傾向
今年も鷗友らしい出題でした。特徴を以下に述べていきます。
・基本の理解 詳しい知識や解法テクニックではなく、理科の基本的な原理を理解している生徒が求められている出題です。
・誘導 ここが一番の特徴です。大問が基本の原理から始まり、1問1問解き進める中で前問の答えから次の問題が考えられるように構成されています。生徒によって、解きやすい/解きにくいがはっきりする出題です。教わりながら考えるのは得意な子、もっと言えば他人の考えに乗れる子に有利な出題です。一人で初めから組み立てて考える方が得意な子には解きにくい出題と言えるでしょう。
・読解 中学入試では、リード文に説明があり、これを読んで理解すれば解ける「読解問題」もあります。鷗友でも出題されていますが、問題数は多くありません。
・記述 記述問題が多めですが、これには2種類あります。ひとつはテキストに出てくるような「知識として覚えておくべき記述」今年はこれが多く出題されました。もうひとつは問題の流れから考える思考記述です。後者は前に述べた誘導の要素が大きいのが特徴です。
・計算 求められているのは比例・反比例の計算と比の計算です。応用的な計算法を身に着ける必要はありません。それよりも問題を読んで流れに沿って立式する力が求められています。
・図 問題はカラーで図や表が多く使われています。手に入るものは出来るだけ本物で練習した方がよいでしょう。
構成
数年前から45分になりました。生物・化学・物理・地学の4問構成、4科目が均等な100点ずつの配点は理科が得意な生徒には有利です。年度にもよりますが、大問で1問難問が入ってくることがあります。
対策
・6年夏まで テキストの知識や考え方をきちんと埋めていく。原理があいまいなまま小手先の計算テクニックを身に着けるような勉強は無駄です。
・6年秋から 過去問演習。あまり似た傾向の学校がなく特徴的な出題のため、過去問をたくさん解くことが有効な学校です。
解説
問題のレベルと種類を問題番号の後に示しておきます。
問題のレベル
〇:絶対に取りたい
△:この中から半分以上は取りたい
×:捨ててもよい
問題の種類
知:知識
計:計算
考:思考
誘:誘導
読:読解
知記:覚えておくべき記述
考記:考えて書く記述
1 電熱線
問1 〇 計
電熱線A1本がつながれているときの電流を1(=0.3A)とすると電熱線A2本が直列になっている
↓
流れる電流は0.5=0.15A
これは電熱線B1本をつないだときと同じ結果です。
解答 0.15A B
もちろんA2本を直列につなぐと長さ20㎝、断面積0.1㎟のBをつないだのと同じ、ということはすぐに気付き、上記のような手順を経ずに答える受験生も多かったことでしょう。
問2 〇 計
電熱線A2本が並列につながれている
↓
電熱線1本に流れる電流は1ずつ
↓
電流計部分は合流して2=0.6A
これは電熱線Eと同じ
解答 0.6A E
問1,問2で電熱線を直列につないだ場合は長さを足し、並列につないだ場合は断面積を足せばいいことを確認してくれています。
問3 〇 考 知
図3の表から、電熱線の長さと電流の値は反比例しています。反比例のグラフは イ
解答 イ
問4 〇 考 知
図3の表から、電熱線の断面積と電流の値は正比例しています。正比例のグラフはア
解答 ア
問5 〇 計 誘
BとDを直列につないでいます。この場合は長さを足せばよい(問1より)ので
20+40=60 60㎝、0.1㎟の電熱線を考えます。
長さと電流は反比例(問3より)なので
0.3×1/6=0.05(A)
解答 0.05A
問6 〇 計 誘
並列はお互い関係なく電流が流れるので
BとDの部分は0.05A(問5より)、Fの部分は0.9A
電流計のところはこれが合流しているので
0.05+0.9=0.95(A)
解答 0.95A
問7 △ 計 誘
並列はお互い関係なく電流が流れ、合流部分はその和になっているので、合流した電流の値を大きくするには、XとYに流れる電流を大きくすればよいこと分かります。
↓
図3よりFとG 0.9+1.2=2.1(A)
解答 FとG 2.1A
問8 × 計 誘
AとRに流れる電流を小さく、かつPとQに流れる電流も小さくして、合流した部分の電流をいちばん小さくする…試行錯誤が必要な問題です。時間がかかるので飛ばしてもよいでしょう。
ただ入試なら、いちばん求めやすい値を出してとりあえず書いておく、という手段もアリです。
A10㎝、B20㎝、C30㎝、D40㎝
AとD、BとCにすればどちらも50㎝になります。
長さと電流は反比例なので、0.3×1/5=0.06(A) 0.06×2=0.12(A)
他も確認します。
AとB、CとDなら
30㎝と70㎝なので、0.1+0.3×1/7=0.1428…(A)
AとC、BとDなら
40㎝と60㎝なので、0.075+0.05(問5より)=0.125(A)
はじめの組み合わせがいちばん小さくなりました。
解答 D 0.12A
2 呼吸
問1 〇 知
えら呼吸の動物
魚類を探します。サメとトビウオがいました。2つなのでこれでOK
解答 イ、ウ
問2 △ 考 誘
酸素消費量が非常に大きいのは
鳥類やホ乳類、というのはなんとなくでも選べそうです。理由の記述は、問2の上の文を利用すると書きやすくなっています。
「栄養分と酸素から生きるために必要なエネルギーが作られます」
また、魚類やハ虫類/鳥類やホ乳類で分けているのもポイントです。
この2つを分ける特徴は?
↓
変温/恒温
↓
恒温動物は熱を保つためにたくさんエネルギーを作らなきゃ!
という流れで作られている問題です。
解答 鳥類やホ乳類 理由 体温を一定に保つためにエネルギーを使うから
問3 〇 知記
覚えておくべき記述の定番です。
解答 (水に触れる)表面積を増やし、酸素を取り入れやすくする(気体の交換を効率よく行う)
問4 ② △ 知
③ △ 読 考
②は知識問題です。口を開けるときはえらぶたを閉じて水を取り込みます。そして口を閉じ、えらぶたを開いて、水をえらに当てながら外に出すときに水に溶けた酸素を毛細血管に取り込んでいます。
解答 エ
③は読解問題です。「えらぶたを動かす筋肉が発達していない」「ひたすら泳ぎ続ける」
から考えます。
えらぶたは動かせないので、開けたままか閉じたまま
↓
閉じたままではえらに水が当たらない
↓
口もえらぶたも開けたまま泳ぎ続ければ、どんどん口から水が入り、えらぶたかた水が出ていくので、えらに水が当たり続ける。
解答 オ
問5 ①△ 考
②△ 考
③〇 考
正誤問題。図4と図5をよく見れば解けます。
① 図4の酸素の量は 15→30→50→50 後半が50のまま変化していないので「常に増加する」が違います。
解答 ×
② 並流の図④ 15→30→50→50 後半は50のまま増えていないので、「長くなるほど多くなる」が違います。
解答 ×
③ 並流では15→50なので50-15=35の酸素を受け取り、向流では15→80なので80-15=65の酸素を受け取っています。正しい。
解答 〇
問6 △ 計 考 誘
安静時に呼吸するのに必要な酸素の重さは、1.8㎎と書いてあります。
えらを通る前の水に含まれる酸素の重さは
水1Lに酸素10㎎
水300mⅬなので 10×300/1000=3(㎎)
1.8÷3=0.6→60%
解答 60% 図5
水流は図5になります。これは単純に効率の良い方のはず、と考えても解けますが、きちんと説明がつくように作られています。
図4の場合、水に含まれていた酸素は100→50になっているので、吸収された酸素は50、よって50%です。
図5では、水に含まれていた酸素は100→20になっているので、吸収された酸素は80、80%です。
安静時に必要な酸素は60%なので、吸収できる酸素はこれを上回っていなければなりません。
問7 △ 考 誘 知
問6で水流と血液の流れは逆向きと分かっているので、ア です。
動脈血は酸素を多く含む血液、という意味ですので(動脈に流れている血液ではない)えらを通った後の血液、①になります。
解答 ア ①
3 燃焼
問1 ア △ 知 考
イ 〇 知 考
ウ 〇 知 考
燃焼の3条件の問題です。
ア 霧吹きの小さい粒が水蒸気になるときに熱をうばい、温度が発火点以下になる、と考える問題です。
解答 ③
イ ろうそくは液体のろうが芯を上っていって気体になり、その気体(炎心)がその後内炎や外炎で燃えています。(内炎は不完全燃焼)
燃えるものになる液体のろうを上れなくしています。
解答 ①
ウ 金属は熱を伝えやすいため熱が奪われ、発火点以下になります。
解答 ③
同じ答えが2つになって、不安になる問題です。深く理解しているか確認したいのだと思います。
問2 〇 知記
内炎が明るい理由。知識問題です。
解答 すす(炭素の粒)が熱せられて光っているから
ここで、すすが「燃えて」と答えると×です。まだ燃えていない炭素が熱せられて光っていることを、しっかり理解している生徒が求められています。
問3 △ 知 誘
外炎を斜線で示す。
外炎は見えない部分です。明るく光っている内炎の外側の、見えない部分を示してください。
何も見えないところを示すのは、きちんと理解していないと出来ません。
問2で「内炎が明るい」と書いてあるのがヒントになっています。明るいところは、内炎、外炎はその外のはず、という誘導です。
解答 図(明るい炎の外側を斜線で囲む)
問4 × 考記 誘
コップをかぶせて4秒後、炎が明るくなったのはなぜか?かなり難しい問題ですが、これはまさに鷗友!問2、3からの誘導です。
・コップをかぶせたので酸素不足になるはず
・明るくなった
・明るいのは内炎→なぜ明るいのか?→すすが熱せらせて光っている
・内炎は酸素不足で不完全燃焼
↓
コップをかぶせて酸素不足になったことで、外炎も内炎のようになった!
解答 酸素が不足して外炎も不完全燃焼するようになったから
分かったら気持ちいいですね。ただ、ここまで分からなくても点は取れます。
内炎はすすが熱せられているから明るい
↓
すすが増えたのかも?
解答 すすが増えたから
これだけでも点はもらえます。さらに、酸素が不足したことを加えると
解答 酸素が不足してすすが増えたから
これでほぼ模範解答です。
問5 〇 知記
ここでまた覚えておくべき記述が登場しました。
解答 ろうの気体が冷やされてできた液体や固体のろう
問6 〇 考記 誘
「水分」と「熱」を使いなさい、という指示で分かりやすくなったのではないでしょうか。これを使って燃焼の3条件のうち一つがなくなればよいので、条件は「発火点以上の温度」と決まります。また、「気化熱」は中学受験の記述では定番ですね。
解答 湿った落ち葉の水分が蒸発するときに熱がうばわれ、発火点以上になりにくいから
問7 〇 考記 誘
これも「酸素」という大ヒントがあります。燃焼には酸素が必要ですから、乾燥した落ち葉の方が酸素が多い、と持っていけばよいわけです。
湿った落ち葉と乾燥した落ち葉を思い浮かべてみると、湿った落ち葉はお互いがくっついているのに対し、乾燥した落ち葉は隙間が多いことに気付けるでしょうか?
解答 乾燥した落ち葉は湿った落ち葉に比べて葉どうしの隙間が多く、酸素を多く含んでいるから
ここまで書ければもちろんよいですが、葉どうしのすき間に気付けなくても
解答 乾燥した落ち葉の方が湿った落ち葉よりも酸素を多く含んでいるから
と答えれば十分得点できます。
問8 △ 考記 誘 知
山火事を消す問題。
これは一般的なテキストの例題としてよく登場していますので、「燃えるものをなくせばよい」ということには気づけるでしょう。
落葉樹林の木を切り倒す、落ち葉を取り除く、牧草を刈る、などが書ければよいでしょう。
解答 落葉樹林のふもとの方の木を伐採し、落ち葉を取り除いて、燃えるものがない部分を作る。
4 月
問1 〇 知記
月が光る理由
解答 太陽からの光を反射しているから
問1 〇 考 誘
スーパームーンの月食
問2の前のリード文にスーパームーンは一年の中で地球に接近したときの月、とあります。
はじめの方のリード文にも「最も大きく見えるスーパームーンと呼ばれる満月」とありますので、近い+満月を選べるでしょう。
解答 ア
問3 〇 知
地球の自転、公転、月の公転はすべて反時計回りです。
解答 ウ
問4 〇 知
月食が起こる理由と欠け始める方位。これは覚えておくべき内容です。月は地球の周りを西から東に公転するため、地球の本影に図のように入っていきます。
解答 東側 ウ
問5 〇 知
日食の位置関係。覚えておくべき知識問題です。
また、日食は月が太陽の手前を西から東に公転するときに隠すため、西側から欠けます。これも覚えておくべき知識です。問4、5で左から欠ける/右から欠けると覚えていても判断できるように図があります。
解答 イ 西側
問6 〇 知記
金環日食と皆既日食の違い
こちらも、理解して答えられるようにしておくべき内容です
解答 地球から月までの距離が皆既日食のときより遠いため
問7 ×
この問題は、条件が足りないように思います。
影は本影なのか半影なのか?本影の場合、距離によります。地球の位置がaなら皆既日食、bとcは金環日食です。金環日食のときの地球がbの位置ならaの皆既日食のときの本影より小さいですが、cの位置なら皆既日食のときの本影より大きくなります。この距離を判断できる条件がありません。
影が本影も半影も含めた影全体、という意味ならbでもcでも金環日食のときの方が大きくなっています。
解答 アまたはイ
ただ私が受験生なら「イ」と書いておきます。問題文の流れが「イ(小さくなる)」と言っていそうだからです。
問9 △ 計 考
地球と太陽の大きさの比から、距離の比を求めます。
図のように
太陽の大きさ:地球の大きさ=100:1 より
太陽-地球の距離:地球-Aの距離=99:1
また、地球から太陽までの距離は地球から月までの距離の400倍、と書いてありますので
太陽-地球の距離:地球-月の距離=400:1
太陽-地球の距離:地球-Aの距離=99:1
地球-Aまでの距離が地球-月までの何倍かという問題なので、上の比にそろえます。
太陽-地球の距離:地球-Aの距離=400:1×400/99
400/99=4.04…
地球-Aの距離:地球-月の距離=4.04:1
解答 4
問10 × 計 考
これはかなりの難問です。最後の問題なので、余裕があれば考えてもよいと思います。問7から、地球・月・Aの位置関係は図のようになっています。
金環月食になるためには月の大きさが、月の位置での地球の影より大きくなっていなければなりません。
地球の大きさ:地球の影の大きさ=4:3
また、月の大きさは地球の1/4と書いてありますので
地球の大きさ:月の大きさ=4:1
比はそろっていますので、月が今の大きさの3倍(より大きく)になればよいことになります。
解答 3
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