だったかもしれません。

文章の主な登場人物としては緋桜と可奈ですが、実はもうひとり登場しています。
結論から述べると「桜の木」です。
文章の冒頭6行は「桜の木」の独白です。5行目に「もちろん葉を落としたわたくし」とあり、ここから人間ではないことが分かります。
また、タイトルがなぜか文章の前にあり、「桜の木が見守るキャフェ」と書かれています。

以上より、【緋桜のカフェに生える桜の木】となります。

大問3 漢字

漢字です。
丁寧に書きましょう。
女子学院はトメハネハライに関しては厳しくありません。

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松田 浩志

この記事を書いたのは...

松田 浩志

自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。

大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。

現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。

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