【傾向・平均点】
2024年度の開成中、例年通り理科は簡単でした。差のつく問題が数問ありましたが、他は開成志望者にとっては易しい問題だったでしょう。
出題内容は
大問1 水溶液・溶解度
大問2 月
大問3 ムシ(昆虫+その他のムシ)
大問4 電流
と、王道。
平均点も 合格者 60.2
受験者 55.1 (70点満点)
正答率で80~85%と高く、理科では差がつきにくい入試です。
この傾向は続いているため、2025年度も変わらないのでは?と思われます。
6年分の平均点を載せておきます。
2019 2020 2021 2022 2023 2024
合格者 65.2 56.0 54.1 54.0 61.5 60.2
受験者 61.7 48.1 49.7 48.6 56.9 55.1
2020年度は差が開いていますが、他は受験者と合格者の平均点は4~6点程度。2~3問です。
難問はほとんど出ず、出たとしても配点は3点程度のため、そこで稼ぐことは難しいでしょう。逆に、ケアレスミスや標準レベルの知識問題でポロポロ落としたら大きくライバルに後れを取るサバイバル的な入試問題です。
【解説】
問題のレベルは以下です。
◎:基本問題。絶対に取る!
〇:標準問題。開成志望なら取るのが普通
△:差がつく問題。ここから半分以上取りたい
×:捨て問。今回はなし
問題の種類は以下に分けてあります。
知:知識問題
考:思考問題
読:読解問題
計:計算問題
大問1 水溶液・溶解度
Ⅰ水溶液の性質の実験問題
中学受験の定番問題、難度も低いのでこの問1~3はサラッと解けたでしょう。
いらないと思いますが簡単な表を載せておきます。
A B C D E
におい
固 固 固
酸 アル アル 中 酸
問1 知 考 ◎
においなし、溶質が固体ではない、酸性→炭酸水ですね。
解答 炭酸水
問2 知 考 ◎
においあり、酸性→塩酸
解答 塩酸
問3 知 考 ◎
BとCは固体が溶けたアルカリ性の水溶液
→重そう水か石灰水
→二酸化炭素で石灰水をにごらせて見分ける
解答 イ
Ⅱ 溶解度の計算+万能試験紙の実験問題
溶解度の計算問題:やや実験操作が長いですが、そこから必要な情報を読み取って処理できるか、という読解力を確認する問題です。
読解力は開成中他最難関校が必須条件として求めてくる力です。
万能試験紙:こちらは慣れたパターンではない実験から、結果を読み取って考える問題です。
問4 読 計 〇
25℃ 水80g ほ4.0gまでとける
50℃ 水80g ほ4.0+4.8=8.8gまでとける
50℃の水が100gなので
8.8×100/80=11
解答 11g
問5 読 計 〇
50℃ 水100g ほ7.0gとかした
25℃ 水100g ほ7.0gとかしたい
実験4より
25℃ 水80g ほ4.0gまでとける ので、7.0gとかすには
80×7/4=140g 水が必要。
今100gの水があるので
140-100=40g
解答 40g
開成志望者にとっては手慣れた計算問題でしょう。
問6 読 △
ア 実験4より、25℃の水にほう酸をとけるだけとかしたときのpHは5
実験7より、市販の酢のpHは2~3
Ⅱのはじめの方のリード文に7から小さくなるほど強い酸性
とあるので、ほう酸水溶液の方が弱い酸性です。→×
イ 実験5より、水80gにクエン酸を
4gとかすとpH2
60gとかすとpH1 とあります。
一定量の水にクエン酸をたくさんとかすとpHが小さくなったので、濃度が高くなると酸性が強くなったと分かります。
逆に薄めれば酸性は弱くなると判断できます。→〇
ウ 実験5より、水80gにクエン酸
4gとかしたときpH2
60gとかしたときpH1
比例ではありませんね。→×
エ 実験6、7より
pH1のクエン酸→スチールウールを入れるとあわ発生
pH5のほう酸水溶液→あわ発生しない
市販の酢はpH2~3なので、この実験結果からは判断できません。
少なくとも、あわが発生するとはいえないので→×
オ 実験4、5より
水80gにほう酸4gとかしたときのpHは5
水80gにクエン酸4gとかしたときのpHは2
濃度が同じでもpHの値が異なっているので酸性の強さは異なっています。→〇
解答 イ、オ
ひとつひとつ読み取れば難しいところはありませんが、pHは値が小さいほど酸性が強いということを知らないと時間がかかるかもしれません。
読解して答えた受験生もいると思いますが、多くの受験生はpHや水溶液の性質を知っていて、補助的に実験結果を読んで判断したのではないでしょうか。
大問2 月
開成中の最頻出単元のひとつ、月の登場です。
流行りの暦やスーパームーンが登場し、読解して考える計算問題も混ざっているため、他の大問に比べると少し時間がかかるかもしれません。
問1 読 考 昔△ 現在〇
〈昔の暦〉
6行目 月子「1ヶ月が新月から新月までの…」
とあるので、1ヶ月の長さを月の動きで決めていることは決定。
1年はどうでしょう?ときどき1年を13ヶ月にして季節がずれないようにしていたので、太陽の動きで決めていたのでは?と考えた受験生もいたことと思います。
しかし、太陽の動きそのものから1年を決めたのではなく
ずれてきたときに1年を13ヶ月にして調整しただけなので、月の動きから決めたといえます。→イ
〈現在の暦〉
こちらは簡単です。太陽の動きで決めているのは知っているでしょう。→エ
解答 昔 イ 現在 エ
問2 読 考 計 〇
大の月 1ヶ月30日が 6ヶ月
小の月 1ヶ月29日が 6ヶ月
なので、30×6+29×6=354
解答 354 (日)
問3 知 考 ◎
a西暦が4で割り切れる年はうるう年 2020年
b100で割り切れる年は例外的に平年 1900年
cさらに400で割り切れる場合はうるう年 2000年
解答 aうるう年 b平年 cうるう年
これは知識と文脈からの判断で取れるでしょう!例も挙げてくれてとても親切です。
問4 知 考 〇
新月が1日なので
7日は新月から6日目の月→エ
解答 エ
「新月が1日」と直接書いてあるわけではありませんが予想できるでしょう。知っている受験生も多かったと思います。
問5 考 計 △
問2より、1年を12ヶ月にすると354日
正確な1年365日とのずれは1年で356-354=11日
これが1ヶ月(29.5日)になるのに
29.5÷11=2.68年 かかります。
約2.7年に1回うるう月を入れればよいので、これに一番近いのは
エの19÷7=2.71年 でしょう。
解答 エ
問6 読 考 計 △
問題文に従ってCを求めると
C=A-{(A-B)×0.9)}=40.7-{40.7-35.7)×0.9}=40.7-4.5=36.2(万㎞)
8/2の満月は35.8万㎞でCより近いのでスーパームーンです。
解答 ア
指示に従って計算するだけですが、やや複雑なため、途中で混乱した受験生もいたかもしれません。このタイプの問題は開成中でよく登場しています。
問7 考 △
月の軌道に惑わされるかもしれませんが、地球と太陽の位置関係だけに注目すればOKです。
太陽を中心とした図を描いて、地球と太陽の位置関係を考えます。
8/2は8/31の29日前なので、約29°戻った位置になります。
これを解答欄の図に合わせて考えると
8/31の太陽光は地球の右少し上から差し込んでいます。8/2の太陽光は地球の右少し下から差し込むことになるので、図のようになります。
解答 上図
気付けば簡単ですが、月の軌道に注目してしまうと中々気付きにくいでしょう。ここが2024年度でいちばん難しい問題だったと思います。
大問3 ムシ(昆虫+その他のムシ)
長めの会話形式リード文で、さらに会話の内容はかなり詳しい昆虫の知識が登場しています。
身構えた受験生もいたかもしれませんが、出題されたのは標準的な知識問題ばかりでした。
問1 知 ◎
昆虫に含まれないもの
カ(オカダンゴムシ)、ケ(ジョロウグモ) だけですね。
解答 カ、ケ
問2 知 〇
葉 コ(ショウリョウバッタ)、
花の蜜 ア(モンシロチョウ)、オ(キアゲハ)、セ(アオスジアゲハ)
木の汁 ウ(ヒグラシ)、シ(アブラゼミ)、ス(クマゼミ)
樹液 ク(カブトムシ)、サ(ノコギリクワガタ)
他の昆虫 イ(ナナホシテントウ)、エ(アキアカネ)、カ(ギンヤンマ)、キ(オオカマキリ)、ケ(ジョロウグモ)
いちばん多いのは他の昆虫を食べるグループですね。
解答 イ、エ、カ、キ、ケ
成虫の食べ物によってグループ分け…クモは昆虫ではないのに「成虫」と呼ぶのか?が気になってしまった受験生もいたかもしれませんが、これは「幼虫と成虫で食べるものが変わる昆虫では成虫のことを考えましょう」という指示でしょう。
開成中の受験生なら、知らないムシは登場していないと思います。
問3 知 ◎
冬越し
モンシロチョウ さなぎ
ナナホシテントウ 成虫
カブトムシ 幼虫
オオカマキリ 卵
エンマコオロギ 卵
解答(1)ウ (2)エ (3)イ (4)ア (5)ア
4年生の内容です。6年の秋くらいになると忘れている受験生も出てきますが、しっかり覚え直して受験出来たかが勝負です。
問4 知 ◎
完全変態の昆虫
ア(モンシロチョウ)、イ(カブトムシ)、キ(クロオオアリ)
解答 ア、イ、キ
問5 知 ◎
幼虫のいる場所。食べ物も合わせて考えると分かりやすいでしょう。
モンシロチョウの幼虫 アブラナ科の葉を食べる
カブトムシの幼虫 腐葉土を食べる
アキアカネの幼虫(ヤゴ) 水の中
ショウリョウバッタの幼虫 葉を食べる
アブラゼミの幼虫 土の中
解答(1)イ (2)ウ (3)エ (4)イ (5)ウ
簡単すぎて不安になりますね…開成中にはこういう出題があります。
大問4 電気回路・電熱線・スイッチ回路
とても標準的な出題です。多くの受験生が「普通だなぁ…」と感じながら解いたのではないでしょうか。簡単すぎて不安になったかもしれません。ケアレスミスは命取りです。
Ⅰ豆電球のスイッチ回路
問1 考 ◎
スイッチを1つだけ閉じるので
アとイはどちらを閉じても乾電池1個・豆電球1個の回路
ウは乾電池2個直列・豆電球1個の回路
エ・オはスイッチ1つでは回路がつながらない
よって、いちばん明るいのはウですね。
解答 ウ
問2 考 ◎
問1でスイッチ1つではつながらなかったエ・オから考えましょう。
エは電池の向きが反対なので電流が流れない
オは乾電池2個が直列になる
豆電球がつくのはオです。
解答 オ
問3 考 〇
スイッチを1つだけ閉じたときに豆電球がついたア・イ・ウを検証します。
ア・イの電池を移動させてみます。
アはショートしてしまいますね。
イは乾電池が並列になっています。明るさは変わりませんね。
ウはスイッチ1つだけのときは下図のように電流が流れます。
豆電球に2の電流が流れていると考えられます。
スイッチを2つ閉じたときは下図のように電流が流れます。
豆電球にはやはり2の電流が流れるので豆電球の明るさは変わりませんね。
解答 イ、ウ
Ⅱ電熱線
問4 考 ◎
①図3のグラフの3分のところの値を読めばよいでしょう。→6:3:2
②③水の上昇温度は 電流の大きさに②(比例)し、直列につないだ電熱線の数に③(反比例)する。
解答①6:3:2 ②比例 ③反比例
図2・図3から直列につないだ電熱線の数が増えると電流が小さくなり、上昇温度も小さくなっていることが分かりますが、確認しなくても解ける基本問題です。
問5 考 ◎
発熱量の多い回路を選びます。
(b)は電流が流れていない
(c)は電熱線が2本直列
(d)は電熱線が1本
発熱量が多いのは(d)ですね。
(c)の電流を1/2、(d)の電流を1として考えてもよいと思います。
解答 (d)
簡単すぎる…
Ⅲモーター
問6 考 ◎
(b)は電流が流れていない
(c)はモーターに流れる電流1
(d)モーターに流れる電流2
モーターが速く回る→電流が強い→電池が直列→(d)
解答 (d)
問7 考 △
(b)~(d)と同等の機能を持たせるためには
(b)電流が流れない
(c)乾電池1個
(d)乾電池2個直列
のパターンが作れればよいでしょう。
乾電池2個直列は、左下にある乾電池1個とかき加えたもう1個で作ります。
※左上のスペースをア、右上をイ、右下をウと呼ぶことにします。
アの位置に乾電池を入れると、スイッチXで(d)乾電池2個直列が作れます。
モーターに対する電流の向きも(d)の上から下(↓)と同じなのでOK。
(アに乾電池を入れ)イの位置に導線を入れると、スイッチYのときも乾電池2個直列になってしまいます。
(アに乾電池を入れ)ウの位置に導線を入れるとスイッチYにつないだときにモーターに電流が流れなくなります。
乾電池をアに入れると(c)乾電池1個・モーター1個の回路が作れません。
イに乾電池を入れ、アに導線を入れて、スイッチをYにすると(d)乾電池2個直列が作れます。電流の向きも(d)と同じモーターに対して上から下(↓)なのでOK。
これを確かめてみましょう。
スイッチXにつないだときに(c)乾電池1個になりました!電流の向きもモーターに対して上から下(↓)。これですね!
解答
問7は少し試行錯誤が必要ですが、難問ではありません。少し時間がかかるかもしれませんので、この問題にしっかり時間を残したいところです。
【まとめ/これから開成中を目指す方へ】
難問・奇問は登場せず、少し難しい問題が数問と基本~標準問題が多数の入試でした。
溶解度・電流あたりは、開成志望者にはとても普通に感じられたのではないでしょうか。
月は少し難しかったでしょうか。とてもよく出題されるので得意にしておきましょう。
また、昆虫の完答で不安になった子もいたでしょうか。単純知識は苦手…という成績上位生が多いのは事実です。といってもマニアックな昆虫はひとつも出題されていません。開成志望なら、動植物や実験器具の知識をしっかり定着させておきたいところです。難問が少なく、さらにライバルはそれも解ける子が多いため難問で挽回できないのが開成中の理科です。
また、万能試験紙(pH)・昔の暦(旧暦)・スーパームーンなど、流行の問題も登場しています。この手の問題は必ず説明がありますが、知っているとラクに読めたでしょう。模試や塾のテキスト・他校の過去問などで色々な問題に触れておくとよいでしょう。
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