今日のテーマは2018年の麻布中の算数です。
制服も無く、明文化された校則も無い、自由な校風で知られる麻布中。
麻布生は自由を満喫する中で自律心を養い、大学受験を意識すると同時に高い集中力を発揮して、難関大学への合格をつかみ取ります。
その自由と自律、アカデミックな校風に惹かれて一族代々麻布出身という家族も多いほど。
そんな麻布中、やはり算数の出題内容も「麻布らしさ」に満ちたものになっています。
算数のポイントは
「速さや平面図形における比の利用」
「試行錯誤を楽しめる作業力」
「誘導に沿って考えられる算数的読解力と、柔軟な着眼」
が挙げられます。
比に関しては、どの塾でも共通して学ぶ内容で対処できるものの、後半の大問で課される、読解力・作業力・発想力は麻布に特化した対策が必須です。
もちろん他科目も単純な暗記よりも「正しく読み・考え・自分の言葉で表現する」力が求められ、麻布が求める生徒像を色濃く反映しています。
さて麻布中は各科目の平均点などは発表せず、合計点での合格者最低点と合格者最高点のみを公表しています。
合格最低点は例年110/200前後、最低点の上下は算数の難度に反映されています。
目安となる合格ラインは算数で40/60、他科目で合計70/140と言ったところ。
算数が易しい年は算数で+5、難しい年は-5のイメージです。
さてそんな中、2018年の合格最低点は106/200と標準的です。
ただ今年の出題は決して易しいものではありません。
ここからは、どう得点すれば麻布中の合格を勝ち取ることが出来たのかを考えてみましょう。
〇:麻布中合格のために必ず正解したい問題
△:出来れば正解したいが、分からない場合でも部分点を取りたい問題
×:完答は厳しいので部分点狙いに徹したり、他の問題に集中するのも得策な問題
解答例はこちら
大問1 〇
和一定の基本的なやりとり算です。
典型題なので落とせません。
大問2 〇
計算量はやや多いものの、基本的な問題です。
解答方針は色々と考えられそうですが、×3.14で計算を整理することは当然ですね。
半径13cm、高さ5cmの円柱から、半径7cm、高さ5cmの円柱を引き、そこから斜線部右下の帯状の長方形が回転して出来る体積を求める方針が良いでしょうか。
大問3
(1) 〇
麻布中おなじみの題意の確認問題です。
〇〇×〇〇×〇〇×・・・と考えてみましょう。
(2) △
(1)と同じように考えると×が4ヶ所と分かります。
●×●×●×●×●
の●の5ヶ所のうち、4ヶ所が○○、1ヶ所が〇と考えましょう。
類題を経験したことが無ければ難しいかもしれません。
(3) ×
(2)と同じ発想を用います。
●×●×●×●×●
の●の5ヶ所のうち
①4ヶ所が〇〇、1ヶ所は〇を置かない
②3ヶ所が〇〇、2ヶ所が〇
と場合分けをして考えましょう。
大問4
(1) △
完全なパズル問題ですが、+と×しか用いないので「数が少なることはあり得ない」と考えれば、比較的早い段階で見つかります。
右側の大きな数に注目して調べてみましょう。
7×8=56を作ってしまうと、式が成立しないことを糸口に出来ると良いですね。
(2) ×
(1)と同じように考えます。
ただ今回は13×17=221も作れることがポイントです。
夢中になって探していると時間がかかってしまう場合も考えられるので、後回しにしても良いでしょう。
大問5
(1) △
題意の確認問題ですが、難度は高いです。
このクモは「必ずしも最短距離を通らない」ことに注目し、様々な境界を考えてみましょう。
なお当然、上に進む場合と右に進む場合は対称になります。
(2) △
(1)の発展形です。
上に進む場合と右に進む場合のそれぞれで、丁寧に状況を追っていきましょう。
難度は高いですが、(3)は(2)が出来れば正解は容易なので合格のためには勝負したい問題です。
(3) △
(2)が出来た生徒に対するサービス問題です。
計算量も少ないので、(2)が出来た生徒は大きなアドバンテージが得られました。
大問6
(1) 〇
4年生レベルの基本問題です。
ただ麻布の場合は後半の小問への重大な手がかりとなっているケースも多いので、気に留めておきましょう。
(2) 〇
題意の確認問題です。
「2倍になっていること」「末尾が00であること」が後々の重大なヒントになっています。
(3) ×
(2)がヒントになっているものの、非常に難しい問題です。
〈2018〉+〈2008〉=~~00
〈2008〉+〈1998〉=~~00
〈1998〉+〈1988〉=~~00
↓
〈18〉+〈8〉=~~00
〈8〉=256だから
〈18〉=~~44
あとは下2桁が44と56を交互に繰り返すように戻していくという、鮮やかな問題でした。
麻布らしい誘導の使い方は見事ですが、受験生が試験中に思いつくかというと難しいかもしれません。
(4) ×
(3)の発想をさらに発展させて考えます。
〈17〉+〈7〉=~~00
〈7〉=128だから
〈17〉=~~72
よって〈17〉〈37〉〈57〉・・・の下2桁が72
あとは〈17〉+〈7〉=~200であることから、下3桁を丁寧に調べていくと、規則が見つかります。
とは言え、時間内にここまで思考を掘り下げられる受験生は極めて少ないのではないでしょうか。
このように今年は麻布らしい「試行錯誤を楽しむ作業力」や「誘導を利用する読解力と発想力」が数多く出題された問題構成となりました。
このセットを楽しめた受験生は合格を引き寄せられたことでしょう。
小問の内訳に注目すると
〇:5問
△:6問
×:3問
の計14問
合格のためには〇が5/5、△が3/6、×は0/3で8/14=34点と、あとは部分点で5点程度を獲得し、40点に近づけるイメージですね。
今回は題意の確認問題が比較的多めに配置されたので、出題テーマの難しさに対して点数は底上げされていると考えられます。
来年以降、麻布中への合格を目指す生徒にとっても非常に参考になるセットです。
麻布中は過去問をさかのぼることが最適な対策にもなりますし、是非とも「麻布脳」を養えるよう努力していきましょう!