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豊島岡女子学園中の算数分析(2025年 第1回) Column

過去問分析

豊島岡女子学園中の算数分析(2025年 第1回)

2025.07.08

受験者平均点 60.37点
合格者平均点 69.87点
想定合格点  65 点

豊島区東池袋の豊島岡女子学園。
医学部をはじめとする理系に抜群の合格実績を残す女子進学校として、その名を全国に轟かせています。
見事な進学実績の原動力は面倒見です。
豊島岡女子学園では計画的に高い学力を身につけることの出来るカリキュラムが整備され、また教師陣も熱心で、宿題の量や補習の機会も多いことで知られています。
大学受験に向けた指導は決して手厚くはない女子伝統校が多い中、一線を画していると言えるでしょう。

時代に合わせた学校運営からも、高い意欲や先取的な姿勢を見て取ることが出来ます。
2022年度から高校募集を停止し完全中高一貫校へと移行し、2025年度からは「算数・英語資格入試」も実施されました。
積極的に入試改革を行うことで、豊島岡女子学園の教育で伸ばせる人材をより適切に選抜出来るようになってきたのではないでしょうか。

各科目の入試問題は中学受験の基本に則り、受験生の学力を明確に測定できる質の高いものが課されます。
真面目な努力家が報われやすい試験とも言えるでしょう。

さて、ここからは2025年の豊島岡女子学園中の第1回の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来たのかを考えていきましょう。

今回使用する指標

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので、可能な限り正解したい
×:正解できる生徒は少数、後回しにする判断も効果的

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇

基本的な計算問題です。

今回は分数で統一して計算することで、難なく正解することが出来るでしょう。

(2) △

答えがズレやすく受験生泣かせの「変則N進法」の典型題です。

ただ今回は求める数値が小さいので、解答例のように場合の数として処理したほうが早く正確に答えを求めることが出来たでしょう。

(3) 〇

過不足算の典型題です。

「6個ずつ配った場合の最後から3人目に1個~5個を配った」と言い換えましょう。

誰でも取れるような基本問題という訳ではないですが、豊島岡女子学園合格を目指す受験生ならお手のものでしょう。

(4) 〇

最小公倍数・最大公約数の基本問題です。

年号にちなんだ問題ではあるものの何の捻りもなく、ほぼ100%の正答率であったことが豊島岡女子学園からも発表されています。

大問2

(1) 〇

食塩水の混合の基本問題です。

今回は結局「8%の食塩水と14%の食塩水を混ぜて10%の食塩水を720g作る」と考えましょう。

こちらも受験生のほぼ全員が正解できていました。

(2) 〇

「さいころを転がす」という難関校で散見されるテーマです。

一生懸命に頭の中で想像したり、実際に消しゴムをさいころに見立てて転がして考えたりしても良いですが、解答例のように真上から潰した図で考える方法が定番です。

基本問題とは言えませんが豊島岡女子学園中への合格を目指す受験生なら、どんな方法を選択したとしても正解できて当然でしょう。

(3) △

豊島岡女子学園で定番の「流水算と比・ダイヤグラム」です。

解答例のようにダイヤグラムで状況を整理し、まずは平行四辺形に着目しましょう。

『流50m/分:上400m/分』の速さと時間の逆比や、
『上400m/分+流50m/分=下500m/分-流50m』から「浮き輪を落としてから気づくまでの時間と、気づいてから拾うまでの時間が同じ」に気づくことが出来ると、正解に至ることが出来ますね。

難関校向けのテキストでたびたび見かけるテーマですが、苦手とする生徒も多く、差のつく問題だったと言えるでしょう。

(4) ×

近年、駒場東邦中や桜蔭中などの首都圏難関校でたびたび出題されている「図形の場合の数」です。

この単元は「抜け・漏れ」が非常に発生しやすく、正解になかなか至らないことでも悩まされますね。

大問2(4)では「ベースとなる図形」として正六角形3個をつないだ図形3種類を考えましょう。

あとはそれぞれ、どこに付け加えるかを考えます。

今回は「回転や裏返しをして重なるものは1つ」と指定されていますが、注意深く数え上げるのは難しい問題でした。

大問3

(1) 〇

「フィボナッチ数列」の要領で問題の指示に沿って作業していきましょう。

(1)は後ろから順に戻っていくだけで正解できるので易しく、受験生のほぼ全員が正解できていました。

(2) 〇

(2)は左から2番目の数をイと置いて立式できると易しいでしょう。

7番目の数は5×5+イ×8=201と考えることが出来ますね。

決して方針が立ちにくい問題ではありません。

(3) 〇

(2)と同様に左から1番目の数をア、左から2番目の数をイと置いて立式しましょう。

ア×5+イ×8=267となり、不定方程式として処理することが出来ます。

女子最難関校の一角の豊島岡女子学園の算数の中盤の大問としては易しめの出題で、合格者はこの問題で点数を伸ばすことが出来たようです。

大問4

(1) 〇

「点の移動」も豊島岡女子学園中の算数では頻出のテーマですが、処理量が多い問題も散見され差がつくことでも知られています。

4(1)では「Pは60°ぶんを1秒で次の頂点に移る」「Qは300°ぶんだから5秒で次の頂点に移る」と考えましょう。

あとは最小公倍数の5秒ごとにPとQがそれぞれABCのどこにいるのかを表で整理しましょう。

数値設定も易しめなので、労せずに正解できた受験生も多かったことでしょう。

(2) △

(1)と同じように考えます。

「Pは108°ぶんを1秒で次の頂点に移る」「Qは252°ぶんだから7/3秒で次の頂点に移る」と整理できると、あとは最小公倍数の7秒ごとにPとQがそれぞれどの頂点にいるかを調べればよいと分かります。

豊島岡女子学園の中盤の大問としてはこちらも易しめで、得点源になった受験生も多かったことでしょう。

大問5

(1) △

発想寄りの平面図形の難問です。

「平行」という条件をどのように使うのか、柔軟な着眼点や試行錯誤が求められます。

解答例ではAから直線DFおよび直線EGと平行になるような補助線を引き、左右の相似に注目しました。

するとDF:AH:EGを連比で処理することで、答えを求めることが出来ますね。

もちろん他の方法でも相似を作って求めることが可能です。

発想が浮かぶか浮かばないかで明確な得点差がついた問題となりました。

(2) ×

(1)が解けないと手も足も出ません。

ただ(1)で相似に気づいていたら、面積を消去算として処理することが可能です。

この大問を完答できると大きなリードが取れますが、思いつかなかった場合は潔く後回しにして他の問題に時間を割くことも得策だったと言えるでしょう。

大問6

(1) 〇

豊島岡女子学園中の算数の最後の大問と言えば立体図形です。

2025年の第1回も「立方体の切断」という最頻出テーマからの出題になりました。

この問題では1辺を6cmと考えると計算しやすいでしょう。

(1)は切り口が等脚台形となる典型図形です。

合格者のほとんどが正解できる基本問題と言えるでしょう。

(2) △

「立方体の2回切断」は中学受験における最難関単元の1つですが、豊島岡女子学園中の合格を目指すならば克服は必須です。

「面と面は直線で交わる」というルールに沿って考えると、解答例の図形の体積を求めれば良いと分かります。

あとは「断頭三角柱」でも「分ける」でも「除く」でも得意な方法で計算しましょう。

(3) ×

「立体の内部の直線」は豊島岡女子学園では過去にも扱っている題材ですが、難度はかなり高いです。

「どうすれば平面で捉えられるか」を考えることがポイントで、解答例では「長方形ALMDの対角線DLと(2)の切り口の三角形がどう交わるか?」を考えました。

着眼点は高度ですが、その後の計算はほぼ必要がないという発想力勝負の難問となりました。

総論

2025年度の豊島岡女子学園中 第1回の算数の出題は、合格者平均点が69.87点、受験者平均点が60.37点という結果になりました。
合格ラインは65点と想定されます。

豊島岡女子学園の算数としては標準~やや難しめの出題でしたが、いくぶん取り組みやすいと感じた受験生も少なくはなかったかもしれません。
理由としては、中盤の大問3と大問4が易しめだったことや、前年の2024年度の第1回は合格者平均点が54.70点、受験者平均点に至っては43.41点とかなりの高難度だったことの反動が挙げられます。

さて、ここからは豊島岡女子学園の2025年第1回の問題に、どのような戦略で取り組めた受験生が合格を勝ち取ることが出来たのかを考えていきましょう。

この年度の特徴としては「問題ごとの難易度差がいつも以上に明確だった」ことが挙げられます。
「〇の問題だけでも55点ぶんあり、ここで約50点を稼いで、あと△から3問を拾い集める」という得点パターンが、合格のモデルケースと言えるのではないでしょうか。
まさに取捨選択の判断力が合格の鍵になったと言えるでしょう。

ただ誰も取れないような捨て問は課されていません。
算数を武器とする受験生には大きく差をつけるチャンスだった
とも言えるでしょう。

2026年以降に豊島岡女子学園合格を目指す受験生の皆さんにとっても、2025年度の第1回の出題はある程度は参考になる年度です。
ただ「指示に沿った作業系の問題が今年度では大問3にあたり、例年より易しめだった」ことと「速さと比・ダイヤグラムが大問ではなく2(3)の小問1つしか課されなかった」ことには留意しておきましょう。
例年では上記のテーマはいずれも一定以上の難度で大問として課されるので、大きな差がつく分野
です。
過去問演習を遡ることで頻出の思考法を身につけておきましょう。

このような知識と着眼のバランスが良く明確な実力差がつく出題の豊島岡女子学園の算数「受験算数のお手本」とも言えるのではないでしょうか。
豊島岡女子学園の算数の対策の前段階としては盤石の基礎学力を身につけることが必須です。
そのためには、まずは自身が所属している塾で上位コースを維持しようと努力し続けましょう。
そのうえで6年生の秋以降に過去問演習を重ねることが豊島岡女子学園の対策になることはもちろん、算数の学力そのものの底上げにもつながりますよ。

各科目で中学受験の王道とも言える出題が課される豊島岡女子学園の入試問題は、最難関校の中では頑張りが報われやすい試験とも言えます。
盤石の基礎学力を身につけ女子トップ校に挑戦したいという受験生の皆さんに、自律学習サカセルは必ずや力になることが出来るでしょう。
もう1ランク上の学力を身につけたい時は、お気軽にご相談ください。


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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。
社長としても10年目。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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