◆各種データ
合格最低点 105/200(50.25%)
合格最高点 152/200(78.5%)
国語想定合格ライン 36/60
◆出題形式
試験時間60分 60点満点
◆大問1題構成
文学的文章(小説文) 12問(小問数16)
◆今年度の問題の種類
・記述 約60%
・選択肢 約19%
・抜き出し 約13%
・漢字 約8%
という割合になっています。
2022、2023年度に引き続き、選択肢問題が3問になっています。
ここからは2024年度の麻布中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。
解答例はコチラ(後ほど掲載します)
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
「やさしいの書き方」宮下みこと
問1理由の記述 △〜○
傍線部①「他に誰も出ないでくれ」と守が思う理由を答える問題です。
傍線部、設問の内容に直接描写がないので、背景→きっかけ→気持ちを軸にして答えましょう。
今回は意味付け(きっかけと気持ちの間を繋ぐ補足パーツ)も入れています。
傍線部①の後より、
20行目「――学級委員、立候補しなさいね」
21行目「お母さんの言葉が蘇った。立候補はできたけれど、誰か別の人に決まってしまったらと思うと、」
→【自分の他に学級委員の立候補者がいると、】【自分がそれに選ばれず、】
21行目「急に不安になってくる。」
→【不安】
これだと何に対しての不安なのかが明瞭ではありません。
一体何に不安なのかはさらに後を見て、
42行目「けれどこれで、お母さんに怒られなくて済む。」
→【母の言いつけを守れないことで叱責される】としました。
これらを組み合わせて、
背景【自分の他に学級委員の立候補者がいると、】
きっかけ【自分がそれに選ばれず、】
意味付け【母の言いつけを守れないことで叱責されるという】
気持ち【不安があったから。】としました。
問2記述 △〜○
傍線部②「うん、わかった」から、守はどのようなことがわかったのかについて答える問題です。
傍線部②の前より、
65行目「じゃあ守、あんたもこれからみんなにやさしくしないとね。学級委員なんだから、誰か一人だけと仲良くしちゃだめだよ」
→【特定の人間だけと仲良くするのではなく、全員にやさしくする必要があること。】
また、
62行目「達哉くんが推薦された時どうしようかと思って」
63行目「やさしいからって言われてたのね?」
64行目「そう」
とあるので、達哉くんに対して何かしらの気持ちを持っていることがわかります。
これは、
25行目「僕は山田達哉くんがいいと思います」
27行目「達哉くんはやさしいから、いい学級委員になると思います」
32行目「僕も達哉くんがいいと思います。みんなにやさしいから」
と言われていたことが原因です。
立候補者が守だけだったことで学級委員になれていますが、
40行目「しかし守を推薦してくれた子は、クラスに一人もいなかった。」
とあります。つまり、達哉くんのように皆に推薦されるような人間になりたいのです。
→【クラスの皆に学級委員として認めてもらいたい】気持ちがあります。
これらを組み合わせて、
【クラスの皆に学級委員として認めてもらうために、】
【特定の人間だけと仲良くするのではなく、全員にやさしくする必要があること。】としました。
問3記述 △
傍線部③「みんなにやさしいと言われている達哉くんだったら、こんな時どうするだろう」から、守にとって達哉くんがどのような存在であるかを答える問題です。
傍線部の後より、
101行目「みんなにやさしいと言われている達哉くんだったら、こんな時どうするだろう。サッカーが下手な守にも、やさしくパスを出してくれる、やさしい達哉くんだったら。」
「こんな時」の中身をチェックすると、
99行目「料理をすることすら不安なのに、材料が揃っていないなんて、なんでだよ、と怒ってしまいそうになるのを、守はグッと堪えた。」
とあります。材料が揃っていない中で料理をすることになり、守は怒りそうになるのを堪えています。
これは問2でチェックした「達哉くんについて」の内容をおさえるのが良いでしょう。
25行目「僕は山田達哉くんがいいと思います」
27行目「達哉くんはやさしいから、いい学級委員になると思います」
32行目「僕も達哉くんがいいと思います。みんなにやさしいから」
→【誰にでもやさしくすることができ、】【クラスでも一目置かれる、】
問2より、【クラスの皆に学級委員として認めてもらいたい】の原因である、達哉くんのように皆に推薦されるような人間になりたい から、
→【守にとって模範となる存在。】
これらを組み合わせて、
【誰にでもやさしくすることができ、】
【クラスでも一目置かれる、】
【守にとって模範となる存在。】としました。
問4選択肢 ○
傍線部④「そう思って守は記録の文章を消しゴムで消した。代わりに『青々としたにおいがした』とユリ先生が言ったことをそのまま書き込んだ」の時点で、守は自らの表現に対してどのように向き合っているかについて答える問題です。
「そう」とあるので、傍線部の前より、
141行目「――切られた木から、血が流れているみたいなにおいがしました。」
142行目「あの時は勢いで書いてしまったが、これはちょっと怒られてしまう気がする。」
→A【自分が素直に思ったことがあるのに、誰かに怒られてしまう表現を警戒している様子】
142行目「木から血は流れないのだから、ふざけていると思われそうだ。」
→B【誰かにふざけていると思われている様子を警戒している様子】
144行目「それから星空教室が楽しかったですと書いたが、守の本当の気持ちは、その文章を読んでも誰にもわからないだろうと思った。」
→C【守は、自分が本当に思ったことは誰にも伝わらないと感じている様子】
この3つを満たすものを探すと、
ア C<本当に思ったことだとしても、>
A<先生に怒られる可能性の可能性がある表現を用いてはならず、>
C<本当の気持ちは伝わらなくても、>
A・B<先生の反感を買わない表現を選ぼうと思っている。>となります。
問5抜き出し ○
傍線部⑤「菅平の自然にしかないもの」から、守の描きたいと思ったものは何かについて答える問題です。
設問から「守の描きたいと思った菅平の自然にしかないものは何か」と考えるのが良いでしょう。
傍線部⑤の後より、
183行目「何を描こうかと広場を探していると」
とあるので、これ以降に注目します。
185行目「守の目は空に釘付けになった。」
187行目「この空は、菅平でしか見られない。両手に収まらないほど大きな空を眺めながら、守は確信した。」
【14字】、設問の「何」より、【名詞で終わる】という条件を満たしている、
【両手に収まらないほど大きな空】を答えとしました。
問6記述 △
A【 】B【 】C【 】について、守はどのようなことをしようとしているか、目的がわかるように答える問題です。
A【 】とその前より、
191行目「――学校では見られないものを観察して、絵にして持って帰りましょう。」
192行目「この空を持って帰ることができたら、誰に見せたいだろう。一番に思い浮かんだのは、骨折してここに来られなくなってしまった達哉くんだった」
→【事故により林間学校に参加できない達哉くんに菅平の自然にしかないものを見てもらうために、】
B【 】より、
196行目「大きな筆を取り出し、パレットに青と水色をちょっとずつ出して、水を加えていく。そうやって自分で作った青空色を、画用紙の真ん中から広げていく。」
199行目「水色を少し足し、白の絵の具も取り出す。水に溶かして画用紙に薄く塗り重ねると、本当に空を持って帰れるような気がした。」
→【様々な工夫をこらしている】
C【 】より、
220行目「青空はよく見ると、薄い水色から青へのグラデーションになっていた。水彩絵の具を注意深く混ぜながら、守は空を画用紙に写しとる。」
→【菅平の青空をそのまま画用紙に写しとろうとしている】
これらを組み合わせて、
【事故により林間学校に参加できない達哉くんに菅平の自然にしかないものを見てもらうために、】
【菅平の青空をそのまま画用紙に写しとろうと】
【様々な工夫をこらしているということ。】としました。
問8選択肢 ○
傍線部⑧「裏に名前と題名書いておいてね、と先生は続けたが、守は自分の絵を見直すことに夢中になっていた」傍線部⑨「守はテストが早く解き終わった時と同じように、画用紙を持ってユリ先生のところに歩いて行った」の時の守の様子の説明としてふさわしいものを選ぶ問題です。
229行目「裏裏に名前と題名書いておいてね、と先生は続けたが、守は自分の絵を見直すことに夢中になっていた。」
229行目「青空と絵を見比べながら、そっくりに描けたと嬉しくなる。」
→A【菅平の青空の出来がとても良かった】ことから、B【自分の絵に夢中になり、名前と題名を書くことを忘れている様子】が読み取れます。
231行目「ユリ先生が話すのをやめたので、守はテストが早く解き終わった後と同じように、画用紙を持ってユリ先生のところに歩いて行った。」
→菅平の青空の出来がとても良いので、先生に早く見せたい
→C【先生に怒られないかどうかを気にしなくなっている】様子が読み取れます。
この3つを満たすものを探すと、
イ A・B<自分の描いた絵の仕上がりに気を取られるあまり、>
B<名前と題名を書くように言われた指示をそっちのけにし、>
C<先生が満足してくれるかどうかにも意識がおよばなくなっている様子。>となります。
問9選択肢 ○
傍線部⑩「気づくと、守は大粒の涙を流していた」より、守が大粒の涙を流した理由について答える問題です。
傍線部の後より、
234行目「そう言って提出すると、いつも笑顔のユリ先生の表情が、みるみる曇っていくのが守にもわかった。」
236行目「ねえ田口くん、これ、画用紙を全部青く塗っただけじゃない。どういうこと?」
→A【先生は自分の絵をふざけて描いたと思っている様子】
237行目「注意されることなんて滅多にない守は、言葉をうまく返すことができない。」
→B【うまく言葉を返すことができない様子】
238行目「いや、これ、あの」
244行目「達哉くんが」
246行目「達哉くんはあったかくて、でも、僕はつめたくて、だけどどっちも、やさしくて」
249行目「う、うう」
→C【絵について説明しようとする様子】
この3つを満たすものを探すと、
ウ A<先生に自分の絵を理解してもらえなかったので、>
C<絵にこめた想いを説明しようと思ったが、>
B<うまく言葉にできなかったから。>となります。
問10記述 ○〜△
傍線部11「守は晴れやかな気持ちだった」より、泣いてしまった守が「晴れやかな気持ち」になった理由を、D【 】に注目して答える問題です。
D【 】とその前より、
267行目「守は『やさしい』という漢字の書き方をまだ習っていないと気づいた。やさしいの書き方を、三年生の僕たちはまだ知らない。知らない漢字を何年後に教えてもらえるのか、僕たちは知らない。」
269行目「やさしいという漢字を習う頃には、さっきうまく言えなかった気持ちも、説明することができるようになるのだろうか。」
→【今は自分の思ったことをうまく伝えられない】【これからはそれもできるのではないかと希望を持てた】
271行目「これまで守は、世界には言って良いことと悪いことの二つしかないと思っていた。先生や親に怒られるから言ってはいけないことが、守にはたくさんあった。」
また、問4の選択肢を参考に、
問4ア「本当に思ったことだとしても、先生に怒られる可能性の可能性がある表現を用いてはならず、本当の気持ちは伝わらなくても、先生の反感を買わない表現を選ぼうと思っている。」
→【先生や大人に怒られるか否かでするべき発言を決めるなど、他人に縛られている】
272行目「けれど、まだわからないから言えないこともあるのかもしれないと、やさしいの書き方を知らないことで初めて気がついた。」
→【やさしいという漢字の書き方を知らないと気がついた】
これらを組み合わせて、
背景【先生や大人に怒られるか否かでするべき発言を決めるなど、他人に縛られていた。】
きっかけ【やさしいという漢字の書き方を知らないと気がついたことで、】
意味付け【今は自分の思ったことをうまく伝えられないが、】
気持ち【これからはそれもできるようになるのではないかと希望を持てたから。】としました。
選択肢の解答は、出題者が「この文章をどのように読み取ったか」がわかる箇所となっています。
ここを利用するという手法を知っておくと、得する場面はあると思います。
問11(1)記述 △
絵を描く前後で変化した、自らの表現に対する守の姿勢について書く問題です。
前半は問4・問10などがヒントになります。
143行目「そう思って守は記録の文章を消しゴムで消した。代わりに『青々としたにおいがした』とユリ先生が言ったことをそのまま書き込んだ」
133行目「自分たちで作ったからか、うちでお母さんが作るカレーよりも美味しかった。けれどしおりにそんなことを書いたらお母さんを悲しませてしまうから、守はその気持ちを誰にも話さなかった。」
149行目「シャワーで沁みた小さなやけどのことを、守は特に話さなかった。」
156行目「木から血が流れているように思ったことや、〜星空観察で里中さんの譬えがとても素敵だと思ったことは、どれも守の中では大きな思い出だったけれど、みんなの前で発表することはしなかった。」
→【他人がどう思うかを気にして、自分が思ったことをそのまま口に出すことはなかった】
後半は問9がヒントになります。
ウ 先生に自分の絵を理解してもらえなかったので、絵にこめた想いを説明しようと思ったが、うまく言葉にできなかったから。
→先生の発言に対して、自分が絵にこめた想いを伝えようと、先生の言葉に反論しています。
きちんと言葉に出来ていない様子が見えますが、自分が思ったことを言葉にする様子が見えます。
【自分が思ったことを大事にしようと考えるようになった】
これらを組み合わせて、
【他人がどう思うかを気にして、自分が思ったことをそのまま口に出すことはなかったが、】
【(絵を描いた後は、)】
【自分が思ったことを大事にしようと考えるようになった。】
問11(2)記述 △〜×
自らの表現に対する守の姿勢が変化した理由を、守が絵を描く場面をよく読んで答える問題です。
変化前は問10の背景が利用できそうです。
→【先生や大人に怒られないようにすることに縛られていた】
変化したきっかけは、205行目以降220行目までの
211行目「達哉くんと守のやさしさの違いは、温度なんじゃないだろうか。」
216行目「体温が高い人と低い人がいるように、やさしさの温度も人によって違うのだろう。」
→【自分と達哉くんのやさしさについて考えた】
変化後は、問10の
219行目「――空と地面をひっくり返したみたい。」
220行目「昨日の里中さんの発言を思い出し、青空と地面をひっくり返したらどうなるのだろうと守は考える。」
→【里中さんのように自分の思ったことを素直に伝えようとする】姿勢を肯定的に見ています。
これらを組み合わせて、
【先生や大人に怒られないようにすることに縛られていたが、】
【自分と達哉くんのやさしさの違いについて考えたことで、】
【(里中さんや)達哉くんのように、自分の思ったことを素直に伝えようと考える余裕が出てきたから。】としました。
問12 漢字 ○
a盛 b縮 c束 d拡声
全問正解を狙いたいところです。
◆まとめ
2023年度を踏襲して、例年よりも「設問内の誘導が多い」と感じる年でした。
全体を読み解く上でのヒントとなる問を「選択肢」形式にするというのは、2025年度の受験前にも知っておいてもよさそうな知識と言えそうです。
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