この記事を書いたのは...
松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。
個別指導・家庭教師の自律学習サカセル
サカセルコラム
豊島岡女子学園中の国語分析(2021年) Column
豊島岡は言わずと知れた女子の名門中ですね。
女子御三家の併願先としての圧倒的存在感を放っており、第1志望校としてもよくあがる学校の1つです。
そんな豊島岡女子学園の解説をしていきます。
◆各種データ
受験者平均点 65.5点
合格者平均点 72.3点
想定合格点 76点
◆出題形式
50分 100点満点
◆大問2題構成
小問20〜25題程度
大問1 説明的文章
大問2 物語文
◆問題の種類
・漢字・語彙 10%
・抜き出し 20%
・選択肢 30%
・空欄補充 20%
・記述 20%
抜き出し・選択肢・空欄補充・記述全てバランスよく出題されます。
採点が素早くできるように客観問題が多めの傾向です。
記述は1題のみ。
漢字が埋め込みで出題されています。
大問2ではこちらも大問1と同じように、抜き出し・選択肢・空欄補充・語彙・記述全てバランスよく出題されます。
記述は1題のみで、選択肢の問題が若干多めです。
大問1の説明的文章に少し多めに時間を割いていく時間配分が目安でしょう。
大問1では、説明的文章の文自体の難しさがあり、毎年苦戦している生徒が見受けられます。文章の内容理解に時間を多めに割きたいですね。
問題では、選択肢の問題が難しいです。なんとなくで選んでいる生徒にとっては厳しい結果が待っているでしょう。丁寧に選択肢を解いていく技術が求められます。
また、抜き出しや空欄補充で時間を使いすぎないようにしたいですね。
問題数が多いので、時間配分が肝になります。時間をかければ抜き出しは誰でも見つけることができますが、掛ける時間が合否に直結してきます。素早く、正確に抜き出せるように、論理的に抜き出しを見つけられる能力が必要です。
大問2の物語はそれほど難しくありません。
時間的余裕をどれだけ持って、確実に取り切れるかが勝負の分かれ目になるでしょう。
ここでもやはり、空欄補充に時間を取られないように気をつけたいですね。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
説明的文章です。
抽象的な内容が続く、少し読みにくい文章でした。
量は多くはないので、7分程度で内容をしっかり理解しながら読みたいですね。
トメハネハライに注意して丁寧に書きましょう。
伝統的な豊島岡の抜き出しですね。
必ず毎年出題されます。
これを2分程度であっさり取るか、5分かけて見つけるか、はたまた取れないかで大きく変わってきます。問題自体は容易ですが、掛ける時間で差がつくとご理解ください。
論理的に探す方法が確立されていれば容易に解くことができます。
ポイントはキーワードを捉えることです。
傍線部もしくはその前後を読み、キーワードを複数おさえましょう。
今回は「真の価値・理解・私しか」ですね。傍線部①前後3行で、複数回登場しています。
また、この時点で解答のイメージも大方作れるのではないでしょうか。
傍線部①の2行、3行前に「思い込み・誤解」とあるように、傍線部①の言い換えはこの手の言葉であることは理解できますね。
次に捜索範囲を大きく決めていきます。
上記のキーワードが散見されるのは、傍線部②の直後のあたりと傍線部Bの直後のあたりですね。このあたりを探していきます。
ここまでいけばあとは簡単です。
捜索範囲が決まったのであれば、探していきましょう。
5文字でかつ、「思い込み・誤解」と似た表現が見つかるはずです。すると傍線部Bの直前に「幸福な誤解」という言葉が見つかりますね。
ここが答えになります。
空欄補充・抜き出し問題です。
こちらも手順は先ほどと同じです。まずキーワードを見ていきます。「愛・伝える言葉・確認」などでしょう。
次に捜索範囲を大きく決めていきます。
分かりやすいキーワードは「愛」ですね。愛の話題は傍線部①の直前で登場しています。
最後に探しにいきます。
「愛・伝える言葉・確認」という言葉を手がかりに探してみてください。すると、傍線部①の直前に「恋愛」「恋人」「伝えることば」とあります。
もう見つかりましたね。
答えは「かけがえのなさ」です。
空欄補充の選択肢ですね。
まず一文を読みましょう。
すると、
「そのようなロジックによって、」
とありますね。
そのようなロジックとはどのようなロジックなのかを捉える必要があります。
当然、指示語ですので直前の内容を見ていきます。
すると、
「自分がいなければ、あなたの真価を理解する人はいなくなる」
「だから私は生きなければならない」
とありますね。上記の論理によって、私たちは「自分の存在を根拠づけている」わけですね。
二元論(対比)の理解です。
「みんなと同じになりたい人間」→ ?? (創造性・主体性の逆)
「みんなと同じになりたくない人間」→ 先生が現れる (創造性・主体性)
このような構造が把握できれば問題ありません。
解答はアですね。
※解答根拠として、文章の頭に「私たちが学ぶのは、万人向けの有用な知識や技術を習得するためではありません。」とあります。ここを思い出せればより良いですね。
空欄補充・抜き出し問題です。
手順は先ほどお伝えした通りです。
まずキーワードを探しにいきます。
傍線部④の2行後に
『先生は「私がこの世に〜為ではないか……」と思った人の前だけに姿を表します…』
とありますので、自己のオンリーワンな要素、自分だけの個性などを追い求める人の前に現れるわけですね。「私にしかできない」などをキーワードにしておきましょう。
次に範囲を大きく決めていきます。
すると文章の前最初の冒頭部分に同じような内容が書いてありますね。
1行目「創造的」
4行目「自分がこの世界でただひとりの……」
6行目「唯一無二性」
ここまで来ればあと少しです。
空欄に当てはまるように言葉を入れていきます。
あとは簡単ですね。
答えは、自己の「唯一無二性」を求める人間 です。
「日本の高校生」を問われていますが、学ぶ人の例えであることを理解しましょう。
つまり、ソクラテスという偉大な哲学者の授業がちんぷんかんぷんになってしまうのはどうしてなのかを考えれば容易です。
直前4行前に
「学ぶことを欲望するものしか学ぶことができない」
とあります。簡単にいえば興味がなければ学びは難しいと言っているわけですね。
これが分かれば正解を選ぶのは容易いですね。
オが正解になります。
理由の問題ですね。
傍線部の理由を本文から探しましょう。
すると直前に
「先生の発信するメッセージを弟子が、教えであると思い込んで受信してしまうというときに学びは成立します」
とあるので、受け手側が思い込みをしていればなんでも教えになる、という傍線部の理由が読み取れます。ここから選んでけば良いですね。
答えはイになります。
※
アは「認めないわけにはいかない」が変。まるで認めたくないかのような表現ですので間違い。
ウは「師弟関係の基盤を整える」が変。基盤が思い込みにより、すでに完成しているから教えが成立するのです。
エは「学びがあるかどうかは問題ではない」が論外です。オは「教えを汲み取ろうと努めること」が変。努力をしなければならないと書いてありましたか。
説明の記述です。
① まずはしっかりと設問を読み、聞かれていることをはっきりさせ、何をするかの方針をはっきりさせます。
② 記述の要素となる内容を探します。
③ 見つけた要素を繋ぎ合わせていきましょう。
①
学びはとはどういうものであるか。
学びについて聞かれています。
②
当たり前ですが、文章全体を通して学びについて述べられているので、文の内容が出来るだけまとまっている抽象的な内容を見つけなければなりません。
文章内では主体性と創造性についての説明が大きな軸になっていたので、ここが読み取れている方は比較的楽に要素探しができたと思います。
まず、文章全体のまとめといえる最初と最後の部分から探していきましょう。
すると、文章冒頭に
「私たちが学ぶのは、〜自分がこの世界でただひとりのかけがえのない存在であるという事実の確認をするために私たちは学ぶのです。」
とありますね。これが創造性にあたります。
ここを使います。しかし、長いのでもう少し抽象化をしましょう。
直後に唯一無二性という言葉があり、これが
「自分がこの世界でただひとりのかけがえのない存在であるという事実」
の言い換えになっているので、使います。
A〈(学びとは)自分の唯一無二性の確認である〉
次に、文章の最後の部分の主体性の内容に触れていきます。
傍線部⑤の5行前に
「人間は自分が学ぶことのできることしか学ぶことができない。学ぶことを欲望するものしか学ぶことができない」
とありますね。
ここを使います。ここも同様に少し長いので、少しだけ抽象化します。
B〈(人間にとって学びとは)欲望する(求める)ものしか学ぶことができないものである〉
③
それでは上記の2つをまとめていきましょう。
〈人間にとって学びとは自分の唯一無二性の確認であり、〉〈自己が欲望する(求める)ものしか学ぶことができないものである。〉
読みやすい文章でした。題材も恋愛でしたので、理解も容易だったと思います。
問題のレベルもそこまで高くはないので、いかに短時間で正確に解けるかの勝負だったと思います。
名前の問題です。
主人公の一人称視点で物語が進んでいるので、主人公の名前の表記があるのは会話であるという予測ができれば容易でしたね。
語彙の問題です。
知らない言葉が出た場合は文脈で判断しましょう。
理由の問題ですね。
中村さんが学校で思いっきり笑わずに、微笑む理由を見つけます。
文章を先に読んでから解いていれば、容易に取れるはずです。
物語の最後に主人公が微笑む理由を中村さんに尋ねていますね。そこで中村さんが
「だって、学校、嫌いだから。」
と返答しています。ここが解答の根拠になります。
最後の方に書いてあるので、読み切った直後に解いていれば非常に簡単でしたね。逆に、問題を見て解いて見て解いてというやり方をしている場合は難しかったかもしれません。
しっかり読み切ってから問題を解くようにしましょう。
説明の問題です。
傍線部②を言い換えている選択肢を選びましょう。
傍線部に
「ドキドキ・ホッと・泣きたくなる・そんな自分に腹が立つ」
とあるので、初恋に感情の制御がきかなくなっていることがわかりますね。
よって答えはオになります。
※
アは「思いを伝えられず辛い」が変ですね。思いを伝えるかどうかの話はここではまだしていません。
イは「気をひいても反応がとぼしく」が間違いです。気をひいていませんね。
ウは「新しい友達とは距離が生まれた」が変ですね。少しぎこちない感じにはなっていますが、距離が生まれているは言い過ぎです。また新しい友達かどうかも分からないですね。
エは「中村と話している友達を見て、羨ましい…」が変ですね。そんな描写はどこにも書いていません。
空欄補充・抜き出しの問題です。
難しくはないですが、時間をかけずに解けたかどうかが勝負所でしたので、△としています。
解き方は大問1と同じです。しっかりとキーワードを見定め、捜索範囲を絞っていきましょう。
この問題ではキーワードは複数ありますが、想像していた恋と実際の恋とのギャップに苦しんでいる主人公の様子を描写している部分が見つかれば大丈夫です。
これが書いてある部分2箇所ありましたね。
傍線部③6行前の「誰かを好きになるっていうのは……」
傍線部X2行後の「やっぱり、本当に好きになるって、……」
の2箇所です。
ではAですが、「好きになるということ」を主人公は、「思い」がどんな風に「深まる」と考えていたのでしょうか?
傍線部③6行前には「少しずつ」とありますが、これでは文字数が条件に当てはまりません。
次に傍線部X2行後ですが、ここには「段々気になり始めて……」とありますね。ここが正解になります。
次にBです。
思いが段々深まる→告白
これを〇〇を取ると表現しています。
順序とか順番という言葉が入りそうですね。では実際にあるかどうか探していきましょう。
すると、傍線部X2行後に
「段々気になり始めて、好きって告白するっていう順番に……」
とありますので、順番が正解になります。
最後にCですが、ABのように思っていたのにも関わらず実際の主人公はどんな風に好きになってしまったのかを追っていきます。
これは傍線部③6行前の近くに書いてありますね。
「ちょっと微笑まれただけで、突然好きに……」
ここが正解になります。
友人との掛け合いがどのような効果を生んでいるのかを捉える問題です。
しっかりと友人との会話を追っていきましょう。
まず、傍線部②の直後に
「タクトたちとは、今まで通り、話をしている……」
という部分がありますね。ここの
「話をしているつもりだけど、すぐに会話から離れてしまう。」
という部分から中村さんのことが気になって友人達との会話に集中できていない様子が読み取れます。また、傍線部Yの16行前の昼休みの出来事にも同じようなことが描写されていますね。
よって答えはオになります。
※
アは「恋すり自分に酔う」が間違いです。明らかに苦しんでいますね。
イは間違えた方が多かったのではないでしょうか。「眼鏡を外したり」が間違いです。眼鏡を外す行為が中村に夢中になっていることには繋がらないです。
ウは「友達に無愛想に応じる」が間違いです。心ここに在らずという様子ですが、無愛想ではないですね。
エは眼鏡の描写しか書かれていないので不十分です。
傍線部の理由の問題です。
理由自体は直前に「決心をしたぼくは」とありますので、決心に準ずる選択肢を選びましょう。
すると、イかエの選択肢が挙げられます。
そしてエの選択肢は「自分の思いを打ち明けようと」とありますね。これは告白のことになりますが、告白する気はまだ読み取れないですね。
よって、イが正解になります。
指示語の指す内容を説明する問題というよりも、この部分(場面)についての説明をする問題です。
この手の問題はしっかりと背景・きっかけ・気持ち・行動を捉えていきましょう。
背景:「初恋に悩んでいた・意を決して声をかけた・何を話せば良いのかわからなくなってしまった」あたりが捉えられていると良いですね。
きっかけ:「初恋相手の中村さんが実は学校嫌いだった・だから思いっきり笑わない」というところですね。
気持ち:「驚き・困惑・予想外」という気持ちになったわけですね。
以上の流れが分かればアを選べますね。
※
イは「内面を理解してくれる友達と出会えて嬉しい」が間違いです。内面の理解は少し言い過ぎですね。まだそれほど深い関係とは言えません。
ウはかなり惜しい選択肢でした。ただ、アと比べるとアの方が多くの要素を拾っていますね。よってアの方が適切な選択肢と言えますね。
エの選択肢は「相手をかわいらしく思って出た」が間違いです。中村さんが主人公のことを可愛いと感じているかは読み取れません。
オは「お互いの息苦しさが解き放たれていく」が間違い。どこにも描写がないですね。
心情変化の記述です。
4つの記述体系のうちの1種である心情変化のポイントをざっくり説明すると以下の通りです。
① 変化前の心情を捉える
② 文章全体できっかけを捉える
③ 変化後の心情を捉える
①
傍線部Xでの感情は直前の様子から、初恋による戸惑いや苦悩などが読み取れますね。
さらに、傍線部Xの直後の
「自分ってストーカーみたい」
「ぼくのはおかしいんじゃないか……」
から自己嫌悪を感じていることも伺えます。
②
きっかけとしては、①での苦悩や自己嫌悪といったことが募り募っていることが挙げられます。
③
傍線部Yの1行前の「耐えられなくなってきた。」や1行後の「決心をした…」から、募り募った気持ちが限界に達していることが分かりますね。
以上をまとめていきましょう。
〈初恋の苦悩や自己嫌悪と言った感情が〉〈募り、〉〈抑え込むことの限界を感じている様子〉が表現されている。
大問1では、やはり説明的文章の文自体の難しさがあり、そこに苦戦した生徒は多いのではないかと思います。抽象的な内容が続いており、文章の内容理解に時間を多めに割きたいですね。
一方で、問題自体はそれほど難しくなく、読めれば解けるを体現したような問題でした。また、抜き出しや空欄補充で時間を使いすぎないようにしたいですね。
大問2の物語では恋がテーマの内容でしたので、かなり読みやすかったのではないかと思います。
問題も難しくはなかったので、どれだけ時間を残せているか、余裕を持って臨めるかで、大きく合否が分かれたのではないかと思います。ここでもやはり、空欄補充に時間を取られないように気をつけたいですね。
全体を通して、時間との戦いになったのではないかと思います。
正しい解法を身につけて、無駄のない動きで問題を読み、解いていきたいですね。
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この記事を書いたのは...
松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。