自律学習サカセルから徒歩圏内、日本有数の進学校です。
東邦大学の推薦枠を持ちながら、東大合格者数のランキングのトップ10の常連校です。
ここを目指す子でよく聞くのが、「文化祭に参加して気に入りました」ということ。
水泳部の「ウォーターボーイズ」は有名ですが、それよりも学校全体の取り組みを見て気にいる子が多いようです。
◆各種データ
合格者平均 72.8点
受験者平均 67.2点
想定合格点 70点(120点満点中)
◆出題形式
試験時間60分 120点満点
◆大問1題構成
大問1 小説文 約13問
◆問題の種類(2021年度)
・記述 約40%
・選択肢 約46%
・抜き出し 約7%
・漢字 約7%
という割合になっています。
選択肢問題、記述問題を中心として、大問1題、超長文の小説文の出題となっています。
記述は例年5問程度の出題です。
麻布中同様、「長年にわたって出題傾向を変えない」学校です。
2021年度は、割と平易な漢字が15問。選択肢が7問。抜き出しが1問。
記述では「理由」もしくは「気持ち」の形で「気持ちを問うタイプ」の問題が中心です。また、登場人物の気持ちの「変化を問うタイプ」の問題もほぼ毎回出題されます。
つまり、国語に苦手意識がある子でも、「きちんと対策を積めば、勝負になる」学校と言えます。
きちんとした個別指導や家庭教師の先生であれば、有効な対策を講じられる学校でしょう。
ここからは2021年度の駒場東邦中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
解答例はこちら
大問1 小説文 工藤純子「あした、また学校で」
問1漢字 ○
平易ですので、全問正解したいところです。
「伝家」のみ少々難しく感じるかもしれません。
問2語彙 ○
A・Bどちらも「一度本文を読み、解答イメージをつかむ」という作業をすると正解しやすくなるでしょう。
Bの「かいつまんで」は「摘まむ」という動作が含まれていると気付けるかどうかがポイントでしょうか。
問3選択肢 ○
「今回のことに関しては、罪悪感も加わって、頭から拭い去れずにいた」祥子の様子を答える問題です。
傍線部①の「きっかけ」をきちんと拾えれば良いでしょう。
-
「今回のこと」=大縄跳びの朝練に参加せず、荻野先生にみんなの前で怒られたことで将人が不登校になったこと
-
「罪悪感」のきっかけ=つらい思いをした将人を、祥子はさらに怒ってしまったこと
の2点を拾うことができれば、同じ内容であるアが選べると思います。
問4言い換えの記述問題(短文) ○
「奥の手」を、具体的に何をすることなのかを言い換える問題です。
傍線部②と同じ文の中に、「それでもダメなら、奥の手がある」とあるので、「それ」の中身をチェックすると、「荻野先生や担任の先生と、もう一度話してみる」とあります。
つまり、「荻野先生や担任の先生ともう一度話してみてダメ」だった時に使うのが「奥の手」です。
「校長先生たちと話し終わった後を探す」という方針でも、「他のところで『奥の手』に近い表現を探す」という方針でも、答えのヒントは見つかります。
「こうなったら奥の手を……明日、PTAに訴えてみようと…」
というところが見つかるかどうかの問題だと言えます。
記述と言うよりも、ほとんど「抜き出し」の問題と言えるので、正解してほしい問題です。
問5気持ちの記述 ○
校長先生に対して、祥子が「内心ムッとした」理由を答える問題です。
傍線部③と同じ文の中の「うちには一将や将人もいるのに」を背景、「校長先生が開口一番、卒業している秀一の話をしたこと」をきっかけとして考え、「ムッとした」を心情語の「不満」に置き換えられれば正解が取れるでしょう。
増田はきっかけと気持ちをつなぐ「意味付け」として「将人の問題が軽視された」として、パーツを補強しました。
問6選択肢 ○
「わざと問題をすり替えているのだ」を具体的に説明したものの中で「誤っているもの」を答える問題です。
選択肢にある「将人は~学校に行けなくなった」という問題の「すり替え」になっているものは○、そうでないものは×として見ると、
ア「校長先生は~がんばることの意義について説明」
イ「近藤先生は朝練の伝達~ひたすら謝罪」
などは、【将人が学校に行けなくなったことへの謝罪】をせずに、問題を「すり替えて」対応をしていると言えます。
その中でも、
エ「先生たちは祥子が学校に頭を下げさせようとしていると決めつけてきたこと」
は問題の「すり替え」にはなっていません。答えはエです。
問7選択肢 △
「そんな人だから、話を聞いてくれるかもしれないと祥子は期待した」から、祥子はPTAや会長の梶尾さんをどのように考えているかを答える問題です。
傍線部⑤の「そんな」の中身をチェックすると、「PTA会長を決めるのは、くじ引きやジャンケンなど、毎年困難を極める中で、珍しく立候補で仕事のできそうな人に決まったこと」がわかります。
くじ引きやジャンケンで毎年困難を極めるというのは、「PTA会長を誰もやりたがらないから決めるのに苦労する」ということ。
そんな中で【仕事の出来そうな人】が【立候補】したので、「PTA活動にも【やる気がありそう】だし、【仕事が出来そう】」と祥子は判断したのです。
答えはエです。
各種×ポイントは
「ア 各委員会の意見に耳をかたむける」
「イ より良い学校を作ろうとする」
「ウ 解決できない問題にも対処できる重要な組織」
「オ 学外の地域の問題にも意欲的に取り組もう」
となります。
×ポイントを見る限り、「ここまでは書いていない」という内容でひっかけを作っていると思いますが、思い込みなどで誤答を選んでしまう生徒さんは多いのではないかと考えました。
問8言い換えの記述 △
「非難されているようにも感じた」がどういうことかについて、言い換える問題です。
「~感じた」とあるので、気持ちの内容と判断して、「背景→きっかけ→気持ち」の形で書くと書きやすいでしょう。
傍線部⑥と同じ文の中の「これから仕事に行こうとしていることまで見透かされ」とセットで傍線部⑥の「きっかけ」を考えます。
直前の「~まさか今も、家に一人ですか?」という会長のセリフがそれにあたるでしょう。
「将人が登校できずに家に一人でいる」→「自分はこれから仕事に行こうとしている」
と要素を時系列順に並べたら、「どういう内容で非難されているのか」を検討します。「気持ち」のパーツになると判断し、「無責任な母親」「責められている」あたりが書けていれば十分得点になるでしょう。
気持ちの部分の説明は自分で言い換える必要があるので、少々難しいと思います。
問9選択肢 ○
祥子が「言葉の裏に冷たさを感じた」理由を答える問題です。
傍線部⑦の直前に「と」とあるので、その前のセリフを拾うと、
「~たまたま悪いことが重なってしまい、お気の毒でした。~」
とあります。
傍線部⑦の後にも、
「祥子は唇をかみしめた。たまたま? そんなふうに思えというの?」
とあることから、会長に対して不満があることがわかります。
特に、会長のセリフの内容を言い換えているものを選んでください。答えはオになります。
問10抜き出し ○
祥子が学校やPTAで言われた言葉を、〔 〕内の言葉をヒントにして抜き出す問題です。
〔 〕内の他のセリフを見ると、
「将人くんが一日も早く登校できるよう……。」「息子さん、今は登校できていますか?」
のように、共通点があるので、
「息子が登校できるように…」
という内容を探す、と方針が立てられると良いでしょう。
答えは、「息子さんが学校に行けるようにするほうが先決です」となります。
良く確認せず、文末に「。」などを入れないようにしましょう。
問11 気持ちの変化の記述 △
祥子が「もう学校に行かなくてもいい」と言った理由を、本文全体の内容をふまえて書く問題です。
本文全体の内容をふまえてとあるので、「対比」や「気持ちの変化」を疑えるかどうかがポイントです。
傍線部⑧からは、気持ちの直接的な表現が読み取れないので、「気持ちの変化」の記述のパターンで書くと良いでしょう。
問10で見た〔 〕の後の、「いったい、なんのための学校だろう。」~「大人の義務なのではないだろうか。」の
祥子の「内面での葛藤」に気付けるかどうかがポイントです。
傍線部⑧の「きっかけ探し」でも見つけられると思います。
「変化前→きっかけ→変化後」で考えると、
変化前:将人が不登校になった件に対する、先生やPTA会長の対応を見て、学校の存在価値に疑問を持った
きっかけ:学校へ行かせることが大人の義務なら、行きたくなる学校にする必要があると考えるようになった
変化後:在籍する小学校に行かせる価値はない、と迷いが吹っ切れた
のようにあてはめられると書きやすいでしょう。
少々難しく感じるかもしれませんが、毎年恒例の形式の問題です。「取れた方が良い問」であると言えますが、完全な正解は難しいので、△で良いでしょう。
問12 言い換えの記述 △~×
「どんよりしていた将人の目には光が戻り、冬眠から冷めたカメみたいに活き活きしている」ときの将人がどのような様子か言い換える問題です。
これも、「背景→きっかけ→気持ち」の形で書けるとスムーズです。
将人が「光が戻り、冬眠から冷めたカメみたいに活き活き」した気持ちか、きっかけから考えると良いでしょう。
気持ちに「自信を取り戻す」などのマイナスイメージ→プラスイメージの言葉があてはめられるかがポイントです。
背景:不当に先生に叱責された+母にも事情を理解されなかった→自信を失っていた
きっかけ:母が自分を認めてくれた
気持ち:自信を取り戻した
などとすると良いでしょう。
背景にパーツを盛り込むのが難しいですが、「先生や母に叱責されて自信を失っていた」などのパーツがあれば、大きな減点はないと思います。
問13 選択肢 ○
点線部の表現について述べたものとして、誤っているものを答える問題です。
「ウ 投げやりになっていく」
が×ポイントです。
「投げやり」でなく、「抑えていた自分の本心を表に出していく」様子が現れています。
◆まとめ
長文記述が多く、初めて解答用紙を見たときには不安になってしまう生徒さん、また保護者の方も多いでしょうが、
-
毎年、平易な漢字が15問出題されていること
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毎年、選択肢が6問程度出題されていること
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記述の多くが「背景→きっかけ→気持ち」の形で書くとスムーズに収まる問題が多いこと
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その年で最も長い記述が「変化前→きっかけ→変化後」の形で、ほぼ毎年このタイプの問題が出題されること
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傍線部の周辺をよく読むことが得点に繋がること
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60分の試験形式となっており、「解ききれないケース」が考えにくいこと
など、「算数は得意だが、国語がイマイチ」という生徒さんでもチャンスが作りやすい形式になっているのが読み取れる試験の形式になっています。
国語に関しては「対策が取りやすい」学校であると感じています。
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