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武蔵中の算数分析(2023年) Column

過去問分析

武蔵中の算数分析(2023年)

2023.12.20

受験者平均点 52.9点
合格者平均点 70.5点
想定合格点  65点

武蔵中学校の併願パターンや過去の試験の解説へのリンクはこちら

昭和の時代から長年にわたって高い合格実績を誇っていた男子御三家の一角の武蔵高校。

他の御三家の開成高校、麻布高校と比べると少数精鋭で、学年の半数が東京大学に進学することも珍しくなかった日本を代表する名門校です。

近年は大学合格実績の低下で、入学難度が下がっていた時期もありました。

ただ「緑豊かな環境」「生徒の探求心を刺激する授業」「考える力や書く力を育む教育」などに再び注目が集まり、武蔵中学は唯一無二の存在として人気を盛り返しています。

その結果、入学試験では2022年は3.5倍、2023年も3.1倍という熾烈な競争が繰り広げられ、御三家の名に恥じない優秀生が集まるようになりました。

入試問題も独特です。

各科目において「読む力」「考える力」「書く力」が強烈なまでに求められ、武蔵の教育を受けるにふさわしい生徒を選抜するための試験となっています。

ここからは2023年の武蔵中の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを考えていきます。

今回使用する指標

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので可能な限り正解したい
×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えたら充分

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇  △

2023を素因数分解すると7×17×17となることは、2023年の受験生なら常識でしたね。

(1)ではそのままの形で問われました。

「約数の和」は公式で考えても良いですが、今回は「7の倍数」という条件もあったので、書き出して計算したほうが確実でしょう。

解答例のようにちょっとした工夫を心掛けられると、なお良いです。

(2) △  ×

2組の3人兄弟の時は、1組目の3兄弟が松竹梅の3部屋にバラバラに泊まるので、3×2×1=6通り。

2組目も同じく6通りになります。

計算処理自体は非常に易しいものの、思いのほか捉え方が難しい問題でした。

3組の2人兄弟の時は場合分けが大変です。

解答例のように、全ての通りから該当しないものを除くという「余事象」の発想を用いることが出来ると良いでしょう。

該当しないものは「1組だけが同じ部屋」の場合と「3組それぞれが同じ部屋」の場合が考えられます。

このように武蔵中の2023年の大問1(2)は数学Aのような出題になりました。

「場合の数」は苦手にする受験生が多いので、得点率は意外と低いのかもしれません。

大問2

やや長めの問題文で、出てくる用語や数値を見てみると「ニュートン算か」と思った受験生も少なくなかったことでしょう。

ただ、素直に読んでみるとはじめの人数が与えられているのでニュートン算ではなく、問題文に沿って条件を整理すると普通のつるかめ算だと分かります。

非常に易しい問題でしたが、先入観で混乱してしまった受験生もいたのかもしれません。

この大問で大量失点をしてしまうと、その後のリカバリーがかなり大変になりました。

満点かゼロに近いか、差がつく問題だったと言えるでしょう。

大問3

(1) △

武蔵中の算数で頻出の「平面図形と比・相似」の問題です。

今回は△BCFと△CHGが相似で、相似比が5:3になっていることに気づけるかどうかがポイントでした。

決して難しくはありませんが、試験本番の緊張下では気づけなかった受験生も散見されたことでしょう。

(1)を落としてしまうと自動的に(2)も取れません。

こちらも差がつく問題でした。

(2) △

「正方形ABCDから四角形EBCHを除く」という方針が適切でしょう。

三角形の斜辺を1辺とする正方形は解答例のように「大きな正方形から除く」と考える解法は難関校受験生ならば一度は経験したことがあるでしょう。

こ問題を短時間で完答できれば、かなり有利になったことでしょう。

大問4

(1) △

武蔵中らしい「読み取りと条件整理」の問題が最後に配置されました。

2022年は珍しくこの「調べ上げ」タイプの問題が最後の大問として出題されなかったので、2023年のような形式のほうが「例年通りだ」と安心感がありますね。

ただ作問者が考える条件が多すぎたのか4枚目は問題だけで、解答欄は5枚目になりました。

問題用紙が5枚になったのは、平成以来おそらく初めての出来事です。

さて(1)は、条件に沿って、いくつかのパターンを調べてみても良いでしょう。

△の周期が8の約数になった場合は成立しないことが分かります。

この問題はもちろん(2)以降のヒントになっています。

(2)(1) △

まずは条件に沿って書き出してみても良いでしょう。

イの場合は(1)の理由から、そもそもA・Bの両方と当たることがないので練習が終わらないことがすぐに分かります。

エの場合はたしかに全員がABの両方と当たることは分かりますが、8と3×2=6の最小公倍数が24回になることから、①~⑧が3回ずつ蹴ることになり、3は奇数なのでA・Bと当たる回数が同じになることはありません。

この特徴に気づけるかどうかが(2)(2)のヒントになっていましたが、この問題に関しては書き出して正解できれば充分でしょう。

本質を捉えられていなくても、得点は取れますね。

(2)(2) あ △  い ×

(2)(1)までのまとめにあたる問題です。

もし特徴を掴めていなかったとしても5通りを調べれば良い「あ」までは、書き出して正解しておきたいところです。

「い」は「のべ」人数に注目することで、それぞれが偶数回蹴るのか奇数回蹴るのかを判断しましょう。

やや処理量は多くなりますが、特徴を掴めていたならば決して難しくはありません。

総評

このように2023年度は5枚という異例の問題用紙の枚数になったものの、内容自体は例年の傾向を色濃く反映した武蔵中らしい出題になりました。

合格者平均点および受験者平均点は、それぞれ70.5点と52.9点、やや易しめの基準です。

なお2016年以降は易難易難易難易…と難度の隔年現象が続いていましたが、2023年は易しめの年度が2年続く結果となり、この現象には終止符が打たれる結果となりました。

この2023年の算数の出題での合格のモデルケースを考えてみましょう。

鍵は中学受験に向けた努力を適切に積み重ねられていれば決して難しくはなかった大問2と大問3でしょう。

この大問2問を完答できれば約50点を確保でき、かなり余裕が出来たのではないでしょうか。

一方で大問2や大問3で大量失点してしまうと、厳しい受験になったと考えられます。

大問1や大問4は武蔵中を目指すだけの基礎学力があり、充分に対策をしてきた生徒間では、細かく点数を拾っていくことが出来るので、あまり差がつかないと言えるのではないでしょうか。

2024年以降に武蔵中合格を目指す受験生は、基礎学力を養成後、まずは過去問演習を中心に学習を進めましょう。

「和と差」「比と割合」「図形と比」「速さと比」「調べ上げ」など、頻出分野が比較的偏っていることが分かります。

あとは得点を伸ばせそうな頻出分野を重点的に学習できると良いでしょう。

答案作成力の養成も必須です。

「図」「表」「言葉」「式」「単位」などで論理を組み立て、採点者に自身の理解を過不足なく伝えられるよう練習しましょう。

頼りになる講師に添削をお願い出来ると、答案の質や飛躍的に向上します。

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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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