◆各種データ
合格者平均点 84.5/120
受験者平均点 78.7/120
国語想定合格ライン 80/120
◆出題形式
試験時間60分 120点満点
◆大問1題構成
文学的文章(小説文) 12問(小問数28)
◆今年度の問題の種類
・記述 約52%
・選択肢 約40%
・抜き出し 約0%
・漢字 約8%
という割合になっています。
ほぼ例年通りの出題傾向と言えそうです。
合格者平均点は80点を超え、難易度は2022年度に近いものとなりました。
ここからは2024年度の駒場東邦中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
「きみの話を聞かせてくれよ」〜Episode2タルトタタンの作り方 村上雅郁
問1漢字 ○
逆光・意外・容姿・解放・他言・殺気・接点・拾・気配・額・証明・神聖・文武・険・群。
駒東受験者なら全問正解を狙いたい問題です。
問2語彙 ○
A凛とした Bおごそかな C黄色い笑い声 の意味を選ぶ問題です。
Aがイ「引き締まった」、Bがア「近寄りがたく重々しい」、Cがオ「かん高い笑い声」になります。
傍線部を含む一文とその周辺を見て、なんとなくでも良いので意味を予想し、その予想に最も近い表現はどれか、という考え方で選べるのが理想です。
問3記述 ○
傍線部①「黒野先輩がため息をついた」理由を答える問題です。
傍線部①の前より、
しびれを切らしたように、黒野先輩がため息をついた。
「………轟虎之助。祇園寺先輩はさ、おまえさんに頼みがあるのだと」
祇園寺先輩がサッキのこもった目でそっちをにらむ。〜
「タルトタタンの作り方を、教えてほしいそうだ」
→いつまでも「タルトタタンの作り方を教えてほしい」と言い出せない祇園寺先輩に、黒野先輩がしびれを切らしています。
「しびれを切らす」は、「あまりに長く待たされて、我慢ができなくなる」という意味です。
背景 【いつまでも】
きっかけ【用件を伝えない祇園寺先輩に】
気持ち 【失望したから。】 としました。
問4選択肢 △
傍線部②「『スイーツ男子』より『お菓子作りが好きな女子』のほうが、ずっと理解されやすい」理由を答える問題です。
傍線部②の前より、
「私なんかが、ケーキを焼いていたら、へんでしょ」
「どうしてですか?」
べつに、いいんじゃ。だれがケーキを焼いても。
それに、祇園寺先輩は……女子じゃないか。
ボーイッシュとか、「ウサギ王子」とか、言われているけれど、女子にはかわりない。
タルトタタンくらい、作っても、なにもおかしくないでしょ?
もちろん、そんなのは性差別だ。わかってる。男子だろうが女子だろうが、ケーキを焼きたければ焼けばいい。あまいものが食べたいなら食べればいい。
それをなんだかんだ言う人がいるなら、そっちのほうがおかしい。
よけいなお世話、というやつだ──そのことは、ぼくがいちばんよく知っている。
だけど、それでも……。
女子なら、ケーキを焼いても、どうこう言われたり、しないでしょ?
→男子であろうが女子であろうが、関係なくケーキを焼けば良いと考えてはいるが、「女子ならどうこう言われたりしない」と言っています。
これは【お菓子作りをするのは女子という偏見がある】からです。
この考え方が当たり前となっている現状があるので、【世間にある】としました。
これらを組み合わせて、
【お菓子作りは女子がするものという偏見が】
【世間にあるから。】 としました。
問5選択肢 ○
傍線部③「私はぶんなぐられたようなショックを受けた」理由について答える問題です。
傍線部③の前を見ると、
「六年生のころ、友だちになった女の子がいたの。世間一般に言われている意味で、つまりはそれも偏見だけど、女の子らしい女の子だった。〜」〜
「その子の家で、その子が作ってくれたタルトタタンを食べたとき、こんなにおいしいものがあるのかって、そう思った。だから、そう伝えた。〜」〜
→A【女の子らしい女の子の家で、タルトタタンを食べ、感激したことをその子に伝えています。】
──私さ、羽紗ちゃんのこと、ちょっとこわいって思っていたけど、気のせいだった。
──なあんだ。やっぱり羽紗ちゃんも女の子なんだ。
→B【女の子らしい女の子に、こわいと思われていた羽紗は、「やっぱり女の子なんだ」とレッテルを貼られています。】
A・Bが原因で「ぶんなぐられたようなショック」を受けているのです。
どちらも満たしているのはイです。
問6記述 △
傍線部④「わかってるんだ。本末転倒だってことは」とあるが、祇園寺がどのようになったことが「本末転倒」なのかについて答える問題です。
前提知識として、「本末転倒」とは【根本的で重要なこと(目的)と、ささいでつまらないこと(手段)と取り違えることを指します。】
つまり、祇園寺にとっての①「重要なこと(目的)が何なのか」②「つまらないこと(手段)とは何なのか」を考える必要があります。
傍線部④の前を見ると、
「『ボーイッシュな女子らしさ』にとらわれてないか?」〜
傍線部④の後を見ると、
「そうだね。わかってるんだ。本末転倒だってことは。私はけっきょく、べつのらしさにとらわれていて、ぜんぜん自由なんかじゃない。でも……」〜
→「べつのらしさにとらわれている」「自由なんかじゃない」という内容から、【「ボーイッシュな女子らしさ」にとらわれて、自由でなくなっていること】が読み取れます。
これは②「つまらないこと(手段)」にあたります。
「無理なの。私、女の子みたいって、女の子らしいって、そう言われるの、ほんとにこわい。そんなの、その人の偏見だってのも、わかってる。だけど、だめなんだよ。そう言ってくる人たちは、私のことを『無理して男子ぶってる女の子』っていうふうに見る。そういうありふれた話に落としこもうとする。それがほんとうにいやなんだ」
→「女の子らしいと言われるのがこわい」ということは、①重要なこと(目的)は「女の子らしいと言われないこと」のはず。
ということは、重要なこと(目的)は、「女の子らしいと言われないような、自分らしいふるまいをすること」のはずです。
傍線部④のさらに前を見ると、
「私はさ、うれしかったんだよ。小三で剣道をはじめて、どんどん強くなって。ボーイッシュだとか、かっこいいとか、そういうふうに言われるのが」
「誇らしくてならなかった。べつに女子らしくなくていいんだって、いや、こういう女子もいるんだって、私が生きていることで、ショウメイできている気がした。〜」
→【女子らしくない、強くてかっこいい、自由な生き方をして、自分らしさを証明しようと考えていた】
が①重要なこと「目的」となります。
①・②を組み合わせて、
①【女子らしくない、強くてかっこいい、自由な生き方をして、自分らしさを証明しようと考えていたが、】
②【そのような「ボーイッシュな女子らしさ」にとらわれて、自由でなくなっていること。】としました。
読み取れはするが、書くのは難しい記述であったのではないかと思います。
問7選択肢 △〜○
傍線部⑤「だれかに『人がなんて言おうと関係ない』なんて、言えない」理由について答える問題です。
傍線部⑤の前を見ると、
サッカー部のキャプテン。ブンブ両道の優等生。あの人はいつもぼくに言う。
「人がなんて言おうと関係ない。自分の道を行けよ」
でも、龍一郎はきっと、ぼくが歩いている道のケワしさを知らない。
→A【サッカー部のキャプテンで優等生の龍一郎は「自分の道を行け」と言っています。】
傍線部⑤の後を見ると、
人になにかを言われることは、つらい。
自分の道を歩いているだけで、その道に勝手な名前をつけられるのは、歩き方に文句をつけられるのは、どんなに好意的でも笑われるのは、ほんとうにつらい。
→お菓子作りが好きな虎之助は、男子という性別によって「スイーツ男子」と言われたり、生き方に文句をつけられたり、他人に笑われたりしています。
B【選んだ生き方や、他人からの見られ方によって、辛い目に合うこともあると知っている】から、【「人がなんて言おうと関係ない」なんて、言えない】のです。
答えはエです。
B【選んだ生き方や、他人からの見られ方によって、辛い目に合うこともあると知っている】→「生きづらさを抱えている」
【お菓子作りが好きな虎之助は、男子という性別によって「スイーツ男子」と言われたり、生き方に文句をつけられたり、他人に笑われたり】→「周囲の小さな言葉にも影響を受けてしまう」と言い換えられているのが少々難しいところでしょうか。
問8記述 △
傍線部⑥「ぼくらは自分のままでいたいだけ」とあるが、虎之助が「ぼくら」と思った理由について答える問題です。
前提知識として、「ぼくら」とは【二人以上】を指します。
今回の二人とは、共通点を持つ二人、虎之助と祇園寺先輩を指します。
傍線部⑥の前より、
──女の子みたいって、女の子らしいって、そう言われるの、ほんとにこわい。
そうだ。
→B【祇園寺先輩の発言に同意】しています。
傍線部⑥の後より、
ぼくらは自分のままでいたいだけ。そうあるように、ありたいだけ。
それを、関係のないだれかに、勝手なこと、言われたくなかった。
→A【自分のままでありたいだけで、他人に勝手なことを言われたくない】
A・Bを組み合わせて、
A【自分のままでありたいだけで、他人に勝手なことを言われたくない】
B【祇園寺先輩に同意したから。】としました。
文字数制限が地味に効いてくる問題です。
問9選択肢 △
傍線部⑦「ぼくは、もっと先輩と話がしたいです」とあるが、このときの虎之助の心中について答える問題です。
傍線部⑦の前を見て、
「今日はありがとう。いろいろぐちを言ってしまってごめん」
祇園寺先輩からのメッセージ。〜
→問5・6を参考にすると、①【祇園寺先輩は「女の子らしくと言われたくなくて、ボーイッシュな女の子にとらわれている」】とわかりました。
②【そんな祇園寺先輩の考えに触れ】て、
「先輩。また、タルトタタンを焼きに行ってもいいですか?」
「ぼくは、もっと先輩と話がしたいです」
→③【自分も先輩に自分の考えを伝えようとしています。】
①・②・③を反映している答えはオです。
今までの設問にきちんと答えられていないと、勘で解くことになってしまいそうな問です。
問10記述 △〜×
傍線部⑧「今までずっと押さえこんできた思いが、明確な言葉となって夕日の下に響く」からわかる、虎之助の変化がどのようなものか答える問題です。
本文全体をふまえ、女子たちに対する「今までずっと押さえこんできた思い」がどんなものかわかるようにして答えます。
傍線部⑧の前より、
部活帰りだろうか。数人、かけよってきて、勝手に頭をなでてくる。
「家、こっちのほうじゃないよね?お出かけ?いいなあ」
→虎之助はクラスの女子に軽く見られています。
「あれ?なんか、あまいにおいがする。もしかしてケーキ焼いた?」〜
黄色い笑い声。はじけるような笑顔。
無邪気にはしゃいでいる、自覚のない加害者のムれ……。
→自分の発言が虎之助を傷つけていると気付くことなく、クラスメイトの女子は自分の趣味に関係する勝手な発言を虎之助にしてきます。
ぼくは歯を食いしばった。
背中を向けて、その場を立ち去る。一刻も早く。
→クラスメイトの女子を拒絶して立ち去る虎之助の様子が読み取れます。
「虎ちゃん、かわいい顔が台なしですよ〜?」
「ほんとほんと!ほら、いつもみたいに笑って!」
→さらに自分の容姿に関して、自分勝手な発言を続けるクラスメイトの女子。
ぼくはふり返って、さわいでいる女子たちをにらみつける。
それから、大きく息を吸い込み、精いっぱいの声でさけんだ。
→ついにクラスメイトの女子に抵抗します。
傍線部⑧の後より、
今までずっと押さえこんできた思いが、明確な言葉となって夕日の下に響く。
女子たちの表情が固まるのを見ながら、ぼくは思った。
→「今までずっと押さえこんできた思い」とは問8にあるように、【自分のままでありたいだけで、他人に勝手なことを言われたくない】という思いのことです。
これを本人たちの前でぶつけています。
祇園寺先輩の発言がきっかけでそれを考えるようになっています。
強くなりたい。ゆれないように。
自分が自分であるために、闘えるように。
→【自分が自分らしく生きるために、戦う強さを身につけようと決心】しています。
変化前 【自分の趣味や容姿が原因で、偏見を持つクラスメイトに軽く扱われる環境に耐えてきたが、】
きっかけ【共通の悩みを持つ祇園寺先輩と話したことで、】
意味付け【悪気はなくても自分を傷つける人間に抵抗する姿勢を見せ、】
気持ち 【自分らしく生きるために、戦う強さを身につけようと決心している。】としました。
それまでの内容が読めていないと解けない問題です。△で多少点数が入れば十分でしょう。
問11選択肢 ○〜△
点線部から読み取れることについて答える問題です。
指定箇所が飛び飛びになっていることもあって、解きにくく感じるかもしれません。
きちんと指定箇所と内容を読めば難しくない問題になっていますが、時間に追われていると冷静に解けないかもしれません。
答えはウ・カです。
×のポイントが、
ア:龍一郎
→人から理解されにくい立場にありません。
イ:黒野
→黒野が思ったと判断できる内容はありません。
エ:多くの人々に対して、もどかしさを感じて
→祇園寺は、「既製品を食べても自分にはピンと来なかった」だけで、「多くの人々に対して」の思いは読み取れません。
オ:人間は誰もが最初は「型」に従っているが、いずれは一人立ち…
→「焼いたケーキを型から外して、一切れずつ皿に取る動き」が、なぜ伝統の結集体である「物事の型」の話になってしまうのか…
作問者が「遊んだ」と思われる選択肢です。絶対に選んではいけません。
問12記述 △〜×
本文を読んだAさんとBさんの会話が成立するように、【 ★ 】の空欄に記述する問題です。
Aさんの
「この文章には性別をめぐる問題が出てくるけれど、それだけじゃないよね。社会や身の回りを見渡すと、黒野が言うことと同じことがあちこちで起こっている」
に合わせた具体例を書く必要があります。
私は、【女性は化粧をして会社に出勤しなければならないと世間では考えられている】としました。
例をパッと思いつくのが難しいかもしれません。
◆まとめ
本文のパーツを使えるのは相変わらずなのですが、何だか麻布中の国語の問題を解いているかのような感覚に陥りました。
少々難しくなっていますが、漢字や選択肢で点数を稼いで受かってくれ、ということなのでしょうか。
駒東志望の皆さんは、麻布中の国語の問題にもチャレンジしておいた方が良い…と言える年度になったかもしれません。
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