神奈川県を代表する女子進学校として確固たる地位を築きつつある洗足学園中学校。
さまざまなバックグラウンドを持つ個々の生徒の目標にあわせた丁寧な指導が、面倒見を期待する多くの受験生の人気を集めています。
もちろん学習面だけではなく、美しい校舎や音楽に力を入れるなど情操教育にも定評があります。
中学受験も「よく研究している」学校です。
いずれの科目も中学受験という枠を外れることなく、その生徒の努力量を適切に見極められる出題になっています。
合否基準は独特です。
合格者の定員の8割を算国の2科目で決定し、残り2割を2科目での合格基準に達していない受験生の4科の総合点で判断します。
また補欠合格は該当年度の算数・国語の試験結果のうち最も高い回の点数で判断する、複数回受験の生徒にやや有利な方式を採用しています。
これによって、地力のある生徒を確保する一方、洗足学園を熱望する生徒にとっても報われやすい、バランスの良い入試になっています。
また小問ごとの正答率や各問題に対する学校側の講評など公開されるデータが多く、基準が明確であることも目標設定において参考になることも多いでしょう。
その他、受験直前には帰国生の模擬面接や一般生の入試問題説明会が実施されるなど、受験生が力を発揮するための配慮が数多くなされる点も洗足学園の学校としての姿勢の魅力と言えるでしょう。
このようにクリアで公平な受験であるぶん、完全な実力勝負となる洗足学園の中学入試。
ここでは2018年 第1回の算数の出題を通して、洗足学園への合格の可能性を高めるための方法を考えていきましょう。
○:洗足学園合格のために確実に正解したい問題
△:合否を分けた問題
×:正解できなくても合否には影響しない問題
(%は学校発表の正答率)
大問1
(1) ○ 98.1%
整数の四則計算の基本問題です。
98%超の正答率ですし、さすがに落とせません。
落ち着て解き始めましょうという洗足学園からのメッセージでしょうか。
(2) ○ 93.9%
分数・小数の四則計算の基本問題です。
3.75は3と3/4と読み替えて処理しましょう。
大問2
(1) ○ 74.6%
Aは2cm/時、Bは6cm/時ずつ短くなります。
もとの差が9cmなので、旅人算として考えることが出来ますね。
(2) ○ 87.7%
はじめのA、Bの所持金をそれぞれ⑤、④とおいて処理しましょう。
確実に正解したい問題です。
(3) ○ 63.3%
38×A+62×B=1880
62×A+38×B=2120
の2つの式を足すと
100×A+100×B=4000になり、
1×A+1×B=40となります。
あとは消去算として処理しましょう。
38と62の最小公倍数を求めようとしないよう、気を付けたいところです。
(4) △ 19.8%
歩数と歩幅に注目する旅人算は中学受験頻出です。
何を求めているのか混乱しないよう、花子・父の1歩あたりの歩幅を2cmと3cmとするなどして、単位を意識すると正答率が上がります。
算数においては「脚、みじかっ!」などの野暮なコメントは不要です。
大問3
(1) △ 27.0%
意外と手がかりをつかみにくい問題です。
花子さんの前後の人数を□+4、□
良子さんの前後の人数を△、△+8と置いてみましょう。
合計の人数が変わらないことから□=△+2と置き換えられます。
植木算の発想でミスをしないよう、具体的な人数を決めることも有効です。
(2) △ 41.2%
図形と比の典型題です。
「分ける」「全体から引く」など様々な解法が考えられますが、以下の図のような内部底辺を利用した解法が望ましいかと思われます。
(3) ○ 86.3%
仕事算の応用問題ですが、方針は立てやすいでしょう。
全体位の仕事量を最小公倍数に設定し、整数で処理していきましょう。
後半はつるかめ算の発想を用います。
(4) △ 27.4%
速さと比の頻出問題ですが、やや難度は高めです。
往復の時間の和、距離の和に注目して「平地の速さ」と「上りと下りの平均の速さ」でつるかめ算をとったり、
行き帰りの時間の差から上り下りの距離の差を求めてつるかめ算をとったり、様々な解法で求めることが可能です。
大問4
(1) △ 53.7%
食塩の量がAは36g、Bは40gと変化しないことに注目すると、全体量の比が36:40=9:10になることに気づきます。
食塩水だからと言って、面積図や天秤をすぐに持ち出さないよう気を付けましょう。
(2) △ 18.4%
2つの食塩水の濃さが同じになる=全て混ぜ合わせたときと同じ濃さという発想も定番です。
途中経過の数字がやや汚くなるぶん、解きにくさを感じた受験生も多かったことでしょう。
(3) △ 11.2%
食塩の和は76gで変化しないので、38gずつになります。
Aに注目するとA1gとB2gを交換することで食塩は0.1-0.06=0.04g増えることが分かるので、食塩を2g増やすにはAから何g移せばよいかを考えましょう。
発想はやや高度ですが、計算自体は易しいです。
また(2)とは独立した問題なので、(2)が出来なかったとしても諦めずに是非とも取り組んでおきたい問題でした。
大問5
(1) ○ 81.6%
はじめて出会うまでに2人合わせて片道分、以降は往復分ずつ進むごとに出会います。
基本的な発想なので落とせません。
(2) △ 40.5%
グラフの120mが、どんな状況を示すのか正確に把握できれば、決して難しくない問題です。
以下のように線分図で整理すると分かりやすいでしょう。
結局、姉が720m進む時に妹は480m進むということが分かります。
(3) △ 6.4%
(2)で姉妹それぞれの速さが求まっていたら、正答率は低いものの、決して難しい問題ではありません。
2回目に出会った地点はPから72m、姉はそこから72m/分×3分45秒進んだだけの話です。
線分図で上手く整理しましょう。
2018年第1回入試の算数の平均点は48.8点と、やや低めの基準になりました。
国語の平均点は65.6点で、2科目の合格最低点は132点と言うことを考えると、算数で65点くらい取れれば充分に合格ラインに乗ってくると言えそうです。
合格のための得点戦略としては、大問1と2で、35/40を確保し、残りで30/60の半分を稼ぐことが目安となりそうです。
洗足学園の算数の入試問題の作成力は秀逸です。
来年以降、洗足学園合格を目指す皆さんに紹介できる特効薬は正直に言ってありません。
結局のところ、洗足学園の算数で合格点を目指すためには地道な努力は欠かせません。
普段のテキストを徹底的に学習し、テストの直しにも丁寧に取り組むことで地力を高めることが最も有効な対策です。
その上で過去問演習を重ねて、取捨選択の判断力を養っていきましょう。
洗足学園の算数は受験算数の王道です。
洗足学園の対策を重ねることは併願校の準備も兼ねることが出来るので、学習効率も良いと言えるでしょう。
是非とも頑張りましょう!