本日の注目校は武蔵中学。
ご存知の通り男子御三家の一角で、大学受験の先まで見据えた教育は保守的であると同時に先進的で、多くの人材を創出してきました。
大学入学後にも武蔵卒業生は伸びると言われるのも納得ですね。
ただ一貫した教育方針を堅持している武蔵中、算数の入試問題も独特です。
まず印象的なのは
「時代に逆行するかのような手書きの問題文」でしょう。
年度により見られるイラストにも、武蔵の先生の遊び心が見え隠れします。
作問者自身が楽しんで出題している雰囲気は、武蔵中の授業を彷彿とさせます。
出題形式は
「B4用紙で計4枚、1問ずつ大問が配置され、余白は全て考え方の記入欄」という、自身の理解を充分にアピールできるもの。
出題内容も「平面図形」「速さと比」「和と差の文章題」そして「調べ上げ」と、中学受験算数の根幹となる分野を題材に、本質的な理解を問う深い問題が並びます。
武蔵の算数、上手いです。
さて今年度の出題に目を向けましょう。
受験者平均点46.3点に対して、合格者平均点は66.9点と、明確な差がついています。
特に2018年は国語と社会で出題ミスがあり全員加点とする措置が取られたため、なおさら「算数で決まる」受験となったようです。
僕の担当生徒も無事に合格を果たしてくれました!
おめでとう!
ありがとう!
・・・さて、気を取り直して内容を見てみると「武蔵らしい」構成は変わりません。
ただ大問2の速さ、大問3の比と割合の複合の文章題で大きな差がつきそうです。
ここからは各問題に目を通し、どうすれば今年の出題で合格ラインを上回ることが出来るのかを、考えてみましょう。
〇:武蔵中合格のために確実に正解したい
△:やや難しいが出来れば完答、少なくとも部分点は拾いたい
×:もしポイントが掴めていないなら出来なくても仕方ない
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
標準的な食塩水の問題です。
状況を後ろから戻して考えますが、典型題なので確実に正解しておきましょう。
(2) △
武蔵頻出の相似の典型題です。
辺CEと辺ADを延長する(角出しと呼ばれる手法ですね)ことで、相似を作りましょう。
演習量で差がつく良問です。
大問2 △
通過算の作図力、状況整理力を問う良問です。
列車の2両分が3秒にあたることは推測できる受験生も多いと思いますが、図に状況を落とし込み、どこを求めるかは差がつきます。
大問3
(1) △
不定方程式と数の性質の複合問題です。
A×14+B×6=198 までは立式できるものの、そこから先の処理が見えにくいかもしれません。
結局のところ
Aの原価:利益=100:15=20:3
Bの原価:利益=100:12=25:3
から、AとBの利益がいずれも3の倍数の金額になると考えましょう。
こちらも明確に実力差のつく、上手い問題です。
(2) △
定価で全て売れた場合から、福袋を1セット作ると利益が何円減るのか考えてみましょう。
発想自体は中学受験頻出ですが、(1)が出来ていないと得点できない点が苦しいですね。
大問4
(1) 〇
武蔵らしい調べ上げの問題です。
例年(1)は題意の確認問題が配置されますが、失点するわけにはいきません。
(2) 〇
こちらも題意の確認問題です。
4から樹形図を描いて戻っていくと良いでしょう。
(3) △
(2)の続きで樹形図を描いていくと良さそうです。
「出来るだけ3で割らない」ことが本質ですが、10までなら調べていって正解することも可能です。
(4) ×
「出来るだけ3で割らない」ことを考えて戻っていくと、
1-2-5-4-3-8-7-6-17-16-15-44-43-42となります。
(3)で注目すべき点が見つからなければ、正解することは厳しいでしょう。
う~ん、今年はホント上手い!
大問2、3、4で、武蔵が求める生徒を明確に選別できる試験構成だったのではないでしょうか。
合格への目安としては
大問1は(1)〇と(2)△なので、(2)が途中までとして15/25くらい。
大問2は25/25を完答したい、もし駄目でも5/25くらいは確保したいところ。
大問3も25/25を完答したい、もし駄目でも5/25くらいは確保したいところ。
大問4は(1)(2)を正解した上で(3)以降で粘って15/25くらいでしょうか。
結局、大問1と大問4で30/50、大問2か大問3のいずれかで完答、というのが合格のための得点パターンと言えそうです。
来年以降、武蔵を志望する生徒にとっても、非常に参考になるセットと言えるでしょう。
未来の武蔵生たちは是非とも
「平面図形と比」
「速さと比、ダイヤグラム」
「調べ上げと気づき」
など、武蔵において頻出で差がつく分野の学習を重点的に進めてみましょう!
武蔵には可能性を伸ばしてくれる、素晴らしい環境が整っていますよ。