神奈川県はもちろん、全国でもトップクラスの大学進学実績を誇る聖光学院。
他の首都圏進学校と比べて通塾率も低く、学校の面倒見の良さが人気を集める一因です。
また校訓は「紳士たれ」
きちんと挨拶ができ、組織行動にも長けた卒業生は各方面からの評価も非常に高く、首都圏でも有数の保護者が安心して子供を預けられる学校と言えそうです。
都内御三家に合格をしていても聖光学院を選ぶ生徒が多いことにも納得がいきますね。
その校風は入試問題にも反映されています。
どの科目においても特異な問題は出題されず、塾での学習を高いレベルまで身につけられた生徒が高得点を挙げられるような内容が課されます。
もちろん算数も、努力が得点に反映されやすいバランスの良い出題になっています。
頻出分野は「書き出しを要する規則性」「速さと比」「様々な比の文章題」「平面図形と比」「立体図形」など、首都圏男子校としては標準的です。
難度も数年前に一時期、大幅な高騰が見られたものの、合格者平均点で120点前後になるよう絶妙なバランスで調整されています。
ではここで2018年の第1回の出題に目を移してみましょう。
いつもと同じ大問5つで150点満点、部分点なしという形式です。
合格者平均点は117.0、受験者平均点は94.1とのことなので、平年通りと言えそうです。
ちなみに2017年と2018年の合格者平均は、それぞれ1回2回の順に118.0、118.1、117.0、117.0と、作問側の上手さが光ります。
さて、ここからは今年の出題において、どうすれば合格ラインに乗せられたかを考えてみましょう。
〇:聖光学院合格のために確実に正解したい問題
△:合格者と不合格者で差がつきやすい問題
×:正答率が低く、出来なくても差がつかない問題
大問1
(1) 〇
基本的な計算問題です。
分数で手際良く処理しましょう。
(2) 〇
典型題を一ひねりしていて一見難しそうです。
ただ全てを足すと結局、5人の年齢をそれぞれ3回ずつ加えたものになるので、聖光学院への合格を考えるとむしろ易しい部類に入ります。
(3) △
「倍数の条件」という基本テーマを1問に盛り込んだ、上手い出題です。
2の倍数、4の倍数、6の倍数という条件より、一の位、百の位、一万の位が偶数になること、十の位が5になることに気づきましょう。
あとは十万の位が1の場合と3の場合に分けて考えます。
学習効果の高い良問ですね。
大問2
(1) 〇
題意の確認問題です。
聖光学院合格のためには落せません。
(2) △
Aは2018に最も近い三角数を考えます。
すると63の時に2016が見つかりますね。
三角数や平方数などに注目した年号に関する問題は、直前に勉強した生徒も多かったことでしょう。
(3) △
書き出して特徴に気づかせる、聖光学院で頻出の問題です。
今回も1から順に考えていくと、0/1、1/1、0/2、1/2、2/2、0/3、1/3、2/3、3/3・・・2/63と、典型題に持ち込むことが可能です。
計算量はやや多いものの、合格のためには頑張りたい問題です。
大問3
(1) △
聖光学院頻出の超長文の旅人算です。
ダイヤグラムで整理できると、状況は捉えやすいでしょう。
例年(1)は問題文のごく一部だけを取り出せば正解できる問題が多いのですが、今年はダイヤグラムの特徴(今回は平行四辺形の利用)を用いないと、難しかったかもしれません。
(2) △
(1)で上手くダイヤグラムで整理できていたら比較的易しい問題です。
速さの比が3:5なら、時間の比は5:3、この差が22-0.4=21.6分という解法の流れは、聖光学院志望者なら常識ですね。
(3) △
(2)と同じように、速さと時間の逆比に注目しましょう。
今回は54+10-22=42分で着くことが分かるので、
時間の比は54:42=9:7、時間の比は7:9で差が20m/分と考えます。
この大問はダイヤグラムへの習熟度で大きな得点差がついたのではないでしょうか。
大問4
(1) △
どの対称性に注目するか、意外と難しい問題です。
個々の状況を調べていっても良いですが、左上の4マスで対称になるパターンを調べてみると良いでしょう。
(2) △
2、3、4、5秒後にそれぞれ2、1、3、2マス塗られていることに注目しましょう。
4C2×4C1×4C3×4C2と考えられます。
(3) 〇
(1)(2)よりも極端に易しい問題です。
3秒後から4秒後にかけての1秒間で32㎠増えることに注目しましょう。
(1)(2)が分からなくても、諦めるなというメッセージでしょうか。
(4) △
(2)と同様に2、3、4、5秒後の状態を考えましょう。
少し手間はありますが、決して難しくはない問題です。
大問5
(1)アイ △ ウエオ △
中学以降に扱う、いわゆる「座標」を考えていくと捉えやすい問題です。
アイは「辺EMを3:2に分ける」という内容を相似に注目して「横に6cm奥に3cm進む」と言い換えましょう。
ウエオも相似に注目してQCを3:1になるよう比例配分していきますが、処理が高度なため難度は高いです。
(2) 〇
「右だけ」に4秒の場合と、「奥だけ」に4秒の場合を考えて結べば終了です。
(1)と比べて易しい問題です。
(3) △
(2)と同様に、「右だけ」「下だけ」「奥だけ」に進んだ場合を考えます。
奥の場合はDまで到達してしまうので、そこから右と下に分けて、最も遠い場合を考えましょう。
最終的には三角錐台の体積を求める問題になります。
このように各問題を見ていっても、いつも通りの聖光学院らしい出題だったことが分かります。
例年との違いを敢えて考えてみると、
「例年は立体図形を中心に散見される捨て問が配置されなかった」
「(1)よりも(2)以降のほうが易しい、誘導になっていない問題も多かった」点が挙げられます。
その上で合格点を取るためには、まずは
大問1:(1)(2)で正解して20点
大問2:(1)(2)で正解して20点、
大問3:確実に抑えられるものはないので0点
大問4:(3)を正解して7点
大問5:(2)を正解して10点
ここまでの基本問題で57点。
残り93点のうち6割の得点で57+55.8=112.8というのが目安になりそうです。やはり大問3が鍵ですね、ここで完答できた受験生は大きなアドバンテージが得られたのではないでしょうか。
聖光学院はバランス良く受験算数の学力が問われるため、これといった対策が取りにくい学校です。
来年以降、聖光学院への合格を目指す受験生は、まずは塾内での成績アップを目指しましょう。
各塾のトップコースで扱う様々な算数の典型題が、聖光学院の算数に直結します。
その上で「書き出しを伴う規則性」「速さと比、ダイヤグラム」「平面図形と比」「立体図形の切断」など、他の男子最難関校での頻出分野を学習するのが良いでしょう。
聖光学院の算数は他校の算数の対策にもつながります、頑張りましょう!