合格最低点 104/200 点
算数の想定合格点 35点
東大合格者数ランキングのベスト10にどの学校よりも長く入り続けている日本を代表する進学校の麻布高校。
2025年春の東大合格者数は82名で第4位と見事な実績を誇ります。
名門校かつ伝統校なので「親子3代で麻布」というケースも決して珍しくはありません。
ただ抜群の合格実績を誇りながらも所謂「ガリ勉」な雰囲気は皆無。
個々の興味や才能を伸ばしつつ、最終的には大学受験においても学力を仕上げてくる、魅力と能力を持ち合わせた生徒が大きく育つ校風で知られています。
当然ながら中学受験においても最難関校の一角を占めています。
出題も独特で、各科目において「読む」「書く」を非常に重視し、暗記一辺倒な学習では到底太刀打ちできません。
理科や社会の問題が一般ニュースに取り上げられることも多く、出題レベルの高さと、この試験を突破して入学する生徒の学力の高さの両方を証明していると言えるでしょう。
このように麻布中の入学試験は、麻布の教育を受けるにふさわしい人材を選抜する試験として高い質を保ち続けています。
さて、ここからは2025年の麻布中の算数の入試問題において、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来たのかを考えていきましょう。
〇:麻布中合格のため必ず正解したい問題
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:完答できる生徒は少数、部分点を拾えたら充分
として1問ずつ見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
受験算数における頻出テーマの正三角形の転がり移動です。
セオリー通りに「動きの変わり目」に注目して丁寧に作図しましょう。
麻布中合格を目指す受験生なら、ほぼ全員が正解できたことでしょう。
(2) ×
(1)の応用問題です。
「誘導形式になっている」ことが麻布中の算数の大きな特徴ですが、この問題は(1)と(2)のレベル差がかなり大きめです。
注意すべき点は「1辺50cmの正三角形Cの頂点でどんな動きをするか」「そもそもどのような規則になっているか」ですが処理量が多く正解は厳しいです。
実際の試験会場では「始まったばかりの大問1にしては非常に面倒なので後回し」という判断が適切だったと言えるしょう。
なお類題としては2014年(平成26年)大問2の「正六角形の周上の長方形の転がり移動」も練習しておけると良いでしょう。
頂点における転がり移動の注意の仕方の確認として効果的です。
大問2
AF:BC 〇 面積 〇
平面図形と比・相似の「中学受験らしい普通の」問題です。
平行に注目することで相似を見つける、という定番の発想を用いましょう。
「角出し」と呼ばれる辺AEと辺BCを延長する基本手法も、当たり前のように使いこなす必要があります。
結局AF:BCは「2種類の相似に注目して比を合わせる」という基本手法で正解することが出来ます。
面積比はどのような図形と捉えるかという着眼点が鍵になります。
四角形ABCDを2つの三角形に分けたり、大きな三角形から小さな三角形を除いたり、様々な解法が考えられます。
どのような方針で解くにしても少し面倒な処理が必要ですが、麻布中合格を目指す受験生にとっては基本問題ということが出来るでしょう。
大問3
(1) 〇
同じ時間なら「速さの比=距離の比」という常識を確認するだけの問題です。
2025年の出題では数少ないサービス問題の1つなので、確実に正解しておく必要があります。
もちろん(3)を解くための布石となっています。
(2) 〇
(1)と同様に(3)を解くための誘導になっています。
この問題も確実に点数を取らせてあげよう、というサービス問題の位置づけです。
2025年の麻布中の受験生のほぼ全員が正解できたことでしょう。
(3) △
(1)(2)の発想を用いて、兄が5周するまでに弟が何m進むかを考えましょう。
計算量も決して多くはないので、ここまでは多くの受験生が辿り着くことが出来たのではないでしょうか。
この時点で2人が進んだ距離の和を求めることが出来ました。
あとは「2人合わせて1周1020m進むごとに出会う」ことを利用できると良いでしょう。
やや高度な発想ですが、類題を経験したことがある受験生も多かったのではないでしょうか。
2025年の出題の中では差がつく問題だったと言えそうです。
大問4
(1) △
食塩水と「何か」の複合問題も麻布中の算数において散見されるテーマです。
この問題ではまず17%の食塩水と3%の食塩水を何対何で混ぜれば7%の食塩水が出来るかを考えてみましょう。
麻布中合格を目指す受験生なら2:5と容易に求まりますね。
その後は
A 50g×(あ)=②
B 70g×(い)=⑤
が成立する(あ)と(い)の整数の組み合わせを考えましょう。
比への習熟度が問われる良問でした。
(2) ×
(1)の発想を更に膨らませます。
(1)で出来た7%の食塩水と残りのAの17%の食塩水を何対何で混ぜれば9%の食塩水が出来るかを考えましょう。
この4:1までは(1)が出来た受験生なら求まったことでしょう。
その後の比の処理は難しめです。
7%の食塩水は2450gの倍数になっていて、17%の食塩水は50gの倍数になっている、その重さの比が4:1になることから、7%の食塩水は9800gの倍数ぶん作ったと考えることが出来るでしょう。
あとはA,Bそれぞれが2025個まで、という条件を満たすよう条件に沿って調べていくだけです。
気づくべきポイントが多く、処理量もやや多いので完答出来た受験生は少なかったことでしょう。
ただ部分点は拾いやすい問題なので、捨てるわけにはいきません。
大問5
(1) 〇
正六角形は麻布中の算数における最頻出のテーマです。
今回は正六角形をテーマとする規則性の問題として出題されました。
どこを基準にどんな規則で増えるのか様々な方針が考えられますが、解答例では「左の列の3個で16本、以降の1列3個で11本ずつ増える」と考えました。
例のごとく(2)(3)以降で利用する発想の導入になっています。
(2) △
(1)より図3は16+11×□本、図4は同様に考えて11+8×△本を用いたと考えることが出来ます。
図3の正六角形は3の倍数個、図4の正六角形は2の倍数個なので、最小公倍数の6個ごとに使用する本数の差に注目していくと良いでしょう。
決して易しい問題ではありませんが、過去の麻布中の算数において同じような頭の使い方は何度も課されています。
これまでの対策の多寡によって差のつく問題となりました。
(3) △
(2)より6個の時に同じ27本になることが求まっています。
その後は11と8の最小公倍数の88本ごとに同じ本数になることが分かるので、
27+88×☆で求められる(イ)(ウ)の組み合わせを順番に調べていきましょう。
麻布中の算数の最後の問題としては易しめです。
総評
2025年の麻布中の算数の出題は「大問5題で小問数も12題」という例年と比べて少ない問題量になりました。
ただ、たしかに問題数は減ったものの大問1から難度・処理量ともに負担が大きく、サービス問題も1(1),2(1),3(1)(2),5(1)くらいで少なめだったので、決して易しいセットだったとは言えません。
麻布中から発表された合格最低点も104点/200点と、基準となる110点を基準よりもやや低めの数値になっています。
2025年の麻布中の算数の合格ラインは35点と想定すると良いでしょう。
出題内容は「比の習熟」「誘導に乗る」を最重要視する、という近年の麻布中の王道と言える構成でした。
ここからは2025年の出題において合格ラインの35点に到達するための方法を考えていきましょう。
まず落とせないのは1(1),2(1)(2),3(1)(2),5(1)です。
ここで1問ミス以内に抑えられれば、それだけで30点弱の得点にはなるでしょう。
あとは△の箇所から2問ほど正解出来れば合格ラインに到達します。
最後の大問5が比較的易しめだったので、ここで完答できると合格をグッと引き寄せられたのではないでしょうか。
算数が得意で麻布中対策を充分に重ねてきた生徒なら50点以上の高得点で大きなリードを取ることも出来た出題だったとも言えるでしょう。
なお本年度は受験者737名に対して合格者は340名、実質競争率は2.17倍という、例年よりも「受かりやすい」受験となったことも大きなトピックとして挙げられます。
「御三家を敬遠」「麻布・武蔵離れ」等が話題になったことも記憶に新しいのではないでしょうか。
ただ麻布中はこれから入学難度が下がっていく学校ではありません。
2026年の入学試験においては、根強い人気に加え、ここ2年の受験者数減の反動や2025年春の東大合格実績の好調を受けての難化は必至です。
独特の出題で知られる麻布中ですが、合格のために算数において必要な要素は「センス」ではありません。
まずは通っている塾のテキストを毎週確実に消化することで基礎学力を身につけ、その後は過去問演習を通して「比への習熟」や「誘導への乗り方」を掴みましょう。
個々人に合った具体的な「受かり方」を知りたい受験生は、是非とも自律学習サカセルにお尋ねください。
最短ルートを示します。
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