この記事を書いたのは...
H.Y
パリ政治学院修士1年
ハンドボール、スカッシュ、尺八と
マイナーなものをせめがち。
個別指導・家庭教師の自律学習サカセル
サカセルコラム
大学でも役に立った速読技術とは? Column
こんにちは、慶應義塾大学4年のH・Yです。
12月も中盤に入ってきました。カナダに留学した際には0度でも暖かいと言っていた私にも、体が日本に慣れてしまった今では堪える寒さですね。
前回は大学の試験問題の変更に即して「文章を書く」ということをテーマにフランスの教育から学べることを議論しました。
前回はこちら(過去記事)記述式問題、論述、海外ではどう教えている?
そこで、今回は「文章を読む」ということをテーマにしてゆきたいと思います。ただ、文章を読むと言っても様々な方法が存在します。ということで、今回は試験でも役に立つ「速読」について自分の経験から考えてゆきたいと思います。留学中には1週間に100ページ以上の英文を読みこなさなくてはならず、その時に早く読む技術はとても便利でした。また、その有用性は早く読むだけにとどまらないとも思っています。今回はそこまで言及しませんが、次回はその応用にも触れたいと思います。
そもそも速読をする理由を考えてみましょう。まず思い浮かぶのは「読む時間を短縮するため」です。しかし、それは文章を読むという行為全てに当てはまるわけではありません。早く読むべき「状況」があるはずです。では、人が文章を読む「状況」にはどのようなものがあるのでしょうか。大抵は「娯楽のため」か「情報を得るため」に分類できると思います。例えば、ただ小説を読むときは「娯楽のため」なので、自分の好きなように想像力を働かせながら読んでいいはずです。そのため、よほどの時間的制約がない限り、わざわざ早く読む必要はありません。しかし、試験で小説を読まなければいけないときは、同じ小説であっても正解を出すための情報を引き出さなければなりません。この後者の場合に速読をしなければならないはずです。
それでは実際にどうすれば速読できるのでしょうか。小手先の方法論は巷にあふれかえっていますが、その中でも自分が実際に論文を読むときなどに使っているものを少しご紹介したいと思います。実際のシチュエーションに当てはめながら考えた方が分かりやすいため、今回は「ラーメンに関する本でおいしい地元の豚骨ラーメンを探す」状況を例にしたいと思います。
これは一番大事かもしれません。本を一番最初から読まなければいけない決まりはありませんが、本の一番初めに書いてあるこの目次は大切です。ラーメンの情報がその種類別に載っているとしましょう。この時、豚骨ラーメンを探しているのに家系ラーメンの項目を読んでいては本末転倒です。また、目次を読めば、ある本が豚骨ラーメンについて話していないことがわかるかもしれません。この過程を踏むだけで、自分が探している内容があるのかを見つけ、読むべき場所を絞ることができます。また、本屋や図書館で本を探しているときに、その本が本当に役に立つのか、買う価値があるのかを測るためにも役立つのです。
Googleでおいしいラーメン屋さんを調べるときに、検索欄にスパゲッティと入力する人はいないと思います。まさしく、このように本の中で何かを調べるときも検索欄に入力するようなキーワードを探すべきなのではないでしょうか。つまり、目次で豚骨ラーメンについて紹介しているページに飛んだら、その中でも特に地元のものを探さなければいけません。このキーワードに目を光らせて、見つけたらその周りだけ読めば自分の得たい情報を得られる可能性があがるのです。
ただ、ここまでの1,2で前提になっていることがあります。それは、自分が探している情報がハッキリしているということです。自分が「おいしい豚骨ラーメン」を探しているのではなく「おいしい麺類」を探しているのであれば、そもそもその範囲が広すぎて、探すべき情報のソースが莫大なものになってしまいます。そうしたら、1つ1つを早く読んだところで結局沢山の時間がかかるでしょう。欲しい情報の具体化が大事なのだと思います。
今、私が結局知りたいことはなんでしょう。それはその本を書いている人が地元のある豚骨ラーメンを美味しいと思っているのか、そうではないのかということです。そうと決まれば、筆者がそのような表現をしているところだけを探せばよいのです。とりあえず、ラーメン屋の歴史やそのラーメン屋さんの最寄り駅からの行き方は読み飛ばし、「スープにはコクがある…」や「麺にこしがある…」という文章を探すのです。
最後は完全に技術的な話ですが、筆者が言いたい大事なことはパラグラフの最初と最後に書かれていることが多いものです。そのため文章中のどこに注目すればいいのかは明らかでしょう。また、「店の外観は汚い、しかしとてもおいしいラーメン」ときたらその後に続くのは筆者が強調しているのはおいしいということです。特にパラグラフの最初と最後中で、この「しかし」という言葉を探すだけで大事な部分を早く見つけることができるかもしれません。
この1~4の技術で通底するのは、読む部分を根本的に減らすということでしょう。文章を読むときに時間がかかることは、その文章が週刊誌のラーメン紹介でも、哲学書でも、文章を読むこと自体なのかもしれません。結局、読む部分を最小限にすることで必要な情報を得るまでの時間を短縮しているのです。
速読は読んで字の通り、文章を早く読む技術です。基本的には自分が探している情報を明確にしたうえで、それに基づき、実際に読む部分を限定する技術と言い換えられるかもしれません。これを行えば、試験を時間内にこなしたり、大量の文書に目を通してその概要を理解したりする能力が上がると思います。自分が今回紹介したちょっとした技術は人口に膾炙したものでしょう。ただ、速読の技術で紹介されていることは人が読んだ文章を早く処理できるパターンを表しているのです。つまり、初めに少し述べたようにこれは読む技術にとどまらない応用の可能性があり、このパターンを逆手にとれば相手に早く理解させる文章を書けるのではないでしょうか。次回はこのことについて掘り下げてゆきたいと思います。
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H.Y
パリ政治学院修士1年
ハンドボール、スカッシュ、尺八と
マイナーなものをせめがち。